寿命を代償にするキャラになりたくて!   作:パレード

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誤字脱字報告をくださった方、ありがとうございます


アレクシア様は妬ませたい

 

「おかしいだろ!?」

 

 愛の告白を成功させたにも関わらず不服さを堂々と見せつけるシド。

 

「おかしいな」

 

 と、ヒョロが頷く。

 

「おかしいですね」

 

 ジャガも同意見のようだ。

 

「いや待て、そう言ってやるな。シドの告白は完璧だった。つまり振られないのはおかしい」

 

 かくいう俺も驚きの余り言葉の使い方がお粗末になっている。

 

 それ程までにあの告白にOKした女が世界に存在する事実が信じられないのだ。

 

 もしいるとすれば、生粋のダメ男好き………。

 

 そうでもなければ人間に許される所業じゃない。つまりアレクシア・ミドガルは禁忌を犯したのだ。

 

「断罪してやる!!」

「うわ、急に叫ぶなよ」

「まさかナクス君もアレクシア王女が好きだったとか?」

 

 ヒョロジャガのみならず食堂にいた全ての生徒から視線を向けられる。

 

「シド。必ずお前をあの女から解放してやるからな!」

「ちょっ、ナクス君。いくら本人がいないとは言え王女様をあの女呼ばわりは………ヒ!?」

「おおお、おおおおおうじょ!?」

「なんでいんの?」

「んぁ?」

 

 折角人が覚悟を決めたというのにそれを邪魔する野暮な女が、俺達が昼食を食べていた席の前に立っていた。

 

 奥を見ればメイド達が向かいの席に日替わり定食100000ゼニー超金持ちコースが手際よく並べられている。

 

 綺麗に並び終わるのを見届け、再び、何故か勝ち誇った笑みを浮かべた女に視線を戻した。

 

「今の気分はどうかしら。今年1番の成績を収めたナクス・ジュミョー君?」

 

 実は言うと、俺とこの女は以前から面識がある。その俺から言わしてもらうと、今の彼女の笑顔は今まででも1番のいい笑顔であった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 その日、アレクシア・ミドガルはとても憂鬱な気分だった。

 

 時は遡り入学して間もない頃、初の演習の時間。

 

 顧問であるゼノンに会いたくないのもあったが、1番の理由は同学年であり入学首席の少年ナクス・ジュミョー。

 

 直接その実力を見たり話した事は無いが、遠目から見た彼の特徴は天才のそれだった。

 

 アレクシアは天才が嫌い。だからナクスの印象は文句無しの最低。

 

 きっと何となく敵の動きが分かり、何となく間合いを詰め、何となく剣を振ったら何となく勝っていた。悩みとは無縁な奴なんだろう。そう決め付けていた。

 

 だが、それは間違いだと分からされた。

 

「いい剣だね」

 

 素振りの途中、事もあろうにナクスが口走った。

 

 一瞬、頭が沸騰して素が出そうになったが、すぐに取り繕いいつもの猫かぶり王女に戻す。

 

「あら、ありがとう」

「でもちょっと無駄があるよ。こんな風にやった方が効率がいい」

 

 急に素振りを再開するものだから見ないようにしていたナクスの素振りを見てしまう。だがそれは、決して天才という言葉で表される様な物じゃなかった。

 

 泥臭く、それでいて美しい一閃。

 

 そう、正しくそれは……。

 

「凡人の剣」

「最初はてんで駄目だったよ。でも絶対諦められない夢があった」

「……夢」

「俺はナルシストだからね、だから俺と同じ君の剣も大好きだよ」

 

 過去にも同じ言葉を言われた。だが今回のと決定的な違いがある。

 

「その、ごめんなさい。あなたの事、勝手に目の敵にして」

「気にしないでいいよ。俺も同じ経験をしていたから」

「同じ経験?」

「うん。努力の仕方を間違えたんだ」

 

 そこからアレクシアは練習の仕方を変えた。

 

 姉の真似事では無く、基礎をひたすら繰り返す練習。根本的に異なる天才の剣を忘れ、基礎を見直し余計な所を削っていった。

 

 理由は不明だがその日から演習の時間が少しだけ楽しみになった。

 

「好きです。付き合ってください!」

 

