キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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お待たせ致しました。
ブルアカライブに合わせて切りの良いところまで行けたので更新です。


十五話 ふりだしに戻る。

 

 

“今お前なんて言った?”

荷台に積まれた少女に視線を合わせれば、そう聴こえて来そうな頭の飛んでしまった人をみる目で……あっ!? いや、これ普通に頭おかしいこと宣うの辞めてくださいって顔してんなぁ!?

「絶対嫌な予感しかしないから辞めましょう!?」

「とうとう耐え切れずに言っちゃったよ……!?」

 

しかし運転は俺が担当しているので、辞めろと言われようがアクセルは全開のまま。

速度を落とす事は無い。

 

 

「ルカ。これから飛ぶと言ったがどうやって飛ぶつもりなんだ?」

ヤケクソで思い付いたとはいえ、それなり……いや、最低限物を考えて言っている。

 

「“ダニエルくん”には加速する為の推進剤がある」

「推進剤と言ったってスクーターに積まれてる程度の燃料で加速しても飛べはしないぞ?」

そう、一般的なガソリンや灯油、ハイオク燃料で飛ぶつもりならジェットエンジンやレシプロ等の航空エンジンを積み込んでなければ飛ぶのはおろか、僅かに加速するだけだろう。

 

「……ルカちゃん。ひょっとしてなんですけど、これ(ダニエルくん)って」

……はい。ミレニアムオークションで買った小型衛星用バーニアと液体推進剤積んでます

「声ちっさいです」

ミレニアムオークションでバーニアと液体推進剤買って取り付けました!!

誤魔化すつもりでそっと言ったら、怒気を秘めた恐ろしい声色で反応されて、咄嗟の事で反射的に正直に答えてしまった。何一つ悪いことはしていない筈なのに謝罪する様に大きな声で言ってしまった。

 

バッッッッカじゃないですか!!?

割と危機的状況なのにめちゃくちゃブチギレていらっしゃる……

いやヒフミの退学掛かってるんだし、お説教なら後でしてよぉ……他の補修部メンバーの退学も掛かってるし、冷静になってくれぇ……

 

「ルカちゃんがズルっ子するのはもう仕方のないことですけど!!」

「い、いやズルっ子て……」

まるで今日び聞かねえワードセンスである。

 

「バレなければ良いといつも変なことに巻き込まれて無茶なことをして救護騎士団にお世話になってるの知ってるんですよ!!?」

「う、内一回はヒフミに轢かれたし……」

「それも逃げ回ってボロっっっボロだったからですよね!? 轢いてしまったことには本当にごめんなさいですがケガの無いルカちゃんなら避けれてますよね!?」

そんな訳ねぇでしょう!?

普通に轢かれたわッ!?

ヒフミのイメージの俺はどんなトンデモ超人なんだ……?

 

「大体入学してからろくにクラスメイトの名前覚えないでモブ呼びして率先して嫌われ者になってますし!!」

スイマセン、それ知らないんですけど……?

え、俺嫌われ者なの? 

普通に話しかけられない訳じゃなくて?

 

「第一手違いで入学したのに一向に転校手続きはしないですし!!」

スイマセン、それも知らなかったです……

いや、だってナギサから『名門校なんだから転校できる訳ねぇだろ(意訳)』って言われたんだもんよぉ!!?

だから大人しk「挙げ句友達は居ないなんて言って回るし、人を見れば逃げ出すし、なのに誘拐されれば助けてくれるし、ブラックマーケットに入り浸っては稼いだお金を他校の募金活動に寄付するし!!」

いや、だって流石に目のつく所で拉致されてたら助けない訳いかないでしょうよ!?

というかなんでそんなこと(アビドスの募金)まで知ってるんですかヒフミさん……

 

 

「私はルカちゃんの“友達”じゃ無いんですか!!?」

「と、友達です……」

声が小さいです!!

 

友達です!!

 

 

ひょっとして、今とても恥ずかしいことをさせられてるのではなかろうか。

新手のイジメか?

