転生してから10年位経ったと思う。
それまで何をしていたのかと言うと、変わらず魔力の制御の練習だ。
基礎の部分は既にマスターしているので今は体内で魔力を破裂させ吐血する練習をしている。
残念な事にこの世界の魔の性質上、実際に命を代償にするのは無理な事が分かり、ならばそう見える様な演技の練習を始めたのだ。
「オラァ!!金出せやぁ!犯罪者共ォ!」
修行のついでに盗賊を狩る。そのついでに金目の物を拝借する。そう。ついでに。決してそれがメインでは無い。
俺は盗賊が大好きだ。なぜなら人間相手に実践訓練が出来るからだ。コイツらなら罪悪感なんてのは欠片も湧かない。
「な、なんだテメェ……がっ!?」
全身に魔力を纏い耐久力と攻撃力を底上げした拳で運悪く1番近くに居た奴の頭を吹き飛ばす。
「うん。今日も完璧な魔力さばき。我ながら惚れ惚れするね」
「何言ってやがるガキ、死ねえ!」
「え?」
傍から見れば油断した子供が斬り捨てられた様に見えるだろう。
実際に血飛沫を上げながら地面に倒れふした俺から赤い液体が水溜まりを広げた。
「チッ1人やられた」
「お、おい。死んだのか?」
「たりめーだろ。腹を切り裂いたんだ」
「でもパンチで人の頭を吹っ飛ばしたんだぞ?この程度で…」
「ご明察」
「なっ!?」
盗賊達は信じられない物を見た。
血溜まりの中立ち上がった少年の胸にあるハズの傷が消え、不敵に笑っていた。
「魔力で強化した身体をそんなナマクラで切れる訳ないでしょ。それよりどう?お腹のやつは血糊だけど口から出てるやつは体内で魔力を破裂させて自発的に吐血させた物なんだ」
「ヒ……化け物」
最早恐怖でピクリとも動かない盗賊達に少年は右腕を向けた。
「じゃ、バイバイ」
魔力を高速で回転させ大きな竜巻を作り出し、その場に一時的な血の雨が降る。
「う〜ん。一応成功したけど、まだ狙った場所を傷付ける事は出来ないな〜」
次の課題だな〜と呟き家がある方向に歩き出す。
「お金はいいの?」
突然、俺以外いなくなったハズの森に声が響く。
だがこの一瞬で分かった。俺が転生したんだ。勿論お前もいると思ってたぜ。
「忘れてたわ」
「じゃあ貰っていい?」
「バーカ。全部俺のだ」
振り返るとずた袋を被ったミノルがいた。
「改めて、コッチではナクス・ジュミョーだ」
「僕はシド・カゲノー」
こうして俺達は魔力を手にしてからおよそ10年振りの再会を果たした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
再会を果たした俺達はそれから互いを高め合い、俺は魔力を制御する技術を、シドはスライムボディスーツなる物を互いに授けた。
「おお。君から教えて貰った魔力の練り方だとスライムソードの伸縮が段違いだ」
「だろ?」
およそ盗賊を虐殺している本人とは思えない雰囲気で俺達は談笑していた。
「俺の方も中々上達しただろ?フン!」
背を向けて逃げ出した奴との距離を縮めスライムソードを流す様に振るう。
盗賊は苦悶すら感じぬまま息絶えた。
「断面も大分綺麗になったね」
「でしょ」
剣術や格闘術に長けたシドが近接、魔力の操作に長けた俺が遠隔で上手く役割が分担できている。その気になれば両方どっちもできるけど。
そんなこんなで修行の成果をモルモット共で試すのが俺達の日課になっていた。
「ん?ソイツで最後か」
「うん。ボス枠だったけど2分もたなかったよ」
まだ痙攣してギリ生きていたソイツを転がし俺達は戦利品を漁り始める。
俺達が架空に立ち上げた組織シャドウガーデンの資金を集める為に有効活用させて貰おう。仇を取った商人さん達からのお礼という事でね。
「ん?」
金貨を掻き集める手を止め布を被せられた牢屋を見つけた。
「どうしたの」
「あれ、奴隷かなにかかな?」
「でもへんな液漏れてるよ」
「茶色いな」
「茶色いね」
見た所排泄物だろうか?まぁついでに解放してやるか。
「OPEN!!」
バサッと布をめくる。
中にいたのは何とも美しい美少女……。
ではなく肉だった。
なんだコレは、肉としか言い様が無いじゃないか。なんか異臭もするし。「……シテ……コロシテ」とでも言い出しそうな見た目だ。
「なんだこの肉」
「噂の悪魔憑きってのじゃない」
思わず指をパチンと鳴らす。そういえばそんなのがあったな。
確か人間と同じ形をしているがある日を境にその正体を表す化け物共の総称。協会はそれらを浄化と評して虐殺していると聞く。
「なんか魔王の呪いっぽくてテンション上がるね〜」
「だな。でも残念ながらただの魔力暴走だよ」
「マジ?」
「マジ」
シドは檻の中に入れたスライムソードを元に戻す。
「ここをこうすれば………ホラ治った」
数秒も経たずに肉は美少女エルフに姿を変えた。
「さすが魔力のスペシャリスト」
「この程度ならお前でも出来るぞ」
「それじゃあ今度見つけたら試してみよ」
そこまで言うと俺達は物色を再開しようとする。
「あ、あの、あなた達が私を助けてくれたの?」
しかし背後から引き止められる。
「悪魔憑きももう治ったし、盗賊もいなくなったから、故郷に帰るといい」
「もう故郷には帰れない。行く場所も無いの。だからお願い、あなた達の傍に居させて。何でもするから!」
ん?今なんでもするって……
なんて冗談はさて置き、困ったな。シドの家には面倒な姉がいるから必然的に俺の家で面倒を見る事になるのだが。面倒くせぇ。
そんな中、シドが再びエルフ少女に背を向け右手で顔を覆い、その肘を左手で掴むポーズを取った。
「それは出来ない。君を戦いに巻き込む訳にはいかないからね……」
「戦い?それはどういう意味?」
少女は何が何だかと言った感じだったが俺は瞬時にシドの思惑を読み取る。
「("アレ"だな)」
「(うん。"アレ"だ)」
アレとは俺達が何日もかけて考えたシャドウガーデンの敵となる組織、ディアボロス教団だ。結局フワッとした設定しか思いつかなかったが、そこに悪魔憑きを加え設定を作る。
「昔、悪魔憑きは簡単に治せる病気だったんだ」
「しかし何者かが歴史を捻じ曲げた」
「元々英雄の子孫の証だったそれも今では迫害の対象さ」
「その原因を作ったのは……、俺達の宿敵ディアボロス教団」
………決まった。
即興の設定にしてはよく出来ているだろう。
「………ディアボロス教団を倒す事でこれ以上悪魔憑きで苦しむ者がいなくなるなら。私も私ができることをしたい!」
その後、彼女が気を失った隙に2人で設定を練り細かい矛盾を無くし目が覚めた彼女にいっぱい説明した。
シドがなんでも出来るオールラウンダーだとすればナクスは魔力の操作に極振りしたイメージです