 ある日、演習の時間が終わりすぐに教室を出たナクスの後を興味本位でつけたらそんな場面を目撃した。

 

 ━━ムカつく。

 

 ナクスに告白した女も……。

 それを優しい目で見るナクスも……。

 何故かモヤモヤする胸も……。

 

 全てがアレクシアを不機嫌にした。

 

 アレクシアも告白なら何度も受けている。でもナクスがそれを見て自分と同じ様な感情を抱くだろうか。

 

 そこから寮に帰るまでの記憶はあやふや。ただ一つハッキリ覚えているのは、ナクスが告白を断りホッとした事だった。

 

 

 

「ぼ、ぼ、僕と付き合ってくぁさぃ……?」

 

 その日もまた、男から告白された。その男は至って平凡で物語の端役の様な人物。

 

 だがアレクシアは男の名前を知っていた。ナクスが度々話題に出すシド・カゲノーその人だ。

 

 最初は断ろうとしたが、これまでになかった考えが浮かんだ。

 

 まず婚約者候補のゼノンへの当て馬。そして親しい女性が自分より劣る幼馴染と付き合った時、もしかしたらナクスが悔しがる可能性。以上を考慮してシド・カゲノーの告白をOKした。

 

 結論を言うと翌日のナクスは酷く動揺していた。

 

 その功績と、好きになった自分の剣を褒めてくれたからシド・カゲノーとはゼノンが諦めてもしばらくは振らないでやろうと考えた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 シドがアレクシアと付き合う事になってから、俺はじゃが芋とヒョロガリの3人で昼食を食べていた。

 

 しかし今日に限ってシドは俺達が座っていた席にやってきて日替わり定食980ゼニー貧乏貴族コースを空いてる所に置いた。

 

「あれ?シド君、王女様と一緒に食べるんじゃないんですか?」

 

 裏切りポテトが言った。

 

 表面上はラブラブカップルを装っていたのにどうしたのだろうか。

 

「なんか今日はいないんだよね。毎朝寮まで迎えに来てたのに」

「振られたのか?」

「残念だけどまだだよ」

 

 ドサッと腰を下ろした伸びをして貧乏コースに手をつけていく。

 

「で、2週間も付き合ったんだ。どこまでいったんだ?」

 

 興味津々に声を抑えてヒョロが質問する。

 

 その顔は過去一でイヤらしい顔で、隣に座っている俺は手が出そうになった。

 

「別に、なんも無いよ」

 

 そんなヒョロに視線もくれずモズクを口に入れたまま答えるシド、そんな訳無いだろと問い詰めるヒョロジャガ。

 

 俺は興味が無いので食べ終わった食器を片付けに行く。その間に知らない女の子に話しかけられたりして席に戻ると、シドの姿が消えていた。

 

 アレクシアが連れていったのだろうか。

 

「あれ、シドはどこ行った?」

 

 フリーホラーゲームの『藍鬼』の登場人物のビビしみたく震えるだけの置物と化したヒョロとジャガに聞くが人の言葉は帰ってこなかった。

 

 流石に可笑しいと思った俺は向かいの席で食事をしていた子達に声を掛けた。

 

「さっきまでそこにいたフツメンの男の子、どこ行ったか知ってる?」

「シド君ならゼノン先生に連れてかれたよ。アレクシア様が行方不明になってその容疑者って……」

 

 その言葉を聞き、顎に手を当てる。

 

 これあかんやつだ。

 

 

 

 俺はそのあと、適当な理由をつけて学園を公欠にしてもらい、シドが取り調べ(拷問)を受けている留置場の屋根の上で生活していた。

 

 1番とは言わずとも、世界で5本指には入る優しさを持つ俺は親友のシドが拷問を受けていると聞きいてもたってもいられず授業サボれてラッキー。

 

 そういえば、皆さんに2つのお知らせがある。

 

 1つ、アレクシアの行方は未だに不明だということ。

 

 2つ、超久しぶりにアルファと再会したこと。

 

 すっかり記憶から抜けていたので詳しく覚えていないが多分3、4年ぶり位だと思う。

 

 本人から聞いたがシドとは定期的にあってたらしい。そしてついでに会える俺の事は無視。この話は悲しくなるからやめよう。

 

「アイツ等、どうしてくれようかしら」

 

 偶然俺と再会して下限を突破したアルファの機嫌が更に深く沈む。多分今はブツブツとシドを拷問している奴らを頭の中でぐちゃぐちゃにしている。

 

 ここだけの話、アルファはシドに惚れている。他言無用だゾ!

