キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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お待たせ致しました。
活動報告にない16話です。
嘘です、本当はこれ込みで15話に出す予定でした。


十六話 keep on rocking

 

 

一瞬、意識を失う程の衝撃。

 

被弾したであろうこめかみから、何度もハンマーで叩かれているような重たい痛みと衝撃が響く。

 

 

「えへへ……痛いですよね、こんなに血が出て苦しいですよね」

……クソ痛ぇけど困惑に対しての怒りの方がデケェよ。

こうなった元凶である狙撃手をボヤけた視界の中で捉え、苦痛に顔を歪めながらも周囲を把握する。

 

「逃げたって意味なんて無いのに……」

身体を起こすために無理に力を入れて自重に潰れる俺をどうでも良さそうに見るのが気に入らない。

 

 

──未来を知ってるから余計に気に食わない。

 

倒れ込んで朦朧とした視界の中、吸入器を取り出し中身を吸い切る。……吸引口にカバー付けといて良かった。

 

「……今、何をした」

「喘息の薬だよ、ボコボコにされてパニックになりかけたモンでね」

後は薬が廻るまでの数秒を稼ぐだけだ。

 

「まぁいい。意識を保てるとは思っていなかったが、マダムに差し出すのは変わりない」

 

「……それにどういう目的がある?」

「貴様が知る必要のない事だ。少なくとも貴様を差し出せば姫が救われる。ソレには感謝しておこう」

 

「そっか」

徐々に意識が。霞んでボヤけた視界が、鮮明になり普段ではありえない程の神秘がゆっくりと循環し始めているのが分かる。

「何も、教えられて無いんだな……」

「私は兵士。道具だ。主が与えた役割を全うする」

 

……やっぱり気に食わない。

「余計な同情などいらん」

「ちげぇよ、ただ無性に腹が立ってんだ」

呼吸も整った。力も出る。……後は。

 

「クソババアがクソババアって言われる所以を見せつけられてなッ!!」

 

────死ぬ気でアリウススクワッドを全滅させる!!

 

 

「全員仲良く編入出来るように嘆願書書いといてやる!!」

サオリの腹を両足で蹴り飛ばし、その勢いを使い後転するよう両手を地面に着け、ハンドスプリングの要領で跳ね起きる。

 

「ぐッ!?」

 

「リーダー!! ちッ!」

 

舌打ちをしながらミサキが足のホルダーからリボルバーを取り出し、照準を向けられるが――――

 

 

 

「遅い」

 

顔を掴み地面に叩きつける。鈍い音が響いて、ミサキがバウンドした所を蹴り飛ばす。

 

「ゔぎッ!? ぐぁ……あ」

 

勢い良く木に衝突し、うめき声を漏らしてから全身が弛緩するのが見える。意識を失ったのだろう、ラッキーヒットだがこっちとしては大助かりだ。

 

「……!!」

アツコがアクションを取ろうとした瞬間に、ベアトリーチェから与えられてるであろうマスクに照準を合わせて全力の右ストレートを入れる。

「全部……ぶっ壊すッ!!」

マスクに直撃するも皮膚が少し裂ける。

受け身を取るも体勢が崩れたアツコに対してマウントを取り、即座に二撃目。

……硬ッッッッッッてぇ!!?

いや、なんの素材で作ったんだよあのババア!!

