キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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書いてた分が大体良い感じになったので、投稿です。
前回と違って今回はなんか文字数多いです。


十八話 arrive the EDEN

 

「……おはようございます」

ムスッとした顔で、拘束具でベッドに縛り付けられていることに不満を出しつつ、起床の挨拶をする。

目の前には医療器具の置かれたカートの整理をしながら監視をしている、蒼き団長ミネラゴン剣さんがいらした。

「なんで縛られてるんです?」

「ご自分の愚行を振り返ったらよろしいのではないですか?」

それが分からないから聞いたんですよ、ミネ団長?

よく分からないままに救護タックル……いやエルボー?まぁ何でも良いや、いきなり意識飛ばされて気が付いたら隔離病棟クラスの拘束具は流石に俺、分かんないです。

 

「はぁ……あー、それで? どれくらい私寝てました?」

「……まだ救護してから3日しか経っていません。むしろ今意識を戻したのが不思議な位です」

俺が繋がれている点滴を変えながら、ミネ団長はそう言う。周囲を見れば前回目が覚めた場所と違うから、別の拠点に移された感じか?

 

「まぁ団長もご存知の通り、変にしぶとい所あるんで……」

「平均より抜きん出た生命力なのは確かですが。だとしてもまだ安静にしていて下さい。強制的に寝かしつけるのは貴女自身への負担も大きいんですよ?」

「ハイ」

『抜け出すなよ?』と前もって釘を刺されるが、流石にそんな何度も抜け出す様なことはしてない。

「セリナから貴女のことは聞いています。当然カルテも」

「ハイ、アンセイニシテマス……」

どうやら一通りの事が終わったのか、ならば良しと言わんばかりにコクリと頷いて団長は部屋を後にする。

 

「……あ。ご飯とか荷物のこと聞いとけば良かったかも」

団長の去った部屋に縛られて虚無のような。いや、文字通り虚無の時間を過ごしていれば。ふとそんなどうでもいい事が浮かんだ。

どうでもいいは言い過ぎか。生きる上では必要なことだし、荷物に関しても手元に無きゃ困るものだってある。

 

「最近はてんやわんやしてたもんなぁ……」

補習授業部にぶち込まれた挙げ句、原作そっちのけで部長に指名。今までのんびりやってた研究開発のリソースを削って軌道修正案練ってた筈なのに、いつの間にか完全拘束で隔離中だ。

……ひょっとして救護騎士団って俺の天敵なんじゃないか?天敵に点滴されるなんつってな!!ガハハ!!

 

「……流石につまんな過ぎる」

「なら私が来て幸いと言った所かな?」

勝手に自分の脳内で垂れ流した下らない洒落を死んだ顔で自嘲してれば。

 

「へ…?」

「失礼、ノックはしたんだがね。ひとまず入っても?」

意識が飛ぶ前に居た存在。

後の未来、先生が意識を失う事となるエデン条約編で語り部を担う少女。百合園セイアが僅かに開いたドアから顔を出していた。

 

 

「さて、本題に入っていいかい?」

ストーリーで見たことのある立ち絵そのまんまな姿。

そして療養中であることの表れか点滴をしている状態なのが余計貧弱そうに見える出で立ちの少女、セイアは部屋にあった丸椅子を持ってきて座りながら言う。

 

「本題……とは?」

「ここに来た私の理由さ。一生徒である君に、生死不明になっているとは言え、ティーパーティーのホストが雑談をしに来ると思うかい?」

「ミカ様に嫌われたり反発されるの、そういう所だと思いますよ」

一般生徒相手だとこうなるんですねセイア様って……

 

「そ、それは今しようとしている話と関係無いだろう?」

「ぜぇ〜ったい関係ありますよね、それ」

アリスク関係の話するならミカに触れない訳にいかないでしょ。第一、ミカの反発がセイア由来の部分あるの知ってるからね?

