キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
「セイアちゃんは救われてた!! でも私は良くないことをしたから罰を受ける!!それの何が悪いの!!」
「罰を自分で勝手に決めて、その破滅行為に他人巻き込んでんだよ!! 自罰思考になんのは良いけど、俺を巻き込むな!! このメンヘラプリンセス!!」
ロックスクラッパーに神秘を喰わせながらミカに突撃する。
銃口が俺へと向き、それに合わせるようにスクラッパーを掲げ攻撃に含まれる神秘を取り込む、が。
「さいっっってーーー!!!!! 仮にも私、先輩だよ? 人にケチつけるならまず、そのタメ口直しなよ!!」
ガード等お構い無しに、いつ持ち替えたのかストック部分を大きく振って壁へ大の字に叩きつけられる。
「第一、そもそも私に殴りかかってきてるけどさぁ……」
刹那、大きく振りかぶった追撃の拳が迫る。
必死にスクラッパーで逸らすが、ガードを越えて突き抜ける衝撃に耐えきれず再び壁に当たる。音を立てて大きく凹む木製の壁が棘の様に食い込む。
「ングぅ……ッ!!!」
痛みに喘ぐ暇なく、倒れかける俺の脇腹にミカの蹴りが刺さり床を転がされる。
「────キミ弱いよ?」
────化け物呼びも納得だよチクショウ……!!
フラフラと立ち上がる俺に対して、ハンマーのように扱われ振り回されるマシンガンストック。避け切れない物はスクラッパーを左腕に持ち替え、受け流す。
左は犠牲だ。
盾のように扱っているロックスクラッパーを突き抜け、ビリビリとした痺れ、そして腕を潰されたと錯覚する程の激痛が攻撃を流す度に酷くなっていく。
……文字通りジリ貧。誰だよプリンセスに武力持たせたの!!
「軽いね? もっとご飯食べな、よっ!!!」
ミカのストンピングを辛うじてドッジロールで避ける、が。
床そのものがミカの脚力に負けて、風穴を開けた。
「人に向ける力じゃないだろこの馬鹿力!?」
「殺すね☆」
おちゃめに言っても、そのパワーは殺人級。
生命の危機に反射でスクラッパーを盾にして衝撃に備え丸まったが、その剛力から繰り出される拳は俺をサッカーボールの様に体育館倉庫へと目掛けて真っ直ぐぶっ飛ばす。
「いっってぇ……!!」
恐らく後頭部が割れたのだろう。
痛みに悶え、苦痛を和らげる為に傷口を抑えるが生暖かい液体が手に付着するのが分かる。
「こんなんモルヒネいくらあっても足りねぇぞ……!!」
攻撃に使われた神秘量も多ければ、肉体の基本スペックに差があり過ぎる。
神秘を炉心に廻し切る前にガードごと腕力と神秘で底上げされた拳の衝撃で貫通して身体にダメージを入れてやがる。
お前キヴォトス人だろ、銃使えよ。
マシンガンの弾幕ならここまでダメージは入らず、チマチマ貯め込んだ神秘をブッパすれば何だかんだなんとかなると、思っていた。
第一……
「なんで衝撃が貫通してくんだよ! あのクソゴリラ!!」
バトルセンスがとんでもない。
タフさと化け物じみた回復力をメインウェポンに安定したショットガンの火力で粘り勝ちをする度重なるトレーニングで練り上げられたツルギ先輩とはまるで違う。
──天性の戦闘能力。
定石や読み合い、訓練等で積み上げ築いた
素のスペックが高いこと生かし、相手が対処出来ない緩急を挟む
正実がジャンケンで心理戦するのに対して、ミカはジャンケンをする前に相手の顔にグーを入れて倒しにくるのだ。
「そもそも、ロックスクラッパーが回収追いつかないってどういうことだよ……?」
いや、想定はしていた。
そもそも昔の試作段階じゃ衝撃が普通に貫通してきたし。
実現委員の訓練に拉致られてた時に、テストがてら持って行ったこともあったけど普通にマシロにスクラッパー越しで気絶させられたなんてこともあった。
単発火力を全部受けきれる訳じゃ無いのは分かってる。
ミカのマシンガンの弾幕だってスクラッパーで受けた部分だろうと普通に痛かったし、手元だって痺れたのだ。マトモに喰らえば気絶、あるいは重症体か。死なないとも言いきれない程度の神秘が籠もってるだろう。
「──それにしたってこっちの戦い方見抜くの早すぎる……」
なんなんだ、マシンガンで弾丸をちょっとばら撒いて足を止めさせたら、マシンガンを鈍器代わりにしてフルスイングって。
『全然痛がってなさそうだなぁ。そうだ☆ちょっと殴ってみよ!!』
そんな思考にあの短時間で行き着くのはどうかしてるだろ。自惚れたくは無いけど、銃だけ装備の俺相手でもアリスクは対応に時間かけてくれたぞ……?
