キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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二十二話 vol1エピローグ I don't stay at Rockstar sides.

 

じんわりとした曖昧な意識の中、花のようでどこか爽やかな匂いがした。

 

まるで陽だまりのある教室の席でうたた寝をしているかのような。

程よく揺れる電車に乗せられ、何処かへ向かう旅。

ガタン……ゴトンと何処へ向かうのかも知らない路線を走る車内は落ち着くはずなのに、どうしてか収まりが悪い感じだ。

 

「────駄目じゃないですか先生。まだ、アナタが向かう先はここじゃないでしょう?」

 

不意に懐かしい声が響く。

 

「『ゴメン、来ちゃった……』」

声の主に思わず、申し訳なさからつい謝罪の言葉が漏れる。

 

「来ちゃった……って、そんなさびしんぼじゃ無いでしょうに……」

昔に聞いた合成音声の様なつぎはぎでは無い、本来の……本当の彼女が発する声で視界が拓ける。

 

群青の空に広がる朝焼けの光が空色の生徒に影を差す。

 

「『それに、今は先生じゃ無いんだけど……』」

「先生は『先生』ですよ」

 

朝日が射し込み、電車内で揺れる吊り革。

いつだかに見た光景よりも揺れは激しく。

 

それでもなお、心地良い揺れが夢と現実の狭間を証明するかのように時間の流れを意識させてくる。

それは、対面に座る少女の姿が何を示すのか理解するには十分なものだった。

 

「──『エンディングにはまだ早い?』」

「はい、先生。早すぎです。このままじゃ皆困っちゃいますよ」

諦めをつけるべく目頭を抑えてため息を一つ。

──トリニティにゲヘナ、ミレニアムやアビドス。

まだまだ働いて貰わないと困ると。

そう困った風に頬で乾き始めていた血痕をこそばゆそうに指先で掻く彼女は、優しげに。だが、重い期待を託す様に。

「『きっと過程すら変えられる様な“選択”』」

乾きつつある彼女の傷跡から、床へと広がる血液が緩やかに伸びる。

 

「ちゃんと私に教えて下さいね? 先生」

車内の揺れで微睡む様に。

意識はそっと再び閉ざされ、淡い光の元へと流されていく。まるで月明かりの如く、ただ其処にあるピンボケした光の麓へと。

 

「起きる時間ですよ、『先生』」

流れる意識の中、それでもいたであろう彼女の肩に手をおいて届いているか分からぬ言葉を紡ぐ。

 

「行ってくるね」

 

 

 


 

──ズキリと意識が痛む。

意識?

何で意識が痛いんだ?

痛いということだけが分かっていた意識が徐々にハッキリとしてくる。

フワフワとした心地の良い所から現実という地獄に引き戻された感覚。さっきまで感じることも無かった心臓が動いている実感と共に、痛覚が戻ってきているのが分かる。いや、むしろ今は戻んなよ……! もっと後にしてくれよ……!!

 

ズキズキとした痛み……いや、もう痛過ぎて良く分かんねぇ。

ゴリゴリと頭や背中の神経を骨ごとペッパーミルに入れられて細かく砕かれてる感じだろうか。

痛み止めがされてるのか分からないが馬鹿みたいに痛えことだけは確かだ。

 

 

「え、起きた……!?」

痛みに耐えかねて瞼が自然と開けば、シミ一つ無い高級そうな天井が見える。

 

 

「……ここ、何処ですか?」

「トリニティだよ?」

「いや、トリニティなのは装飾とか雰囲気で分かるんですけど全く知らない部屋だから怖いんですよ」

「へ〜、意外とビビりなんだ?」

「側に野放しになってる最上級生から殴られてた記憶しか無いもので」

……で、なんでアナタが看病してるんですかミカ様。

 

セリナは? ねぇセリナさんは?

俺の中でチェックポイントにしているセリナさんは何処ですか……?

「はい、セリナです」

「ひゃっ!? びっくりしたぁ……」

 

圧倒的暴力で捻じ伏せてきた相手が乙女な反応をしているのを見るのは思った以上に悔しさがあった。

なんだろうこれ……恥辱か?