 

「……分かってはいるんだ、今みたいな発言がミカにとって負担だったことは。だが……」

「ティーパーティーというか、トリニティ生って本音と建前の使い分け上手く出来る奴少ないっすよね〜」

実際、ナギサにミカ、コハルやハナコ。アズサとかマリー、サクラコと素直になれなかったり、素直過ぎて建前が使えなかったり、勝手に解釈されたりと、本音の扱いに困っている子が多い印象だ。

 

「そうは言うが君も大概じゃないかい?」

「私は人並みにやってますので。これでも元々ミレニアム志望でしたから」

その点ゲヘナは良い。

どいつもこいつも、自分に素直過ぎで問題起こす奴しかいないから横っ面ぶっ叩けば治る。

生徒の平均的な性格とか民度は嫌いだけど、殴った奴は大体友達或いは舎弟みたいな精神性は好きだ。拐った相手にもご飯くれるし、逃げやすいし。

 

「第一、負担ってそんな高頻度で言ってたんですか?」

 

「ティーパーティーとして話をしている際は特に」

「割と負担だ……」

ミカ側からしたら皆で学校のことを話す場でカウンターパンチばっかしてくるセクシーフォックスは確かに嫌かも知れない。

 

「ミカにもミカなりの考えがあったのだろう。しかし、歴史や今までの記録からも例の無いものをそう簡単に話が膨らんでしまっては問題になる」

 

「それは……『何故・何・どうして』を教えてあげれば終わる話だったんじゃないんです?」

「それくらいは考えたさ。でも、時には中々引き下がらなかったこともある。アリウスの件なんかが特にそうだ」

アリウス分校の存在を知り、アリウス側が憎んでるとかトリニティ側が受け入れづらいとかそんな事情を知らなかったミカは、『仲良くしたいから』という善意で行動を起こした。

その結果、セイアに対してドッキリをアリウス協力の下仕掛けるつもりが、アリウスの手で暗殺計画にされてしまい病んでしまっている訳だ。

 

 

「アリウスの一件こそ、一緒に考えようって言うべきだったんじゃないんですか?」

「それは……そうかも知れない。しかし、共に答えを探すというのは互いに負担が掛かる。その負担を彼女に……苦心していたミカに更に負わせるのは迷惑ではないかと……」

「要は余計な重りになりたく無かった。と」

 

言えよ。

言ったら終わるすれ違いだったじゃん。

 

「どうしてアンタらティーパーティー共は『ごめんね』『良いよ』で話出来ないんですか?」

「が、学園の運営を君はなんだと思ってるんだい!? そ、そんな簡単な……園児の話ではなk──「園児の話ですよ」」

セイアの目が大きく見開かれる。

 

「そんな簡単な話なんですって」

ゲヘナ・トリニティ・ミレニアム。

キヴォトス三大校と呼ばれる程に大所帯となっているこの三校には共通する運営方針がある。

それはどこだって生徒会と言える組織が存在していることだ。

必ず相談し合えたり、意見を聞くことが出来るように組織が作られるのは案外難しい。

 

「誰にも合わない靴って話知ってます?」

「どういう話だい?」

「『──誰かに合う靴とは、誰かに合わない靴である。

であれば、皆が履ける靴を作るならば、踵を潰す。つま先に綿を仕込む。多様な創意工夫を持って誰にもぴったりとは合わない靴を充てがうのが大衆にとって良い靴屋なのだ。』って奴です」

確か昔読んだ作品のキャラがそんな感じの話をしていた気がする。

 

「学校の運営なんてつま先に綿入れてなかったり、踵を潰して靴履くことをしなかった奴が勝手なこと言うのがデフォです」

実際に声を上げるのは抗議の意思を伝えるには持って来いのものだが、それ以上になるにはその声を拾う必要がある。だからこそ、靴の履き方を教える者たちがいて、靴を渡す者達がいるのだ。

 

「キヴォトスには、ゲヘナなんてとんでも学校がありますし、中道を行くミレニアムもある」

不良生徒の溜まり場というか、不良漫画の舞台としか言いようのないゲヘナじゃ、生存優先で学校運営なんて考える生徒ろくに居ないし。

 

「お嬢様方はミカ様を見習ってもう少しワガママに振る舞ってみては?」

「……ふふ」

「笑うとこじゃないでしょ……」

「いやなに、一番ワガママが許されない状況の君が言うと随分面白いなと……ね」

「セイア様、皮肉が随分とお好きっすね!?」

それも結構火力の高い皮肉を好むのはトリニティ生の良くない所ですよ。ティーパーティーの伝統芸だったりします?

