ハムちゃんと行く実力至上主義の教室へようこそ。   作:マチルダ鈴木

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どんどん原作からかけ離れていきますが、原作沿いは変わりません。


未来を見据えて

試験について説明された日から約2週間が経過した頃、坂柳が一之瀬や龍園と交渉を行い、過去問の取引を行った。

そして今後の動きに関する話し合いが行われる事になった。

参加者は坂柳、葛城、神室、町田、私の5人だ。

他クラスの情報を集める為に橋本や鬼頭に探らせており、それらの情報を今日開示するそうだ。

 

 

「話し合いを始めよう。だがその前に確認したい事がある。坂柳、取引はどうなったんだ?」

 

 

「過去問と生徒会への推薦状を5万プライベートポイントでお渡ししました。」

 

 

「…そうか。」

 

 

推薦状とは生徒会役員が生徒会に相応しいと認めた人物を推薦する為に書くものだ。

確実に生徒会に入れる訳では無いが、一般面接と違って生徒会に入りやすいと言われている。

今回推薦状を書いたのは葛城と堀北会長であり、葛城が一之瀬に関する良い噂を堀北に流し、一之瀬への印象を操作した。

そして彼女の善性を評価され、彼女を堀北が直々に育てる事を提案したのだ。

 

 

「南雲副会長を牽制するには一之瀬さんは調度良い駒です。堀北会長もそれを理解しているからこそ、彼女に推薦状を書いて下さったのでしょうね。」

 

 

南雲は2年生を支配下に入れており、女性を私物化し、人を平気で見下す屑だ。

堀北会長は一之瀬がBクラスであり、南雲の下克上に憧れ、彼の手中に収まる事を懸念して生徒会入りを認めていなかったのだろう。

そして葛城もおそらく近い理由で生徒会入りを拒んでいたと推測できる。

ならば一之瀬も葛城も堀北が指導し、清く正しい生徒会役員として指導すれば良い。

 

 

「今回の事でBクラスはAに恩を感じているはずだ。今後の学校生活で必ず借りを返そうとするはずだ。」

 

 

「町田君の言う通り、それが狙いです。そしてもう一つの龍園君との取引ですが、こちらは5万プライベートポイントで行いました。そして、私達Aクラスは一年間の間、特別な理由がない限りCクラスの勉学が苦手な生徒に勉強を教える事になりました。」

 

 

この学校のクラス分けが優秀順であれば、Cクラスの生徒は優秀では無いという事だ。

ならば優秀な人間に教えを乞えば良い。

 

 

「そうか。それくらいなら問題ないな。」

 

 

しかしプライドの高いAクラスの生徒がCクラスに勉強を進んで教えたいと思えるのだろうか。

他クラスに塩を送る行為を許せる人間はそう多くはない。

私達は上杉謙信では無いのだ。

私は疑問に思い坂柳に尋ねた。

 

 

「ねぇ、誰が教師役で派遣されるの?」

 

 

「今回の試験の勉強会については、私の派閥の男子生徒の皆さんにお願いする予定です。」

 

 

なるほど。

自派閥の生徒であれば好きに動かす事も出来る。

不満対策もバッチリなあたり、流石だと言える。

 

 

「ふうん?橋本はそれなりに勉強は出来るみたいだけど、鬼頭は教師役にしていいの?アイツほとんど話さないじゃない。」

 

 

確かに神室の言う事は最もだ。

鬼頭は誰かに教えるより、密偵の方が向いている。

コミュニケーション能力が高いとは言えない生徒だ。

 

 

「そこについては、私も考えています。鬼頭君には普段通り動いて頂き、橋本君を含めたコミュニケーション能力の高い方々にお願いしてありますよ。」

 

 

「ふうん、そう。」

 

 

坂柳の返答に満足したのか、神室はまた黙り始めた。

 

 

「そういえば、Cクラスの龍園君ってどんな人なの?私名前は聞いた事があるんだけど、詳しくは知らなくて。」

 