なにより一番想定外なのは、ここまで痛い思いをするのは俺も想定外だ。消耗が激し過ぎる。
いや、バチクソ痛いもん。
雰囲気変わっても少しは手加減してくれないかなとか甘く考え過ぎてた。
めちゃくそに痛い。胴体の骨もいくつか折れてるっぽいし。
まだ、アドレナリンとか脳内麻薬で緩和されてはいる……筈。
でも痛い。
全身の擦り傷も痛いし、木片が刺さった背中に蹴り飛ばされた腹部。そしてさっきかち割られた頭。
最近出来た色んな傷がまた開いて余計キツい。
「ヒュー……ヒュー……」
……あー、やべ。
呼吸が荒くなってちょっと音が鳴ってる。
左腕に至っては痛みすら感じなくなって恐怖すら感じる。紫っぽくなってるけどちゃんと治るよね……?
勝とうが負けようが上書きするみたいに更なる負傷で完全拘束状態の時より酷い激痛でのたうち回るのが確定している未来に恐怖しかない。
「でもさ……ここで逃げて楽になるわけがねぇんだ」
──逃げる時は、楽な時。
“楽しく生きる”という目的であり、俺の中の指標。
そこに助けたいとか頼まれたとかゴチャゴチャ色々と乗っかってしまっているが、根本は楽でいたい。
でも、この世界でそれを続けるにはきっと簡単じゃない事もしなくちゃいけない。だけど、それがこの世界に生まれた俺の底だ。
だから逃げ出したくて堪らないけど。
好きなことばっかりしてる引きこもりみたいな生活をしつつも、『ただドミノ倒しみたいに雪だるま式に気が付いたら滅亡一歩手前な状況に遭遇したくない』その一心で色々作って試して、その成果を。
その可能性を少しずつ積み重ねた。
「……まだ、始まってすらいねぇんだ」
調印式・ユスティナ・アトラ・ハシース・神聖十文字・無名の司祭・サンクトゥム、そして何より──“
まだ遥か先に残り続ける壁。
ここはまだ、スタートラインですら無い。
「こんなんじゃ、何も成せない」
供給率70%じゃろくに戦えやしない。
打倒ベアトリーチェなんて夢の話にしかならない。
「……セーフティ外すか」
ロックスクラッパーの炉に俺自身の神秘を皮切りに蓄積された神秘を
神秘によって炉心から通じた虚数領域への孔を通し、増幅された神秘が両リアクター内部へと戻される。
メインで使うリアクターを切り替え、普段以上の強引な稼働によって繰り返される増幅・蓄積・供給のループは
──神秘供給率
放熱板に付けられたカバーのロックを外せば煮え滾る程の排気熱が外気を焦がす。
「おわっ、アチチ……」
強くグリップを握れば、リミットを外したロックスクラッパーから強く流れてくる神秘が身体を巡り、一息の間に突き動かした。
「おぉぉぉッ────ラァ!!!」
体育館の床を踏み抜き、勢い任せの真っ向勝負。
飛び出してくる、ましてや真っ向勝負になど持ってこないと思ったのか。僅かにこちらが圧した。
「もう一発……!!」
右手から流れ込む力を極端な割り振りで無理矢理作り出した隙に攻撃を差し込む。
「当たらないよ」
……様なフェイントをする。
「!?」
0か100のパワーコントロールでフェイントを更にもう一つ重ねて強引に攻撃をぶち当てる!!
狙うはアゴ!!安らかに眠っとけ!!!!