「首輪が繋がれているのによく吠えるね」

「喧嘩売ってます!? 良いぞ、買うぞ脇見せ先輩!!?」

「む、これは私の体温管理を適切に出来るようにした制服であって、その様な言われは無いぞ!?」

 

そんな風に軽口を叩く。

いや先輩相手にこんな軽口叩いて良いのかちょっと不安にもなるけど、多分楽しんでるのだろう。セイアが萌え袖で口元を隠しながら上品な笑い声を上げる。

「そんなモンで良いと思うんですよね。丁寧な言い回しで軽口叩いても伝わんなきゃ意味ないっすよ」

「『そんなモンで良い』か。随分と君の考えるトリニティは風通しが……いや、校舎が更地になりそうだ。あぁ、話をしようとしていたのにすまない、本題に入ろう」

 

目元を拭って、此方を見据えるその雰囲気は紛れもなく上級生のソレだった。

スイッチの切り替えがまるで分からない程スムーズにセイア先輩は、言葉を切り出す。

「まずは一つ目、聖園ミカを止めて欲しい

「……でしょうね」

一つ目。そう言ったセイア先輩の顔が僅かに曇る。

思う所があったのだろう。だが、先輩にとって本題はきっと二つ目に言おうとしていることだ。だからこそ、一つ目と言っているのだから。

 

「二つ目。どうすれば……どうすれば、『エデン条約』を乗り越えた先に辿り着ける?

「……まず、ミカ様の方を優先でやりましょうね?」

未来予知出来る奴の悪い所だぞ?

一番の絶望を最優先タスクにするのは不味いからね?

「ミカは、先生がなんとか出来るのが分かっているんだろう?」

「その考えの時点でドツボ嵌ってますよ、セイア様」

エデン条約編で起きた変化が一番怖くて恐ろしいのは分かる。プレイヤーだった時でさえ、あの状況の絶望感は衝撃的だったから。

 

でも。

「なんとかなるとしても……それ以上を求めましょうよ」

いや……だからこそ、もっと欲する。

 

「それ以上……?」

 

「えぇ、そうじゃなきゃ皆が笑える未来に行けっこないですよ?」

最悪なんてぶっ壊す。

バッドエンドなんて全部踏み越えて、勝ち取れる全部を勝ち取る。それがきっと意味だと思ってるから。

 

「だからセイア様も手を伸ばして下さい」

「……キミはなんというか、人誑しだね。噂に聞く先生のようだ」

「まぁ手を伸ばせって言っても私、拘束されてるんで手ぇ出せないんですけどね」

メモロビみたいな空気感に耐えれず、つい巫山戯た事を言えば。穏やかな笑みを浮かべたセイアが立ち上がって横に来る。

そして、そのまま倒れ込み────。

 

────肘鉄を喰らわされた。

「イッッッたぁっ!?え、ちょ、痛い!!痛いですセイア様!?」

「この前は罵倒で喜んでいたじゃないか、これも嬉しいんじゃないかい?」

『そういう趣味なのだろう?』と言わんばかりに何度も倒れる勢いで肘鉄をされていた。

「ちょ、イ──っ!? やめて!止めて下さいセイア様!?」

「それにしては……ッ……随分と……ッ……顔が……ッ……赤らめているが?」

「普通に痛くて身体に力込めるせいで顔赤くなってんだよ分かれよ鈍感フォックス!?」

普通に痛みで涙が出てきてるからな!!?

