キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
それから暫くは私が給食部として給食を提供して、あの子は利用者さんとして食べる。
それだけの関係だった。
でも、何時だったか忘れちゃったけど、向こうの授業か或いは交通機関に影響があったのか締め作業をしてる時に来たことがあって。
その時が確か最初の会話。
「うぇ……ひょっとしてもう店仕舞いだったりする……?」
そんな風に気まずげにこちらを伺う姿は、イタズラがバレた子供みたいに思えた。
だからか分からないけれど、よく覚えてる。
「今日は見かけなかったから一食分残しといてあるわよ」
「うぉぉ!! 流石フウカさん神!!愛してる!!」
「そ、そんな大げさな……残してあるとはいえ、流石に冷めちゃってるだろうし、ちょっと待ってなさい。温め直すから」
あの時はトリニティ生なのにどんだけ貧乏なんだとか思ったっけ。実際のところは、本当にただ喜んでただけみたいだったけど。
それで、蠅帳をしておいた給食を温めようとしたら、それをいつの間にかキッチンにまで入り込んでスルッと持って行っちゃうんだからびっくりした。
「いやまたガス入れたり、洗い物するの面倒だろ。それに冷っこいのも全然アリだから」
……今思い返してもズレてるのがよく分かる。
普通にレンジ使うつもりだったのに、勘違いで変な気配りしてそのまま冷たい給食を席について食べ始めちゃうのよ……?
それなのに凄い満足そうに「ごちそう様でした!! 美味しかった!!」なんて言ってくるから、その……なんていうか、少し腹が立った。
……いや、うん。
普通にムカついたのよね。
『アナタはお腹を満たせれば何でもいいの?』って。
冷たいご飯なんて嫌がる人が多いのに、本当に美味しそうに食べてたから。
始めて満たせてるって思った子が、そうじゃなかったら。
……実際は私のご飯の意味は無くて。本当はあの子の何も満たせてないのではないか。なんて風に考えてしまって。
だからまた遅れて締め作業の時に現れたその子に試しで、購買でセールしてた壁みたいな味のする固いブロックレーション。それらをお盆に乗せる各種皿に盛って出してしまった。
「え、今日ってサバ味噌定食じゃ……」
尻尾も獣耳も羽もないのに、分かり易い位にへこたれて、しょぼくれながら完食するのを見て後悔した。
この子が私のご飯で心まで満たす食事をしていたと、私が掲げていた目標通りの給食を提供していたと理解させられたから。
それからはいつも締め作業前に現れては給食を食べて掃除を手伝ってくれたりするようになって、次第に給食を一緒に食べる様になった。
「────あ〜、でもトリニティのパンはあたし苦手かもしれない……あんなフワフワなのパンというよりアヒルの餌に近くない?」
「え…。フウカは、もちフワ系のパン嫌い……?」
「いや、用途によるとは思うんだけどね? でも朝とかに食べるってなるとちょっと気持ちが入らないというか、食べてるって感じがあんまりしないかなって……」
「それご飯としては脈無しって言ってるようなもんじゃん!?」
「そんなつもりは無いけどね? あくまで私個人の意見としては〜って奴よ? それにしっとり柔らかいのもオヤツとかには良さげだし……」
「……そこまで言うならオススメのパン屋教えて」
「へ? ……あっ、買いに行くの?」
「流石にそこまで言われたら一応トリニティ生(不本意)だから確かめておきたいじゃんねぇ……? ゲヘナのパンとやらの実力をさぁ……」