 

「先程ナースコールが押されたので来たんですが……」

戸惑いながらも、状況確認か俺を一瞬見てニコッと笑いかける。

……あれ? セリナってこんな優しかったっけ?

 

「ルカちゃんが目覚めたんですね。良かったです……」

心配してくれていたらしいセリナに失礼だが、なんか俺の知ってる彼女との違いに違和感を感じる。

というか頭の中にある色んな記憶の引き出しがめっちゃ開け締めしてちょっとずつなんか溢れてきてる気がする。

 

「さて、今回のルカちゃんの状態を説明させて頂きますね?」

──ゾワッ……!!

あ、マズい。即座にそう直感し、手足の感覚の確認をするが、拘束されていた。

 

「セリナさま、弁明の機会をお願いします……!!」

「弁、明……?」

「そんなに頭悪いキャラじゃ無かったよね!!?」

 

力任せに拘束具をどうにか出来るかバレないように試すが……感覚的に枷が金属製のモノと革製の拘束具をどっちも使ってやがる。なんでこんな厳重拘束されてんだよ俺!?

 

 

「まず背面の重傷火傷。金属片による裂傷。両腕の複雑骨折。左脚の開放骨折。それから「ゴメンナサイもうしないから!!もうしないから許して下さい……!!」「はい、続けますね。腰椎破裂骨折。軽度の敗血症。その他炭化を含む12の重傷」

 

セリナさんの説明が症状一つ重なる度に威圧感を増していく。なんならミネ団長より怖い。

「……そして使用を止めていたモルヒネの使用、不法な医薬品並びに不法医療器具の使用。言いたいことはさっきの言葉ですか?」

「……生かして頂きありがとうございます」

懇切丁寧真心込めて必死に謝りつつ感謝する。

説明された状態から回復するまでの治療は専門家の治療もあった筈だ。それがベッドに縛り付けられてるだけで済んでるならかなり寛大な処遇と言えるだろう。

 

「怪我に関しては一旦置いておいて、お薬ネリネリ禁止って言いましたよね……!?」

「うっ、いや……だって緊急で……」

「薬は使ってしまってるから証拠不十分ですけど、少なくとも医療器具の密造はやりましたよね!!?」

「ハイ……やりました……」

ちくしょう最近穏やかに過ごせてたからバレてなかったのに……!!

 

「反省してます?」

「ハイ、シテマス」

「……して無いですよね?」

「イヤ、アノ……スコシ「──“反省”」

 

「反省して無いですよね?」

 

──めーっちゃ内心見透かされてるぅ……!!

 

「ソ、ソノォ……どっちも使わざるを得ない状態だったので後悔は……ハイ、ゴメンナサイ……」

正直イェツンレーラが無ければミカの足止めは途切れてただろうし、ヘイロー破壊爆弾も耐えきれなかっただろう。

 

「……」

「ホントウニワルイトハオモッテマス……」

 

「はぁ…………これで最後ですよ……?」

 

ゆ、許された……?

「許してる訳じゃないですからね?」

「ほ、本当に申し訳ありませんでした……」

「……次またやったら“救護”ですからね?」

 

目を細めてジッと見られる。

……目線が信用してくれない。エスパーか何かか……?

 

「……それでは、点滴の取り換えも終えましたし、私はこれで。もし何かあればナースコールしてください」

 

そう言ってセリナは部屋から退室する。

 

「……」

 

「…………」

 

いや気まず……っ!?

というかなんでミカが俺のお見舞い?してんだ……?

 

「あー、いや……よく生きてたな。脳内麻薬ドバドバだったせいか腕の骨折以外全く覚えがないや」

 

「…………」

「あ、あのー……?」

 

「聖園さーん……?」

「…………」

 

 

「気まずいからなんか喋れよッ!?」

「き、急におっきな声出さないでよ、びっくりしたなもうっ!?」

 

 

「そ、それでここはトリニティの何処なんです?」

ひとまず落ち着いて気になることを聞いてみる。

 

「えっと、一応独房?」

「……独房?」

トリニティの檻ってこんな豪華だっけ?