バカみたいに硬いマスクにベアおばの執念すら感じる。

「……でも壊す!!」

アツコには悪いが銃床を叩きつける様にしてマスクをぶち抜く。ヒビが入り、一部ではあるが破片を散らしてマスクの中身を曝け出す。気を失ったアツコの顔が見える。

 

流石のキヴォトス人だろうと何度も頭を揺らせば、気絶してくれていた。

予想以上の動きをしているからか。

はたまたドーピングの影響か。呼吸をするたび、ズキズキと全身が痛みながらほんのりと茹だっているのが分かる。

 

「な、姫ちゃん!!」

 

「オマエも――――」

 

 

「寝てろ!!!!」

ヒヨリの懐に飛び込んで膝蹴りをブチかまし、アームハンマーを後頭部に振り下ろす。

 

うまくクリーンヒットしたらしく、身体が一瞬浮き上がりそのまま地面に落ちる。

「な、なんなんだお前は……」

「お前等の言うマダムが狙ってる巷で噂の女子高生……らしいぞ」

 

腹部を抑えながらこちらを睨みつけるサオリに向かって歩く。

 

「どういうことだ……! ヘイローが、ヘイローが分かる程に見えるなんて普通じゃあり得ない……ッ!!」

 

サオリの視点では俺のヘイローが見えるようで目線が頭上に浮かんでいるのであろう天輪に焦点が合わせられている。

……というか、神秘を濃くするとヘイローが見えるようになるのか。新たな発見をした。

 

 

「そりゃあ、まともに戦ったら敗けるからな」 

 

本家原作のブルーアーカイブには、生徒の能力を強化したりする為の素材“オーパーツ”が存在する。

無論、それは俺が生きるこのキヴォトスでも同じ。というか、俺が本家原作の中で生きるんだから同じも何もないけど。

そんな不思議素材は、色んな所で拾えるしなんならマーケットで探せば買うことも出来る入手が簡単なモノだった。

 

そんな“オーパーツ”の中から、水晶埴輪とエーテル結晶を集め、粉々に擦り砕いたモノを独自配合して作った通常“聖煉粉末”。

3分持つかどうかの短い時間と副作用で半日は寝たきりだが、効果は絶大。一瞬ではあるとは言え最高学年生徒に迫ることも出来なくはない。絶対にやらないけど。

 

 

「だから全部取っ払うんだ」

 

ドーピングで血の流れが加速して人体から鳴らしてはいけない程度にけたたましく唸る心音。そして咽喉部から感じる生臭い鉄の味と匂い。

心臓が爆発しそうな程に高速で流れる血液はキヴォトス人の物理的に頑丈な肉体によって循環され、発熱し。

 

意識が微妙に歪み、ふわふわとした酩酊感がキャパシティも倫理観も感覚も。

 

 

「頭のネジ全部取っ払わなきゃ」

 

 

 

――そして人格すら。

 

 

 

 

 

「――戦うことすら許されない」

 

 

――全て歪め、()()()()()()()()()

 

 

全速力でサオリの元へと飛び込み、腹を力いっぱい振りかぶって殴る。

「がッ゛……!!?」

 

拳の皮が圧力で裂け、擦り傷の様に出血した血液はサオリの腹部に痕跡を残す。

 

「硬っ……」

殴った感触からしっかり当たったのは分かる。

だが、鉄板を殴ったかのように骨から痺れた感覚で右腕の動作がおぼつかない。

 

直後世界が横に一転する。 

「サオリ姉さんをォ゙――ッ!!」

 

ヒヨリの対物ライフル。

一番厄介と感じたから頭に一発入れて落とした(気絶させた)つもりだったのにまだ起きてやがった。

 

身体を倒して地面を転がりながら、遮蔽物の側に逃げ込んで、撃たれた右の二の腕を力一杯握る。

「――痛ッてェ゙……!!」

痺れる右手でポケットから黒と白の粉が入った袋を取り出し、動く左手でソレを傷にそっと充てる。

 

そして、袋が血を吸わないうちに思いっ切り引っ叩いた。

 

――――パンッ!!と音を立て傷口から肉の焦げる煙と煤けた匂いを発する。

 

「――――グッ゛ゾ痛えッ゛……!!」

即席焼き(コテ)セット。

そう俺が呼ぶ綿花で作った紙袋の中には、ガンパウダーがはいっている。

キヴォトス人の膂力なら上手く叩けば燃焼し、焼灼止血出来るので何かあった時の為に一つだけポケットに入れてあるものだ。

 

