キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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お待たせしました。作戦決行日です。


十九話 嘘つき同士の戦いはいつだって正直な方が勝つ

 

 

 

ティーパーティー仲直り作戦決行日。

 

さて、結論から言おう。

あれだけ作戦会議してカッコつけておいて本当にあれだが、完敗である。

 

まず、対戦カード。

聖園ミカVS那賀波ルカ。

……勝てると思いますか?

それはもうボコボコに負けた。

もう、なんの言い訳もない。

喧嘩は売ったつもりは無いけど、多分売ったんだろう。

だからボコられた。

 

那賀波ルカは聖園ミカにそれはもう盛大に負けた。

 

──いや、当たり前だろ。

 

 


トリニティ総合学園体育館・館内。

 

よく使われるセーフハウスルートの一つ。

そう事前に広めた体育館には、照明はついておらず、かろうじて2階の窓から差す光が館内を薄暗く保っていた。

 

「──だからミカ様がそんな思い詰めなくても良くてですね?」

 

目の前にいる彼女のそれに触れれば即座に崩壊しかねないと思える緊迫した嫌なヴェールを感じる。

間違えて触れでもしたら目的がご破算になりかねない。

 

「さっきも話しましたけど、アリウス校の生徒と関わるなって話じゃないんです。アリウスを今私利私欲で動かしてる奴をどうにかする為にちゃんと話し合おうってだけで──」

……押し売りのセールスマンみたいな感じになっているが、これでも気合い入れて脳みそフル回転させながら口を動かしてます。

 

「──それに今ならまだ、戻れます」

日中にも関わらず、薄暗い館内へと護衛一人付けず歩いて向かうミカの姿は暗殺の実行するつもりで動いているのを確信させてくれた。

後、なんだかんだ足を止めて聞いてくれて……

 

 

「────無理に決まってるじゃん」

……気合い入れて3秒経たずに触ってしまった。

誰だよなんとかなるとかほざいたの。

 

──ゴッ。

 

鈍い音が自分から響いて、視界が明滅してからようやく目の前にいた上級生に殴り飛ばされたことを理解した。

「もう少しくらい話、聞いていただけませんかね……?」

「んー……でも敵って貴女が自分で言ったわけだし……」

言ってない言ってない。

ティーパーティーの皆が話し合える場を作るって言っただけですよミカ様……?

 

 

「第一貴女が言う『セイアちゃんが生きてる』って話が本当なのか知らないし」

「疑うのは確かに分かりますけどもね?」

もうちょいこう、信じ合いません?

取り敢えず拳を振るう発想は淑女としてどうなんです……?

 

ズキズキ痛む鼻を押さえて痛みを和らげる。

目頭に涙が溜まり視界がぼやけて鬱陶しい。

 

「何より、敵ってことにして倒しちゃった方が手っ取り早いよね?」

「ふざけんなチクショウ!!?」

慌てて反転。その場から飛び出す様にローリング回避する。

 

まるで大砲みたいな轟音が近くで鳴った。

「避けないでよ~」

「避けるわ!? なんでそんな音鳴るんだよ!!?」

恐らくは袖が拳を突き出した際の捻りで音を出したのだろうが……

それにしたってデケェ音である。

 

「えい☆」

ロックスクラッパーの展開に意識を割いた瞬間、拳が叩きつけられる。

「……ッ!!」

起動出来ていない中途半端な状態だが、慌てて盾としてスクラッパーを向け、受け止める。

 

──まるで高所から落下した時の様な全身に衝撃が走った。

 

「いったぁぁーーいっ!?」

「ウォォ……!? クッソ……すんっげぇ痺れた……!?」

ビリビリと衝撃で痺れた身体を無理矢理動かして距離を取る。ミカ様に関してはお手々をブルブルしたり息を吹きかけたりして拳のケアをしていたので、距離を作るのは簡単だった。

 