ロックスクラッパーの中で溢れんばかりに貯えた神秘を全て放出する。
一瞬、閃光が走りキャノン砲じみた轟音が体育館に響く。そして、その一撃と共に俺の右腕が内側から爆ぜた。
──神秘供給率100%over版ウェーブレット。
「危ないなぁ……今の当たってたら大変だったよ?」
砂塵が舞う中、ムリな体勢から100%超えの運用で今までとは段違いの激痛に叫びかけていた俺の前には。
──制服を叩いて綺麗にしている聖園ミカの姿。
「いや、おかしいだろ……」
「ビル一つはぶっ壊す威力を集束したんだぞ……?」
「なんで無事なんだよ!!?」
「無事じゃ無いよ、ちゃんと……痛かったんだからね!!」
気が付けば床に転がっていた。
背中を強く叩かれた……?
「ちゃんとお返ししてあげるんだから!!」
ゆっくりと。しかし力強さを感じるストンピングに命の危機を感じ、横に転がってギリギリ回避をする。
「逃げちゃダメじゃん」
パキッ──と音が鳴った気がした。
「ガァァァァァァァァッ!!?」
腰を蹴られた。
「ワンちゃんみたいな叫び方するね?」
藻掻くように腰を抑えて転げ回る。
痛みを堪えるために必死になって奥歯を噛み締めた。
「フー……フー……ッ!!」
「もう一回やろっか☆」
その言葉が発された瞬間、痛みを無視して逃げる。
幸いなことに体育館には正実のトレーニングに使うダミー人形や的等の保管にも使われていた。
一時的に隠れる場所なら作れる。
インナーに着けてたポシェットからスモークグレネードを即座に落としてその場から離脱。
「ハァ……ハァ……死ぬ、死ぬ……!!」
煙幕から近くのダミー置き場所へ場所を移し、叫びそうになる気持ちを必死に抑える。
両手の痺れと震えが止まらず中々外せないことにイラつきながらも、ロックスクラッパーの金具を外し、そこからオートインジェクターを二つ取り出す。
片方をすぐに注射し、落ち着くべく深呼吸する。
徐々に痛みがマシになってきた。
インジェクターの片方はモルヒネ。
団長から控えるように言われていたが流石に使わざるを得ない。薄れていく痛みと一緒に冷静さも戻ってくる。
そしてもう片方。
──内容物は以前アリウス連中に使った吸引して使った薬の原本。
水晶埴輪とエーテル結晶を粉々にして独自配合して作った吸引式強化剤である聖煉粉末。
それをマンドレイク濃縮液に溶かした物。
勿論効果は聖煉粉末よりも遥かに凄い。
代わりに反動も遥かに凄い。
故に産まれたかつての積み重ねで築かれたほんの僅かな、0,15mlの奇跡
短時間の間だが、高等部3年の戦闘領域まで強化するというもの。
疑似というのは薬、或いは俺の免疫が安定しないのか強化にバラつきが出てしまう為だ。
それでも使えばどんな状況でもひっくり返せる虎の子の切り札。
「怖ぇなぁ……」
勝てる確証は無い。
そもそもの目的は時間稼ぎだ。こんな生き死にを決める戦闘をしなくとも釘付けに出来ていれば問題ない。
薬が切れたらどうなるか怖くて治験すら出来てないシロモノ。
……でも、ここで使わずに後悔するような後味の悪い終わりになる方がもっと怖い。
「それに……こんな所で躓いてられねぇんだ」
ソレを、太ももに当てボタンを押して身体に流し込む。
モルヒネの影響か戦いでハイになっているのか、痛み無く注射が終わった。
そして一呼吸の後に──。
世界の輪郭がブレる。
希釈版である聖煉粉末を吸引した時と同じ……いや、それ以上にブレた。
サイケデリックな藍染めと赤黒い反対色の波紋が広がって、溶けて。
波紋が加速し続けるにつれて世界の輪郭が段々と定まっていく。
徐々に世界が透き通って見えてくる。
自分の肉体が悲鳴を上げているのを感じる。
食いしばりながらも脂汗が大量に出ているのが分かる。
恐らく治療されてた傷跡が開いたんだろう。制服が別の色に染まっていく。