 

「でも、コレで止血は出来た」

ジェット機の音みたいな甲高い耳鳴りが頭の中で反響する。

愛銃のマガジンを取り替え、一つ深呼吸。

轟音で唸る心音がギアが空回ってエンストする感覚を彷彿とさせてくる。

 

「……行くか」

もう一度深く息を吸って遮蔽の影から飛び出す。

 

主人公らしい王道の戦いは出来ない。

何もかも全部ぶっ壊して進む文字通り“歩く手榴弾”。

誰が付けたのかふざけた二つ名だが、的を得ているのがとても歯痒い。

 

自分の体が死なない程度の最低限のラインをボーダーにした外道。

俺自身が生存する為に、なりふり構わず突き進む凡才の(俺なりの)戦い方。

 

「さっさと落ちていれば良いものをッ!!」

サオリの声がする方角からマズルフラッシュが見える。

額が一瞬熱くなった感じがした。

触ればヌルヌルとした感触。

「掠ってるのか」

流石に出血し過ぎてる。汚水と血で汚い簡易ベストのポケットから造血剤のケースを出して丸剤を適当に口に含んで呑み込む。

生理時に使ってた奴の流用だが無いよりマシだ。

僅かでも有利に働くことを祈りながら、空になったケースをプレゼントする。

 

「そ、そんな必死になって襲いかかっても……!!」

 

アタマの中でトゲトゲしい痛みが悲鳴のように反射し、耳から高音の空気が揺れるような音が鳴り響く。

そんな、いやに喧しい音を振り払うように、頭を振る様に不意に。

 

咄嗟に一歩。

後ろにステップを踏んだ。

 

そしてついさっきまでいた〝そこ〟を銃弾が通り過ぎた。

「……ヘッ!?」

自信があったのだろう。下手人の悲鳴が聞こえる。

 

「……は?」

 

目の前まで迫ったサオリが一瞬戸惑いを見せた隙に銃口を反らし、脇を蹴り払う。

硬い。だが、拳を当てるよりも好感触だ。

 

直後再び頭痛と耳鳴りがないまぜになった煩わしい音が響く。

 

大きく。そして低く、ウェイビングを行う。

間合いにはまだサオリが残ったまま。

 

まるでゲームのアラートみたいだ。

一際煩い音はレッドアラートで、それ以外は警戒アラートみたいな感じ。本当に致命的な不味い弾だけ最優先で避けて、被弾以上のダメージを稼ぐ。

銃弾を当てるより全力で削る様に殴る方が効くのはある種ライフハック的なモノを感じる。

 

吐く息が限界に達して、再び空気を吸う一瞬。

その一瞬だけ現実に戻り、また深く潜って白む視界で必死に動き回る。

 

「こうも何故、避けれる――ッ!?」

フルオートに切り替えられたアサルトライフルの銃口から飛び交う弾幕をサオリから距離を取りながら旋回して逃れる。

 

──避けてなんかいない。

致命傷になる射線から逸れてるだけだ。深刻な被弾さえ喰らわなければゾンビアタックは継続出来る。

 

「お、おかしいですよ……何で当たらないんですか……!?」

鋭敏になった感覚がヒヨリの射線にいると警告するので、射線に向かって真っ直ぐ突き進む。

残酷であろうと生存本能に従順な殺気に向けて雑な威嚇射撃を行う。希薄になる殺気の元へ速度を上げて襲いかかる。

 

「フゲ……ッ!?」

低姿勢ながらも勢いを乗せた拳を腹部……いや、あばらに近いから胸部か。

真っ直ぐ胸部を殴った。

スナイパーだろうが咄嗟のことには当然対応する。

とはいえ、狙撃兵が近接戦最強なら俺はもうヘイローが壊れてるだろう。ずさんな抵抗に対し、カウンターの要領で二撃目の拳を今度は正しく腹部に当てて、ダウンさせた。

 