 

「ふぅ……絶対言いたいことは言いました」

「そんなこれから死にに行く訳でもあるまいし……」

なんなら今の一連の流れで死亡フラグ乱立してません?

「死にに行く様なことしようとしてる自覚無かったんですか!?」

「いや、精々迫撃砲の弾みたいになるくらいでしょ……?」

「……ヒフミ。私達はこれから恐らくとても悍ましい現地実験に参加させられる」

「アズサちゃん……」

 

なんかシンパシー感じ合ってる……

 

「━━━━だが……」

 

「私達がルカの非人道的行為を否定して屈する理由には……なら……うん……ならない……」

「あ……あは、は……は…………」

「なんでお前ら二人とも死んだ目で覚悟決めてんだよ!?」

挙げ句アズサはエデン条約編で言う決め台詞を虚しい顔して言ってるし!?

その諦めない精神は虚しさに抗う為のモノで虚しさを受け入れるもんじゃ無いでしょうが!?

 

「ち、ちなみにルカちゃんは迫撃砲の速度を知っていますか……?」

「え?大体8km/s(秒速8キロメートル)位だろ?」

「終わりだ、ヒフミ……ᓀ‸ᓂ」

「はい……アズサちゃん。コレで、お別れですね……」

なんで諦めムード……?

 

「……ルカ。余計な事かもしれないが、トリニティで採用されている105mm迫撃砲の弾速は平均482m/s(秒速482メートル)だ」

んん〜?

ンンン〜〜……?(冷や汗)

 

……いや別になんということは無いんですけどね?

取り敢えず単純計算してみようかな……?

「つ、つまりメートル換算で秒速8000メートルだから……?」

「……もしルカが迫撃砲の5~6倍程の期待をしていたのならそれより遥かに速い」

「単純計算で16.5倍の速度……ですね……あは、は……」

「……ごめんね」

 

二人が死を覚悟した原因は俺だった。

 

 

「どうして第一宇宙速度は覚えていて迫撃砲の規格は覚えて無いんですか……!!」

「いや違うんスよ……爆速でかっ飛ばせると思っただけなんスよ、きっと風と友達になれそうだなって思っただけで……!!」

「なおのことダメじゃないですかぁ!?」

一回くらいとんでもなく速いスピードでかっ飛ばしたい願望は皆持ってると思うんですよ……!!

だって俺がそうだし……!!?

 

「はぁ……でも、もう言いたいことは言ったのでいいです。信じてますから」

「ヒフミに同じく、だ」

「……任せろッ!!」

ちょっと嬉しくなってる自分がいる。

 

気合は十分。パチンッとスイッチを入れ、後輪両サイトに必死に付けたバーニアのアウターロックを外して露出させる。

 

「飛ばすぞ……ッ!!!!」

エンジンキーを押し込んで逆方向に捻れば。

 

瞬間。慣性に従って首が折れそうになりつつ何も聞こえなくなった。

 

 

意識が飛びそうになる程の風圧。

 

そして瞬きをする度に鉄骨がむき出しの荒廃した鉄橋へと距離が劇的に詰まる。

 

 

一つすれば、その差は半分程に。

2度すれば、もう前輪が橋に触れかけ。

 

3度目の瞬きで━━━━

 

空へと舞った。

 

 

「「「飛んだぁーーーー!!!!!!」」」

 

 

空気の抵抗で何も聞こえない状態から解放されたからか、はたまた興奮してるからか。

心臓の音がけたたましく響く。

 

「アズサ!!」

 

たった一言。それだけでアズサは荷台から飛び出す。

荷台から俺の肩へと乗り移り、そのままヒフミを掴んで跳ねる。

上向きになりつつあるダニエルくんのフロントを土台にして本命の跳躍を行う。

 

アズナの跳躍は綺麗な軌道を描いて放置されたままのクレーン車のフックを掴む。

 

 

慣性に従って前後に揺れるワイヤー。

僅かな時間ではあるがブランコを漕ぐ要領で揺れを大きくして対岸へと飛び移る。

 

ハリウッドのスタントさながらである。

流石の身のこなしというほか無い。

 