 

「龍園を一言で表すのなら…暴君だな。」

 

 

どうやらCクラスを暴力で支配し、クラスメイトから多額のポイントを徴収しているそうだ。

そして格上の力を持つ山田アルベルトに何度も負けたが折れずに立ち向かい、その精神力に敬意を評した山田は彼の側近となったそうだ。

他にも力に自信のある石崎や女子にしては身体能力の高い伊吹を手駒にし、好き勝手暴れているらしい。

 

 

葛城の説明により、私は龍園に対する認識を変えた。

初めは珍しい苗字のヤンキーだと思っていたが、ヤンキーの中のヤンキーという事らしい。

うん、あまり変わっていない。

 

 

「しかし、彼は狡猾で頭も回る性格のようです。この1ヶ月間の間に、どんな行為をすればポイントが減るのか。それを確認する為に、わざと素行を悪くしていたようですからね。」

 

 

「なんだと?まさかアイツもこの学校のシステムについて知っていたのか?」

 

 

「…知っていてもおかしくはないだろう。坂柳や葛城のように知力の回る生徒だっているはずだ。」

 

 

町田の言うように私もそんな生徒の1人だ。

この学校のシステムやお小遣い額に疑問を持つ生徒は少なからずいる。

龍園が疑問を持っていたとしてもおかしくはない。

 

 

「今後動くとするなら龍園君だと思います。そしてその対象は…Dクラスでしょう。」

 

 

「BクラスやAクラスじゃないと思う理由は?有栖ちゃん。」

 

 

「「「有栖ちゃん?!」」」

 

 

私が彼女を「有栖ちゃん」と下の名前で呼んだ瞬間、葛城、町田、神室が驚き声を上げた。

 

 

「アンタ、いつの間に坂柳と親しくなったのよ?」

 

 

「5月1日の夜、かな?ちょっと色々あったんだよね。ね?有栖ちゃん。」

 

 

「うふふ、そうですね茉莉花さん。」

 

 

「坂柳が下の名前を許すとは、明日は雪が降りそうだな。」

 

 

町田の冗談にクスリと笑い、雰囲気が随分柔らかくなった気がした。

 

 

「それはそうと、理由でしたか?」

 

 

坂柳が軌道修正し、Cクラスの対象がDクラスである理由を話し始めた。

 

 

「理由をお話する為には、Cクラスがどのような方法で他クラスを攻撃するのかを考える必要があります。」

 

 

確かに仕掛けるにしてもどう仕掛けるのか、方法によって選ぶクラスは変わるだろう。

 

 

「具体的な例としては、事件をでっちあげ訴訟を起こしたり、他クラスを陥れる為に噂を流したりといったものが考えられます。そして先月龍園君は何をすればクラスポイントが減るのか、その検証を行っていたようですし、何か事件をでっちあげるのでは無いでしょうか?」

 

 

「なるほどな。確かにその可能性は十分考えられる。」

 

 

葛城が坂柳に同意を示せば、町田も彼の意見に同意を示した。

葛城派ではあるが、今や派閥の違いなんて些細な問題だ。

犬派か猫派程度の問題なのだ。

いや、それは結構重大なのか?

 

 

「私達Aクラスや一之瀬さんのBクラスは安い挑発に乗ったり、問題行動を起こすような事は恐らくありません。しかし、沸点の低い生徒が多いDクラスであれば簡単に陥れられると龍園君は考えているはずです。」

 

 

「…その言い方だと、まるでCクラスはDクラスに仕掛けるのも全て検証の為みたいだね。」

 

 

「ええ、その通りです。検証ついでにポイントが得られれば僥倖、そうでなくともどの様な対応がされるのか、Dクラスはどう対処するのか。それらを知る事が出来る時点で、メリットはありますから。」

 

 

「そっか。確かにデメリットが大きいわけでもないし、やってみる価値はある、のかな?」

 

 

龍園という生徒がそこまで頭が回るのかは疑問だが、危険を冒すメリットはある。

 

