キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
番外編ですが実質過去偏なので後書きの予告詐欺にはなっていないはず……
番外編:美味しいケーキには紅茶もつけたい。
「クリスマスかぁ……」
12月25日。世間一般ではクリスマスと呼ばれる日。
格闘ゲームのランクマッチルームをうろつきながらちらりとゲーム上に表記されている時計を見て、ため息をつく。
マッチ待機をしていると見知ったアバターが対戦台に近づいてきたので、待機接続を切る。
ユーザーネームはUZQueen。一年後にミレニアムに入学する生徒花岡ユズである。
「いつもギルティにinしてると粘着してくるなぁ……」
一年半くらい前に新実装されたキャラを試していたユズを持ちキャラの筋肉要塞で投げまくってストレート勝ちした直後にUZQueenであることを知り、慌てて対戦を辞めたら情けはいらないからと太っちょ眼鏡のオッサンを持ちキャラにまでして粘着されるようになったのだ。一度対戦を始めるとプライベートマッチに連れ込まれて100戦はしないと寝かせてもらえないので対戦を拒否している。
もう寝るのでまた今度と対戦を断ってゲームを終了する。
「……で、なんで私の家にアンタがいるの? 黒舘ハルナ」
「ずいぶんな言いようですわね?
「わたしが普通に並んで買ったケーキを強奪しようとしてましたよね!?」
「ゲヘナ自治区内のショップで普通に買えると思っているのがそもそもの間違いですわ。実際、私が貴女を襲う前にカツアゲに遭い掛けていたでしょう?」
「助けてやったんだからケーキを寄こせと? それこそカツアゲとなんら変わらないでしょう」
「いえ、私が言いたいのはその後のことですわ」
「……まさか全員ブッ飛ばして外壁にめり込ませた慰謝料とかほざきませんよね?」
「話が早くて助かりますわね。あの後、私以外は風紀委員に捕まってしまいましたもの。それ位は許されると思いませんか?」
確かに対ベアトリーチェ用のツールを使ったのは申し訳ないとは思うけどさ。
……確かにちょっと過剰な威力だったけど。
「それにルカさん。どうせ二つ買っているのでしょう?」
「はぁ……知り合いのモモフレ好きに上げるつもりだったんだけどね」
椅子から立ち上がって、キッチンに足を向ける。
「ちょっと待ってろ」
「えぇ。待たせていただきますわ」
電子ケトルに水道から水を入れ、スイッチを入れる。
お湯を沸かしている間に、戸棚からティーポットとお気に入りのカップを取り出す。
給湯器を付け、ポットとカップに熱湯を注ぎ温めておく。
再び戸棚から小皿とヒメフォーク、ティスプーンを出し、冷蔵庫から牛乳とケーキの箱を取りだす。
アッサムの茶葉が入った缶を冷蔵庫上の籠から取り出し、事前準備を終える。
ケトルからぐつぐつと沸騰した音を出し始めたのを確認し、茶器からお湯を捨ててタオルで水気を拭う。
アッサムの紅茶缶からティスプーン二杯分の茶葉を入れる。カチッと音が鳴ったケトルを手に取り、お湯を入れて、ポット内を熱湯で満たして、スマホのストップウォッチアプリをスタートさせる。
「ジャンピングはしないのですか?」
「待ってろっていったじゃん……このポットとケトルのお湯じゃジャンピングに向いてないんだよ。家庭の味だ家庭の」
「普通の家庭はここまでしないと思いますが……まぁそういうことにしておきますわ」
箱からチョコの三角ケーキを取り出し、小皿に乗せる。
「ほれ、お望みのケーキ」
ケーキを乗せた小皿をハルナに渡す、が受け取らない。
「なんで受け取らない?」
「今受け取ってしまえばそのまま食べて帰れというでしょう。そうなってしまってはお茶を頂けませんので」
「人のケーキたかっといて、紅茶もねだるのかよ」
「そういいつつ二人分用意しているのはどうかと思いますわ」
「……はぁ、私、ハルナ、キライ」
「そうですか。私はフウカさんと同じくらい貴女のことが好きですよ」
「冗談言ってないで机の方に行ってくださいね。配膳できないので」
ケーキと茶器をトレーに乗せて、ハルナを足で押して自室のローテーブルトレーを運ぶ。
配膳を終え、スマホをチラ見する。2分10秒。ポットを回して、2分30秒になるのを待ってからカップに注ぐ。
ゴールデンドロップまでしっかり注いでから、カップをハルナに渡す。
「砂糖と牛乳はお好みでどうぞ」
「ミルクピッチャーがないようですが……」
「うちは牛乳パックから入れます」
不満を漏らすハルナだが、受け入れたのか大人しくパックから牛乳を入れる。
砂糖を大さじ二杯入れ、牛乳をちょっと入れて自分のお茶を完成させる。
「んじゃ、いただきます」
「……いただきます」
フォークでケーキを切って、口に運ぶ。
クリーム、スポンジからチョコの香りが口内で広がる。細かく砕かれたビターチョコとナッツが程よい食感を生み、スポンジの僅かな甘さがより引き立つ。
口に含んだケーキを嚥下し、風味の余韻覚めぬうちに紅茶を口に含む。
甘めに作ったアッサムのミルクティーはケーキの残した余韻を口内に甘く広げる。
一息をつくと鼻腔を紅茶の香りとどこか甘くもあるビターなチョコの風味が突き抜けた。
「……うまぁ」
「美味しいですわね」
口からこぼれたのはたった一言の感想。だが頭に浮かんだより深い感想は目の前のハルナと目で語り合えた。
それからはただ、無言でケーキを食べるだけ。
ケーキを食べ終わり、紅茶も飲み終わったタイミングで切り出す。
「……お茶のおかわりはいる?」
「いえ、これ以上居座ればまた同じ目にあうのは私としては避けたいところですわ。そろそろお暇させていただきます」
そういって、ハルナは玄関から大人しく出て行った。
「……え、マジでケーキ食いにきただけ?」
なにか厄介ごとに巻き込まれると思ってずっと身構えていたが、何もなくただ普通に帰って行ったハルナが見えなくなってから安堵する。
「マジで防犯意識と原作ブレイク気を付けよう……」
深夜の冷え切った空気が流れ込む窓の外を眺めながら、そう思った。
今度こそ次回合宿編に入るか、過去編です。
ゆっくり書いていきますがお付き合いいただけますと幸いです。
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作者は乞食なのでガソリンになってます!!
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