「随分硬いモノで作ってるんだね。ひょっとして秘密兵器ってやつ?」

「そりゃそうです……よっ!!」

展開し直したロックスクラッパーの側面から拡張グリップを起こし、内部に収められている愛銃『愚者の兵装』に装填された50AE弾を数発ばら撒く。

 

「なんの準備も無しに3年生に話しかけない…、でしょっ!!」

威嚇牽制。

当たらないが動けば当たる位に意識を絞って放たれるそれは、対峙する相手からすれば鬱陶しいものだろう。

更にスクラッパー側のバレルには神秘で銃弾を加速させれる。どこぞのレールガンでは無いが神秘供給率次第じゃビームライフルみたいな弾を撃てる。(十数メートルくらいで消えるけど)

 

キヴォトス人は頑丈だが、痛みに強いわけじゃない。

だからこそ牽制射撃が有効だし、色んな治安維持組織が取り入れている。

 

痛いのは誰だって嫌だ。

生き物として当たり前のこと。

故に動かなければ当たらないならと足を止める。

 

いつまでも続けば流石に動くがほんの僅かな時間なら足を止め……!?

 

──気が付けば目の前にミカがいた。

「ちょっと、ウザい……かな?」

拳を振るわれる速度に間に合わず腹部へとそのまま直撃する。

振り抜かれた拳の勢いを殺せず、まるで猫が玉遊びしているかの如く転がされた。

 

 

痛いのを嫌がる融通の利かない身体を、無理矢理スクラッパーを支えにして起き上がれば。

 

「ゴフ……っ!」

意図せず口に生臭い鉄の味が広がり、逆流したタールのような血液がこぼれ出た。

やべぇ、今の内臓持ってかれたかな……

──感覚的に喀血というより吐血。

喰らった場所からして十二指腸辺り。

幸い四肢は動かせる。

 

僅かな時間でこのダメージ。

……やっぱ生きて帰れねぇだろこれ。

 

「……そのまま寝てればいいのに」

「これから幼馴染の暗殺をしでかそうとしてるのにお優しいですね」

……乗っかってこい。

話し合いで解決出来ればそれが一番良いんだ。

再び接近される前に、ひっそりと蓄積された神秘を元に炉を回す。意識を整え、供給機(パスリアクター)との神秘接続を感覚頼りにセーフティラインの供給率70%をキープしながら自分の身体に流し込む。

 

「なに? 煽り?」

「事実でしょう。それとも桐藤ナギサの暗殺は辞めるんですか?」

口論でも討論でもレスバでもいい!!

出来ることなら戦いたくない!!

 

「キミ、ムカつく性格してるね?」

「化粧直しに行かれたらどうです? 助けて欲しそうな顔してる最上級生がいらっしゃるかも知れませんよ?」

「っ……!!」

 

先輩の表情が僅かに曇った。普段イジられる側の俺でもそれくらいの機微は分かる。

やっぱ助けて欲しがってんじゃんミカ様。

 

「『ゴメンね』って言うだけのことじゃないですか。そんなにセイア様に謝るの嫌なんですか?」

「そんな訳ないッ!!」

 

あれだけイラつきながらも口論というプロレスを出来ていたミカ様が声を荒らげて否定する。

動きも止まって話が続く。

「じゃあ仲直りしに皆と合流しましょうよ」

「……今更」

──循環。

炉心から流れる神秘が全身を伝い、再び炉に返っていく感覚。

 

「今更謝って許せる訳ないでしょ!!」

急速に突進するかのように迫って、勢い任せな右の大振り。スクラッパーを盾に受け流す。

──循環供給70%。

 

「もし生きてるのが本当だとしてもセイアちゃんを殺しかけた!!」

左を縦に振って引っ掻くように力で押してくるそれもスクラッパーで流す。

ビリビリと一撃一撃が素のスペックを分からせてくる。

神秘で強化しててこれならデフォルトだったらミンチだぞチクショウ……!?