 

「ふむ…なら、試験終了後、Aクラスはどう動くべきだと考える?坂柳。」

 

 

葛城の問いに坂柳はクスリと笑い、こう言った。

 

 

「ふふふ、私達が行うべき事…ズバリ、カジノの設立です。」

 

 

「「「カジノ?!」」」

 

 

神室、葛城、町田が大声を上げて驚いている。

町田は動揺したからか、眼鏡がズレ落ちてしまった。

すぐに眼鏡を掛け直すが、動揺はまだ続いているようで、何度もクイクイと眼鏡の位置調整を行っている。

 

 

「おー楽しそうだね!」

 

 

私は呑気な声で坂柳の意見に賛同を示した。

 

 

「いやいや、なんでアンタはそんなコンビニ行く?いいよ!みたいなノリで話してるのよ!」

 

 

神室のツッコミに私はこう答える。

 

 

「あはは、驚くのも無理は無いね。だけど、実際日本国内でカジノを作るべきだって意見も出ているの。神奈川県で大きなカジノ施設を作りたいって声が上がっていて、カジノの試験設置も検討されているんだよ。」

 

 

「そ、そうなの?」

 

 

一時の娯楽に金品以外のものを賭ければ、ギャンブルは成立しない。

つまり食事代やお菓子は賭けても良いという事だ。

この学校ではポイントが金品に当たるが、上手いこと建前を用意すればカジノの運営を行う事も出来るかもしれない。

 

 

「法の穴を掻い潜る事だって、出来るかもしれない。」

 

 

私がそう言うと真面目な葛城や町田が咎めるような視線を送ってきた。

しかし、そんな2人を他所に坂柳は私さえも驚くような発言をした。

 

 

「いえ、法の穴を掻い潜る必要はありません。合法的に、カジノを運営する事が出来ます。」

 

 

「…え?どういう事?」

 

 

「今回、私がカジノの運営に着手しようと考えた理由は、我が校の同窓会のとあるOBの方が、カジノを試験的に運営出来る場が欲しいと話していたからです。」

 

 

「とあるOB?」

 

 

話を聞いてみると、どうやらそのOBは横浜市の市長を務めており、国にカジノのある統合リゾートを作りたいと申し出ている人物だった。

国も統合リゾートに注目しており、賭博法の改正も行われ、新たな文が追加されたのである。

 

 

『※試験設置されたカジノに関しては例外である。』

 

 

この文により、カジノを試験的に運営する事が認められ、仮カジノの設置場所を現在検討中らしい。

そしてギャンブル依存症対策の整った状態で、カジノの利用者を制限し、試験的に運営するらしい。

 

 

「今回、その試験的な運営を行う前にどれほどの依存者が出てくるのか、検証をする事になったそうです。そして、その検証場所の候補に、この学校内にある劇場の2階が上がっています。」

 

 

「そ、そうなの?」

 

 

「今回、その検証を行う上で我が校を卒業しているOBやOGの研究者の方々に調査が依頼されているそうです。そして、我が校のカジノ運営ですが、私達学生の社会勉強として、運営を任せるべきだというお話も出ています。」

 

 

つまり、彼女は場所の提供を行い、運営権を勝ち取り、社会勉強という名目で合法的にポイントを儲けようと言っているのだ。

しかし、これは本当に認められるのだろうか。

 

 

「…そう上手くいくかな?」

 

 

「同窓会とのパイプを作ったのが誰だと思っているのですか?この私が、外部との連絡役を担っているのですよ?」

 

 

確かに、坂柳が同窓会に根回しをしてくれたおかげで、葛城が生徒会に入る事が出来た。

そして生徒会長からの信頼も得られた。

彼女なら外部の人間も説得する事が出来るのかもしれない。

 

 

「…本当に違法ではないのか?」

 

 

「ええ、違法ではありません。」

 

 

葛城は数秒黙り込み、決心したような顔つきで坂柳を見つめる。

 

