寿命を代償にするキャラになりたくて!   作:パレード

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今年の首席、田舎の無名貴族らしいぞ

 

 時の流れは残酷なまでに早い物で、俺達がこの世界に転生してからもう15年という年月が経っていた。

 

 この世界の貴族にとって15歳になるのは大きな意味がある。それは学園への入学だ。

 

 貴族の子はそこで三年間の間、魔剣士として必要な知識を叩き込まれ立派な魔剣士になるのがこの世界のルールらしい。

 

 そして数ある魔剣士学園の中で俺達が入学するのが王都にあるミドガル魔剣士学園。大陸最高峰の魔剣士学園で国内外から魔剣士の卵が集うとの事。

 

 そんな学園に入学してすぐにある噂が流れた。

 

「おい、今年の首席、ド田舎の無名貴族の生まれらしいぞ」

 

 この通り、ミドガル魔剣士学園では代々名のある貴族から首席が出るのが当たり前だったのだが、なんと今年は無名の貴族が首席になったというのだ。

 

 きっと誰もが、アレクシア・ミドガル王女が首席になると信じて疑わなかっただろう。

 

 が、現実に首席になったのは見目麗しい文武両道の王女ではなく、ポット出の田舎臭い少年だ。

 

「ソイツを倒せば、首席の座は俺達のモノだ!」

「おぉ!そうなればクラスどころか学園中の、いや隣の学術学園の女の子すらも……」

 

 当然、そんな奴なら俺でも勝てる。と言った輩が湧くのは仕方が無い。隣でモブの参考になるとか言ってる親友を下らせ俺は1歩前に出る。

 

 もう察してるかもしれないが、ド田舎貴族の首席とは俺の事だ。姉のおかげで知名度があるカゲノー家と違って、ジュミョー家は正真正銘知名度0だ。100人中100人が知らないと答えるだろう。

 

 俺自身、目立ちたいわけでは無いので中の上位で入学しようと思ったのだが、シドが首席に媚びるモブをやりたいと言うのでパッ!と首席で入学した。

 

「ちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

「死にさらせえっ!」

 

 まず最初に突っ込んで来た奴が振るった剣を避け、頬に一発。よろけて更にがら空きになった腹に蹴りを入れ吹き飛ばす。それを二人目が目で追った隙に鞘から剣を抜き服だけを細切れにした。

 

 それを見たギャラリー達が沸き立つ。

 

 やはり強さは本物だーとか一緒のクラスになりたいーとか、概ね称賛の言葉だったがその中から嫉妬の視線を向ける者もいる。

 

「へへへ、流石だよナクス」

 

 どこからか白い布を取り出したシドが剣を磨き、襟を正し、櫛で髪をセットする。その姿は正しく強者に纏わりつく取り巻きA。

 

「何よアイツ!」

「幼馴染らしいぜ」

「その立場は私のものだろーが、消えろ!」

 

 そんな罵詈雑言を10割シド、0割を俺が背に浴びながらクラス発表が行われる大聖堂に歩き出した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 入学してから2ヶ月経った。

 

 その間、首席特権で最低クラスに移籍させて貰ったり、男子生徒の襲撃と女子生徒からの告白という2つの嵐に揉まれ、生徒会にしつこく勧誘されたりした。

 

 シドばかりに構っていたら目立ってしまうから友人も作り、先輩達とも積極的に関わりシドへの注目度を限りなく最低にした。

 

 今日も呼び出された訓練場裏から教室に戻ってきた俺は何やら騒いでいる3人組の元に向かった。

 

「おいシド、実技テストの判定どうだったか?」

 

 そういう彼の名はヒョロ・ガリ。シドも認める生粋のモブで俺が振った女の子を慰めてそのままゴールインするという算段で俺に近付いてきた友人だ。

 

「自分達は2人共B判定でした」

 

 そういう彼の名はジャガ・イモ。シドも認める生粋のモブで俺が(以下略

 

 あ、因みに俺は満点で文句なしのA判定だった。アレクシアさんの姉君と同じ記録らしい。首席入学の利点として四捨五入で1割も力を出していいからシドのように繊細な加減が必要ない。