 

「ま、本人も楽しそうだし解放するまで気長に待つとするさ。お前はどうする?」

「私も残るわ。解放されたら監視の始末は任せて」

 

 そっか……。

 

「……………」

「……………」

 

 いや、気まずいわ。

 

 俺、彼女の地雷踏んでますからね?7つ重なってる地雷を的確に踏み抜いてますからね?

 

 なーにが、「あれ、お久じゃーん」だよ。

 

 ……………あ、また悲鳴聞こえた。

 

「チッ」

 

 そこからは悲鳴と舌打ちが交互にメロディーを奏でた。

 

 やがてシドが解放され、俺は親友に歩み寄る。アルファはどっか行った。

 

「いやー、何も知らないのに罪を被せられ拷問を受けるモブ。最初はムカついたけど中々楽しかったよ」

 

 およそさっきまで拷問を受けていた人間とは思えない能天気な声音で服を着るシド。

 

 満足してるようで何よりだ。

 

「服で隠れる場所は治して、それ以外は時間をかけて少しずつ治そう」

「そんな事より6時の列車に………」

 

 間に合わない。と言おうとすると野次馬だろうか、結構な人集りが俺達を待ち受けていた。

 

「うわぁぁぁぁん。痛かったよ!怖かったよ〜!」

「よしよしよく頑張ったな」

 

 ガッチリミッチリ俺にしがみついて離れないシドの背中を撫でる。

 

 拷問を受けた少年とそれを慰める友人にしか見えない。

 

 俺は前が見えないまま駅の方向に歩き出した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 シドが拷問(取り調べ)から解放されて2日間、その間アレクシアがいなくなっただけで至って平凡な日常が過ぎ、同学年のカナデさんから26回目の告白を受けた。

 

 しかし、それは"表"での話。日常の裏では常にこの世の闇が蠢いているのだ。

 

 なんてカッコイイ事を言ってみたものの、要はシャドウガーデンが久しぶりに帰ってくる。

 

 思えば最近は学園生活に忙しくてこういった遊びをやる機会が無かった。心の広い彼女達は俺の参加も許してくれた。

 

 隣の部屋からゴトゴト聞こえる。気になるし覗いてみるか。

 

「うわ、何これ」

 

 部屋が魔改造されていた。絵画だったり、高そうな机とか椅子だったり、ここが学生の寮部屋と言っても信じる者はいないだろう。

 

「いい所に来たね。ここに立って、腕はこんな感じに組んで窓に背を向けるように……」

 

 シドに言われるがまま俺は高そうな装飾が施された椅子の横に立った。

 

「時が満ちた……今宵は陰の世界……」

 

 その体制のまま時間が過ぎ、誰かが窓から入ってくると同時にシドが呟く。

 

 背を向けている俺は視認できないが、入ってきたのが誰かは分かる。仮にも俺が修行をつけた、言うならば弟子だ。

 

 ふ……。久し振りだなイプシ……

 

「陰の世界。月の隠れた今宵はまさに我らに相応しい世界ですね」

 

 ベータ、やはり君か、分かっていたぞ。最初から。

 

 最初から!!

 

「………あの、今回もパトナー様は参加なされるんですか」

「当然だ。久し振りの遊戯、出し惜しみはしない」

 

 背を向けたまま、カッコイイ声を意識して応える。

 

「ッ!数年間で私達は強くなりました。きっと、パトナー様の分まで働いて見せます。だから、どうかご自愛ください」

 

 ……………あれ。もしかして俺、同担拒否されてる?

 

 お前ムカつくからどっか行けって?

 

「妥協して勝てる程甘くない。相手が誰であろうと全力で叩き潰す」

「いやです!ただこのまま指をくわえて見てるなんて、私達はあなたと……」

「くどい!!」

 

 絶対参加してやるからな。

 

 強く言い過ぎたのか、その後のベータの声は上擦っていた。

 

 こうして俺の好感度がまた、下がった。

 

 





今まで2000文字位だったけどキリが悪かったので4000くらいになりました。

七陰視点とかいる?

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