アリスク留置してた所とか石造りだったと思うんだが……

 

「うん、ティーパーティーとかウチの重役の子が悪いことした時とかに使うやつ。ベッドとか冷蔵庫とか最低限設備は充実してるから個室代わりにって」

「……あっ」

 

それ、オメェが原作で入ってた檻じゃねぇか!!!?

え、俺が代わりに檻の中ブチ込まれてるのっ!?

おかしくないですか?なんで檻?

 

 

「あっ……えっと、その……」

「なんです? あ、そういやあれからどんくらい経ちました?」

「へ? あぁ、キミが倒れてから大体一ヶ月くらい経ったかな」

……夏休み入っちゃった。

マジかぁ……いや、一ヶ月くらいで意識戻った分マシと思ったほうが良いか。

 

「そ、それでなんだけど!!」

「え、はい……」

急に声でっかくされるとビビる。

 

「その、ティーパーティーの皆とのお話なんだけど……」

「は、はい……?」

 

 

 

「一緒にお話しに行ってくれないかな……?」

「は? いや……え、なんでまだ謝り行ってないんですか?」

 

 

 

「……ねぇ、キミって乙女心とか理解出来ない子?」

一発平手打ちをされて、圧迫面接が開始した。

すいませんミカ様、俺病人です。

ちなみにちゃんと話し合いはしたらしい。

でも謝ってそれっきりの一回だけ。

 

「多分出来てない、かも……です」

「……女の子として終わってるよ?」

要は気まずいから二回目の話し合いの場に来てくれという訳なのだろう。

 

「いやぁ……別に終わっててもそんな問題ないですし……」

先生ラブ勢という訳でもない。というかそもそも前世じゃ男だったので今世で情操教育こそ受けど感性は男児なのです。

 

 

「う〜わ、甲斐性なしのろくでなしだぁ……」

「オマケにトラブルメーカーらしいですね」

 

クスクスと笑われる。

「でも、そんな問題児に計画邪魔された方がいるらしいですよ」

 

意趣返しにそんなことを口走れば。

 

 

「私さ、ゲヘナが嫌いなんだ」

何処か諦めの様な色が見える表情でそんなことを言われた。

 

「まぁウチ(トリニティ)の生徒で表立って好む人はあんま居ないですよね」

 

「でもエデン条約が締結されたらゲヘナと無理にでも仲良くしなきゃでしょ?」

 

「だからそうならないで欲しかった」

 

「そんな時にふと思ったの」

 

 

「私がティーパーティーのホストだったら条約を止められるのにって」

 

「……好き嫌いは一個人の感性に基づくものですし、別にゲヘナが嫌いでも良いんじゃないですか?」

「──意外。色んな所に出掛けるって聞いてたから否定的だと思ってた」

 

「いやまぁ、それを他の子に押し付けようとしたのは良くないと思いますけど……」

 

 

「別にエデン条約結んだからって絶対にゲヘナと仲良くしなきゃいけない訳じゃ無いんですし」

 

「好き嫌いがあっても、それと上手く付き合えるのが大人らしいですよ?」

 

「ミカ様はもうちょい、自分の気持ちをちゃんと話せるようにしましょう」

行間を読ませる話し方より、どストレートに話した方が意外と通じたりするものだ。

……俺も怖くて出来ない時あるけど。

 

「まぁゲヘナの給食美味いので、私はゲヘナの学食時々食べに行ってますけど」

「え、ゲヘナでしょ、大丈夫? それ中毒になる食べ物とか使われてない……?」

「そんなことしてたら毎日ゲヘナの食堂爆散されてますよ……」

ゲヘナには美食の為なら何でもするテロリストがいるからな……

 

「そんなこと言うならウチの自治区、個人経営のメシ屋がかなりの頻度でハズレなのどうかしてくれません?」

美味いよりも『まぁ、食えなくはないか……』って心情になる店があまりにも多すぎる……!!

なんだよハギス専門店って。ゲテモノ一品だけで勝負しようとするな。引っ掛かった俺もマヌケだけどさぁ……!!?

