ハムちゃんと行く実力至上主義の教室へようこそ。   作:マチルダ鈴木

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凄惨な過去を持つ少女の青春ストーリーです。
この学校で生活していく中で、自分の過去と向き合っていく。
そして彼女がどう変わるのか。
是非お楽しみください!


入学式

 

人は平等か否か。

これは永遠のテーマだ。

人の生まれ持った才能や素質、能力には個人差がある。

ですが、その生まれ持った才能や素質にどれだけの人が気づき、伸ばせているか。

これは結構難しい問題だ。

自分や他人の才能を見出すことができる人もいれば、できない人もいる。

そして、自分には才能がないから……と諦める人もいるし、自分の得意な分野で他人と差をつけることを考える人もいるのだ。

法律の名の元にルールは誰に対しても平等だが、ソだった環境や生い立ちは決して平等では無い。

 

 

世の中の人間が才能や素質、高い能力を持って生まれた人と平々凡々な人の二つに分かれた時、私は後者に分類される。

得意な事も、魅力も、熱中出来るものも無い。

どこにでもいる普通の人間だ。

普通と言ってしまえば、その定義まで考える必要がある。

普通とは、ごくありふれた普通の事。

物事の平均であり、可もなく不可もなくという評価を得る物の事だと定義している。

 

 

私は『普通でありたい』と思っている。

普通であることが一番難しく、普通であり続けることが一番難しいのだ。

普通であり続けることが出来たなら、それが一番幸せだ。

『人は平等では無い』

この言葉は半分正解で半分不正解だ。

どれだけ努力しても、どれだけ能力が高くても、才能があっても、生まれ持った物が他人と平等でない限りそれは不平等と言うのではないだろうか。

世の中の環境を平等にすることなんて出来ないし、人の生まれ持っての能力を変えることも出来ない。

不平等は当然。

だから、私は誰かに疎まれたり誰かに蔑まれたりする事の無い平均的な"普通"に固執しているのだ。

 

 

異常者は内に秘めたヘイトを他人に向けた時、道を踏みはずす。

私はそんな真似だけはしたくなかった。

だからこそ、平凡を求め、普通を愛しているのだ。

あの日死んだ少女が伸ばした手を取らず、走り続けた事は間違いではない。

弱肉強食の世界において、生存は何よりも優先される。

だから私は正しい行動を取ったのだ。

たとえその少女が犠牲になったとしても…。

 

 

 

 

 

私は高校生になった。

私は幼い頃から、大学付属の幼稚園から女子中等部卒業までエスカレーター式に上がっていったが、高校に上がる人数の足切りに合い、外部受験を行う事になってしまった。

というのは建前で、実際私の周囲をうろちょろする不審者が現れた。

実害は無いが、私が幼い頃巻き込まれた誘拐事件の犯人は未だに捕まって居ないため、警備の整った学校に進学した方が良いと両親から説得をされた事が理由だ。

そこで勧められたのが、国立の高校だ。

卒業生の多くが大学に進学し、難関大の合格者数も多い為、この学校を受験した。

 

 

そして今日が初めての登校日だ。

バスを下りると、校舎が見えてきた。

共学なんて、幼稚園ぶりだ。

周りもいつも女子生徒に囲まれており、男性と話す事はほぼ無かった。

少し緊張するが楽しみでもある。

相棒の大福さんは引越し業者さんが夕方に寮へ送ってくれる事になっているし、私は一人じゃない。

 

 

ちなみに大福さんはジャンガリアンハムスターだ。

色はパールホワイトで、初めは真っ白だったが時間が経つにつれて灰色になってきた。

マシュマロと名付けるか迷ったが、たまたま目大福が目に入った事から、大福という名前を付けた。

 

 

下駄箱に着くと組み分け表が貼られており、人だかりが出来ていた。

 

 

「私Aクラスだったよ!」

 

 

「私はBクラスだー!」

 

 

知り合い同士の生徒は楽しそうに話しているが、ほとんどの生徒は初対面の他人のようだ。

私の学校からここに入学した人は居ないが、私が通っていた予備校からは一人この学校に入学している生徒がおり、近い内に挨拶をしておこう。

 