「ル……カ……?」

 

……そして、俺はそれを眺めながら崩落した廃橋の底。

闇の中へと落っこちていた。

「アズサとヒフミで先行っててくれ!! ちゃんと追い付くから!!」

 

流石に全員無傷で逃亡までは無理だった。

いや、俺一人なら重量的に多分今みたいに距離足らないから操縦者は落下ってことにはならなかったかもだけど。それでもアズサ達が追試を出来る状況にしないとマズかったし……ほら、俺以外全員退学のペナルティ背負ってるのに俺だけはなんでか留年で済むらしいし……

 

「ちゃんと来て下さいよー!!? 待ってますからね!!?」

「留年したい訳じゃねぇから行くって!!!」

「ルカ、私は会場で待ってる。だから必ずだ」

「分かってる!!」

 

俺も雑魚だけどキヴォトス人だ。

この程度の高さならめちゃくちゃ痛いし、死ぬ程痛い思いするけど生きてられるレベル。

いや、落下時間長くない……?

 

見上げても姿が見えなくなった補修部の二人も会場に着くか心配だが、問題は落下中の俺。

結構な高度から落下しているので地面だったら死ぬ。

 

「多分河だよね……!?河であれ!!」

なのであの橋がかかっていたのは河があったからである。そうに違いない、そうであれと祈りながら落下地点を見る。

 

ちゃんと河ではあった。

うん。どちらかと言えば川だけど。

問題は……クッッッソきったねぇドブ川が視界いっぱいに広がっていることである。

「ふぁっきゅーゲヘナァァァァァ!!!!!!」

 

呪怨を唱えた後に、目を閉じ鼻を摘んで落下によって水面に叩きつけられ、身体の内側が砕かれたような衝撃から数秒たって水面に顔を出せば。

明らかな破壊痕のあるどっかの下水路みたいな空間が一部壊され穴が開いて露出しちゃってる状態である事が分かった。

下水で川をサンドイッチしないであげて欲しい。環境問題が過ぎるだろ。

そもそも、なんで下水道をそこそこデカい川と繋げてんだ。と言うかその上に橋建設しようとすんなよ……

 

そして一番の問題。

「くっっっせぇ!!」

めっちゃ臭い。

なんか水がヌルヌルしてるし口呼吸もしたくない。

目開けちゃったけど絶対ヤバいだろこの下水路。

 

下水というか汚水というか、大体ほぼヘドロみたいな濁流に流されつつも点検用のポール梯子を使って悪臭ながらもヘドロから抜け出して地面に膝を着いて楽になる。

 

「────!!」

しかし、管理が杜撰で廃墟まみれなゲヘナと言えど、開発中止地帯で今も使われてる水路があるとは驚いた。

めちゃくちゃ濁流の音凄いし、普通の生活汚水とかもこっちに流れてるのかな……

「──ホ─────!!」

水路を反響する音が人の声に聞こえて不気味だ。

 

……いや、反響が大きくなって近付いてくるのが分かる。

 

「ゲッホゲホゲホーーッ!!? 誰かぁーーー!!!」

なんかドリルと一緒に流されてるのもいる。

 

思わず疲れた空気が口から漏れた。

あー……そういや補習部編、存在=爆発って感じで君たちいたね……?

なんでグループの頭脳居ねぇんだと思ったらこんなとこにいんのかよ、鬼怒川カスミ……

 

 

 

「ハァーハッハッハ!!いやぁ助かったよトリニティのお嬢さん」

「はぁ……」

疲れてる身体に鞭打って、何とかヘドロの濁流からバタバタ暴れる萌え袖女を引き上げれば。

 

「いや〜ホントホント、みたまえワタシのこの背丈を! お嬢さんがいなきゃ助からなかったよ」

「ヘイヘイ……」

何処までも道化なフリをする温泉開発部の部長、鬼怒川カスミを発掘してしまった。

秩序側の空崎さんことヒナの真逆で、思いっきり混沌(テロリスト)側にいるゲヘナ2年生。

そしてコイツが一番厄介で恐ろしいのは口達者であり、逃亡を含め自分の利益込みで選択肢を誘導させることだ。

 