 

「幼馴染であるナギちゃんを殺そうと考えた!!」

右脚を盾にしているスクラッパーに当て思いっ切りプッシュキックされる。

踏ん張りはおろか体幹ごと崩され、真っすぐ壁に叩きつけられた。

 

「そんな人が『ゴメンね』って謝っても『良いよ』なんて許して貰えるわけないじゃん!!」

追撃の分かり易いテレフォンパンチに合わせてスクラッパーで防く。

 

「それに。それに、もしも許して貰えたとしても、そんなの私が一番許せない……!!!!」

壁を背負わされた不利な局面を続けさせようと拳のラッシュが続く。

……でも軽い。まだ何処かで感情を抑えているのだろう。

 

「だから!! 私は『魔女』で良いの!!

──また大振りの予備動作。

 

「友達を裏切った『魔「そんなんが許される訳ねぇだろメンヘラプリンセスッ!!!!」

予想通り出した大振りをスクラッパーで叩き落とし、体勢を崩した所を押し退ける。

少し距離が出来た所にスクラッパーを立て、それを軸に蹴り飛ばす。

 

「苦しいからどうにかしたいって思ってんのにどうにかしちゃいけない訳ねーでしょうが!!」

散々愚痴られて殴られて好き勝手に言われて。

流石にムカッと来た。

 

 

「このままなの嫌なんだろ!!」

「嫌に決まってるでしょ!!」

売り言葉に買い言葉だったのかもしれない。

でも、あまりに素直にミカ様が答えるので、少し驚いた。ひょっとすれば案外短期決戦で済むなんて考えも浮かんだ。

 

だからこそ全力の説得を試みる。

 

「じゃあ逃げて良いんだよ!!!!」

嫌なことは後回しにして、他のことから手を付けて良い。というか、俺がそのスタンスだ。

 

「逃げて良い訳ない!! 私ティーパーティーなんだよ!?」

 

「ンなワケあるかッ!? 大切だって思ったこと優先していいでしょ!! 俺達まだ子供ですよ!!?」

子供らしく『ゴメンね』って謝って遊べばいいだろ!!

先生だってきっとそう言うぞ!!?

 

 

「キミは、強いね……」

「強いわけないでしょう、チンピラのカツアゲに合うんですよ!?」

俺が強かったらアンタはなんだ?戦略兵器か?

 

「あぁ……ナギちゃんのお気に入りの子か……」

「…………違います」

……うん、多分それはヒフミさんだと思います。本当に。

きっと。恐らく。メイビー。

 

「それなら余計分かんないよね。私のことなんて」

 

……なんでそうなる。

 

「私には誰も居なかった」

 

「助けてくれる・救ってくれる人なんて居なかった。先生がひょっとしたらそうなのかもって思ったこともあった!!」

 

「でも違った!!あの人はみんなを助ける人で!!」

 

 

「だから仲直りしろっつってんでしょうがよォ!!!」

大振りをスクラッパーではたき落として、空いてる左手でその顔にストレートを見舞う。

 

「シリアス面して闇堕ちムーブはお腹いっぱいなんだよッ!!!!」

 

──ここで俺がアンタを足止めする理由は。

 

 

思いつきから出来た作戦の実行を決めたのは──。

 

「友達が助けようとしてんのにシカトしてんじゃねぇ!!」

 

現ティーパーティーホスト(桐藤ナギサ)様だぞ。

 

 

「何も分かってない後輩のクセに!!」

「もし分かってたらエスパーでしょう……よッ!!」

供給率は70%。

使い切りじゃなく循環状態をキープ出来るように20%は残してブチかます……!!

──神秘供給率50%

「ウェーブレットッ!!!」

 

 

生身の拳と兵装の一撃が真っ向から衝突した。

 

 

「……50%で気絶はしないと思ってたけど」

「硬いね、それ」

真っ向からぶつかって無傷かよ。

こちとら今の衝突で全身が痺れまくりの痛みまくりの内出血カーニバルだぞ。

 

……さっきまではただ癇癪を起こしたみたいに四肢を振り回すだけだった。

感情に文字通り振り回されてたはずなのに、変わった。

 

 

「もう、いいや……」

「いいやってなんですか」

「……うん。もう、いいか」

床に転がしていた聖園ミカ自身の愛銃を拾い上げた時。──それを手にした時、違和感を覚えたにも関わらず。

 

「……殺す気で行くね?」

 

 

後手に回るという悪手をしでかした。

直後、那賀波ルカの視界が回り、一瞬暗転する。

 

 

「……うぐっ!?」

──なんだ今の……!?