舐められてたまるかと言わんばかりに沈んだ瞳で威圧してくる姿はトリニティというよりもゲヘナでお馴染みのガンを飛ばすそれに近い。
「アンタのそういうとこ、すっっっっごくゲヘナ向きだと思う……」
「失礼な……お、私はそんな野蛮な蛮族じゃないから……」
「その言いぐさだけで思考の方向性はゲヘナ寄りよアンタ」
次第に給食を一緒に食べる頻度も増えてその分、くだらない会話も増えてた気がする。
「──お前んところにトリニティの生徒来てんだろ?」
「……確かに食べに来てるけど」
「呼べ」
でも、平和なんてものはキヴォトス、特にこのゲヘナ学園では長続きしないもので。
「いや、連絡先とか知らないわよ! いつも勝手に来て食べて帰るだけなの!!」
「いつ来るか分かんなくとも知り合いなら連絡先くらいは知ってんだろ」
「し、知らないってば!! 本当に知らないの!!」
実際、何処で知ったのか献立がサバ味噌の時に出没するくらいでそれ以外は何もトリニティ生のことを知らなかった。
「じゃあ何かあんだろ!! 来る理由とか!!」
「そ、そんなの分かんないってば!!」
給食のメニュー次第とは言わなかった。
トリニティ生とかそんなのはどうでも良くて、ただ。
美味しいって心の充電に来るあの子に、またご飯を出してあげたかったから言わなかった。
言ったら、その、何というか……言葉にうまく出来ないけど、捨てたらいけないモノを捨ててしまうかのようで。
「まぁ、給食出すコイツが居なけりゃ探し出すだろ」
「確かに!! わざわざトリニティから来るくらいだしな!!」
そんな発言が出てからはすぐ拘束されて、逃げる暇もなく拉致され、廃墟が並ぶ放置された地区のビル。
「しかし良い金づるになるだろうな〜」
「相互不可侵のつもりで騒ぎを起こさないとか口約束ばっかな鳥女には良い気付けだろうさ」
「違いねぇ!!」
ケタケタと身内の会話で盛り上がる中、縄で縛られた私を連れて連れ込まれたのはビルの地下駐車場だったであろう地下スペース。コンクリート壁で囲われ、ドラム缶で作られた焚き火の火を絶やさないように、乾燥していて良く燃えそうなゴミが近くに纏められてた。
「あっ、すみませんね、ちょっと通りますよ~」
──ゴッ!!
そう鈍い音が火の番をしていた不良から響いてから、ドラム缶が倒れ、薄暗い屋内一帯をぼんやりと照らす。
直後、マズルフラッシュが瞬いて次から次へと光源であるドラム缶が倒れ、甲高い音を地下に響かせる。
ゴミに火が燃え移って明るくなった空間に見覚えのある少女の姿。
「バカでけえ得物を持ったトリニティ生、お前『双翼』か」
「おぉ、ゲヘナにまで広まったかぁ……!!」
警戒心も無く、むしろ嬉しがるかの様にする彼女はあまりに自然体で、お嬢様学校であるトリニティ生の一般的イメージに似ても似つかない。
「いつも事件や騒動の渦中にいる頭の可怪しいヤツって噂だ」
「誰だその噂撒いた奴、ぶっ殺してやる……!?」
更に情緒不安定ときた。
レアケース中のレアケースみたいな人物と私は知り合いだったらしい。
「オマエがウチに出入りしてたトリニティ生か、思ってたより頭イカれんのな……」
「今さっきオタクのお仲間さんシバいたんですけども……!?」
「人数差すら理解出来ない程にお嬢様学校ってのは学習能力が欠落すンだな、可哀想に……」
「憐れむなッ────!!?」
「いや、まぁ喧嘩しに来た訳じゃ無くてちゃんと理解してもらおうと思って、説明とかもするつもりで来たんだけどもね!?」
「説明?」
「そそ、トリニティ=金持ちって解釈だろうけど普通に両親から資金援助とかも無いし、なんならひっそりバイトして学費払ってるし、なんならトリニティだと給食無いから学校終わりの行ける日にこうしてゲヘナに通い詰めてる感じでして……」