「それに恩は売っておいて損はないだろう?元トリニティ自警団の『双翼』」

「……何処まで知ってんだお前」

オマケに耳聡いし、ちょっとしたことで背景を推理出来る頭良さ。

 

「むしろあれだけ暴れ回った〝根無し草のトリニティ生〟〝旅鴉〟〝悪魔の手榴弾〟これらの話を知らんフィクサーなんぞたかが知れてるだろう?」

「お前キライ……」

「なんと!ワタシはキミの事を好意的におもっていると言うのに!!」

「フィクサーがフィクサーである事を知るのは自分だけで良いんだよ!!」

アホのフリを日常的にする頭脳派程怖いものは無い。

「あぁ、大衆娯楽に人生を捧げる羽目になった作品に出る何度でも復活するのヴィランの受け売りか」

教養すらあるのはトリプルスコアでボコられている気分さえしてくる。

 

「うっせぇ!空崎さんに突き出すぞ!!?」

「ふむ、それは良くない。ソレをすれば『双翼』、キミも捕まる事になり両者のリソースを無駄にする行いだろう?」

「くっっそ、コイツマジで殴りてぇ……!」

「暴力はやめたまえ、ワタシもキミも弱い部類だろう?」

「だぁーー!!もう!!人のことへんちくりんな二つ名で呼ぶなよ、名前で呼べ!!」

「しかし、『双翼』は自ら『双翼』と名乗……」

「俺が悪かったから!!ルカって呼べ!!呼んでください!!」

ちくしょう、フィクサー力で全く持って勝てない。

この場にスクラッパーが有ればぶっ飛ばして下水の中に埋め込んでやれるのに何で持ってこなかったんだ!!

今一番後悔してる。

 

「……それでこの後どうするつもりなんです。温泉開発部部長、鬼怒川カスミさん」

「それはキミが決めることでは無いのかね、『ルカ』さん」

「……マジ、ぶっ飛ばす」

 

 

 

 

 

ゲヘナの有名テロリストに謝礼代わりのお願いを仕込んでから、やっとこさたどり着いた試験会場……近くの裏路地。

本編じゃここに温泉開発をしに来るのである。

 

 

「……あった」

目の前にあるのは起爆装置とそれに繋がれたコードが置きっ放しになった危険物を処理する。

ある意味カスミに遭遇したのは運が良かった。

温泉発掘のタレコミがデマである事とアビドス砂漠でのカイザーが発掘作業してる話を引き換えにテロリストを引き上げさせれた。

念の為危険物処理をした後、少し待ったが……誰も来ない。

時計を見れば試験開始時間。

解体作業が試験開始時間まで掛かると思ったけど思いの外早く終わった。

……3秒ルールじゃないけど遅刻してでも会場入りしたら試験受けさせてくれないかなぁ。いや、無理か。

脳裏に浮かぶ紅茶がぶ飲み立ち絵女(桐藤ナギサ)が『駄目です』と両腕を交差させてNGを出す図が浮かんだ。

 

 

とは言え、点数にならずとも、現地行って皆に謝るべく足を会場に向ければ。

刺々しい視線と共に背に肉を裂く痛みが走った。

 

「痛……ッ!?」

慌てて嫌な刺々しい感覚、及び痛みが走った方向を遮る様に遮蔽を確保する。

 

 

キヴォトスに転生して送ってきた人生では確かに銃の必然性があった。実際にキヴォトス人に向けて撃とう死なないのだから使っても良いと思うこともあった。

だが、ヘイローを壊す事は可能だ。

しかし、それは銃に限った事では無かった。脱水症状でも死ぬし、殴り続ければ死ぬし、空腹で飢えて死ぬなんてこともある。

結局、全ては使い方次第で変化するのだと。

 

俺がこの世界で生きてきて、本当に一番大切だと思ったことだ。

 