「…分かった、ならこの件は坂柳に一任しよう。」

 

 

「え、本当に?正気なの?葛城。」

 

 

神室が葛城を睨むが、葛城は怯む事なく頷いた。

 

 

「…分かった、葛城が認めるのであれば俺と認めよう。」

 

 

「ち、ちょっと町田まで?アンタ達正気?経営なんてした事無いのに、ただの経営じゃなくてカジノの経営よ?本当に出来ると思っているの?」

 

 

神室の不安は理解できる。

未知のものに対する恐怖はそう簡単に拭えるものではない。

 

 

「大丈夫、大丈夫。何とかなるよ。資金について不安はあるけど、検証が主な目的だし、外部の支援も得られるでしょ。」

 

 

「ひとまず、この件については候補地がこの学校の劇場だと決まってから詳しい協議を行うのだろ?その時にまた話そう。」

 

 

「そうですね。」

 

 

この学校の劇場は唯一外部の一般人も利用出来る施設であり、有名な歌劇や歌手のライブなどが行われる事もある。

その上は元々劇場を運営する事務所が入っていたが、昨年劇場の隣の広場を縮小して工事が行われ、劇場の隣に売店とレストランが作られた。

そこに事務所も移動した為、劇場の2階が空いているのだ。

そのスペースは国が有しており、ここを有効活用する為に仮カジノの検証の候補地に上がったらしい。

 

 

「そうだ、俺からも話しておきたい事がある。」

 

 

「なんでしょう?」

 

 

「生徒会長と話していたんだが、Aクラス以外の卒業生の進路が危ういと考えられており、校内の学力向上の為、とある教育企業と連携し、予備校を校内に作る事が決まった。」

 

 

「よ、予備校ですか?」

 

 

まさかの発言に坂柳すらも少し驚いているようだ。

だが、良い案だ。

進学や就職実績を上げる上で必要なものは学力だ。

この学校の敷地内には予備校さ存在せず、勉学は各々の自主学習を行う事でしか、向上出来ない。

例外として、自主学習を行い自分の力で学力を向上させる事の出来る生徒もいるが、誰かに管理して貰う事で学力を向上させられる生徒も居る。

予備校の支店を作るの言うとは素晴らしい案だ。

 

 

「予備校に関してだが、現在コースの料金や入塾にかかる費用については協議中だ。協議している企業は、JBホールディングスの帝都塾だ。」

 

 

「帝都塾は、日本三大予備校の一角を担う大手ですね。役員の方とは父の仕事の関係上、お会いした事があります。」

 

 

「なるほど、大手なら安心って訳ね。」

 

 

神室の言う通り大手であれば信頼も高く、学習に不安は無い。

だが、もし全生徒が予備校へ申し込みをした場合、全生徒を指導する事は不可能だ。

一体どれくらいの規模の建物を作り、何人の職員を導入したいと考えているのだろうか。

 

 

「人数は?」

 

 

「今のところの目安は100人だ。」

 

 

「ひゃ、100人?!」

 

 

「少し大きめのビルを建て、そこに学力や進路別の生徒の教室を作り、学習スペースを確保する。」

 

 

恐らく、オンライン授業の申し込みである程度勉強出来る生徒と区別するなど、工夫は行うはずだ。

 

 

「予備校の費用はどうするの?」

 

 

「入塾費用や月額の授業料は一部生徒負担になるが、基本的には国が支払う。だが、定期テストで一定の点数を下回った場合何らかの罰が与えられる。」

 

 

「なるほどね…。」

 

 

「私は良い計画だと思います。まだまだ未定の部分も多いでしょうが、この学校の未来を考えればメリットは大きいと感じますね。」

 

 

「そうか、坂柳が賛成してくれるのであればこの案は間違っていなかった、という事だな。」

 

 

その言い方では、まるで葛城が提案者のように聞こえる。

 

 

「葛城君が提案者なの?」

 

 

「ああ、その通りだ。俺が堀北会長に提案したんだ。」

 