一番キツい瞬間を突き抜け、自身の世界が変わったのを感じる。
「ッ……ハァ……ハァ……!!」
スクラッパーを強く握りしめ、神秘供給を再開しながら……足音と気配を頼りにミカへと突っ込む。
「もう止まれねえし、止まる気もない。先輩、アンタをぶっ飛ばして補習授業部編は円満解決させてもらうぞ……ッ!!」
聖園ミカを攻勢に回さない。
攻撃に転じる隙を生ませない様に。
カウンターも狙わせない。
一撃一撃に全力を込めてスクラッパーで殴る。斬る。
「こっから私の攻撃は全部、“最上級生”のモンと思え……!!」
先程の様に攻撃を防ぐこと無く攻勢に出れば痛いでは済まないと分からせる。一時的にではあるが、最高学年
否、そうせざるを得ない。
神秘の循環供給率100%に満たしながら振り回されるソレは、攻撃の合間を衝撃波で埋め、次の動作へと繋ぐ。
俺が振るう一撃よりも遥かに重たい攻撃として生じる。
純粋な威力としては小型サーモバリック爆弾に劣るだろう。しかし、一回限りではない。
二重、三重と不可視の衝撃波は次へ攻撃に繋がれ、ミカのガードを食い破って隙を晒す瞬間まで繰り返す。
「……ッ、しつっこいなもう!!」
──或いは、本人が痺れを切らすまで。
「隙がデカいぞプリンセス──ッ!!」
聖園ミカがいつまでも続く攻撃を耐え続ける訳が無い。
マシンガンを鈍器にして横薙ぎの大振り。
それを低く、低く。膝どころか胸さえ地を掠るような程に低く、
──さらに弾みをつけ、強く握りしめたスクラッパーを振り抜く。腹部をねじるように削り、切り裂く一閃。
俗に言うボディフックというヤツである。
それを全力全開のロックスクラッパーでぶち当てればどうなるか。
「ぎ……ッ!?」
簡単だ。あの聖園ミカでも悲鳴を上げる凶器になる。
「まだまだ行くぞ、プリンセス!!」
──そして再び。
一撃、一閃。その全てに全力を乗せたインファイトが再開される。
さっきと違うのは相手のガードが甘いこと。
痛がって僅かに緩んだ防御を抜いて、一撃一撃を丁寧に入れる。
「ナギちゃんには貴女がいた」
段々薄れていた痛みが戻ってくる感覚。
モルヒネ切れか、はたまた
「セイアちゃんだって貴女が知ってた」
出来る限りダメージを。
出来る限りの痛手を負わせる。
俺一人で出来ることなんてたかが知れてるのだ。
だから、皆が少しでも楽になるように手傷を負わせる。
「じゃあ私は……?」
鈍くなってきた身体をロックスクラッパーから供給される神秘で補い、無理を利かせる。
それこそ、俺が力尽きるまで。
「私だって助けて欲しかったに決まってるでしょ!!」
横薙ぎを銃で弾かれ、左フックがミカから俺へと放たれる。
「でもキミは来なかった!!居なかった!!」
銃床で腹部を殴られる所を右にステップし、スクラッパーで受ける。
「助けなかった!!!!」
何処までも真っすぐな全力の右ストレートが俺を襲う。
──所詮はドーピング。
必死に耐えてても意志だけでは身体を持たせ続けられない。いやまぁ、頭をカチ割られてたり、片腕が殆んど死にかけて無ければまだ持ったかもだけど。それを加味してもドーピングする前に想定してたよりも全然余力が無い。
原因は分かってるんだけどさぁ……
──出 血 多 量 っ て 知 っ て る ?
いや力尽きるまでとか、あれだけカッコつけてもうガス欠?とか思われるかも知れませんが、もう薬の効果でめちゃくちゃ痛みに喘いでさっきまで視界が鮮明に写ってた筈なのに、だんだんボヤケた視界に戻ってきてるし、脚は震えるし、力はドンドン抜けてく感じがするし、真面目にそろそろ死を身近に感じるんですよ。
「──ないんです……」
出来れば説得して、ティーパーティー間で謝らせて和解させれれば一番良かった。というか失敗するかもなのにミカの交渉担当に決まったのは、そうして欲しかったって事だろうし。
……でもですね?
