ホームレスがトリニティの生徒になる話   作:ちゅーぴか

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 ヒナ美しすぎる……一生ついていくぜブルーアーカイブ


 注意! 直接の描写はありませんが、今回性行為を匂わせる描写があります! 苦手な人は注意してください!


イトファイティング

 

 時は少々さかのぼり、美食研究会がゴールドマグロを取りに来る少し前。

 

 私ちゃんこと糸巻イトは、キヴォトスの一角、とあるオフィスに来ていた。

 

「ほう……生きていたのか、糸巻イト」

 

 相変わらずの高圧的な態度にいっそ安心しながらも、私は沸き立つ胸の内を示す様に彼を睨みつける。

 

 

 

 

「お久しぶりですね、ジェネラル」

 

 

 

 

 私は、目の前の男(?)に負けないくらいの威圧感を放つ。……放ってるはず。

 

「毒を振りまく道具は不要だと言ったはずなのだがな……まさか戻ってくるとは」

 

「……」

 

 ぶっころすぞ、このくそ野郎。

 

「……もう治療は済んでいます」

 

 今すぐにでも殴り掛かりたい衝動を噛み殺す。

 

 

 

 

 15年。

 

 私がこいつら(カイザー)に道具として扱われ、搾取され続けた年数。

 

 幸か不幸か……梅毒にかかって捨てられるまで、私はブラックマーケットのとある風俗店に監禁され続けたのだ。

 

 思い浮かぶのは私に気持ちの悪い情欲を向けるクソ共の顔くらいなもの。

 

 彼らにとって私は、自身の嗜虐心や性欲を満たすための道具でしかない。

 

 私にとって、大人とはそういうものだ。

 

 

 

 

「まあ……失った時間は戻りませんけど」

 

 顔を俯かせ、悲しんでる演技をする。これから利用する気満々なので、そっちが加害者で私はかわいそうなのだと刷り込ませよう。少しでも交渉の役に立てばいい。

 

「私だって、もっと楽しい生活を送りたかっ———」

 

「御託はいい。さっさと要件を言え」

 

 ちっ、血も涙もないやつめ。

 

 仕方ない、元々こいつはこんなやつだ。私はおとなしく彼に向き直る。

 

「……取引しに来ました」

 

「取引?」

 

 ジェネラルが眉を顰めた……気がした。

 

「……私に、少しだけ兵力を貸してほしいのです」

 

「対価は?」

 

 ふむ、当然の対応だろう。私とてバカじゃないつもりだ。対価くらい考えてある。

 

「エデン条約はご存じでしょう?」

 

「……トリニティとゲヘナ間の平和条約だな。それがどうした」

 

 行くぞ必殺、イトちゃん流交渉術。こちとら何年も人の機嫌を伺いながら生きとんじゃい。

 

「はい。……ですがその本質は、エデン条約機構(ETO)の設立にあります」

 

「……」

 

「ETOの中枢は両学校のトップ……ティーパーティーや万魔殿(パンデモニウムソサエティー)が務めることになるでしょう。キヴォトスでも有数の規模を持つ二校です。その影響力は言うまでもありません」

 

「……要領を得ないな。だからどうした」

 

 イトちゃん交渉術その一、最初に相手の不安感を煽ること。

 

 不安の種は何でもいい。ただ相手に「このままではまずい」を自認させることができればいい。

 

「まあそう焦らないでください。ところでジェネラル……私の今の所属、ご存じですか?」

 

「………………さあな」

 

 

 

 

 あ! イライラしてる!! あのジェネラルさんが、イライラしてますぅ~!!!

 

 ぷーくすくす。あーおもしろ。もっとイライラしちゃえばいいんだこの鉄仮面野郎。

 

 私が生きてることすら知らなかった彼が、私の今の所属を知らないことは当たり前だ。だから私のさっきの質問は全くの時間の無駄である.

