有宮府警察生活安全部の日常   作:日本国民

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どうも、二話目です。


まさかパトカーの目の前を走る不審者がいるなんて思いませんでした。

昼下がりの有宮市中心部。空たち3人はパトロールを行っている。

 

「今日は結構平和だね。」

 

「そうですね。こんな日がずっと続けば良いのに……」

 

この日は犯罪が少なく、2時間パトロールをして強盗一件起きていない。

 

(そういえばこの辺りって昔闇市が……ん?)

 

信号に引っかかったところで空がそんなことを考えていると左奥の小道から覆面をつけたいかにも不審者な5人組が目の前を通っていく。

 

(え?え?いやまさか…)

 

空はその不審者に見覚えがあった。

 

「に、新居浜部長!目の前をいかにも銀行強盗な5人組が走り去っていきましたよ!」

 

「あ、はい!追いましょう!フブキさん、先に降りて追跡をお願いします。キリノさん、呼びかけを!」

 

「面倒くさいなぁ……」

 

「お任せください!」

 

空に指示を出されたフブキは面倒くさがりながらも降りて走って追跡する。

 

『緊急車両右折します!緊急車両右折します!』

 

車の間からさっきの不審者が入っていた小道へ入る。だが道幅がギリギリのせいであまり進めない。

 

「パトカーじゃきついですね……キリノさん、降りましょう。」

 

「了解です。」

 

2人は少し道幅の広い場所でパトカーを降りると跡を追う。

 

少しするとフブキから無線が入る。

 

『部長、さっきの5人組、捕まえたよ。』

 

「了解です。逃げられないよう注意してください。すぐそちらに向かいます。」

 

「はーい。」

 

走って少しするとフブキと覆面を外した5人組を見つける。

 

「……やっぱりあなたたちでしたか……」

 

「あ、新居浜。」

 

「お、新居浜君じゃん。」

 

空は不審者たちの顔を見て予想通り、といったような反応を見せる。不審者の方も空を見ると知っているような反応を見せる。

 

「「え!?」」

 

それに対してキリノとフブキは驚く。

 

「知り合いだったの!?」

 

「ええ、石見さん繋がりでね。1人知らない方もいますが…」

 

そう言って空は一番右にいる高校生を見る。

 

「右からホシノさん、シロコさん、ノノミさん、セリカさん……で、あなたは?」

 

「あ、有宮軍学校総合科、阿慈谷ヒフミです。」

 

「総合科のヒフミさん、ですね。」

 

空は胸ポケットからメモ帳を出すとそれにヒフミの名前と所属を書く。

 

「まさか皆さんと新居浜部長が知り合いとは……じゃなくて!強盗犯ですよ!捕まえないと!」

 

キリノは驚いていたが我に帰ると空に逮捕を急かす。

 

「まあまあ……強盗犯と決まったわけではありません。一度話を聞きましょう……」

 

「しかし逃げられたら…!」

 

「大丈夫です。この人たちは逃げません。」

 

「………分かりました。」

 

空がそこまで言うとキリノは了承する。空はそれを確認すると全員に質問する。

 

「さて、何してたんですか?そんなに急いで。」

 

「ん、これを盗ん……」

 

そう言うと右から2番目にいた砂狼シロコが鞄を漁るがいきなり硬直する。

 

「どうし…ってえええええええ!?シロコ先輩、現金を盗んだんですか!?」

 

「いや、銀行員が勝手に入れただけ。」

 

「とりあえず……5人とも強盗罪で逮捕です!」

 

キリノがそれを見て手錠を出す。

 

「何か事情があっても金を盗むのはダメだよね〜。」

 

フブキも手錠を出して5人組に手錠をかけようとする。

 

「いや、違うんです違うんです!私たちはこれを盗むために銀行強盗をして!決して金を盗むためではなく!」

 

ヒフミが慌てて訂正し、現金の入った鞄から書類を出して空に見せる。

 

「銀行強盗の時点でアウトですけど……」

 

「まあまあ……これは…集金記録……ですか?なぜこんなものを……」

 

「私たちの学校が借金まみれなの……新居浜さんは知っているわよね?」

 

左から2番目にいる黒見セリカが空に問う。

 

「え、ええ……しかし、それとこれになんの関係が?」

 

空が質問すると一番右にいた小鳥遊ホシノが答える。

 

「これまで払っていた金が全て闇銀行に支払われていることが分かったから、証拠入手のために集金記録を盗んだって訳。だけど……行員が間違えたのか金が入っちゃったんだよね〜。」

 

「なるほど。つまり襲ったのは登録のない銀行……ってことですか?」

 

「そういうことだね〜。」

 

ホシノが説明し、キリノとフブキも事情が分かったのか手錠を下げる。

 

「集金記録……貰ってもいいですか?闇銀行の検挙につながると思うので。」

 

「別に構いませんよ。」

 

十六夜ノノミが答える。

 

「なら貰いますね。あと、この件は見の………内容真っ黒な集金記録と現金の入った鞄を見つけ、たまたまそこに5人の人がいたってことにしますので。」

 

空は目の前にいる5人にそう言う。それに対してキリノが反論する。

 

「新居浜部長!この人たちは銀行強盗したんですよ?逮捕するべきです!」

 

「有宮府南部地域の犯罪を助長している銀行の検挙と盗んだとはいえ証拠を持ち出すという大手柄をとった盗人の逮捕、どちらを取るべきかは明白ですよね?」

 

「しかし……」

 

「それに、この人たちは私利私欲のために強盗したわけではありません。一回ぐらいは見逃しても構わないでしょう。銀行の検挙と引き換えに、どうでしょう?」

 

「………」

 

キリノは無言になり、2人の間に沈黙が流れる。かなり迷っているようだが少しするとキリノは頷いた。

 

「では、そういうことで……みなさん、ご協力ありがとうございました。今後は犯罪……犯さないでくださいね。」

 

空は5人に頭を下げる。盗人に警官が頭を下げる……側から見たら完全な汚職現場だ。

 

空は一回パトカーに戻ると近くの路肩に止め、無線を入れる。

 

『有宮103から有宮本部。木内二丁目付近で数百万円ほどの現金の入った鞄と集金記録と見られる紙の入った鞄を発見。強盗等事件性があるため応援を願いたい。』

 

『有宮本部了解。付近のPCを向かわせる。』

 

無線を入れ終わると先程の場所に戻り、鞄を調査する。

 

「中の現金は……………500ぐらい…いやもっとか…」

 

「とてつもない金額ですね……」

 

「ええ、しかもこれ全てが違法に集められたものなら………」

 

空は被害額を想像してゾッとし、考えるのをやめた。その時、フブキが空に聞いてきた。

 

「部長、借金まみれ……って話って?」

 

「え?」

 

「左から2番目にいた黒髪の人が言っていた話ですか?」

 

キリノが思い出したように言う。

 

「そうそれ。」

 

「セリカさんが言っていた話ですか。」

 

空も思い出し、フブキの問いに答える。

 

「彼女たちの学校。有宮軍学校村山分校は元々本校だったんです。しかし、85年に溝ヶ浜に本校が移転。そこからは生徒数が減っていきました。」

 

「そんな状況の中、2003年に有宮府内で震度6強の地震が発生、被害の対処に追われます。その時にできた借金が膨れ、現在では約9億円にまで膨れていると聞きます。」

 

そこまで空が言うとキリノが顎に手を当てて空に聞く。

 

「軍学校の分校……ですよね?なら、国の金で支払われるのでは無いのですか?」

 

「ええ……普通はそうなのでしょうけど…石見さんも知らないと言ったので。僕の推測……ではありますが、地震発生時、有宮府内の軍事施設も被害を受けたので、そっちが優先された……という可能性が高いと思います。」

 

「なるほど……」

 

空が話し終わると同時、空の後ろから人が走ってくる。

 

「新居浜!」

 

「石見さん?一ツ木さんたちも……なぜここに?」

 

「たまたま近くで発砲事案の聞き込みをしていて、僕たちが一番近かったので。」

 

「そうでしたか……」

 

石見の隣にいた一ツ木誠也が空に説明する。

 

「これが現金の入った鞄か。」

 

「ええ、見た感じですが600万ぐらい入っているかと。」

 

「集金記録は?」

 

「こちらです。」

 

空は石見に集金記録を渡す。石見は集金記録を見ると驚いた顔をする。

 

「……こりゃ………見たらダメなものを見ちまったな……」

 

石見がそう呟くと一ツ木と捜査四課の見習い警官である尾刃カンナが集金記録を見る。

 

「癒着……ですか…」

 

「しかも南銀でも有宮信金でもないようです……どこの銀行でしょうか?」

 

「多分ですが登録のない銀行ですね。」

 

「闇銀か、面倒だな。」

 

石見は少しため息をつきながらスマホのカメラ機能で集金記録を撮る。そして周辺を調べていたキリノとフブキも入ってくる。

 

「このお金……罪のない方から盗まれた金…ですか?」

 

「ああ。多分詐欺や誘拐などで入手された金だろうな。」

 

石見が説明していると応援の警官が到着する。

 

「応援、来たみたいだよ。」

 

「分かりました。」

 

その後応援に引き継ぎを行うと空たちは報告書作成のために本部に戻る。

 

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有宮府警察本部生活安全部

 

「……そういえば。」

 

「どうしたの?」

 

報告書を書いていた空が急に声を出す。そして珍しく起きていたフブキが反応する。

 

「35番街の暴行事案の報告書、まだ貰ってないと部長に言われたんですよね……」

 

「……!」

 

フブキがビクッとすると生活安全部から出ようとする。

 

「どこ行くんですか?」

 

すかさず空がフブキの肩を掴む

 

「い…いや……ちょっと見回りに……」

 

「ダメです。報告書を書き上げてください。」

 

「そんなぁ……」

 

結局フブキは空と報告書を書くことになった。

 

「そういえばキリノさんは?」

 

「さぁ?先生のもとにでも行ってるんじゃない?」

 

「溝ヶ浜まで距離がありますし……さす「ドーナツ貰ってきましたー!」

 

空が否定しようとすると大声を上げてキリノが生活安全部に入ってくる。その言葉にフブキはいち早く反応する。

 

「ドーナツ!?」

 

「貰ってきた……って誰からです?」

 

「先生に窓口で会って『フブキたちと一緒に食べて』とくれたのです。」

 

「そうですか。」

 

フブキはキリノが空に説明している間にドーナツを頬張る。

 

「あ、フブキ!ずるいです!」

 

「別にいいじゃん。先生もみんなで食べてって言ったんだし。」

 

「それはそうですが……」

 

キリノはフブキの言葉に反論できないのか悔しそうな顔をする。その間にフブキはもう一個取っていく。

 

「……ん、美味しいですね。これ。」

 

空は箱から一個ドーナツを取ると口の中に放り込む。

 

「え?……本当です。」

 

キリノも箱から取り出して一つ食べる。

 

「あ、ドーナツだ!」

 

3人が食べているとそこに警邏から戻ってきた警官も加わる。これは有宮府警察生活安全部ならではの光景だろう。




ということでこれで終わりです。今回では対策委員会編をもとにしてみました。
ではまた次回!
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