「えっ……なんでまだ立って──」
「助けて、ない……んですよ……」
通りすがりの野良生徒にはこのプリンセスの討伐は無理です。
だから出来る限りの弱体化をさせるので許してくれ。
迷惑しかかけれない奴でも、少しは役に立てたらって思うから。
──そんでもってあと!!!!
「どいつもこいつも勝手に助けられてンのに俺が救ったって言ってるだけなんですよッ!!!!」
さっきの右ストレートで偏った重心を左手で崩す。
懐への侵入を許さなかったミカの立ち回りを瓦解させ、真っ直ぐ彼女の懐へ一歩潜り込む。
「持ってけ、全部!!!!」
……ドクンッとロックスクラッパーを握った右手が脈打つ感覚。
身体の熱が奪われるかのような感じと共に、スクラッパーに溜め込んだ神秘が逆流し、再び身体にカッと熱が入る。
右腕だけが異様な程生命力に溢れ返り、神秘を纏った拳として振るう。
────神秘供給280%
「スクラ、ビルド……」
「バスタァァ゛ァ゛ァ゛ーーーー!!!!」
全てをぶつける勢いで振り上げたロックスクラッパーから発される衝撃はミカを吹き飛ばした。
ミカの眼前で振るわれたソレは体育館の天井を削り飛ばして、天窓のように穴の空いた天井から差し込む日差しが体育館全体を照らす。
「フー……ゲホ……ゲホッ……」
全身の様々な所の筋繊維が千切れ、軋む感覚が在るが無視してロックスクラッパーをしっかり握り、壁にぶつかって倒れ込んだミカへと無骨な鉄塊の先を向ける。
「大、人しく……謝り行きましょう……?」
ミカは答えない。ただ、こちらを見上げるのみ。
アゴ狙いだったしな。ラッキーヒットで気絶してくれたか?
「アハっ♡」
──そして口を三日月型に歪め、笑みを溢した。
瞬間、身体に衝撃が突き抜け浮き上がった感覚。痛みよりも驚愕、驚きの方が大きい。疲れた身体から絞り出した本能が意識を加速させ現状を必死に把握させようとする。
──蹴られた。
目の前で倒れていたミカに。
「……勝手に救われた?」
聖園ミカが俺を蹴り上げた勢いで起き上がる。
分かる。
本能が察する。
「なにそれ」
──あ、コレ本気でブチギレてる奴だ。
そりゃ、俺の運が良いなんて有り得ないよな。
路地を歩けば不良に当たるんだもの。
……ごめん、死んだ。
強化され加速する思考に追い付けない身体が、彼女の双眸に定められた照準が色濃く死を予感させ、意識が鋭敏になるのが分かる。
そして──鋭く。硬く。
圧倒的格上の神秘を有する聖園ミカの拳を。その一撃は俺の顔を穿った。
────余りにも一瞬の出来事。
私達がナギサ様から事情を知って、ミカ様の元に辿り着いて。
その現場にルカがいて。
補習授業部が解散させられて元の生活に戻されても、学籍を凍結されてあの場に残され、姿を見ることすら無かったルカがいて。
成績は良いのに、考えてることはジャンクフードとかバカの発明だったり、痛いのを嫌がって面倒ごとから逃げて、人との関わりからも逃げ出す彼女の姿があって。
そして本人が拒まなければ友人とも言っていいかもしれない彼女、那賀波ルカが憧れの人に屠られる瞬間を見ていた。
「アレぇ……? えっと“先生”、いつの間にここに来たの?」
つい先程、人を殴り飛ばした事など無かったかのように服から埃を払って話すその人の笑顔が、かつて見た笑顔とまるで違って。
深い悲しみに暮れた
そして何より、自分自身が彼女の視界に写らないノイズなのがとても苦しくて。
苦しんでいる彼女を助けて上げて欲しくて。
──故に心の中で助けを求めた。
本日のOneTopic:
お待たせしました。(昨日ぶり)
最近なんか筆が早いです。
不定期更新な本作に振り回されつつも、誤字脱字報告や感想を下さる読者方、高ぇ評価をして下さる読者方、更新を楽しみに待ってくださる読者方の皆様いつもありがとうございます!!
ゆっくりちまちま書いていきますので今後ともよろしくお願いします!!
作者は承認欲求モンスターな乞食なのでいつも執筆前のガソリンになってます!!