 

 

「──はぁ……はぁ……話がそれたね」

「痛い……苦痛に対して藻掻きたいのに動けない……」

ちょっと本気でミネ団長を恨んでる。

俺が拘束されるんだからこの虚弱体質先輩も車椅子に乗せとけよマジで。

「ンン゙ッ!! 話を戻すが……まずはミカを止めるのに全力を尽くす。これは理解した」

「なら何よりです……」

 

「その為には元補習授業部の面々を動かす必要がやはりありそうなことも理解した、が。恐らくミカを止めるのにはかなりの時間が必要になる」

「え、なんでですか普通に再テストの期日にミカ様ぶつければ良いでしょ」

「無理なんだ」

「無理なことあります?日付変わったとかですか?」

「補習授業部はナギサが廃部にしてしまっててね……」

 

「……は?廃部?」

「あぁ廃部さ」

補習授業部が廃部ッ!?

え、いやナギちゃん先輩!?

何考えてんだアイツ!!?そんなことしたら先生が指揮出来るメンバー消えて戦えないでしょうがよぉ!?

 

「と、所でナギサ様は……?」

「彼女なら今は学校だろう。恐らく、晩になるまではティーパーティーの執務室で書類と戦ってるだろうね」

「……マジで一旦、状況とか戦力の把握したいんで帰ってきてから全員に話します」

ちょっと桐藤さんをペットボトル飲料の刑に処さないといけない奴だ。

 

 

 

 

「……で?なんで廃部にしたんですかナギサ様?」

ベッドに拘束された俺を起こして対峙するのは、桐藤ナギサ。そしてその両サイドを百合園セイア、蒼森ミネで固めている状態。

夜の一室に計4名が集まり、質疑応答……またの名を尋問と呼ばれる時間が始まった。

 

本人は本当に想定外の出来事だったのか、やや困惑した表情をしている。

そんな彼女、桐藤ナギサの前に置かれたティーカップには、彼女にとって猛毒にも等しいであろうペットボトル飲料の紅茶『午前のティータイム』を注いである。

(※救護騎士団団長の協力と許可を得ています)

言葉に詰まって喉を潤そうとすれば毒で苦しむ仕組みだ。3日ぶりだからと炭酸を禁止され、水とおかゆしか口に出来ない俺の苦しみを少しでも味わえ。

 

「それは、その……ルカさんがなんとかしてくれると思って……」

「はい……?」

俺がなんとかする? 

「待ち給え、ナギサ。キミはこの拘束されている惨状を見てなお、ルカがなんとかすると?」

「え、えぇ。現にアリウスとの戦闘も切り抜けておられましたし……」

……え、何。待ってね?

つまりなに、俺一人でなんとか出来ると思ってるんです、この人?

 

「ミカを相手にするんだ、対応出来る人員は多い方が良いとは思わないかい……?」

「え゛」

セイアのその一言でナギサの顔が崩れた。

いや、崩壊したと言ったほうが正しいか。

美少女たらしめる肌は青ざめ、瞳に生気は無く、口は半開きでなんというか……本当に美少女がしていい顔ではない。

「な、ナギサさん……?」

「へ……へはは……み、ミカさんが…、ミカさんご」

「どうしよう、ナギサ様壊れちゃった……」

「そ、それ以前にナギサはミカのことを知らなかったのかい!?」

「……よくよく考えたらなんでナギサ様がセイア様と一緒にいるんですか?」

「今更過ぎないかい……!?」

「……それに関しては私からご説明しましょう」

何処か呆れた様子……というかため息をついて、先程まで(ナギサのカップを毒入りにする以外は)見届人枠として話を聞いていた団長が声を上げる。

 

「元々、私とセイアさんは、暗殺未遂の後にセイアさんが完全回復する、或いは騒動が落ち着くまで身を隠すことにしていたのです」

それは原作でも触れられていたし、むしろ乖離していなかったことに安堵する。

「ですが、数日前。そこで崩壊している桐藤ナギサさんが我々を捜索していたようで。当時いた隠れ家を訪れ、自身に不利な条件(那賀波ルカの確保が出来た場合のみ)での協力を願い出たのです」

