キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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お待たせ致しました。
5月最終日ですが、活動報告通り今月中に出せてよかった……


第十四話 震える紅茶(これまでのあらすじ)と(in)零れるお茶菓子(補習授業部編)

 

 

 

トリニティ総合学園高等部2年の那賀波ルカ。

つまり俺のことだが、学園都市キヴォトスに生きる一般生徒。

 

しかし、この世界は俺が前世と考えている元々居た世界の中でプレイしていたゲーム『ブルーアーカイブ』だった。

ボケっと生きていたと言うかあやふやな人生を送っていた前世から転生してきてしまった俺の目的は“楽しく生きること”なのだが……

この世界、キヴォトスは、ちょっとしたことが積み重なって世界滅亡だったり、学園崩壊を引き起こしてしまうような、薄氷の上で成り立っているヤベー状況なのである。

 

なるべく、プレイヤーの分身兼多分主人公?の“先生”やゲーム内ストーリーで活躍するネームドキャラ達とは一線を引いて過ごすように努めてはいるものの、倫理観がちょっと世紀末気味(と言うか転生前に住んでた国の人は多分軒並みドン引く治安の悪さ)なのもあってか、しょっちゅうトラブルに巻き込まれている。

そんな俺は、ある日。

 

 

トリニティの生徒会的リーダーグループ“ティーパーティ”が一人“桐藤ナギサ”の姦計によって休日と学年テストの日を誤って伝えられてしまったことで、メインストーリーのグループである“補習授業部”の部長に任命されてしまう。

 

部員のメンバーはみんなストーリーの主役を張るいい子達で、いっそ今後のことを考えてみんなのサポートを全力でしてそっとフェードアウト出来たらとひそかに企んでいるところである。

ベアトリーチェとか言う俺の知るブルアカストーリー上一番嫌いなキャラであり、トリニティ学園シナリオのラスボスを務める大人をどうにかひっそり倒してしまえれば、巻き込まれてしまったこの騒動を手っ取り早く解決できるのだが━━━━。

 

━━━━━━生憎と俺はクソ雑魚ナメクジであった。

プレイアブル化したら☆1実装……

いやなんなら他キャラの強化素材になる自信がある程度には実力不足な存在だった。

 

だからこそあの手この手で色々と俺の出来る限りの手段を尽くして、陰からみんなをひっそり支援するご都合展開生成装置になる予定をしている。

……少し前に想定外な出来事が起きたけど、最終的にはフェードアウトして『こんなことも有ろうかと備えてました』ってサポートをしては消える影の薄い子になるつもりだ。

……うん、多分大丈夫なはずである。

 

 

そしてそんなご都合展開生成装置を目指す一般トリニティ生徒はどうしているのかというと。

 

 

 

「━━ナギサ様」

「どうしました?」

 

「なんで私、ナギサ様に勉強教えてるんです?」

 

トリニティ総合学園旧校舎一般教室。

くっ付けられた机越しにキョトンとした顔を浮かべている彼女は。

 

 

「可笑しなことをいいますね」

クスクスと何処か幼さの残る笑みを浮かべる。

そこには件のグループ“ティーパーティー”の長こと、ホストに就任した少女。

 

桐藤ナギサがそこにはいた。

 

勉強のノートを取りつつもちょっと行儀悪く茶菓子を片手にして。

 

 

「臨時とはいえ私も、補習授業部もとい、課外授業部の部員なのですから当たり前でしょう?」

 

予定も計画も何もかも全部終わりである。

ハイ解散。さよなら、俺の平和な幸せスクールライフ。

キヴォトスに転生した俺、逃げ回る。

ご愛読ありがとう御座いました!!

 

━━いつかベアトリーチェを倒すその日まで!!

 

……そんなテンションである。

 

 

うむ。訳が分からない。

いやホントに。

 

まっっったくもって、訳が分からない!!