倒れながらも、そのまま這って開けた方へと向かおうとするヒヨリの首を足で絞め上げつつ、より締まるように背に乗り、左手で両腕を拘束して右手は頭部に添える様にして地面へと叩きつける。

 

「ね、姉さん……ッ゛!!」

悲鳴にも似た叫び声を上げながらもサオリに居場所を伝えるヒヨリの声を止める為に何度も何度も。

 

何度も繰り返す。

高速で流れる血が時間の経過と共に段々と止血した右腕に溜まり、腫れ上がっていくのが分かる。

 

キヴォトス人はやっぱり硬い。

 

恐らく先程殴った際にあばら骨に当たったその衝撃が決め手なのだろう。右手の中手骨が陥没、或いは折れた感覚がする。

 

だが、骨折り損にはならなかった。

「仲間は落とした」

残りはお前だけだ、錠前サオリ。

 

「どんな手段を使った……ッ!」

「さっき言っただろ」 

 

 

喘息の薬(ドーピング)って」

──何処までも俺は。

この透き通った世界において、グロテスクで異端な汚い概念だ。

 

 

「自らの腕すら焼く様な自殺行為を何故繰り返す……!?」 

「そこまでしなきゃ戦いの土台に立てねぇんだよ」

お前には分からないだろう。

無茶はするし、誰かの為に必死になるし、諦めないし、護りたがりなただの人(主人公)に少しでもなりたい。僅かでも近づきたい子供じみた願望なんてものは。

大人になってしまった奴の子供じみた願いは、子供であるお前にはきっと解らないよ。

 

俺は弱い。だから外付けで強化する。

何処までもお気楽でどっか抜けてるアホな面した凡人。

そんなのが真っ当に戦える訳が無い。だって俺だ。

周り(社会)の言う、得意なこと(求められないモノ)苦手なこと(求められるモノ)で出来た基準のグラフは、世界が必要としない大人の出来損ないなのだから。

 

だから、少しでも世界に許される為に()()()。 

「勝つために出来ることをするのは普通の事だろ」

 

「バケモノが……ッ!!」

バケモノで良いよ。

「少なくとも、道具として使い棄てられるオマエらよりマシだろ」

その方がきっとまだ人間らしく有れるだろうから。

 

「全ては虚しいものなのにッ!!」

「消えたものが残すモノだってある」

腕、顔、みぞうち、腕、腱。

近接戦に持ち込んでナイフ等を取り出させる間を奪い、攻撃に転じる思考を奪い、足を断つ。

 

「大人もまわりも誰一人助けないッ!!」

「逃げてもよかった。でもお前は逃げなかった」

腕、脇、腹、頬。

アサルトライフルを持たせたまま銃口は反らして、引き金を引かせ続ける。弾が切れるまでガードの緩い間を抉るように蹴り、叩き、殴る。

 

「分かったような口をォォ――ッ!!」

空撃ちをするライフルを振って応戦され、やや距離が生じた。その間を詰めた瞬間、サオリの振るうライフルが肘に直撃し、鈍くなった痛覚が鋭敏になって帰還したことを知らせる。全身から力が抜けていく。

 

「痛────ッ知ってんだよ!!」

左の拳を右肩に撃ち込んで落ちかけた意識を激痛で醒す。明日死んでてもいいから今動け。

サオリの振るうライフルの手元。グリップが緩んだ瞬間に合わせ、足元から体幹を崩し奪い取ったライフルの銃床を脳天に叩きつける。

 

予定が狂った?知らない状況?

知らねぇよ意地でも動け。

でなきゃ助けられるもんも助けられねえだろ。

「喰らえよ──正実直伝銃床叩き

──ガンッ!!