「初めはかなり驚いたとも。それなりに付き合いのある同じティーパーティーメンバーが、真相も答えも持ち合わせている後輩の協力を得るから協力して欲しいと言ってきたのだからね」

肩をすぼめやれやれとポージングをする先輩が、ナギサの様子を見て、何処か悲しいものをみるように乾いた笑いをする。

「まぁ……可怪しくはなってしまっていたね」

ナギサの状態が一向に変わらないのが余計に怖い。

 

「……え、それで?」

「ほとんどそれで全部です。しばらくした後、重体の貴女を連れてナギサさんが訪れました」

「は?いや、あの時って確かナギサ様、私兵連れてませんでしたっけ……?」

「恐らくキミを運ぶ時には学園に返したんだろう。私達の下に訪れた時には居なかったからね」

「その時に申し出たのは貴女の治療、そして協力の打診です」

「その際にセーフハウスへと移ってほしいという申し出もあったかな」

 

「……どういうことです、ナギサ様?」

目線を前に直せば、気まずそうに崩壊した顔のフリをするナギサさんがいらっしゃる。

「……」

「なんでセイア様が生存してるって前提で行動したんです?」

「ぐ、偶然知っていたので……」

そんな馬鹿なことが起こる訳がない。

偶然知れるならティーパーティーは今頃喧嘩しながらも円卓を囲んでる筈だ。

 

「ジー…………」

ウソつきを見る目でちょっと睨むようにメンチを切る。

「そっ、その……旧校舎で主だって使われそうな教室には傍聴機器の設置を……」

「え゙、盗聴してたんですか!?」

「い、いえ……真面目に取り組んでいるか監視カメラ替わりに使っただけで……」

「嘘つけぇ!?私、皆を人質扱いしたの覚えてますからね!?気ぃ失いそうだったけど覚えてますからね!?」

「うぅ……はい、申し訳ありません……あの時は少しでも真相究明に力を注いで我を失っていました……」

ん?

となると、ナギサがセイアと絡めたのってあの時逆ギレで先生に全部ぶち撒けたからってことで……

……やっっべ、俺が元凶じゃん。

実は俺が裏切り者だった……?

い、いや冷静に……冷静に落ち着こう。

「……待って下さいね、ちょっと待って下さい。え、なんで補習授業部を廃部にしたんです?」

 

そう、結局の所なんで廃部にしたのかだ。

俺が失言してたとかそんなのは棚に上げる。

「せ、セイアさんのことを知っていたルカさんが退学阻止に必死で動いていたので助けになるかと……」

タスケニナルカト? ……助け?

え、誰……いや、これ俺のサポートのつもりっすか……?

廃部にしたのは俺の為だった……と?

 

「つ、つまり部の廃部はそんな深い事考えて無かったってこと……で合ってま、す?」

「はい……ヒフミさん達には悪いことをしましたし、彼女達を出来るだけ早く元の学園生活に戻すべきと判断して部の解体を……」

うおぁぁぁァァァーーーー!?!?!?

めっっっちゃくちゃ空回ってらっしゃいますね!!??

確かに無実の人に退学の圧力掛けるの止めろって言いましたけども!!!!

 

「せめて相談はして欲しかったんですが!?」

「こ、これでもルカさんが倒れた後、私なりに必死にやってたんですよ!?」

「いやだとしても、絶対廃部以外にも方法ありましたよね!? そんなフリーダムに動くと思わないじゃん!?」

「で、ですが、裏切り者は居ないとあの時言っていたじゃないですか!!」

「いや、確かに居ないよ!? 居ないんだけどね!?」

「それならどうしてミカさんと戦うなんて話になるんですか!!?」

「そうね!? 確かにそうだわな……!? そう考えますねごめんね!?」

頭をベッドにポスっと当てて天を仰ぐ。

拘束具がマジで鬱陶し過ぎる。頭を抱えることすら出来ないのは流石に過激過ぎませんか団長……

夜の室内を明るく照らす天井の照明を薄目で眺めながら、ぼんやりとどう話したものか考える。

 

