ミカミカミカミカミカ……
毎日投稿頑張るぞ!って思ってたら全然無理でした。
セイアちゃんが、死んだ……?
……何で?どうして?
何がどうなって、え、何でそんなことに……?
どうして?バカなの?だって、私は……
あれ、私……
私、どうしてセイアちゃんを襲撃してって指示したんだっけ……?
セイアちゃんがいなくなったら、私……
未だ太陽の上らない明け方。救護騎士団の団長、蒼森ミネから告げられた「百合園セイアの死」は、ティーパーティー内を瞬く間に駆け抜けた。ティーパーティーは情報の隠蔽工作や犯人捜しで忙しく、建物全体が随分と忙しない。至る所で話し声や足音が聞こえ、酷く嫌気がさす。
「ミカ様、いらっしゃいますか?」
私は、そんな喧騒から逃れるために人気のない建物に逃げ隠れていた。薄暗くて閑散とした部屋に、ノックの音が響く。陰鬱な心を揺さぶるその音に苛立ちを覚えた。
「……何?……誰?」
扉を隔てた先に、細くて弱々しくて、消え入るような声をかけた。
「申し遅れました、糸巻イトです」
イト……?糸巻……。えっと、確か……
「浦和ハナコの……?」
糸巻イト。確か、今年の主席の一年生だったっけ。「ハナコさんとシスターフッドの思惑かもしれない」とか言って、ナギちゃんがやけに警戒してた子。そんなわけないのに、おかしいね?相変わらずおバカさんなんだから。
「……何の用?」
「お話があります。お時間よろしいでしょうか?」
……うるさい。なんなの?なんで今なの?ほっといてよ。
「……今は一人にして」
私は冷たく言い放つ。今は何も聞きたくない。誰とも話したくない。今は、一人がいい。
「ごめんなさい、できません」
しかし私の思いとは反対に、扉の向こうから、落ち込みつつも意志のこもった声が聞こえる。今はそんな声、聞きたくない。
しかしその声は言葉を続ける。真っ直ぐで、精悍で、慈愛に満ちた声で。
「ミカ様、私はあなたの味方です。何があろうとも味方です。……その、急に何言ってんだって感じですけど……」
「……は?」
意味が分からない。本当に何言ってんの?私はあなたのことなんて、興味もないんだけど?味方?面白いこと言うね。それが何を意味するか、分かってないでしょ?
「……あなた、私の何なの?私の何を知ってるの?あはは☆本当に意味わからない!」
この子の何かが癇に障ったのだろう。堰を切ったように言葉が止まらない。
「何を思い上がってるの?あなたに何ができるの?味方って、何をしてくれるの?」
「それは……でも、味方はいるってこと、知っていてほしくて……」
まだ言い続けるんだ?味方、味方って……。何のつもり?私の味方なんていない。私の味方なんていちゃいけないのに。あんなことを…取り返しのつかないことをしちゃったから。
……セイアちゃんを殺しちゃった時点で、私は許されちゃいけないの。
「……うるさいなぁ」
私は席を立ち、扉を思いきり押し開ける。
「うげっ」
扉の前に立っていたせいだろう。扉の勢いに負けたのか、イトちゃんは鼻血を流しながら廊下の端まで転がっていた。
私はそんな彼女の襟をつかみ、持ち上げながら廊下の壁に押し当てる。
「がっ…はっ———」
足が地面につかないその子は、鼻血に塗れた顔を更に苦痛で歪める。しかし私は思うままに、激情をぶちまける。
「あはは☆こんな時に、ふざけないでよ。一人にしてって言ったよね?あなたのことなんて興味もないんだけど?部外者が分かったような口きかないでよ!……わかったら早く消えてくれない?」
「かっ…ぁっ……」
「……それとも何?あなたがいれば———」
「セイアちゃんは生き返るの?」
その場に沈黙が流れる。こんなものは八つ当たりだ。私の癇癪で、我儘だ。この子は何も悪くない。分かってる。分かってるけど、止まらない。
「あなたにそれができるの?あはっ☆無理だよね?無理なんでしょ?」
もう何もわからない。私が何を言ってるのかも、私がなんで泣いてるのかも。しかし私は、頬を伝う涙をそのままに、非力で無抵抗なその子へ乱暴に捲し立てる。
「あははっ☆そうだよね!だって死んじゃったんだもん!死んじゃった人が蘇るわけないんだもん!もうセイアちゃんは……戻って……来ないんだもん……」
私、何言ってんだろ。あー、最悪。だめだな、私。セイアちゃんを殺して、何の罪もない子に八つ当たりして、みっともなく泣いて。私、なに泣いてんだろ。慈悲を請うつもりなのかな?あはは、私にそんな権利無いのにね。