「なので、はい。その〜、そういう訳で俺は現在進行系で金欠貧困の身で、ね……?」
「じゃあ身包み置いてくしかねぇよなぁ?」
何とも下手くそな説明。集団のリーダーの方がまだ、弁舌に秀でていたことも相まってか、グループ全体がバカを見る目をしている。
「いやぁ~そこはほら、トリニティとゲヘナ。犬猿の仲に芽生えた友情、ラブ&ピースでいきません……?」
「いや、お前に金ねぇことと、アタシらがお前の身柄抑えんのは何ら関係ねぇから」
「それにほら、い、痛いのは良くないじゃんね……?」
「だとしても、あーしらの正当防衛なンだワ」
クスクスと周囲からの嘲笑があの子を包む。
「た、確かに……!?」
「あ~もう、おバカッ!! なに言いくるめられてんのよ!?」
「いやぁ、話もせずに一方的にフウカを回収しようとするのは良くなかったかもって……」
「その反省して得するのコイツらしか居ないでしょうが!!」
「ハイ……」
「ショボショボしない!!」
「はいッ!」
……まぁ、確かに不意討ちで一人ノックアウトしてたし、道理は通るかも知れないが、あくまで誘拐犯の言葉だ。
拉致された私も私で悪いが、助けに来てしょぼんとされては拘束された仲間が一人増えるだけになりかねない。
「戦闘はしたくないんだけどなぁ……」
「そりゃ同意見、大人しく縄に縛られたら痛いこたぁしねーぞ?」
そう不良集団のリーダーが言えば、担ぐようにして運んで来ていた金属の塊が彼女の手によって照準を定める様に向けられる。
「おーおー、ビビりなこって」
「流石に襲われるの分かってるなら抵抗はするでしょ……」
そう言ってのけた後。
──カチン、と引鉄を引いて撃鉄が作動する音がした。
……何も起こらない。
「……抵抗しますからね?」
再びカチンと音が鳴る。
カチ……カチカチ……と何度も引鉄を引く音が響く。
「……あれ?」
カチカチカチ……
「んんん~……ッ!?」
「あ、アンタまさか……」
彼女の焦りと緊張で微妙に焦点がコチラにあってない目が物語る。
──ごめん、弾切れしてた。と。
ド級のアンポンタン、ドアンポンタンの所業に天を仰いだ。
人質として私を囲んでる不良達からニヤニヤとした笑い声が聞こえ、即座に間合いが詰められていく。
「た、タンマ!!? 誰か50AE弾かMP7のマガジぬぉわぁあぁッ!?」
「持ってても誰が渡すかよ!!」
「そらニワトリ狩りだ!!」
「で、ですよねぇ〜〜〜〜ッ!!!??」
弾切れの敵にわざわざ支給するマヌケはいない。
アンポンタンのお嬢様が言った言葉を皮切りに射程の短い武装をしている者から近付いて発砲していく。
『双翼』とか言われてたあの子は不良達がばら撒く弾幕の雨からワタワタと必死に避けて後方へと逃げ出した。
……あ、コケてめっちゃ両手バタつかせてる。
「に、逃げる時すら……。ほんっとに締まらないヤツ…………」
この時ばかりは眉に癖が付くんじゃないかと思うくらいひん曲げて眉間にシワを寄せた。
多分縛られてなかったらその両手で顔を覆い隠すようにして天を仰いでいただろう。それぐらいに間抜けな構図だった。
なにせ、助けに来たのに文字通り着の身着のまま碌に弾薬すら持たずに現れたのだ。
挙句。
「弾ァァァーー!!? 誰か一発だけで良いから弾下さい!!!!? うぅ……靴、いや……足……!!足くらいなら舐めるから弾薬を下さいぃぃっ!!?うおぁあっぶねぇ!!?」
──情けない程に敵へ媚びながら鉛玉の雨から逃げ回る姿。