「……うっし、話をしましょう」

どこから話すべきか。

あれは今から16000、いや17年前だったか……

まぁいい。昔の俺にとってはすぐのことで、この場にいる全員にとってはこれから起こる未来の話だ。

……なんてね。

 

「まず、セイア様と私は未来を知ってます。おふざけとか一旦抜きでそういうモノとして扱って下さい」

「未来予知、ですか」

まぁ俺の場合は()()()()ってだけだけど。

それでも吐ける範囲を濁しつつ、出来るだけ共有する。

 

「そして、私の知る未来とセイア様の未来は別の物です。その上であえて言いますが、セイア様が知った未来と私が知ってる未来では向かう先が違います」

濁しに濁した真っ赤な嘘。

セイアの知る未来から更に先へと歩みを皆が足を止めずに。諦めずに進んだ世界が俺の知る未来。

でも、俺は俺がいるブルーアーカイブを知らない。

だけど。

俺は俺が知ってる未来に。あの『青春の物語』に繋がるって信じてる。向かう先はエデンを越えた先の始発点。

終着地点の更に先の世界。

 

「なんでかって言ったら、セイア様が見たのは『結末』で私が知るのは『行動とその旅路』だからです」

誰かがゴクリと固唾を飲んだ音がした。

それほどまでに静かで、俺の話に耳を傾けてくれている。

 

「ここで重要になってくるのはセイア様が知る『結末』は、私が知る『旅路』が乗り越えていくものということ」

嘘の根幹であり、一番重要な部分。

皆のこの反応は、戸惑い……が正しい表し方だろうか。

「それは……セイアさんの予言した結末を覆すということですか?」

「そうです」

 

そう言った瞬間、ミネ団長が僅かに反応した様な気がした。しかし、立会人或いは見届人としての立場だからか何も言わない。

 

『百合園セイアの予知は当たる』

俺が入学した時からのオカルトだ。

嘘だ、冗談だと学園のほとんどがそう思いながらどこか信じてしまっているこのオカルトは、最上級生でありティーパーティーホストでもある百合園セイアの3年間が築いてきた信仰である。

 

「『百合園セイアの予知』を越えなければ私の知る未来は手が届きません」

故にこそ、その信仰を砕くと宣言する。

 

「だから力を貸して下さい。私一人じゃ『旅路』を歩くこともマトモに出来ないので」

「……ルカさんが知った解決した未来へと向かう為に助力を乞う。と?」

「お願いします」

拘束されてはいても頭は下げれる。

共犯者だなんだと言ってはいたが、トリニティの裏切り者調査から話が、一変してナギサもきっと困惑しているだろう。

 

元々、協力が仰げると思っては居なかった。だから自力でどうにかする用意はしていた。

でも足りない所を補えるならそれはきっと信頼になる。

「……ふむ、ルカ。キミの言う『旅路』において、私が見た『結末』とはある種の『試練』であると考えて良いのかな?」

「そういうことです。ほんで、セイア様が一番気になっていたであろうエデン条約になりますけど」

「いや、分かった。私が知る未来が、『旅路』の『試練』であるなら、必然的に次の『試練』となるモノに今怯えていても仕方が無いんだね?」

黄金色をしたセイアの瞳が僅かに揺らぐ。

 

「……まぁ有り体に言えばそうです」

今怯えてても意味が無いと分かっていようと、怖いものは怖い。だと言うのに、彼女は揺らいだその目線を一度伏せ、一息して消した。

「なら、私が恐れるのはまだ早い」

 

どこか希薄だったセイアという少女の存在感が強まる。

まるで水バケツに僅かな絵の具を垂らしたかのようなぼんやりとした色合いだったそれは、色濃く自分を顕にする。

「これでもティーパーティーのホスト。我々の身内が起こした問題だ、解決は当然手伝うとも」

「ホストの意向も有りますし、元より()は共犯者です。助力は惜しみません」

ウチの学園運営陣が秘匿状況にあるとはいえ協力を受理してくれたのはとても大きな進歩だ。

柔らかく笑みを浮かべる二人に嬉しさを覚える。

 