 

この学校に来るまでの葛城は保守的な考え方を持つ真面目な男だった。

伝統を重んじ、革新的な事はせず堅実に行動する人間だった。

しかし、この学校に来て坂柳と出会ってから彼は少しずつ変わっている。

新しい事に挑戦し、学校をより良いものにする為に尽力している。

坂柳も積極的に新しい挑戦をしようと動いており、その空気がクラスにも溢れ、皆が進路や将来について真剣に考え、行動を始めていた。

 

 

そんなクラス内で、私は未だに何をしていいのか分からなかった。

私はどこまで行っても脇役でしかない存在だ。

やりたい事も、夢も、希望も何も無い。

ただ怠惰に過ごし、少しでも楽をして生きたいと願う凡人なのだ。

 

 

「…みんな凄いなぁ。うん、私に出来る事があれば言ってね。」

 

 

「ありがとうございます、茉莉花さん。しかし、心配には及びませんよ。私に出来ない事などありませんからね。」

 

 

「気にするな、藍宝。必ず、この学校をより良い学び舎に変えて見せる。」

 

 

ああ、やっぱり皆遠い世界の住人だったのだ。

私が手が届くと思っていた存在は、何億光年と先の未来に居たのだ。

眩い光を放つ2人に手を伸ばそうとして…

 

 

私は手を下げた。

 

 

「ではそろそろお開きにしましょうか。各クラスの調査書は誰でも確認出来るようにクラスのグループチャットに貼り付けておきます。気になる事があれば、私へ連絡をお願いします。」

 

 

「ああ、分かった。」

 

 

私達はその場で解散する事になった。

ふと町田や神室を見れば、2人は今回の話し合いで困惑していたが、今では真剣な表情をしていた。

2人も何らかの良い影響を受けたみたいだ。

1人別の世界に取り残されてしまったかのような不安感が私の心を侵食していく。

その感覚をわすれる為に、4人に別れの言葉を告げ、荷物を持って走り出した。

私はやる気が失せてベッドに寝転んでいると、坂柳からメッセージが入った。

内容はとあるお願いを聞いてくれればポイントを渡す、というものだった。

私は二つ返事で了承し、深い眠りについた。

 

 

それから数日後、中間テストが行われた。

私達Aクラスは退学者を出す事も無く、全科目の平均点が93点を超え、満点者も続出した。

坂柳は全科目満点、葛城も全科目で満点近い点数を取り、その他の生徒も高得点をたたき出し、Aクラスの強さを見せつける結果となった。

私はというと、全科目で90点を超えており、今回のクラス平均より少し上に位置していた。

悪くない結果だ。

 

 

BクラスやCクラスも赤点該当者は出しておらず、まずまずといった結果に終わった。

しかし、Dクラスからは赤点該当者が一名出てしまったようだ。

 

 

「流石は落ちこぼれのDクラスだな。」

 

 

戸塚がDクラスを煽るが、それを咎める者は誰一人としていない。

今のAクラスは向上心を持ち、各々が望む将来の為に努力している。

だからこそ、たかが中間テスト如きに足元を掬われるような人間にぬるい励ましの言葉を掛けたりはしない。

勿論、戸塚の発言は許されるものでは無いが。

 

 

「…有栖ちゃん、君が望んだ通りになった訳だけど本当に動くの?」

 

 

「勿論です。橋本君、私と一緒にDクラスへ向かいましょう。」

 

 

「かしこまりました、姫さん。」

 

 

橋本はキザな笑顔を向け、坂柳に手を差し伸べる。

そして彼女をエスコートし、Dクラスへと向かった。

 

 

「…本当にこれで良かったのかな?」

 

 

私の小さな疑問は誰にも届くことなく雑音に掻き消された。

私は授業の支度を始める為に席に戻る。

すると私が持参した『嘲笑う』というタイトルの小説が目に入った。

私はその本を手に取りブックカバーを着けて鞄の奥に仕舞った。

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