キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
文字数少ないですが投稿です。
もうどうしょうもないから、ひとまずの確認をしよう。
「えぇっ……と、それで……あの時のアリウス生はどうなりますか?」
「しばらくは地下で尋問になるでしょうが、少なくともルカさんのしたような暴力的な行為は一切致しませんし、人間らしい最低限度の文化的暮らしは行えるでしょう」
「凄いけなされた気がするんだけど」
でもそれなら安心だ。ミカ様でなければ流石にぶっ壊して脱走とか出来ないだろうし、武器も取り上げ喰らってれば余程な事が無ければ制圧はしやすいだろう。
「しかし、よくアリウス分校の生徒と分かりましたね?」
「あー、古書館漁ってた時期があるので……まぁ……」
古書館今出禁喰らってんだよなぁ……賄賂替わりにドクペ渡したのはマズったのかも知れない。でもレア度合いだったら外の世界版のドクターペッパーチェリーフレーバーは同じくらいだし……
「しかし、凄まじい戦闘でしたね。途中からは目でマトモに追うことすら出来ませんでした」
「まぁ実戦じゃ初めて使ったし……今まで代用品で何とかしてたからね」
そう――そもそも、相棒ことロックスクラッパーの製作は元々偶然の産物だ。
キヴォトスにおける神秘とヘイローの関係性
ここに視点を置いてチマチマとゲーム上での強化素材や関連する文献を漁り、各地の学園の文化や風習、民間療法を集めて戦闘能力の向上を求めていた。
その結果出来上がったのが聖煉粉末。身体能力こそ飛躍的に向上するが、効果は3分と持たないし普通に薬切れたら重傷体に早変わりだ。特に四肢の筋肉が裂けてるので寝返りも歩行も半日は出来ない。
その理由はただ一点。
――――死にたくない。
でも未来を知ってる俺はどうなる?
先生がプレナパテスにならないという保証は?
そもそもこの世界がアプリの先生と同じルートを進むのか?
ろくに戦えない奴がいて意味はあるのか?
先生に未来を伝えてどうにかする必要があるのか?
未来が変わらない根拠もないのに?
戦えるようになっておく必要があるのではないか?
戦うなら少なくとも最終編のアシストが出来なくてならないのではないか?
中等部時点でまともに戦うことすら出来ず逃げることも出来ない足手まといが?
────何より。
何より、俺に意味はあるのか?
一番考えたくないこと。
一番起きてほしくないこと。
無駄に。
無意味に考え込んだ。
ただ、先生を歪める為にいるのではないか。
ただ、ルートを修正する為のパッチではないのか。
俺にある前世の記憶は本物なのか。
俺が、元男の那賀波瑠夏である保証は何処にもない。
だから――。
何処かに理由があるはずだ。
何処かに。
何処か俺が居なければならない理由が。
この世界で生きる理由があるはずなんだ。
求められた役割が。必要とされる存在があるはずだ。
でなければ。
こんな得体のしれない知識をもって生まれる筈が無いのだから。
そんなどうしようもない恐怖心に比べれば、痛みなんて俺がいる意味、ある種の生の実感を感じれた。
俺が生きてても良いと言われている気がした。
だから各地に行って人も助けた。
本編に極力関わらずにひっそりと生きていけるならそれでいい。
────でも。
でも、もし万が一違ったら。
そう思うと怖かった。
俺が先生の代わりに盾になる必要があったら?
それとも俺が先生の代わりになる必要がある?
俺がホシノの代わりに黒服に付いていって犠牲になる必要があったら?
誰かに助けて貰うことなく、縛られ、磔にされ、この世界で死ぬまで苦しむ必要があった?
俺がアリスの傷として消される必要があったら?
ミレニアムに入学出来ていない時点でもう崩壊が始まっている?
トリニティで。ゲヘナで。
百鬼夜行で。レッドウィンター、廃墟、ヘルメット団、七囚人、連邦生徒会、聖徒会ヴァルキューレ地下迷宮カイザー神秘ネフティスミメシスエデンカルヴァノグパヴァーヌサンクトゥム攻略……
───そしてプレナパテス。
実はこの世界は、ただ人を苦しむのを望むサディストに作られただけの、机上の世界で。
なんてことはない二次創作でしかないのではないか?