 

組み分け表を確認するとこの学校はAからDの4クラスに組み分けされるようだ。

私の名前である『藍宝 茉莉花 』はAクラスの生徒の名が書かれた紙に載っていた。

私の名の二つ下に予備校の友人である『葛城 康平』の名も載っており、同じクラスに組み分けられたようだ。

教室に向かうと、私の席の二つ後ろの席に友人が座っていた。

 

 

「おはようございます、葛城君。お久しぶりですね。」

 

 

「久しいな、藍宝。高校で同じクラスになるとは驚いた。宜しく頼む。」

 

 

「こちらこそ、宜しくお願いします。」

 

 

彼との挨拶を終え、席に着き荷物を整理していると、担任と思われる男性が教室内に入ってきた。

 

 

「全員揃っているな。」

 

 

そう言い黒板に大きく名前を書く。

 

 

「皆、入学おめでとう。俺は真嶋智也だ。国語科の教師をしている。ここの学校でクラス替えが無い為、3年間をこのメンバーで過ごす事になる。宜しく頼む。」

 

 

クラス替えが無いという事は、人間関係の構築を失敗すれば学校生活は地獄と化す。

それだけは避けなければいけない。

勿論、一般的な学校であればいじめ等生徒間のトラブルが起きた場合、クラス移動等の措置を取ってくれる可能性はある。

だが世の中には、いじめ以下の空気のような状態で過ごす人間もいる。

その場合、クラス移動が認められる事は無い。

よって、友人を作る事は学校生活を送る上での最低限のノルマだ。

 

 

「では今から、学校の施設に関する説明をする。君達は3年間この学校の敷地内で生活をして貰うが、この学校には娯楽施設や日用品、衣服を扱う店がある。構内の敷地は一つの町に相当し、君達はそれらの施設をポイントと呼ばれる通過を用いて利用する事が出来る。今から配布する学生証を見せたり、機械にかざす事で支払いが完了する。」

 

 

最近では電子通貨や携帯アプリを使った支払いも増えて来ており、この学校の支払いシステムも影響を受けているのだろう。

 

 

そして私達は入学時に10万ポイントを支給され、これはこの学校に入学した私達に対する正当な評価の表れだそうだ。ぼポイントは毎月1日に支給され、この学校では何でもポイントで買う事が出来るらしい。

授業の出席を買う事が出来るのであれば、授業を合法的にサボる事も出来るかもしれない。

後で確認して見よう。

 

 

その後、入学式に関する説明を受けてホームルームは終了した。

1時間後に入学式が行われるが、それまでの間は自由に過ごして良いそうだ。

入学初日という事もあり、葛城の呼び掛けによって自己紹介を行う事になった。

自己紹介は出席番号順に行う為、私がトップバッターになってしまった。

緊張しながらも私は口を開く。

 

 

「私の名前は藍宝茉莉花です。中学は名桜大学附属の女子中等部に通っていました。中学時代は映画研究会に所属していて、映画製作や学校のPR動画を作っていました。趣味は読書と映画鑑賞です。宜しくお願いします。」

 

 

私は中学時代、高等部の生徒と共に映画製作を行っていた。

私達の代には元天才子役と呼ばれていた少女がおり、彼女を主演としたドラマや映画の制作を行っていた。

私が出演する事は数度しか無かったが、脚本制作や舞台演出等裏方の仕事を頑張っていた。

昨年の映像コンクールでは、入賞は出来なかったが、佳作に入選する事が出来た。

最後に友人達との思い出作りが出来て良かった。

 

 

チラホラと拍手が上がり、次の生徒の紹介へと移る。

石田優介が自己紹介を終えた後、提案者の葛城が話し始めた。

 

 

「俺は葛城康平だ。藍宝とは中学時代に通っていた予備校が同じで、親しくしていた。中学時代は生徒会に所属しており、この学校でも生徒会に所属し、皆がより良い学校生活を送れるよう尽力したいと考えている。それから、先程真嶋先生が仰っていた事について、俺の考えを共有しておきたい。」

 

 

真嶋の話というと、ポイントについてだろうか。

 