 

「どうしてそんな呆けた顔をしているんですか……元々貴女がコチラの意図を汲めていればこうはならなかったんですよ?」

 

この場に俺を除いて、誰一人としていないという状況がトリニティ総合学園ティーパーティー一席〝桐藤ナギサ〟と言う立場・出生・境遇等に見合う鎧を必要としないからか。

はたまた、何か策があってその表情を浮かべるのか。

 

ペンを置いてカップを手に茶器に口を付ける彼女は、ティーパーティーの談話室では見たことのない笑みを俺に向けた。

 

 

どうしてこうなった。

 

そう思うも俺の現状を理解するには、話をゲヘナ自治区での大立ち回りの後━━━━。

つまり、二回目の追試を終えた昼頃にまで遡る。

……いや、もうちょい前から思い返そう。

うん、現実逃避は長い方がいい。そうに決まってる。

 

 


 

「━━━━……」

 

 無数の閃光が瞬き、硝煙の煙や破壊されたコンクリートの塵で先の見えない道をアクセル全開で駆け抜ける。

 

「……ヤな天気だよ」

前世にも嗅いだ排気ガスの匂いが何処か懐かしい。

余裕を持って唸るエンジンが二人乗りをしているにも関わらず安定した速度を提供し、メーターは40kmと表示されている。

 

〝面倒臭い〟

先行する原付の速度に合わせながらそんなことを思う。

何も頑張らないわけじゃない。ただ、今していることを含め、やらなきゃいけないしやるべきことをするにしても体力……いや、精神力とも言えるなんかそういう感じのエネルギーを消費するのだ。

 

……普段が割と好き勝手してた分、余計に。

 

だからこそだろうか。

自然か無意識にか、俺の意識に入るのは映画の導入みたいに音がぶつ切りになっては聞こえてを繰り返す原付の駆動音。

 

「ルカ。多分、撒ききれてない」

 

そして、そんな呆けた俺の意識を切り替えたのは、冷静に。しかし、何処か困惑の感情が混じった声が荷台に乗せた人物から口頭、インカム共に通達され。

 

━━━━ドカンッ!!

と派手な爆発音と共に爆炎が背後に広がってからだった。

 

 

そして━━━━。

 

「久しぶりだなァトリニティのお嬢ォォ゙━━ッ!!」

「相変わらずのゲテモノエンジンじゃん!! 今ならまだ、あーしらにボコされた後で学校まで送迎サービスしてやっても良いよ!!」

「逃がさねぇぜオラァ!!」

「ザッケンナッコラァーー!!」

 

その爆炎を突き破り、追手の車が姿を顕にする。

爆発と轟炎を突き抜けてきた車体正面は焦げ付いて煙を吐く無数の鉄骨が装甲を作り、鉄骨の歪み方といい色合いといい全体的にマッド◯ックスよろしく人を磔にして走り出しそうな世紀末感溢れるスタイルにデコレーションされていた。

 

「お久しぶりですねコンチクショウッ!?」

「ルカ、知り合い?」

「仲良しなタイプじゃ無いけどね!!」

窓から身を乗り出して撃っているのだろう。

銃声と弾丸が通り抜ける音がBGMになっている恐怖を忘れるべく、前のスクーターにクラクションを鳴らしまくる。

 

そして、その前方で泣きながらスクーターを走らせる生まれつきのアウトロー(阿慈谷ヒフミ)が感情を抑える限界に達したのか叫ぶ。

 

 

「どうしてこんな事になってるんですかぁ〜〜〜っ!?」 

 

多分お前の自称友達が追試会場を変更したからだと思います。

 

「嘆く暇あったら早く先に行けって!!」

「そ、そう言いわれてもコレが全開なんですよ!!!」

「だからそんなポンコツ使うんじゃなくてオートバイ借りるか、サイドカー使おうって言ったじゃん!!」

「どっちも犯罪じゃないですか!!?」

「犯罪か否かで判断する部分じゃ無いと思うけどねッ!?」

 

さて、昨日スイーツを喰えずにテロリスト撃退をしてふて寝をした俺を含めた補習授業部は試験会場入りをするべく移動中である。けして逃亡中などでは無い。

けして怪しい者でも無い。

 

ソレはソレとして敢えて言わせて欲しい。

知 っ て た 。

 

前世でもう何回このシーンのスチルを見返したって話だ。えぇ、知ってましたともくそったれ。

 

 

ただ、前世で知る通りならヒフミは本来先生と行動を共にして陽動組はアズサとハナコの筈。

しかし、どういうわけかグループ分けはハナコと入れ替わりで陽動組になっていた。

いやまあ、正直それに関してはどうでもいい。

 

問題はヒフミが乗ってる原付が私物で40km以上の速度が出ないことだ。

逃げる選択が取れないのは死活問題である。

というかあの場面法定速度遵守してたんだ……

 