 

「え〜……ご飯屋さーん……? ケーキバイキング行けば良くない……?」

「良くないっ!!」

 

マリー・アントワネットか!?まだ自罰思考取れなくてギロチンを実は望んでたりすンのか!?

第一その手の店はパスタとかカレーしか無いじゃん!!

 

「デザートは別で、主食は主食ですっ!!」

なにより、ウチの自治区にはチェーン店が少なすぎる!!

ファミレスなんてロ◯ホだけだぞ!!?

正直なこと言うならサ◯ゼとかあってくれよ!!!?

いや◯ストとかコ◯スでも良いから……!!

ブロン◯ビリーは区外まで行かなきゃなんないし、ステーキハウスとか出来てもすぐ潰れるし……!!

 

ウチの生徒みんな何食ってんだ、霞?

霞と生クリームで生きてんのか……!?

全生徒が甘党の仙人で構成でもされてんの……!?

だから登校すると何か甘い匂いするのか……!?

 

「焼肉店の匂いが公害とか口コミで叩くな!! たこ焼きで火傷したからって訴えんな!! サンドイッチだってうっっっすくお上品に仕立てられてウンザリなんですよぉ!!? 何処もかしこもティーサンドイッチばっか!! 厚めのモノはベーコンサンドかBLTばっかだし、パンをバゲットにしたサンドは全然見ないし、大体ライ麦パンだし!! フィリーチーズステーキとかタコスとかイタリアンビーフとかパニーニとかバーガーとかもっと色々あるじゃん!!!!」

「うわ、カロリーエグそ……」

「カロリーの何が悪いんですかぁ!!」

 

この自治区には美味しいモノが少な過ぎる。

甘いのも好きだけどスイーツは俺の主食になり得ないんだ……!!

 

「カロリーが何か悪いことをしてますか!? 生命が活動するエネルギー源ですよ!!?」

ミレニアムに行きたかったのはそう言った食事事情も兼ねてだ。あそこはジャンクフード盛り沢山の聖地。俺にとってのエデンなのだから……!!

移動に時間掛からなきゃ通い詰めてただろう。遠すぎて流石に諦めたけど。

 

「う、うん。考えとくね……」

「はぁ……はぁ……ぜひお願いします……!!」

 

何か言いたそうではあったが、また来ると言ってミカ様も檻から退出した。

 

 

 

 

 

────そして退出したのを確認してから深く息を吐く。

 

「喧嘩、したまんまだなぁ……」

 

 

動かせない身体の力を抜いて、自分にとってついさっきだった出来事を振り返った。

 

 

『退きません……!!』

そう言ってミカとの間に立った彼女は真っ直ぐ俺を見ながら止めに入った。

 

身勝手が過ぎると怒られた。

 

 

『きっと『その後で』を無視して居なくなりますよね!!?』

 

 

内面を見られた。

 

 

「絶交されちゃったかな……」

なんだかんだ怒りはしても受け入れてくれたヒフミから本気で怒られて抵抗された。本当に嫌だったんだろう。

 

「……元々ネームドに関わらないつもりで動いてた訳だし今まで通りに戻っただけか」

切り替えよう。

そう思って目を閉じるも、なんでか身体中の痛みやモルヒネ切れより、気持ちが上手く整理出来ない方が苦しく感じた。

 

 

身体の傷はすぐ治るのにこの手の傷はまるで治らないのが嫌になる。

 





本日のOneTopic:独房にいる那賀波の元に一ヶ月間ヒフミは一度も行ってません。




これにて一章完結です!!

一章で一番書きたかったシーンがここ数日で全部出せてめっちゃスッキリしてます!!


ここから二章へと話が進んでいきますが、今度こそ本当にゆっくり執筆する期間になるかと思います。
また不定期更新になると思いますが、読者の方々には長い目で見て頂ければ幸いです。

いつも誤字脱字報告や感想を下さる読者方、高ぇ評価をして下さる読者方、更新を楽しみに待ってくださる読者方の皆様、毎度ありがとうございます!!
作者は承認欲求モンスターな乞食なのでいつも執筆前のガソリンになってます!!
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