ホームレスがトリニティの生徒になる話   作:ちゅーぴか

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 本当は「トリカス①」からこの回までを一話にするつもりでした

 お話作るのって難しいね……


ミカダンシング

 

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!

 

 イトちゃんが、死んじゃった。イトちゃんが死んじゃったっ!

 

 私のせいで……私が、またっ、殺しちゃった!!!

 

 また……私が……!

 

 私が……いるから!

 

 みんな……死んじゃった!!

 

 

 

 

 私が……生きてるせいで……!!!

 

 

 

 

「うっ……おぇぇえええ……」

 

 薄暗い屋敷の一室。部屋に備え付けられた便座に向かい、私は嘔吐した。今朝とは異なり、部屋が静まり返っているせいで不快な音がやけに響く。

 

 頭を砕く嫌な感触。血の臭い。苦しそうなイトちゃんの姿や声。その全てが鮮明に残り続けて離れない。

 

 

 

 

 ……何でこんなことになっちゃったんだろう。

 

 私はただ、一緒にいてほしかっただけなのに。

 

 一緒にいて、私の心の穴を埋めてほしくて……。

 

 

 

 

 ……そうか。

 

 私、赦された気になってたんだ。

 

 イトちゃんがいてくれるから、私は悪くないんだって勘違いしてた。

 

 自分の弱さを押し付けて、勝手に寄りかかって。

 

 それを受け入れてくれるイトちゃんに甘えて、私のわがままに巻き込んで。

 

 

 

 

 イトちゃんの生活を奪ったのも、イトちゃんが嫌がらせを受けたのも、イトちゃんを殺しちゃったのも……セイアちゃんが死んじゃったのも……!

 

 

 

 

 ぜんぶ……ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ!!!

 

 

 

 

「私のせい……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった。

 

 

 

 

「ミカちゃんのせいじゃないよ」

 

 

 

 

 トイレのドアの向こうから声が聞こえた。聞こえるはずのない声。私が殺しちゃったはずの……

 

 

 

 

「イト……ちゃん……?」

 

「はい、イトちゃんです」

 

 便座を見つめたままの私に、イトちゃんの明るい声がかかる。

 

「いき、てる……?」

 

「い、生きてますよ!?」

 

 イトちゃんが大きな声を出す。

 

 ちゃんと……生きてる……。

 

 

 

 

 イトちゃん……死んでなかった。私、殺してなかったんだ!

 

「よかった……よかったぁ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そっか! 今までのは本当は夢で、イトちゃんを殴ったことは全部嘘で、明日は一緒にお昼ごはんが食べられるんだ!

 

 なーんだ! 私、バカみたい! ちょっと嫌な夢見ただけでこんなになって!

 

「ミカちゃん、扉を開けてくれますか?」

 

 ほら、イトちゃんの声はこんなに元気なんだもん!

 

「う、うん! 今開けるね!」

 

 

 

 

 明日は何食べよう? そういえば、最近できたスイーツ店が評判なんだよ? イトちゃんと一緒に行きたいなって思ってたの!

 

 だって、イトちゃんは生きてるんだもんね! 私、イトちゃんを殴ったりしてないもんね! 明日も、これからもずっと、一緒にいてくれるんだもんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……?」

 

 

 

 

 その、頭の包帯は……? 包帯に滲むその赤色は……? イトちゃんの顔、なんでそんなに腫れてるの……?

 

 

 

 

「あ……あぁぁ……」

 

 足に力が入らない。目の前の現実を見たくない。また吐き気がする。

 

 

 

 

 ……だめ。うけいれ、ないと……。うけいれて、しっかりあやまって……

 

 それで、イトちゃんの前から……消えないと……。

 

 

 

 

「ごめんね……」

 

 私はイトちゃんの足に擦り寄る。

 

「私の……せいなの……。私が、イトちゃんを……こんなにしちゃったの」

 

 イトちゃんはしゃがみ込んで、私と視線を合わせた。

 

 私は今の感情をイトちゃんにぶつける。

 

 

 

 

「……だから、もうイトちゃんには会えないの……。会っちゃいけないの。だって私は……ただの人殺し———」

 

 

 

 

「ミカちゃん」

 

 

 

 

 だけど、イトちゃんはその先を言わせてくれない。

 

 いつもに増して穏やかな顔のイトちゃんが、私の手に何かを乗せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かみかざり?」

 

「はい……さっき直したんです。ちょっと不格好になっちゃいましたけど」

 

 そう言ってイトちゃんはくしゃりと笑う。

 

 

 

 

「これ……結んでくれますか? ……いつもみたいに」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いいの?」

 

 赦されても……いいの……?

 

 

 

 

「はい、お願いします」

 

 イトちゃんは笑顔のままだ。

 

「わ、分かっ、た……」

 

 私はイトちゃんの髪を梳く。

 

 

 

 

「ミカちゃん」

 

 イトちゃんは私に体重を預けながら口を開いた。

 

「な……なに……?」

 

 

 

 

「私、ミカちゃんに、お礼を言いたくて」

 

「え……?」

 

 なにを……

 

「ミカちゃんが一緒にいてくれて、私のために怒ってくれて……私、すごい嬉しかったんです」

 

 

 

 

 ……なんで?

 

 

 

 

「だから……ありがとう」

 

 

 

 

 なんで、そんなに優しくするの……?