だから今ここで汚水にまみれた衣類のポケットに入っていた簡易アーマーや申し訳程度に水路で清掃した肩掛け加工してある愛銃を展開する。

俺は名実含め、単純戦闘能力は雑魚だが、それでもキヴォトス人として生きてきた。

だからこそ、手放さなかったし俺の答えとも言える愛銃を構え、戦闘態勢に入る。

 

 

 

──俺が構えたそれ(愛銃)は一丁のサブマシンガン。

無論それはただのサブマシンガンではない。

 

PDW(個人防衛火器)

サブマシンガンの規格でアサルト弾に近しい貫通力を使えるようにした事が売りであり、それこそがこの銃の区分を設けられた理由になっている。

しかし、愛銃に装填されているのは50AE弾。

本来貫通力を持たせる事で従来の短機関銃から脱却した筈のソレは、大型拳銃用の弾丸を連射させるという狂人ですらやらないであろう愚者の武装へと変わり果てていた。

 

そう、大型拳銃弾を連射するメリットは一切ない。

エネルギー比較をしてしまえばアサルト弾と同じくらいであり、連射するならアサルトライフルを使えば良い話なのだ。

更に弾速も遅ければハンドガンサイズに加工されているものだからブレや反動もそれなりにデカい。

 

それだけのことをして得られる恩恵は殺傷能力の低下。

何一つとしてメリットのないカスタマイズ。

 

だが―――――――。

だから、この世界で――――。

だからこそ、このキヴォトスにおいて愚者の武装を使う理由になりえた。

 

「当たれこんにゃろうッ!!」

トリガーをワンタップし、弾丸をばら撒く。

銃を向ける大体の方向さえ合ってりゃ案外当たるモンだ。現に俺を撃った方向から激しめの足音が聞こえる。

 

「そ、こ、だオラッ!!」

足音に対し真正面へとキヴォトス人パワーで大回り気味に飛び出して顎に一発ハイキックをぶち当てる。

「さぁ面見せろ。そんでなんで襲ったのか吐い……て……」

顔を見ると同時に背筋が寒くなる感覚があった。

 

「……流石に一撃で昏睡させれる訳はないか」

即座にその場を飛び抜け、慌てながらも再び遮蔽に身を隠す。いや、訳が分からない。

攻撃は当てたし当たったのはいい。が、相手に関しては訳が分かんねぇ。

 

「なんでこんなとこにいんだ!!?」

威嚇掃射が行われる一呼吸の間で、再び遮蔽を飛び出して敵へと詰め入り銃口を向ける。

引金を引き、眩いまでの銃口から灯される閃光は、弧を描く様に点滅を繰り返し、21発もの弾丸を正中線上に撃ち放つ。

 

「は、虚しいな」

超至近距離――最早ゼロ距離に等しい距離からの攻撃。

だがそれはあっさりと。呆気なく避けられてしまった。

「なッ!?」

「一瞬で間合いを詰めての強襲。噂に聞く通りの攻撃、末恐ろしい。だがそれだけだ」

銃身を掴まれ、行動に迷った刹那、横腹を素早く蹴り飛ばされる。

「ぐぅっ……!!」

蹴られた勢いを殺さないよう転がって起き上がる。

「如何に奇をてらった強襲で反応が遅れようと、貴様との間合いをこちらも詰めればタイミングがズレる。そのズレで射線を避けることなど造作もない。どうやら戦闘そのものは不慣れな様だな」

「黙ってろ!!」

勝手なことを抜かすな。これでも何とか銃器のみでも応戦出来る程度には成長したんだ……!!

言い返したい。ぶん殴りたい。

そんな衝動的な感情に釣られて前へと進みかける身体を本能とも言える野性的感で後ろへとステップ。

 

そして、この世界においてコンビニや自販機等でお手頃に購入が出来るグレネードの一つ、スモークグレネードを手に取って投げる。

期限間近の在庫処分セールでお値段なんと500円。

聖水入りとか書いてあったからゲヘナ生には多分ダメージもちょっと入るオマケ仕様。流石に汚水に浸かったから汚ぇし使えるか微妙だが無いよりマシだ。

 

「……チッ、煙幕か。……しかし」

スモークが間を埋め尽くすが、僅かな光が瞬き、銃声が響く。

数発の弾丸が脇を掠め、地面を抉る。

「っ!?」

はぁ!?