 

 でも聞いちゃう。おもしろいから。気持ちいいから。

 

「ティーパーティーの一人である、聖園ミカ。その専属の付き人です」

 

「……!」

 

 そこにイトちゃん流交渉術その二。その一で煽った不安の種の解決法を提供すること。

 

 まあ正直変わったことはないのだが、今も昔もこれがよく効くのだ。

 

「私は彼女に強く信頼されています。ETO設立後にも私に多くを語ってくれるでしょう」

 

 正直、これは嘘だ。

 

 ミカちゃんと言えど、さすがに上層部の機密を部下に漏らしたりはしない。私もミカちゃんからティーパーティーの会議の具体的な内容なんて聞いたことないし、これから彼女が起こすであろう襲撃についても終ぞ教えてくれなかったし。

 

「つまり……」

 

「ええ。私が提供できる対価は、エデン条約締結後、ETO内部の機密情報です」

 

 それに、私はもう一つ嘘を混ぜている。

 

 あの時、セイア様との対談で得た、一つの仮説。

 

 

 

 

 エデン条約は崩壊する。

 

 

 

 

 それが正しいのならば、そもそもETOなんて設立しない。つまり、私は実質ノーリスクなのだ。

 

 もしエデン条約が成立しちゃったらその時はその時である。

 

 

 

 ***

 

 

 

 私の狙いは一つ。

 

「! 何の音だ!?」

 

「爆発です! 部隊後方で瓦礫が崩落! 補給及び撤退が封じられました!」

 

 ミカちゃんの襲撃に、アリウスの関与を無くすこと。

 

「くっ、包囲を突破する! 全員、突撃!」

 

 アリウスとミカちゃんの決定的な関与が認められなければ、この襲撃はただのミカちゃんの癇癪だったということにできる。もちろんそのための証拠隠滅も欠かさない。

 

「ひとかたまりになるな! 散らばれ!」

 

 『他校を巻き込んだ政治的な襲撃の主犯』と『ティーパーティー同士のちょっと激しい喧嘩』ではその重みがまるで違う。

 

「だめです! 辺り一面に地雷があります!」

 

 仲良くしたかっただけの、騙されただけのミカちゃんが、もう二度と今まで通りの生活を送れないなんて。

 

 そんなの間違ってる。

 

『全員』

 

 もしミカちゃんが望むなら、また今までの生活が送れるように。

 

 たった一度のミスで、全てを諦めるなんてことがないように。

 

『一斉射撃』

 

 選択肢だけは残してあげたい。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ふぅ……」

 

 何とかなった。

 

 ミカちゃん向けに送られた通信を、私お手製の改造ラジオで傍受した時は本当にびっくりした。まさかアリウスがミカちゃんと結託していたとは。黒幕の候補にはあったけど、こんな兵隊を用意できる組織だと思っていなかった。

 

 暗号を解読し、通信の内容を聞いたときは「やっぱりそうか」と思った。

 

 桐藤ナギサの襲撃計画。ミカちゃんがティーパーティーのホストになるため、ナギサ様を追放する作戦だ。

 ハナコ先輩やアズサ先輩は、しっかりナギサ様を守れているだろうか? いや、問題ないかな。ハナコ先輩はハナコ先輩で何か用意しているみたいだし。

 

 正直、戦力が足りるかは不安だった。ジェネラルは「お前が使えるかを判断する」なんて言ってちょっとしか戦力を貸してくれなかったし。

 

 その点、間近で美食研究会を相手に指揮する先生を見れたのは大きかった。戦力の配置や敵の誘導なんか、先生を参考にした部分が大いにある。

 

「ぐっ、うぅ……」

 

 地面に伏すアリウス生徒の呻き声だ。

 

 ミカちゃんを騙した人たち。今回の騒ぎの、黒幕的な存在。つまり私の敵に他ならないわけで、私はこの子たちと戦わなければいけなかった、はずだ。

 

 けれど、どこか違和感があるのだ。

 

 この子たちのトリニティに対する憎しみは相当なものだ。でなければこんな統率が組めるほど訓練できるはずがないし、こんな作戦を実行に移すこともしないはず。

 

 けれど、その恨みはどこから来るのだろうか?