俯いたサオリの顎目掛けて銃床をフルスイングした。

 

 

「……ゆっくり寝ろ。出来るならこのまま本当にずっと寝ててくれ」

 

地に伏したアリウススクワッドの面々を眺めて、ため息が漏れる。

「ほんと……頑張ってるよ、サオリ。逃げずによく耐えれてる」

恐らく後数分もすれば別働隊のアリウス生に回収され、無理やり起こされるのは分かっているが……

「やっぱ助けてぇよなぁ……」

 

パチ────パチ──。

そんな折に。

 

足音と共に拍手が近づく。

「流石は歩く手榴弾。お疲れ様です」

 

「……マジかよ。ヘビィとか以前じゃん……どういう用件だ。わざわざゲヘナまで花火を見に来た訳じゃないだろ」

 

 

 

桐藤ナギサ

 

いつの間にいたのか一切分からない。

始めから見ていたのかそれとも、今さっきこの場に来たのか。

「彼女らはナギサ様のお知り合いで?」

「いえ、私がこの場にいるのはルカさん。貴女に用があったからです」

アリウスが現れたのは本当に偶然って訳ね……

糖分も酸素もろくに足りない頭でこの状況は理解出来ねぇよ。

なんでホスト代行がゲヘナ来てんだ。

 

 

「貴女を目の届く範囲に収めていれば、いずれ裏切り者に通づるナニカを知れそうでしたので」

 

少なくとも最近。

特に補習授業部で動いている際に、感じていた視線は監視を命じたナギサの私兵だったのだろう。いつから見張られていたのか。何故俺を見張っていたのか。グルグルと思考が巡る。疲れ果てて重傷な身体に世界は更に鞭を打ってくるらしい。

 

「……そうじゃない、私は聞いたぞ。どういう用件だ」

「取引をしましょう」

「取引ぃ?」

疲れ果て、今や死にかけな身体でなんで立ててるのかすらわからない俺にそんなモン持ち出さないでくれ。

そろそろマジで限界なの。不当契約になるの。

 

「ええ、少なくとも今の貴女のヘイローや目的に関しては一切触れる気はありません。ただ、トリニティの裏切り者に関することを教えていただけますか?」

「……本当にそれだけなワケ無いだろ。それだけなら茶会でも開けばいい話だ。何が狙いかを言え」

ミカのこと教えたって信じなさそうな奴の契約なんてしても無理でしょ……

 

「……のちのトリニティとゲヘナを繋ぎ、護る為の象徴になっていただきたいのです」

は?

……え?何、どういうこと?

「“ETO”こちらの方が分かりやすいですか?」

「ETOエデン条約機構の顔役をやれってか、断る。元々ゲヘナの風紀委員とうちの正実で担当する役回りだろ。ぽっと出の二年生が担当する案件じゃ無いじゃん」

もうこれ以上頭回す案件増やさないでくれ。

見ろよ俺の顔。多分血塗れ大量出血でほとんど思考回路パッパラパーなんだぜ?

 

 

「ふむ……そうですか。では、今のまま補習授業部の部長を今後とも宜しくお願い致しますね? あぁ、その前に部員を探す必要がありましたね。今回会場に部長が来なかったのですから、連帯責任として部員は処分しなくては」

「……おい待て。本気なのか?」

クソみたいな思考回路を焦がして、嫌な予感に足りない頭を回す。

 

「確か、自警団の一年生にちょうど良い子がいた気が……」

「本当にヒフミ達を切り捨てる気かよ!?」

「それがホストになるという事です」

「何言ってるか分かってんのか!!? 今!! お前は!!」

 

──友達と認識している後輩すら……それどころか。 

 

「無実と分かっている四人の学籍すら奪ってまで――――」

「じゃあ私の願いを聞いて下さいよ!!!!」

悲痛な少女の声が荒れた土地に響く。

 

「私だってこんな事したくない!!」

 

「本当の裏切り者だって聞きたくない!!」

 

「それでもこの学校を守らなければ!!」

 

 

 

「一体……一体、誰が皆を護れると言うんですか……?」

 