後ろに乗せたアズサの銃声が早くなっている。

追跡者の数が増えているのだろう。音がバースト射撃からフルオートのソレになった。

「アズサ。グレネードって後どれくらいある?」

「半額品が2つと正規品3つ、少量だけど粘土と導火線も持ってはいる」

 

俺の操るスクーターの荷台に乗るアズサは器用にも片膝を上げ、屈んだ姿勢で牽制射撃をしてくれている。

かなり揺れ動いている筈なのに車両のタイヤを時折撃ち抜いているっぽい。後ろで交通事故が起きてる音がするし、マジの曲芸じゃん。

世紀末カーは防弾加工されてるっぽいからチェイス状態なのには変わりないけど。

 

「少なくとも陽動自体は出来てるし、そろそろ本格的に撒かないとマズいな……」

 

釣られた愚か者の数を見るべく、ちまちまとアプデを重ねているゴーグルのディスプレイに映るマップの上を動くマーカーの光点を見て凍りつく。

陽動に釣られたアホが想像以上にいた。

その数30以上。それもただ30人程いるのではない。

表示されている色から、チームアップしているのが大半なのだ。

 

対戦闘回避・離脱・逃亡支援用自作プログラム通称“ラトナ・システム”

ディスプレイと通信端末を兼ね備えたゴーグルと小型ドローンのパッシブハックソナーによってリアルタイムで大体の所在地を表すプログラムであるラトナには大規模前提の設定がある。

それは、同じ動きをする者同士や並行的な動きが至近距離で行われていれば自動的にマーカーを一つにして脅威度を上げるという仕様。

それぞれ緑色が単騎・黄色がスクワッド級・橙色はプラトゥーン級を表している。

戦術単位に関しては、キヴォトスで生活してたら何となく身に付いた。前世の世界でも同じなのかは分からないけど、スクワッド級は4〜10人程の人数で編成された隊。

プラトゥーン級は10〜50人規模でそれ以上は個人的に委員会級と呼んでる。

委員会級は紫色の光点が出るようにしているが、今まで見たことない。基本隊列組んでまっすぐ来るなんて事は無いのでもっぱらプラトゥーン級のマーカーがウジャウジャとマップに散らばる様を見せられるのだ。

 

 

そんな背景を知った上で見て欲しい。

ゴーグルのディスプレイに表示されてるマーカーの色を。ほとんど黄色ばっか。所々に橙色もある。

そして一際目を惹くのは……赤枠のついた橙色。

赤色の枠が付いていればそれはネームド生徒が一緒に行動していることを示す。

今が俺一人ならば絶対に近付こうとは思わないし、なんなら近付かないに越した事は無いそのマーカーには。

ネームド識別名〝銀鏡イオリ〟と付いていた。

 

 

……100%見つかったらゲテモノテロリスト対処への救援を求めてモメる。絶っっっ対モメる。

事あるごとにゲヘナの騒動で鎮圧やら避難やらで協力してたら巻き込まれ属性の同族と思われたのかデレてるのだ。トリニティ嫌いとかも無いらしく普通に擦り寄ってくる。もうちょっと先生の絆エピ位にはツンが欲しい。

前に協力断ろうとしたら足掴んで半泣きで頼み込まれたりしたこともあったので、確実に試験会場に行けなくなる。

 

ちなみに、ネームド単騎を表すのは赤色と髑髏マークがある。

髑髏は見た目のまんま遭遇したら死ぬ。

基本表示されるのは空崎さんです。事情聴取したいからといって不良ボコすついでに俺もボコそうとしないで下さい。死んでしまいます。

 

 

「撤くって言ってももうほとんど一本道ですよ!?」

「だから必死に考えてるんでしょーが!!」

本来、ストーリーと絡まないようにネームド生徒との遭遇率を減らす為のものだったのが、ストーリーを進める為に使わされるとは何ともくそったれな因果である。

 

絶望に浸った僅かな時間の間にもマップ上に映るルートは、どんどん封鎖され使えなくなっていく。

いくら廃墟が多いゲヘナ自治区だとしても、敵が地元民なのは事実。土地勘という点において風紀委員会を含め、ゲヘナの地元民でチームアップしたヘルメット共にはやはり敵わない。徐々に先回りで進路を潰されて袋小路に追い詰められつつある。

 

「ルカ!RPG!!」

 

直後、真横からの衝撃に煽られ、ヒフミがスクーターの操縦を誤り空を舞う。

「きゃ……ッ!?」

「ヒフミッ!!」

ブレるスクーターを力尽くで抑えながら宙に投げ出されたヒフミの腰へと手を回し俵を担ぐようにして回収する。

 