 

 

 

 

「赦して……くれるの……?」

 

「ゆるすも何も……はじめから怒ってなんかないですよ?」

 

 イトちゃんはまた笑った。

 

「ミカちゃんは何も悪くないです」

 

 

 

 

 私は……何も悪くない……?

 

 

 

 

「だから、責任を感じる必要なんてないんです」

 

 

 

 

 責任を……感じなくていい……?

 

 

 

 

「だって悪いのは……」

 

 

 

 

 悪いのは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……は?

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、ミカちゃんがくれた髪飾りを守れませんでした」

 

 

 

 

 ……違う。

 

 

 

 

「勝手なことして、ミカちゃんに私を殴らせてしまいました」

 

 

 

 

 ……全然違う。

 

 

 

 

「ミカちゃんを、いっぱい傷つけました」

 

 

 

 

 ……ふざけないで。

 

 

 

 

「だから、謝るのは私の方なんです」

 

 

 

 

 本当に悪いのは、イトちゃんでも私でもなくて———

 

 

 

 

「ごめんなさい、ミカちゃん」

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 私の、わずかに残った理性が警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

 

 だめだ。

 

 もしこの先を言葉にしたら……。

 

 ……私はきっと、止まれなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お団子、できたよ」

 

 きっと、私の声はひどく不愛想だったと思う。それほどまでに、私は憤りを感じていた。

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

 けれど、イトちゃんの顔には今までで一番いい笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

「……そうだ! ミカちゃん、お腹すいてますか?」

 

 イトちゃんが何かを思い出したようにパンと手を叩いた。

 

「私、ケーキ作ってきたんです!」

 

「ケーキ……?」

 

「はい。今日のお昼ご飯、一緒に食べられなくて……。その埋め合わせに」

 

 私は昼のモモトークを思い出す。そう言えば、そんなこともあったな……。

 

「明日にしますか……?」

 

 私は首を振る。そして、今できる精一杯の笑顔を浮かべた。

 

「ううん、今食べたい!」

 

 私の言葉に、イトちゃんの顔がパッと晴れる。

 

「じゃあ、持ってきますね!」

 

 そう言って、イトちゃんは隣の部屋に消えていった。

 

 

 

 

 ……今は、この笑顔を見られるだけでいい。

 

 この笑顔を守れれば、それで……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくするとイトちゃんが戻ってきた。手にはケーキが乗ったお皿を持っている。

 

「お待たせしました!」

 

「わぁー! おいしそう!」

 

 今日の朝食やお昼の弁当を見たときにも思ったけど、イトちゃんは料理が上手い。味はもちろんだけど飾りつけが本当に丁寧で、まるで高級レストランの料理みたい。

 

 イトちゃんが私のためを思って、精一杯作ってくれる料理。そんなのが、明日も明後日もこれからもずっと食べられるのかな。

 

 寝るときにもイトちゃんがいて、朝起きてもイトちゃんがいて……そんな生活が、ずっと続けられるのかな。

 

 ……もしそうなら、どれだけ幸せだろう。

 

 私がそんな幻想に浸っていた、その時だった。

 

「ショートケーキとチョコケーキがあるんですけど、どっちがいいとか———」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イトちゃん?」

 

 

 

 

 最初に聞こえたのは、食器が落ちる音。次いで、重たいものが倒れる音。

 

 

 

 

 ……そこには、力なく倒れるイトちゃんがいた。

 

 

 

 

「あ、あぇ……」

 

 ヘイローは———ある。うつ伏せに倒れたイトちゃんが、震えた手で上半身を起こした。

 

 

 

 

「あれ、足に、力が……うまく、入らな……っ」

 

 

 

 

 地面に落ちたケーキに向かって顔面から倒れたせいで、イトちゃんの顔はケーキの残骸に塗れていた。その顔が見る見るうちに曇っていく。

 

 

 

 

 その姿が、あの時の———弁当に塗れたイトちゃんの姿に重なる。

 

 

 

 

 ……それは、最後に残った私の理性を壊すのに十分だった。

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい……! ケーキ、もう一回作り直して———」

 

「ううん、大丈夫☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「直接食べるから☆」

 

 イトちゃんの首から顔にかけて舌を這わせる。

 

「えっ……ひゃあ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……私の顔、きたないですよ……?」

 

「イトちゃんに汚いとこなんてないよ?」

 

 

 

 

 イトちゃんも私も、何も悪くない。

 

 責任を感じなくていい。

 

 だって悪いのは……

 

 

 

 

 ……あいつら(トリカス)なんだから。

 

 

 

 

「あはははは☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大っ嫌い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲヘナも、アリウスも……。

 

 

 

 

 トリニティも……!!

 

 

 

 

 ぜんぶ、ぜんぶぜーーーーんぶ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 大っ嫌い!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 アハハハハハハハハ☆

 





 イトちゃん、ただ曇らせに来ただけで草



 ちなみにミカに髪の毛をセットしてもらっている間、イトちゃんには激痛が走っています。なんせ殴られた場所をいじられるわけですからね。

 あとイトちゃんの足が動かないのは一時的な物です。絶対安静って言われたのに無理して動いたから倒れちゃいました。



 倒れたままイトちゃんが死んじゃうIFも書いてみたいですがおさまりがつかなくなっちゃいそうで難しいです。
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