「教えて下さい……ルカさん」

 

「私は……私は……、どうすれば、いいのですか……」

 

「貴女の目的も聞きません……」

 

「貴女が優しいのも知っています」

 

「無理を言っているのは百も承知です」

 

「ですから……どうか……」

 

 

 

ズルズルと俺の元に縋り、崩れながら顔を伏せるナギサ。

「答えを教えてよ……ッ」

ずっと限界だった糸が千切れたのだろう。

地面に小さな雨粒が落ちた。

 

 

「分かった。わかったよ……」

思考回路は焼け焦げ、肉体が重傷であること。精神的摩耗や状況。ある意味本当に間が悪かったんだろう。

俺は“受け入れた”。

「ありがどう……ございばす……」

「あー泣くな泣くな……顔がグズグズじゃんかよ」

 

涙で溢れる顔を手で拭うも、汗に混ざった血がナギサの顔を余計に汚してしまい、頑張って拭き取る努力をしたが血塗れにしてしまった。

 

オマケにボロで貧血気味でろくに回らない頭が、堪えていた全身の緊張を解いた為に体が地面に倒れ、そのまま動けなくなってしまうマヌケの誕生だ。

もう電池切れだわ、まるで動けん。

 

 

倒れた俺の視界を覗き込むように。

 

ナギサが屈み込んでそっと俺の手をとる。そして一枚の用紙にそのまま親指を押し付けさせた。

既に視界は霞んでろくに文字も読めないし見えない状態。それでもロクなことは書いていないのは明らかな書類だろう。

 

「……少々強引になってしまいましたが、これで私は貴女の共犯者です。その代わり、貴女も私の共犯者ですよ。『ルカさん』」

グルグル回る世界の中でそんな紅茶先輩の声がした。

 

それにしても、だ。

サプライズアリウスなんて誰が考えるかよ。分からなくて正解だろ。まだエデン編は愚か補習授業部編すら中盤くらいだぞ……なんなら上手くいけば、限定周年ミカ様が全部蹴散らしてくれるとか思ってたんだからな……!? 

 

思考整理をしようにもリソースが足りず雑なのが分かる。というか眠気が凄い。

やべぇマジで眠い、ちょっと寝る…… 

 

 

 


 

 

そして現在。

「……やっぱ何回思い出しても訳わかんねえっす、ナギサ様」

「まぁ……なんと冷たい対応でしょうか……ルカさん。私はとても悲しいです」

「大根演技止めてくれません?」

 

気付けば旧校舎のベッド上。

丁寧に手当てされてることに感謝しつつ、状況把握の為に動かす都度涙が出てくる激痛に耐えながら人を探せば自習しながらお茶してるナギちゃん様がいた。

 

……これで何を分かれと?

 

いや本当にこれで何を分かれとおっしゃいます?

俺の死期か?

 

もはや混沌とし過ぎて原作の透き通った世界観の『透き通った』を一切感じられなくなってるんですがバグでございますか?

良い感じに皆を助けられるポッと出のワイルドカード係になってそっと退場する計画が頓挫どころか消え失せている。

ぜっっったいネームドキャラとして位置付けさせただろこれ。バッドエンド入ってないよね?

最後はベアおばのせいにしてアイツ倒してシナリオエンド出来るよな……?

 

一切知らない未来へと進む恐怖に泣きそうです。

家に帰って引き「あぁ、しばらくご自宅へは帰れませんのでご了承下さいね」

旧校舎とセーフハウスの何箇所かをローラーで移動させられるらしい。

……頭を抱えてます。

 

 

 

 




今回のOne PointTopic:那賀波の相棒ことスクラッパーは、ドーピングで死にかけるのが嫌で生まれた産物です。那賀波のガシェット開発研究はピーキーな産廃の開発を得意としています。




今後もゆっくり書いていきますので、これからもゆるく長くお付き合い下さい。


いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでいつもガソリンになってます!
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