 

「真嶋先生は来月支給されるポイントが10万ポイントは仰っておらず、今日支給された10万ポイントは俺達に対する評価だと仰っていた。評価がポイントに反映されるのであれば、来月支給されるポイント額は変動する可能性がある。そしてその評価は集団なのか、個人に対してなのかは不明だ。だからこそ、気を引き締めこの学校の生徒にふさわしい行動を取るべきだと考えている。勿論、強制したい訳では無いが、心の片隅に留めておいてくれれば嬉しい。」

 

 

なるほど。

授業態度のみならず、生活態度もも模範的な行動を取るべきだと言いたいようだ。

強制はせず、あくまで生徒達に任せるというスタンスは反感を買わずに、生徒達の感心を得る事が出来る。

流石は生徒会に所属していただけある。

 

 

そんな葛城の発言に1人の少女が関心したような表情を見せる。

 

 

「私も葛城君の意見には賛成致します。私は坂柳有栖と申します。見ての通り、この杖を使って移動をする為、皆さんに御迷惑をかけてしまう事もあるかと思います。先に謝罪をさせてください。…そして、毎月10万ポイントを全校生に支給した場合、年間約6億円の税金が使われる事になります。1ポイント1円の価値を持つという話ですし、円をポイントしきに変換して支給されていると考えるのが自然ですが、生徒のお小遣いにこれほどまでの額を使うのは不自然です。ですから、ポイントは計画的に使用した方が良いでしょうね。」

 

 

坂柳という生徒は、一挙一動で注目を集めている。

カリスマ性があるというのだろうか。

彼女の発言に対し、葛城は感心したように口を開く。

 

 

「坂柳といったか……君はこの学校をよく理解しているようだな。」

 

 

「ありがとう御座います葛城君。貴方もも素晴らしい着眼点をお持ちのようですし、これからが楽しみですね。」

 

 

二人の間には見えない火花が散っているように見える。

坂柳と呼ばれた少女は、その整った容姿と透き通るような肌から同じ女性である私でも見惚れてしまうような美しい容姿をしていた。

彼女と葛城が見つめ合う姿は、まるで映画や漫画に出てくるライバル同士のようだった。

 

 

その後入学式が終わり担任に授業や欠席を買う事が出来るか質問したら、1授業1000ポイントを買う事が出来るらしい。

私はその情報を得て、ポイントを得る方法を考えながら帰路に着いた。

 

 

寮に到着し、荷物の整理をしていると、大福さんがペット引越し業者に連れられて寮にやって来た。

急いで大福さんを清掃後のゲージに移し、おやつのチーズをプレゼントする。

小さな手で四角いチーズを大事そうに掴んでもぐもぐと頬張る姿は天使そのものだ。

 

 

「大福さん、美味しそうに食べるね。今度はハムスター用の苺味のウエハースでも買おうかな。」

 

 

チーズにメロメロな大福さんを微笑ましく思いながら、夕飯の買い出しに行く事にした。

私服に着替え、学校から支給された端末を持って外に出るとそこには予想外の人物が立っていた。

 

 

「…坂柳有栖さん、だよね?」

 

 

「ええ、さっきぶりですね藍宝茉莉花さん。」

 

 

葛城と対峙していた賢そうな少女が私に微笑んだ。

 

 

「坂柳さんもお買い物かな?」

 

 

「ええ。家具や着替えは揃っていますが、食料や調理器具が無いので、買いに行こうと思いまして。」

 

 

そういえば、食器やフライパン、箸やスプーンも持っていない。

食料だけ買っても何も出来ない。

私も必要な日用品を揃える必要があるな。

 

 

「そうなんだね。私も色々買いたいなって思って、スーパーに行こうと思ってたんだ。良かったら一緒に行かない?」

 

 

「ええ、構いませんよ。この通り、私は杖を持っているので移動速度が遅いのです。少し時間がかかってしまうかと思いますが、宜しいですか?」

 

 

「大丈夫だよ。気にしないで!私もそんなに足が速い方では無いし、ゆっくり行こう。」

 

 