 

「や、何の話してんの?」

 

 盛り上がっている3人に声をかけるといち早く反応したヒョロが期待を隠そうともせず、鼻息を荒くして俺に問いかけた。

 

「もももも、戻ってきたって事は告白は終わったのかッ!?」

「うん。そーいうの考えてないから断ったよ」

「来たか!この時がよぉー!!」

 

 前述した通り、コイツらは傷心中の女の子の心に付けこもうとしている。

 

 クズである。

 

「ちょっとヒョロ君、今回は僕の番ですよー!」

「バーカ、早いもん勝ちだー!」

 

 2人はそう言って教室を飛び出していった。きっと今日もまた、俺に振られた女の子からサンドバッグにされるだろう。

 

 分かっていても俺は止めない。万が一いや億が一でも彼らが幸せになる可能性があるのなら、それを見送ってやるのが友達ではないだろうか。

 

 2人分の野太い悲鳴が響く最中、そう思った。

 

「さて、何の話してたんだ?」

「実技テストで最下位だった奴が罰ゲームで王女様に告白するんだ」

「そりゃまたモブっぽいイベントだな」

「だよね」

 

 パッと見では冷静なシドだが瞳の奥にある高揚を隠せていない。なるほど、かけているんだな。このイベントに。

 

「この日の為に僕はモブの告白という物を研究したんだ。その結果、告白は完璧に成功する」

「振られるのにな」

「そこから君に振られた女子達の反応を織り交ぜ、振られた直後の反応もパーフェクトだ。そこから弾き出される結論は………」

 

 Mission complete…………。

 

 無駄にネイティブにそう言うと成し遂げたように清々しい顔からピクリとも動かなくなった。

 

 そうだよな。俺はお前がこれまでどれ程努力をして来たか知っている。この告白に失敗したらお前のモブ度は跳ね上がる。

 

 お前がNO.1。モブ・オブ・モブだ……!

 

「フフフ」

「ククク」

 

「おい、ナクスがおかしくなったぞ」

「絶対シドのせいだぜ」

「誰かアイツをつまみ出せ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 放課後、俺達4人組はソワソワしながら決戦の場に立っている。

 

 シド・カゲノーという男は2つの顔を持つ。1つは陰の実力者として裏の世界で暗躍する強者としての顔。もう1つは陰の実力者の正体は何の変哲もないモブだった!?をする為の至って平凡なモブの顔。

 

 今回はモブとしての決戦。ここでサラッと振られる事によりモブとしての立場を強固にする一大決戦。

 

 さぁ征けシド。お前の勇姿、俺が見届けてやる。

 

「ア、ア、ア……アレクシアおうにょ」

 

 遂にゴングは鳴らされた。開幕からシドが仕掛ける。初めにスタッカートを刻み滑らかにビブラートに移行。アレクシアで音程を上下させ、トドメに迫真の滑舌。

 

 その姿たるや正に変幻自在のマジシャン。だがシドの攻撃は終わらない

 

「す、好きです……!」

 

 視線は目の前の美少女ではなく地面に釘付け、膝は生まれたての子鹿の如く震える。

 

「ぼ、ぼ、僕と付き合ってくぁさぃ……?」

 

 誰もが5秒で思い付くような告白の仕方。まるで漫画家が「モブだからこんなんでいいや」と適当に描いた一コマ。

 

 完璧だ……!

 

 こんなに美しい告白は未だかつて見たことが無い。何回も経験した事がある。胸を張って美少女と呼べる女子が三日三晩考えたであろうセリフを浴び続けた俺だから言える。

 

 アイツはそこら辺に掃いて捨てるほどいるモブだ。

 

「よろしくお願いします」

 

「ん?」

 

 え?

 

「君、いまなんて?」

「ですから……よろしくお願いします」

「あ、はい」

 

 え?

 

「と、とりあえず一緒に帰ろうか」

 

 ………

 

 …………

 

 ……………

 

 

 ………………?

 

 





 練習で出した血は全部シド君の血液パックとして有効活用されています。
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