え、今撃った!?

 

「音で分かる」

「痛……てぇ……」

 

嘘だろ……

どんなクソトレーニング積まされたんだお前ら。

ツルギ先輩でも絶対まだ優しいぞ。

気付けば衝撃が頭に走り、右の頬骨が腫れる様に痛む。

 

グレネードを投げてスモークが発生してから直ぐにリロードを行った。

姿が見えなくともその僅かな音でさえ命取り。

先程まで居た場所に銃弾が打ち込まれる。

 

……煙幕はまるで効かないらしい。

なら――――……!!

 

 

「……其処か!!」

 

刹那、煙幕越しに光が瞬きこちらの方向を捉え、放たれた弾丸が肉を削ぐ。

 

「痛……ッ!!」

 

痛い。しかし、先程当たった程ではない。

体には命中せず、頭上や頬の肉を削って通過していった弾丸程度ではこの勢いは止まらない。

否、止めれる訳が無い。

こんなちょっとした切り傷なんかで――――。

「止まれるかぁぁぁぁあああああああああ!!!!」

当たりどころが悪かったら……と血の気が引いていく身体を、無理矢理奇声を叫んで。

 

誤魔化す。

声で理性を飛ばす。

怒気の混じる様な獣じみた低い怒声を叫びながら進む。

 

 

無理やり進む。

身体に向けられる弾幕の照射が身体を削りながらも、痛みを誤魔化す怒声を上げる。

「当たれるかよッ!!!!」

――――超低姿勢での突撃。

転ぶギリギリの状態で懐に最速で潜り込み、勢いそのままに体当たりで無理矢理体勢を崩させ、顎に照準を定める。

 

突貫即撃。確実に当たる距離まで肉薄して、破壊力に特化した弾で脳を揺らして気絶させる。様々なトラブルに巻き込まれていくうちに出来上がっていったその奇襲を主にしたスタイルはゲリラ戦のエキスパートにさえ牙をむく。

「これで……」

 

 

 

「砕かれろぉぉォォォォォオオオ!!」

引金に力を籠め、装填された弾薬を吐き出させる――――……

 

はずだった。

「ぐぁ……!?」

こめかみに衝撃が走る。

そのあまりに強い衝撃は体幹を崩し、体ごと倒れる。

突然の出来事に戸惑うのもつかの間、激痛が頭部から伝わる。

「甘かったな。一対一なら効果はあったかもしれないが、生憎こちらは部隊で動いている」

頭に響く鈍痛が、体から力を抜いていく。

自身の脈拍に合わせ、体内から血液が失われていくのが分かる。

「えへへ……痛いですよね、こんなに血が出て苦しいですよね」

「逃げたって意味なんてないのに」

「……(これでミッションクリアだね)」

マスクをつけた少女の背後から三人の少女が声と共に姿を現す。

「あぁ姫、そうだな。早いところ連れて行こう」

ロープを取り出し、彼女――錠前サオリは言う。

「『マダム』の元へ『福音の少女』を届けよう―――――」

 

ズキズキと痛む身体から抜ける力を必死に繋ぎ止めて下手人を含めた部隊員『アリウススクワッド』の面々を捉える。

「マジで、どういうことだよ……な、んでここにいんだ……」

「お前がそれを知る意味は無い。アリウスの怨念を晴らす贄になれ、那賀波ルカ」

ふざけんな……訳が分かんねぇぞ錠前サオリ……!!





今回のOne PointTopic:試験会場行って爆発だけ先回りで止めるだけと本人は思ってました。





宣言通り7月更新出来て良かった……
リアル都合や他の執筆活動やらゲーム等で投稿が遅れることがあるかもしれませんが今後ともお付き合い頂ければと思います。

今後もゆっくり書いていきますので、これからもゆるく長くお付き合い下さい。


いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでいつもガソリンになってます!
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