そう言い、彼女とのんびり歩きながらスーパーに向かった。

スーパーに着くと、まず食器や調理器具が置かれているコーナーに向かった。

そこで私は鍋とフライパン、お茶碗とおかず用の皿を何枚か手に取る。

そして安いフォークとスプーンと箸のセットを選んだ。

坂柳も私同様、調理器具や食器を選んでいる。

 

 

「うわあ、かなり安いね。」

 

 

「…そうなのですか?」

 

 

「うん。この鍋もフライパンも750ポイント…1000円以内だし、このフォークとスプーンと箸のセットも150ポイント。お皿のセットも安いし、相当学生に優しいお店だよ。」

 

 

「そうなのですか。あまりこういうお店には来ないものですから、相場がイマイチ分かりませんね。このような物は使用人や家政婦の方が補充して下さいますから。」

 

 

なるほど、坂柳はどこぞの家のお嬢様のようだ。

私も幼稚園から私立の附属に通っており、家に家政婦さんが通っていたり、使用人が働いているという友人は数人いる。

彼女達は一般市民の金銭感覚とはズレており、お小遣いの額も1桁多い。

私は初等部時代は3000円のお小遣いを貰っていたが、かなり裕福な家の生徒は5桁のお小遣いを貰っている子が多かった。

多分坂柳有栖はかなり裕福な家の子なのだろう。

 

 

「あれ、これなんだろう?」

 

 

店内を歩いていると、無料コーナーと書かれたスペースを見つけた。

そこには日用品から食品、文房具まで貰える数は制限されているが、無料で持ち帰れるようだ。

 

 

「無料商品ですか…ポイントを使い切ってしまった方への救済措置という事でしょうね。」

 

 

「って事は、やっぱりポイント額は変動するって思った方が良さそうだね。」

 

 

 

無料商品の中にはフライパンや鍋、食器類も置かれていたので、持っていた商品を戻して無料商品をかごに入れた。

他にもトイレットペーパーやティッシュペーパー等の日用品、食材やレトルト食品を幾つか入れる。

その後夕食に使う食材を選び会計を済ませてスーパーを出た。

 

 

「坂柳さんは料理は得意なの?」

 

 

「いえ、家庭科の授業で習った程度しか出来ません。レシピを見ながらであれば、ある程度は作れるかと思いますが。」

 

 

「そうなんだね。私は家庭科の授業でも実技試験以外、食器洗いを担当してたから、料理はあまり得意じゃないんだ。」

 

 

「ではこの機会に料理を練習してみるのも良いかもしれませんね。」

 

 

「そうだね。今日は作り置きもできる簡単なカレーを作ってみようかな。お昼は学食も購買もあるし、作らなくても大丈夫そうだけど、少し健康が心配だな。」

 

 

「毎日お弁当を作るのは難しいかもしれませんが、たまになら手作り弁当を持参するの良いかもしれませんね。」

 

 

明日の放課後、お弁当箱を探しに出かけてみよう。

この敷地内には様々な施設があり、可愛らしい雑貨屋さんも幾つか入っていると聞いた。

明日の放課後がとても楽しみだ。





藍宝 茉莉花

所属    1年Aクラス

学籍番号  S01T04651

誕生日   7月1日

【学力】   A
【知力】   B+
【判断能力】 B
【身体能力】 C
【協調性】  D+


【面接官からのコメント】
中学時代は委員会活動や部活動を積極的に取り組んでおり、友人も多い。
校内成績は平均的だが、全国模試では上位に位置しており優秀な成績を収めている。
ただ、小中共に欠席や遅刻、早退の数が多い為、高校では改善を求めたい。

〖追記1〗軽井沢誘拐事件の被害者であり、唯一の生還者。事件は未解決に終わり、彼女も精神的なダメージを負い、記憶を一部失っている。精神面でのケアが必要である。

〖追記2〗寮内でのペット飼育を許可している。


【担任からの一言】
人当たりが良く、誰に対しても親切な生徒です。
真面目で勤勉ですが、出席日数を買えるかと相談されており、この学校での生活も欠席日数が増えそうです。
精神的な問題を抱えている為、慎重に対応していきたいと思います。
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