「あっっぶね……ッ!!」

「た、助かりました……ありがとうございます……」

もう一度やれと言われたら絶対出来ない。

「チィッ!!運良く落ちずに済んだか!!」

後方からヘルメットでこもった声が聞こえる。

「RPGで振り落としに掛かってるの可怪しいだろ!?」

「すまない、なんとか破壊しようとしたんだが照準が間に合わなかった……!!」

「気にしなくて良い!ちょっとヒフミ頼む!」

右肩で担いでるヒフミをアズサに頼んで上手いこと三人乗りをキープする。

正直アズサはただでさえ、車のタイヤ撃ち抜いてるのに瞬時にRPGを撃ち落とす判断してこの揺れの中で解決してたらマジで俺の立つ瀬が無い。逃亡の技量というか小賢しさを買われて多分陽動組に割り振られてるのに、小賢しいこと何一つ出来てないからな……

いや、この状況で運転するの普通にしんどいけどね!?

 

「ルカ!グレネードがもう尽きる!作戦はある!?」

 

 

いつもギリギリで何とかしようとしてなんか上手くいっちゃうのが良くない。小賢しく必死に考えて、自棄っぱちになったら意外とスンナリ通る。そんな経験ばかりだ。

鍵を押し込み、エンジンのロックを外す。

 

「……ルカ?」

不安げな声を出すアズサの頭をクシャクシャにしてから速度を上げる。

 

もう何回目の自棄か解らないが、その都度付き合わせる自前の改造スクーター〝ダニエルくん〟には申し訳無く思いつつ、アクセルを全開に。

 

タイヤが急な加速で僅かに空転しつつも、グリップを取り戻して殺人的な加速感を生み出す。

ラトナシステムによってゴーグルのディスプレイに映るルートマップを再確認。

 

 

奥歯を噛み締め、腹をくくって指揮を飛ばす。

 

「これから飛ぶ!!」

そんな馬鹿げた発言をアズサとヒフミに言えば。

 

「「……飛ぶ?」」

まるで解らないという表情と青ざめて絶望に染まった表情という全く別の表情を浮かべる二人の疑問が帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 


 

――――時は戻り現在。

 

トリニティ総合学園本校舎――――

高等部2年一般教室、高等部1年一般教室。

 

補習授業部の面々は、自身のクラスに用意された席で一枚のプリントの内容を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

トリニティ総合学園第二回特別補習試験結果――――。

 

阿慈谷ヒフミ 96点 合格

浦和ハナコ 100点 合格

下江コハル 92点 合格

白州アズサ 95点 合格

 

 

那賀波ルカ  0点   不合格

 

補習授業部部員

阿慈谷ヒフミ、白洲アズサ、浦和ハナコ、下江コハル。

 

上記四名の退部をもって、復学とする。

 

 

 

部長、那賀波ルカは学習怠慢と看做し、一(・)時(・)的(・)学(・)籍(・)凍(・)結(・)処(・)分(・)とする。

また、部員数に伴い補(・)習(・)授(・)業(・)部(・)を(・)廃(・)部(・)処(・)分(・)と(・)す(・)る(・)。

 

 

 

 

 

 

 

 

くしゃッ……と音を立ててプリントに皺が入る。

 

 

――――今朝、那賀波ルカは会場に現れなかった。

誰一人見捨てることなく逃がした彼女が。

 

忘れていたい出来事を。

事実を伝えるその内容は、胸の底から鬱々とした感情を湧き出させて視界を陰で覆う。

 

 

 

 

 

 

キヴォトスに転生した俺、逃げ回る。

vol.1補習授業部編 後編『これから崩れる物語』

――prologue――

 

 

――開幕――

 





今回のOne PointTopic:ラトナシステムはサボったり炊事の合間にアプデしてます。





今後もゆっくり書いていければと思います。
(毎刹那投稿は無理……)
また、リアル都合や新作ゲームプレイ優先になったりで投稿が遅れることがあるかと思いますが、完結までお付き合いいただけますと幸いです。



いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでいつもガソリンになってます!


後、『待ってます』感想めちゃくちゃ力になります!!
感想くれた方々、ありがとうございます!!お待たせ致しました。

後これは活動報告に乗せた14話予告した際のスチル風ラクガキです。

【挿絵表示】

15話もスチル描きたい欲出てきて困りますね……
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