 

 確かに、昔のトリニティはアリウスを徹底的に弾圧した。そのせいでアリウス生徒が真っ当な暮らしを送れていないのも事実だろう。

 

 でも、それだけで民衆がここまで結託したりはしない。中には声を上げる人がいたとしても、こんな充実した装備を全員分用意できるはずがない。自治区を巻き込んだ規模がいるだろう。

 

 恐らく、いや確実に。絶対的な支配者の存在……大人が、関わっているはず。

 

 この子たちに過酷な訓練を強いるような、憎しみの思想を植え付け洗脳するような。

 

 そんな、醜い大人が。

 

「……ごめんね」

 

 もしもこの子たちが、大人に消費される道具としての人生を歩んできたのなら……それはきっと私も同じだ。

 

 だから私は、この子たちを責める気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時ふと、私に近寄る一人の兵士が目に入る。

 

「あ、あの……ぼ、ぼくのこと、おぼえてる、よね? へっ、へへっ……」

 

 そのPMC兵士はたどたどしくもそう喋った。その時、私が過去に見た記憶が鮮明に思い浮かんだ。

 

 その喋り方、覚えがある。

 

 確か、特に私を利用(・・)することが多かった……幼女趣味の、変態ごみくず野郎。

 

「あ、あの時から、その、あんまり変わってなくて……あん、あ…あんしん、した……」

 

 そう言いながら、彼は私の腕をつかむ。その力はかなり強い。

 

 そうだ、この感じ。他人への思いやりの欠片もない、自己愛に満ち溢れた、粗末で馬鹿で横暴なくそ野郎。こいつは私に暴力をふるうことも多かった。

 

「いなくなっちゃって…心配、したよ? へへっ、ぼくさ、あれから色々……本っ当……たいへんだったんだから」

 

 私の腕に掛けられる力が次第に強まる。彼は空いた腕で物陰の方を指さした。

 

「ね、いこ……? ま、また前みたいに…ぼ、ぼくと…つきあってよ……へ、へへっ……」

 

 

 

 

 前までの私なら。ブラックマーケットで、ただ項垂れて、時間が過ぎるのを待つだけの、生きているのかも分からないような私なら。

 

 あるいは、ついて行ってしまったのだろう。

 

 ……けれど今は。

 

 

 

 

「嫌です」

 

 

 

 

 今の私はもう、私でいることを諦めたりしない。

 

「私は道具じゃない。あなたたちの言いなりになんてなりません!」

 

 昔の私は、あまりに馬鹿だった。

 

 全て受け入れて、我慢して、飲み込んで、そのせいで全てを失って。

 

 けれど、今の私にはみんながいる。

 

 ハナコ先輩と出会ったあの日から、私の命はみんなのために使うって決めてる。

 

 もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。

 

 

 

 

「……は?」

 

 けれど、現実はあまりに無情だ。

 

「っ!?」

 

 瞬間、側頭部に鋭い痛みが突き刺さり、世界がぐるりと一回転する。

 

 殴られたのだと、すぐに分かった。

 

 けれど、それだけでは終わらない。

 

「うっ、けほっ……!」

 

 寝転がった私の腹部に、強烈な蹴りが突き刺さる。

 

 

 

 

「お前が! 俺に!! 口答え!!! してんじゃねぇ!!!!」

 

 

 

 

 何度も、何度も、私のお腹は繰り返し痛めつけられる。

 

「うっ、ぐっ、げほっ!」

 

「身体売るしか能のねぇゴミが!! 俺がいなけりゃ今頃生きてもねぇくせに!!」

 

 ……私が生きてるのは、おまえのおかげなんかじゃない。

 

「俺は命の恩人なのに!! 恩を仇で返しやがってこの売女が!!」

 

 くたばれ、ただの性犯罪者め。

 

「うっ、げほっ……おえぇっ」

 

 私は腹部への衝撃に耐えられず、血液混じりの嘔吐をする。

 

 

 

 

「あっ……はっ、へへっ……」

 

 その瞬間兵士の動きが止まり、顔が恍惚に歪んだ。

 

「へへっ、きたねぇ……きたねぇよぉ、イトちゃぁん……」

 

 きもい! こいつ本当に気持ち悪い!!