「ミカ……様……」
しかしその手は、白くて小さくて細くて———まるでセイアちゃんみたいなその手は、慈愛に満ちた聖女のように私の頬へと優しく伸びる。
「私は……味方……です、から……」
私はその手を振り払うように、イトちゃんの襟元から手を離した。
「ひゅっ……けほっ……はぁっ……はぁっ……」
「……ねぇ、なんで?」
地面に座り込んだイトちゃんは涙目になりながら、苦しそうに肩で息をしていた。しかし私は言葉を続ける。
「なんで、そんなことを言うの……?なんでまだそんなことが言えるの……?私、今あなたを傷つけたんだよ……?」
イトちゃんがふらふらになりながらも、壁伝いに立ち上がる。しかし私の言葉は止まらない。
「それに、私がどんな人か知ってるの?セイアちゃんによく言われたの。バカで、考え無しで、能天気な愚か者だって。あはは……ひどいよね、そんなに言わなくてもよくない?この前だって、セイアちゃん私のことすごい目で睨んできて———」
……何言ってんだろ私。
イトちゃんの腕が伸び、顔が近づく。
「イトちゃん、もう私に関わらない方がいいよ?私に味方することの意味わかってるの?それってつまり……トリニティを———」
———裏切るってことなんだけど?
……しかし言葉は続かなかった。イトちゃんが私を抱きしめた。イトちゃんの腕に力がこもる。
「……ミカ様。私は、ここにきて短いけど……ハナコさんとかシスターフッドとか……みんなが、トリニティが、大好きです。だから、それは、その……ごめんなさい」
……なんだ、やっぱりそうなんじゃん。
「だけど!!」
あんなにもおとなしかったイトちゃんが一際大きな声を張り上げる。その音に私の肩がはねた。
「……セイア様と、約束しました」
その言葉に、その名前に目を見開く。目を背けずにはいられない、これからも一生背負っていくことになる、私の罪。
「セイアちゃんと……?」
「……はい。ミカ様を守ってくれって」
「……なにそれ」
なにそれ?おかしいよ。セイアちゃん、未来が見えていたんでしょ?あはは!意味わかんない!自分を殺そうとしてる相手に、まだそんなこと思ってたの?私に散々甘いって言ってたのに、セイアちゃんも大概だね?
……………………。
「………ごめん」
それは、声になったのかもわからない声。
「セイアちゃん……ごめんね……。私のせいで……私がバカなせいで……セイアちゃん……しんじゃった……。ごめん……本当にごめんね……」
未だに整理のつかない、感情の吐露。私の涙がイトちゃんの制服を濡らす。この子が聞いてるとか、そんなの頭にもなかった。
最初はただ、仲良くなりたいだけだった。トリニティと長年疎遠だった「アリウス分校」。もとは同じトリニティの仲間なんだから、仲良くすればいいじゃん。……それくらいのきっかけだった。
……そのはずだったのに。
「……ミカ様」
イトちゃんの腕に、ぐっと力がこもる。
「……私、トリニティに来て間もないですし、力も強くありません。だから……ミカ様を守ることは、難しいかもしれません。……でも、寄り添うことはできます」
イトちゃんの顔が離れ、真っ直ぐに目線が合う。
「辛かったり、苦しかったり、逃げたくなったりするかもしれません。一人でいるのは、すっごく辛いですから……。でも、そんなときは私に話して、私に寄りかかって……私を、頼ってください」
イトちゃんは、「頼りないかもしれませんが……」と付け足して、くしゃりと笑った。
……その優しさが、とても温かい。
「うぅっ……イトちゃんっ…鼻…ごめんね……。首、絞めてっ……ごめんね……。いっぱい、ひどいこといって…ごめんね……!」
私は嗚咽まじりに謝罪をこぼした。イトちゃんの顔が再び近づく。
「いいんですよ。私は、味方ですから」
***
……そうか、イト。
君は、寄り添うことを選んだんだね。
どこまでも甘く、幸せな……しかし虚しい、愚かな理想論だ。
それが、君の言う「楽園」かい?
……確かに、君はミカの心の拠り所になれたかもしれない。
しかしそれは、同時に聖園ミカを脆くする。
……やはり、「楽園」なんて存在しないんだよ、イト。
なんかシリアスおおい……これじゃタイトル詐欺だよ……
もっとギャグっぽいのも書きたい……