「これで話は終わりで良いのですか?」

「ハイ、スイマセン……まだあります……ンんっ!! そんな訳で『試練』と称してますが、現在この場にいる未来が見える者同士が同じ事件を知ってます」

ちゃんとした進歩に喜んでいれば、言いたいことがありそうな団長が話の続きを促す。そうですよね救護騎士団一応立場的に中立状態っすもんね、本当にスイマセン……

だが、この話が一番の課題。話さない訳にはいかない。

 

「さて本題です。ティーパーティーホスト百合園セイア暗殺計画計画者兼主犯格である聖園ミカが次にすること

 

ティーパーティーホスト代行桐藤ナギサ暗殺計画を止めてティーパーティーの皆が仲直りするにはどうしようね? について話ましょう

コレが、ナギサにキレてる原因であり、頭を抱えている地獄みたいな難問。

本来なら補習授業部一同で先回りして暗殺予定のナギサを回収。その後ミカを足止めして説得する大立ち回りが要求されるという先生(主人公)いたから勝てただろ案件。

もし万が一。いや、億が一にも俺にミカの足止めをしろと求めるなら残機100個は下さい。100有れば1時間は多分足止め出来ます……うん。きっと、いや恐らく……いやムリかも……

 

「後、アリウスに関しては真面目に偶然です。偶々勝てただけです。」

恐らくマダムに生け捕りにしろと言われてたのだろう。俺が耐えれる火力で攻撃してきていたのがラッキーだった。そう、本当にラッキーだった。だが、同時に問題も発生した。

アリウススクワッドは、ミカのプリズン☆ブレイクでお馴染み、学園内の檻にぶち込まれているとのこと。

……つまり、ミカ(隕石を落としてくるお姫様)を止めるにはマジで先生の説得頼みとなっているのである。

 

 

「は……? え、どういうことですか!?」

……またしてもナギサ様が御乱心である。

もうなんか普通に両サイドが放置してるせいで、俺が座るベッド脇までツカツカ威圧的に来た。

「る、ルカさん!!詳しく!!詳しく説明して下さい!!?」

「落ち着いて? マジで落ち着いて下さいねナギサ様? ほら紅茶飲んで一旦冷静になって下さい」

そう言えば促されるがままにペットボトルの紅茶を流し込む。

「「……あ」」

 

何故か協力者である団長とセイア先輩の不意を突かれたと言わんばかりの抜けた声。

「……グ……ッ!? ケホ……る、ルカさん一体コレは何を……!!」

「コンビニブランドのペットボトル紅茶です」

「ボトル……紅……茶……?」

理解が出来なかったのかそのまま床に倒れるナギサ。

その様子を見て、思った以上の過敏な反応だったからか、凄まじい速さでこの部屋へと運び込んだストレッサーにナギサを乗せ、診察をしながら連れ出していった団長に少しビビる。

 

「え、えぇ……?」

「思った以上にナギサには劇物だったようだね……」

……ひ、ひとまず全体共有は出来たしヨシ!!

一応、セイア先輩と詳細共有とか作戦会議はするけど、ナギサにはちょっとしばらく黙っとこ。




今回のOne PointTopic:那賀波に着けられた拘束具は、本当に頑張れば怪我の悪化とセットで壊せます。



久々に逃げ回る。がいつもの空気感に戻ってきました。
これからも、逃げ回る。のお話にゆるく長くお付き合い下さい。


最近またランキング載ってて読者の皆様には感謝です!!
不定期更新な本作に振り回されつつも楽しんで下さる皆様、並びにいつも誤字脱字報告や感想を下さる読者方、高ぇ評価をして下さる読者方の皆様いつもありがとうございます!!
作者は承認欲求モンスターな乞食なのでいつもガソリンになってます!
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