気が付けば腹這いになってミカの足元に転がっていた。

 

「……さよなら。ごめんね」

突きつけられたSMGから生じた発砲の閃光が瞬くと同時に、木製の床が抉れてコンクリート部分が露出する。

 

「消え……た……?」

左右前後を確認してもいない。

 

「謝るくらいならやろうとすんなッ!!」

空から自由落下しつつスクラッパーをミカの脳天に叩きつける。

スクラッパーの仕組みを使った緊急回避。

吸収した神秘リソースを放出し、その反動で空に吹っ飛ぶ。デメリットとしては身体の色んな関節が悲鳴を上げたことぐらいか。

 

「しぶっっといなぁ、もう!!」

「そりゃあこっちも必死ですから!!」

皆が来るまでこの場に留められていれば勝ちなのだ。

出来ることは当然する。例えそれが無理難題としか思えない相手の足止めでも。

 

「ナギちゃんには貴女がいた!!」

SMGを使っての大振りは、先程と打って変わって重い一撃で、スクラッパー越しだろうと衝撃が貫通してくる。

 

「セイアちゃんだって側に誰かいたんでしょ!!」

距離を取れば一発一発がとんでもない重圧で飛んで来る弾幕。どんだけ神秘込めてんだこれ……!?

 

「急に動かなくなるじゃん、どーしたの? 帰りたくなったんなら帰っても良いんだよ!?」

「頭狙いでフルスイングしといて何言ってんですか!」

頭部狙いの横薙ぎを辛うじてスクラッパーで受け止める。が、いや……これ腕の骨まで痺れる……!!

 

受けに回れば捻り潰されるのを直感し、攻勢に転じるべく一歩前へ踏み込む。

スクラッパーで攻撃を受けるタイミングをズラして更に一歩。

流しきれずに痺れている腕を無理矢理神秘で動かしながらもう一歩。

 

密着距離。

俗にインファイトだったり零距離とか言われる距離。

 

50%で駄目なら全部持ってけ!!

──神秘供給率70%

「もっかい……ウェーブレットッ!!」

神秘で強化した力任せの一撃。

そのヒットタイミングで指定方向へ衝撃波を起こす対個人戦闘で一番威力が出せる技。

 

それがボディに綺麗に入った。

……クリーンヒットした筈なのに。

「痛ったいなぁ〜……」

 

まるで効いてない。

いや確かに原作じゃサーモバリック爆弾が転がる空間で戦ってたけど嘘だろ……?

セーフティラインの供給率で出せる衝撃波だけじゃ威力が足んねぇ……!!

「そ〜れッ!!」

まるでやり返すかの様に両手で握られたSMGの大振りを受け、押し潰される。

 

「今のが全力?」

「いやまぁ……流石に今のままじゃ無理ですよね〜……」

ちょっと手加減されてるしイケるとか思った瞬間もあったが、うん。

絶っっっ対勝てない。

ここからはいつまで俺の原型が留められるかの勝負になるかな。

……先生達早く来てくれ。

 





本日のOneTopic:セーフティライン限界のスクラッパーの威力は歩道橋崩壊くらいです。




ストック投稿しないと言ったな。
アレはホントだ……
(チリツモスタイルで書いてたプロット加筆してたら19話になってた)


不定期更新な本作に振り回されつつも楽しんで下さる皆様、並びにいつも誤字脱字報告や感想を下さる読者方、高ぇ評価をして下さる読者方の皆様いつもありがとうございます!!

作者は承認欲求モンスターな乞食なのでいつも執筆前のガソリンになってます!
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