そんな可能性すら考えた。
不安が重なり、疑惑が積もってずっと渦を巻いて砂嵐のように視界が塞がれ続けた。
考えれば考える程に世界が見えなくなった。
だからこそなのだろう。
人に必要と言われて。
阿慈谷ヒフミに、桐藤ナギサに。
キヴォトス各地で不意に助けを求められて。
苦しくって仕方がなかった世界がほんのり晴れた気がした。どうしようもなく、藻掻いて足掻いて行き着いた先の答えが“なんとかなれ〜!!”と“なんとかならないなら、一切逃げよう”である。つまり行き当たりばったり。
こうして俺は、生を実感してしまう悪癖が出来上がった。本当なら関わらない方が良いんだ。
それでも詐欺に遭遇してボッタクられかける子を助けたい。強盗に襲われる子を助けたい。不良から逃がしたい。助けたい。守りたい。庇いたい。
際限なく湧く欲求は、本来の目的を達成する為に生み出した弱者が盤面をひっくり返す兵器を持ち出し、自慰行為にふけった。
───そう、それが1年前。
元自警団の『双翼』とか名乗ってた羽無しのアホこと俺だよコンチクショウ!!!!
なんだよ左右どっちの翼もないからあえて『双翼』って!?痛々しいわ!!
「き、急に床を転がり出してどうしたんです!?」
「殺せぇ!!俺を殺せぇ!!」
「安静に!!絶対安静と言われているんです!!なので早くベッドに戻って下さい!?」
痛い!!余りに痛々しい!!なんなら物思いのふけり方さえ痛ましいが過ぎる!!
『ラスボス倒す力が無いから外付けで強くなれる兵器を作ろう!!』まだ分かる。でもさぁ!?
『助けて喜んで貰えるの嬉しいから対ラスボス用兵器担いでヒーローごっこ』……バカじゃん!!
そら対面にいた奴ら急成長しますよね!!
本来聖煉粉末と併用予定とはいえ、ボス討伐に作ってるモンを人に振り回してたらさぁ!!
そりゃアズサもゲリラ戦仕掛けてても押されるわなぁ!?
なんかツルギ先輩とかバカ強くなってましたし!!
前の美食研究会との戦闘なんて先輩返り血だけで傷無かったし!!
その癖、その開発者が対ボス用武器持って来ずにいたらボコされて、慌ててドーピングしてカミカゼ特攻でトントンな位に戦場のレベル上げてどないすんじゃボケェ!!?
俺が戦いについて行けてねぇじゃんかよぉ!!!?
「……ナギサ、キミの共犯者は随分と騒がしいようだね」
「セイアさん……それは私も気にしている所なんです」
転げ回る身体を止め、恥ずかしさが紛らわせていた激痛を甘んじて受け入れながら部屋の入り口を見れば。
──そこにはボイス不明だったセクシーフォックス先輩がいた。
「え、セイアなんで?」
「ふむ、私に対して敬語である必要は無いが、初対面でありながらキミは随分と元気だね」
……cv:種崎◯美さん!?
いや、まだそうとは決まって……
「すいませんセイア様、『ぶっころすっ』とか『温めますか』って言ってみてもらっても良いですか……?」
「……何を言ってるんだい?」
「ミカ様の発言を思い返して、ちょっと声高めに可愛い感じに言って見て下さい!!」
「……『ぶっころすっ』」
種◯さんだ!?
え、まじで!?ミュート芸だの未実装煽りされてたセイアのcv:◯崎さんなんか!!?
「ありがとうございます!!」
「……彼女は相互理解の為に存在している言語能力が欠落しているのかい?」
「分かりません……」
「そんなことよりも彼女が転げ回っていたことが問題です」
つい前世で知ってる声優さんの声を聞き興奮して間抜けを晒した俺の背後に、聞き覚えのある声が。
背徳の救護、
「救護ォォォーー!!」
飛び出した先には背後からいつ移動したのかミネ団長が構えており、軽く振るった二の腕がモロに当たる。
ムニッとしててこう言うとこだけ女の子らしい触感するのズルいなぁ……いや、というか団長どこから現れたんですか、窓か?
団長から繰り出されたラリアットによって床をバスケットボールの様に跳ね、ベッドの上で俺の意識は綺麗に刈り取られた。
「重傷どころか文字通り瀕死だったんです!!絶対安静なのに点滴まで勝手に外して……!!」
「はぁ……説明も何もまだだが、どうするんだいナギサ」
「ある程度の回復が見込めたら本題の会議をしましょう……」
呆れた様な、何処かアホを見るかのような発言が俺が保った意識の最後に聞こえた。
……ティーパーティーなんか嫌いだぁ!!!!
今回のOne PointTopic:那賀波は絶対安静を必要ならば軽く動くのは許される位と考えています。
行ってらっしゃいシリアス、お帰りシリアル……(出入りがこれから多分横行します)
これからも、逃げ回る。のお話にゆるく長くお付き合い下さい。
いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでいつもガソリンになってます!