主人公には実際のダメージは無いけどそう見せる事で周りが曇る話
漫画やアニメにおいて、最もロマンのある技は何か?
代々受け継がれた秘伝の剣技や魔術?違う。
特定の条件下でのみ真価を発揮する力?それも違う。
しばらく身動きが取れなくなる広範囲高威力の大技?惜しい。
答えを言うと『寿命を代償にして自身の能力を底上げする技』だ。
そう思うようになったきっかけは謎だが、憧れたからにはこう思うようになるのは必然だろう。"自分も使える様になりたい"と。
しかし当時幼かった俺はそうなる為の具体的な案が思いつかなかった。
だから手始めに毎日徹夜して勉強をしてみたり、幾つもの格闘技を習得してみたり、学校の部活も全て掛け持ちしたりした。
だがしかし、それは世界中を探せば同じ事をやっている人間なんてごまんといる程度の努力に過ぎない。
もっと大きな、誰も成し遂げられなかった修行方法が必要なのだ。
そう考えたのは六年前。高校生になった今でも画期的な修行の形は見つかっていない。
その事を友人に相談したら、彼はこう言った。
「やはり……魔力か」
どこか憂うように呟いた彼の名前は影野ミノル。行く先々の道場で見かけていたので声を掛けたら想像以上に気が合い今では親友と呼べるまでその関係は強固な物になった。
信じられないと思うが、世間的には俺達は異常者だ。力を求めたが余り、自ら修羅の道に足を踏み入れた異常者。
そんな異常者の俺でも流石にミノルの正気を疑う…………
ことは無かった。
「それだ!!」
修行の途中、いつだって俺の中にあったモヤモヤ。その正体が今判明した。
俺は結果だけしか見ていなかったのだ。寿命を削るのはいつだって中堅くらいのキャラが敵組織の幹部クラスに立ち向かう時。
だが今の俺はどうだ?ただちょっと強い一般人に過ぎない。
勿論、鉛玉一発でイチコロだし核でも降ろうものなら一瞬で蒸発する。
結論から言うと過程をすっ飛ばしていたのだ。雑魚が命削っても意味が無い。先ずは中堅キャラになる必要があるのだ。
「可能性が低かろうと、ソレに頼る他無い!!」
「ああ!行こう!魔力を探しに!!」
そこから俺達の修行は魔力をこの身に宿すためのものへとシフトチェンジされた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから時が経ち高校最後の夏になった。
魔力はと言うと、未だ見つからない。
が、過程の大切さという物を痛い程理解している俺だから言える。
これまでの、そしてこれからの修行は決して無駄では無い。その証拠に、すっかり辞めてしまった格闘技も勉強も、最近続けている修行のおかげでこれまで以上のパフォーマンスを見せている。
昨日だって過酷な修行により意識が飛んだ俺の体はどうしてかとても軽いのだ。
原因は不明だがそのお陰で眠気が晴れ、それと一緒に食欲が出て腹痛も無くなった。体は健康になり授業も万全の状態で受けれるようになった。
きっと俺の中にある未知なる力の種がようやく芽を出したのだろう。
今日も今日とて深夜帯になり約束の場所にて俺とミノルは修行をしていた。
現在は全裸になり大木に頭を打ち付けている途中だ。
常人がこの状況を目撃すれば余りの恐怖に押し潰され眠れない夜が続く事だろう。そんな犠牲者を出す事になろうとも俺達は成し遂げなければならない。
終わりの時が来て、制服の袖に腕を通す俺はふとミノルの方を見る。
「あ!お前の周りにチカチカした光が!」
「そういう君にも!」
どうやらついに俺たちにも、微弱ながら魔力が宿ったみたいだ。
「あんな所に大きな魔力が!!」
ミノルが指した方向を見ると俺達の周りを飛ぶそれとは比べ物にならない大きさの光が高速で動いていた。
幸運な事にその数は狙ったかのように二つ。気付けば俺達はその光に向かって走り出していた。
「「魔力ゥーーー!!!」」
思い返せば、俺一人だったらここまで辿り着けなかっただろう。一生を費やして結果だけを求めた愚かな修行を続けていたと思う。
だが俺は一人じゃない。
光の前に飛び出し、そして俺は…………………。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こうして俺は完全に魔力を手に入れた。今までと違い空中を漂う魔力をしっかり認識する事も出来る。
最後に見た強い光に比べてヤケに淡い光だが……。
ま、手に入れた魔力が別格の物だったのだろう。
そういえば、気づいたら俺は異世界に転生していた。中世ヨーロッパみたいな所だが聞いたことの無い言語を使っていたので確定だろう。だが魔力を手にしたのと比べれば些細な事だ。
なんにせよ、コレで俺は憧れの寿命を代償にするムーブが出来る訳だ。
だがその前に、それが出来る歳まで成長しないといけない。今の俺は赤ちゃんだからな。
そうだ。立てるまでの時間で修行するとしよう。
それに俺と同じで転生したハズのミノルのそうさ……お腹空いたな。
「おぎゃぁぁ!!!!」
……ふぅ、コレで誰かがやって来るだろう。
とにかく、魔力を操る訓練をしないとな!