シドの姉誘拐事件が終わり、それからパッタリと彼女等がディアボロス教団の話をする事は無くなった。
足を運べる範囲に盗賊がいなくなったのか、それとも彼女等が単純にこの遊びに飽きたのか。原因は分からないが、とにかく最近はすっかりシャドウガーデンとしての活動は無くなった。
まぁ例え飽きていたとしても、俺達はこの遊びを辞めるつもりは無い。
楽しみたいという感情に勝る物は無いからな!
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自室のベットに寝転がりながら御伽噺の本を読んでいると誰かが廊下を歩いてくる気配を感じた。
両親はこんな隠す様な歩き方はしない。という事は正体はアルファだ。
せっかくなので付き合ってもらうか。
俺はうずくまり、頭をゴミ箱の上に持っていき両手で口を抑える。
スライムを伸ばしドアをおもむろに半開きにした。
そしてタイミングを見計らい………………。
今!!
「ゴホ!ゴハッ!」
例の如く口元を隠し血だけが見える絶妙な角度をキープして吐血する。
隙間から覗いていたアルファも『やはりあなたは……』とか、まるで本当に俺が寿命を削っていると思い込んでいるようなそれっぽい言葉を言ってくれる。
彼女の演技力には圧巻だ。偶に本当に信じてるんじゃね。と思う時もあるくらい。
「!誰かいるのか!」
前触れもなく振り返るとそこにアルファの姿はない。この一瞬で反応し壁の裏に隠れたのだ。
そしてここで最後の仕上げ。
「俺が寿命を削ってるなんて、シド以外には言えないからな」
耳を澄ますとアルファが息を飲む音が。本来聞こえない、言うなれば舞台裏の場所でも彼女の演技は完璧だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな、アルファがアカデミー級の演技を見せたある日の出来事を俺はシドに語った。
現在はシドの部屋にお邪魔している。
貴族の家だけあって結構豪華な部屋だ。
「いや〜面白い話だったよ」
「だろ?次はお前の番だぜ、この前の続き聞かせてくれよ」
「え?何の話?」
「ほらアレだよアレ!」
それからも俺達はなんでもない世間話に花を咲かせた。
盗賊を皆殺しにした夜、七陰のメンバーにスパルタ訓練を課した昼、シャドウガーデンの設定や衣装を考え抜いた朝。
この時だけ俺達は全てを忘れて極々普通の男の子として普通の時間を過ごした。
そんな時間は唐突に終わりを告げる。
「ソイツが金はやるから助けてくれ!って言ったから僕は言ってやったんだ。金は貰うけど君の命も………」
「シド!!」
何やらご立腹な様子のクレア・カゲノー。つまりシドの実姉が部屋へと乗り込んできた。
「いつまで待っても部屋に来ないと思ったら、またこんな奴を連れ込んで!!」
「ふぇぇ、やめてよ姉さん」
いつものセリフで何とか誤魔化そうとするシドだが本日のクレアはしつこく纏わりついてくる。
シドは口パクで俺に助け舟を求めてきた。
"た す け て"
たった一人の親友の願いだ。俺は考えに考え、1つの最適解に辿り着いた。
「シドの奴が、誘拐されてから姉さんに元気がないから何とかしたい。って俺に相談してきたんですよ」
そう言って俺はクールに部屋を後にする。
さて。帰って腕の血管から血を勢い良く吹き出す練習でもするかな
「ナクス様、耳元にゴミが……」
家に帰ろうとした所、カゲノー家のメイドに扮したベータが耳元についたゴミを取る体で囁いた。
「今夜、この屋敷の屋上に来てください」
その後、久しぶりのシャドウガーデンの活動かとワクワクしながら夜になるのを待った。
最近は寿命削ってますムーブも出来てなかったからな。腕がなるぜ!
そう思っていたのだが彼女達から告げられたのは無情な言葉だった。
「私達はより広い範囲で悪魔憑きの子達を保護する為、世界に散るわ」
まぁ、つまり、あれだ。流石に付き合いきれんという訳だ。
充分付き合ったからそろそろ自由になりますねと。
覚悟はしていたが、いざその時が来ると寂しい。それはシドも同じで次の日は一緒に体育座りをして太陽をずっと見詰めていた。
そういえば最後にイプシロンから言われたあの言葉はどういう意味だったのだろうか。
『最後のお願いです。あなたの口から真実を伝えていただけませんか?』
至って真剣な眼差しだったので流石にごっこ遊びとは関係ないだろう。
しかし俺が彼女達が食いつく程の隠し事を持っているかと言えばNO。
いくら考えてもピンと来なかったのでそれっぽい言葉を適当に言ってみたりして、うやむやにしてしまおう作戦を決行した。
『………次に会うのは、あの世かもな』
『『『『『『『は?』』』』』』』
その時の芯から凍える様な感覚を決して忘れる事は無いだろう。デルタまでも俺をゴミを見る目で………。
隣にいたシドでさえガクブルしてたんだ。直接ソレを浴びた俺なんて今でも奥歯がガタガタしている。
前から思っていたが彼女達の反応が俺とシドで違う気がする。この前もシドが同じ事をやったら『これも陰の叡智…!』とか言ってたのに。
結局、何が彼女達の地雷だったのか、それは今でも謎のままだ。
そんな出来事の後、すぐにクレアが王都に旅立った。
泣きそうな顔を貼り付け、邪魔者が消えた喜びを噛み締めるシドと割とどうでもいい俺は彼女の背が見えなくなるとすぐさま帰宅した。
初めナクスは陰の実力者になりたいという願望はなかったのですがシドに付き合っていたら予想以上に楽しくなって続けてる感じです。
彼は観客は別にいらない派の人間なのでアルファ達がいなくなってもそれっぽいムーブが出来ればそれで満足します。