 

「けほっ…はぁ……はぁ……おえっ」

 

 胃の中身はもう空っぽなのにえずくのが止まらない。

 

「い、いい? いいよね?? へっ、へへっ。あっ、ぼく……ひひっ……」

 

 そう言いながら彼は、馬乗りの体勢で私のスカートに手をかけ、ホックを外し始めた。

 

「はっ、はぁ……イトちゃん……」

 

 きもい。最低。最悪。痛くて、苦しくて、辛い。

 

 ……でも、後悔はしていない。

 

 たとえ何をされても、それがみんなのためになるのなら。

 

 

 

 

 ……だけど。

 

「うぅ……」

 

 辛いものは辛い。

 

「は、ははっ……ないっ、ないてるの? へっ…そ、そんな顔されたらぼく……」

 

 

 

 

 やっぱり、どうしても大人は嫌い。

 

 

 

 

「おい、さすがに目に余るぞ」

 

 そう言ったのは今まで静観を貫いていたまわりの兵士の一人だ。私が借りた部隊の隊長を務めているらしい。

 

「こんなガキでも今は客だ。そうである以上、丁重に扱え」

 

 彼がそう言うと、私の服の中をまさぐる手がピタリと止まった。

 

「へへっ…わ、わるかったよ……分かったから、銃を下ろせよ……」

 

「ちっ……」

 

 観念した彼は私の上から降りた。

 やるならもっと早く言ってくれよ。そうすれば私がここまで蹴られる必要なんてなかったはずなのに。

 

「さあ、撤収作業に移るぞ。作戦終了後は即時撤収、だったよな、糸巻?」

 

 そう。本来の計画は、アリウス生徒の無力化からPMCの撤退までを1時間未満で済ませることだ。タイムリミットは近い。

 

 ハナコ先輩やミカちゃんが私を探しに来ることはないと思うけど、万が一にも私の行動を知られるわけにはいかないから。

 

「……っ、けほっ!」

 

 返事をしようと思ったけれどうまく言葉が出なかった。これ、だいぶ強く蹴られてるな……。

 

「……全員、行動開始!」

 

 隊長の一声で、兵士のみんなが一斉に動き始めた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「はっ、はっ……」

 

 静まり返ったトリニティ自治区。私は一人全力で走っていた。

 

「イトちゃん……どこ……!?」

 

 頭にあるのはただ一つ。ハナコちゃんが言った、イトちゃんが危ないという言葉。

 

 思えば確かに、最初から変だった。

 

 作戦開始の時間が来てもアリウスと連絡が取れなくて、それで私は焦って、ナギちゃんを先に捕らえないとって思って……。

 

 でも、こんな時にアリウスと連絡が取れなくなるなんて、確かにおかしかった。

 

 それに今日は、イトちゃんが外出するって言ってて、行き先は教えてくれなくて。

 

 そんなの、無関係なはずがない。

 

 それをハナコちゃんから聞いてからもう無我夢中で、みんなを置いて一人でここまで走ってきた。

 

 ……正直、イトちゃんは本当に弱い。非力で、貧弱で……私がちょっと力を加えれば、多分骨なんて簡単に折れてしまうだろう。

 

 そんなイトちゃんがもし、今もアリウス生徒の足止めをしているというのなら……。

 

「だめ……そんなの……」

 

 私はうわ言のようにそう呟きながら走る。

 

 その時だった。

 

 

 

 

「うぅ……お腹いたい……」

 

 

 

 

 少し遠くから、微かに声が聞こえた。

 

「……っ!」

 

 私は声の聞こえる方へ向かう。

 

 聞きなれた、細くて優しい声。

 

 

「イトちゃん……イトちゃんっ……!!」

 

 しばらく走ると、一人の人影が目に映った。

 

 大きな耳、大きなしっぽ、それに小さな身体。

 

 間違いなくイトちゃんだ。その姿にひとまず安堵する。

 

 ……けれど、それはひどく弱々しかった。イトちゃんはおぼつかない足取りで、お腹をおさえながらふらふらと歩いている。

 

 

 

 

「イトちゃん!!!」

 

 

 

 

 私は抑えられず、大きな声を出して呼びかけた。するとイトちゃんはぴくりと体を震わせて、私の方へ振り返った。

 

「えっ……あっ、ミカちゃん!? 何でここに……」

 

 振り返ったイトちゃんの顔を見て、私は歯噛みをする。

 

「それはこっちのセリフだよ……」

 

 イトちゃんはお腹をおさえて、口から血を流してて。

 

 何より、泣いた跡がある。

 

「ねぇ、イトちゃん」

 

 その痛々しい傷も、弱さを見せないイトちゃんが泣いちゃうほど悲しいことがあったのも。

 

 全部私の為で……

 

「全部私のせい、なんだよね……?」

 

「……」

 

 私がそう言うと、イトちゃんは困ったような顔をして押し黙った。

 

「……いいえ、違います」

 

 しばらくするとイトちゃんが口を開く。

 

 

 

 

「きっとこれは、大人の責任なんです。だからミカちゃんは……ううん、ミカちゃんも、トリニティのみんなも、アリウスの生徒たちだって、本当は誰も悪くないんです」

 

 そう言うイトちゃんの顔は、いつものように本当に穏やかだった。

 

「だけど、私は———」

 

 私がそこまで言いかけたとき、イトちゃんが言葉を遮って話し始めた。

 

「ねぇ、ミカちゃん」

 

「な、なに……?」

 

 

 

 

「ミカちゃんは、どうしたい?」

 

 

 

 

 どうって……?

 

「ミカちゃん。今なら、どうとでもできます」

 

 今までとは異なる、真剣な声色だ。

 

「どういう……」

 

「ミカちゃん、よく思い出してください」

 

 思い出す……?

 

「現時点で、ミカちゃんとアリウス生徒の関与をトリニティの上層部は認知していません」

 

「えっと……」

 

「つまり今のミカちゃんの罪状は、暴行未遂と器物破損だけのはず。違いますか?」

 

「……」

 

 確かに、状況だけ見ればそうかもしれない。結局ナギちゃんは捕まえられなかったわけだし、セイアちゃんも生きていたんだし。

 

 だけど、そういう話じゃない。

 

 私は、悪意を持ってナギちゃんに迫った。セイアちゃんをアリウスに傷つけさせようとした。

 

 ……イトちゃんを、殺しかけた。

 

 全部、私がバカなせいで。私の心が醜いせいで……。

 

 

 

 

「あ……」

 

 そうか。イトちゃんの言う「どうとでもできる」って……。

 

「気づきましたか?」

 

 私の、ナギちゃんや、セイアちゃんやイトちゃんに対する罪。

 

 それら全てには、アズサちゃんやハナコちゃんの証言以外に確固たる証拠がない。ティーパーティーとしての権限を使えばもみ消せる範疇だ。ナギちゃんに関しては、「ちょっとした喧嘩だった」で済むかもしれない。

 

 つまり……私の罪は、私次第でどうとでもできるということ。

 

「その上で、もう一度聞きます」

 

 そう言って、イトちゃんは私の目を真っ直ぐ貫いた。

 

 

 

 

「ミカちゃんは、どうしたい?」

 

 

 

 

 これはきっと、イトちゃんが私にくれたチャンスなんだ。

 

 イトちゃんがこんなボロボロになってまで戦ってくれたのは、このためだったんだ。

 

 こんな私のために、この子はここまで尽くしてくれたんだ。

 

 ……だけど。

 

 

 

 

「……イトちゃん、ごめん」

 

 私は彼女の目線に真っ直ぐ答える。

 

「私は……謝りたい。セイアちゃんにも、ナギちゃんにも、補習授業部のみんなにも……イトちゃんにも。私がしちゃったこと全部認めて、ちゃんと償いたい」

 

 もしかしたらそれは、イトちゃんのしたことを無駄にしちゃう行為かもしれない。

 

 けれど、罪を認めてしっかり償うこと。そんなことできるのかは分からないけど、きっとこれが正しいんだと思う。

 

「その上で、イトちゃんが好きって言ってたこのトリニティを、私ももう一回好きになれるか、試してみようと思う」

 

 私がトリニティのことを嫌いなのは、今も変わらない。

 

 でも、私が大好きなイトちゃんは、ここが好きだって言ってた。

 

「……うん。分かりました」

 

 イトちゃんはそう言って、安心したように深く笑った。

 





 そろそろタグに「リョナ」を追加した方がいい気がしてきた
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