……どうして私は、あんな奴が助けに来て喜んでしまったのだろうか。
あの子の悲鳴にも似た大声で頼みかける姿はとても滑稽で愚かで……無様そのものであった。
しかし、とはいえ。
救援があんな調子では悪い意味で肩透かしも良いとこだ。確か
半泣きで弾幕から逃げてる情けない姿は、なんかもう、見てられないので、縛られた後ろ手で頑張って使い、ポケットの中を確認する。
「……ん、あった」
縛られた状態だと少し大きめのマガジンが上手く取りにくいが、なんとかポケットから引っ張り出して投げる。
コンクリートの地面を何度か跳ね、その後スライドして彼女の近くに転がってくれた。
「ほら!! 弾!! それで何とかしてよ!?」
「おぉ!!!? 助かる!!!? いや、本当に助かる!!!!」
そう言って鉄塊みたいなものに銃や車のマフラーの様な物と言ったゴチャゴチャした絡繰じみたソレを彼女は軽々しく振り回し、盾の様に扱い出した。
「弾が有るならまだやりようが……あるからね!!」
不良集団との間合いを詰めて大きく右上から左下にかけて鉄塊を振り抜く。
「そんな大振り当たるわけねぇだろ、お嬢様学校に通う奴ってのはやっぱ鳥頭なのか?」
「逸んなよ。ゲヘナ生はやっぱ血の気が多くてヤダヤダ……」
慣れた動きでマガジンを蹴り上げ、宙に浮いたマガジンを左手で掴み、無理矢理取り付けたかのような鉄塊からはみ出た銃へと装填。
「カッコつけは実戦じゃ役に立た……フゲッ!?」
銃のグリップを軸に鉄塊を回して、彼女に銃口を向けて煽る生徒の顎を砕き、そのまま鉄塊は反転。
背面へと向けられる。
「爆ぜろ」
……瞬間、背後のコンクリート柱越しを粉砕して、タイミングを伺っていたであろう不良のヘルメットに穴が咲いた。
「……まずは二人──」
銃声の直後、まるでエンスト直したてのエンジン音に似た、歪で独特な唸る音が鉄塊から響き出す。
「──三人目。」
気が付けば空間に溶け、私の近くに居た生徒へと低く唸り声を上げる鉄塊を真っ直ぐ振り下ろし、文字通り叩きのめした。
「ちょこまかしやがって!! 鬱陶しいンだよニワトリ女!!」
適度に離れた距離からばら撒かれるライフル弾に対し、鉄塊を盾に直進しては至近距離で発砲を繰り返し着実に敵の数を減らしていく。
「ザコの攻撃で倒されるとか、ゲヘナ自治区住みってやっぱ頭悪い奴ばっかなの?」
先程までの様子から打って変わって強気な口調。
少し前まで追いかけ回されてたのがストレスだったのか、はたまた鳥頭と言われたことを根に持っていたのか、攻撃的な発言を皮切りにヘイトスピーチの応酬が始まる。
「アタシらみてぇな持たざるモンと違って嫌味にも気品があるってか!!」
「外からしか見てないのに他校の灰汁に随分とお詳しいんですね! そんなんだからヘルメット被る様なことになってるんじゃないですかぁ〜?」
「鳥頭の中に紛れてても分かり易いくらいハブられそうなお嬢様言葉助かるなぁ〜!! でもここでゲヘナ自治区だから唸っても威嚇にすらなんねぇぜ?」
「暴力的主張しか出来ない自治区で暮らす負け犬自慢はまた負けた時に余計惨めな思いするって知ってた?」
ヘルメットに浮かび上がる青筋を幻視する程に相手の発言を小馬鹿にした態度でたわ言をのたまう姿は、さながら悪党である。
「「あっはっはっはっは!!!!」」
歪ながらも息を合わせた笑い声。
しかし、恐らくどちらの眼も一切笑ってない。
大声で笑い合いながら威圧し合って、全く隠さずに殺意を向け合う。
「「ぶっ殺すッ!!!!」」
──衝突は必然だった。
廃墟ビルの地下駐車場は荒地となり、コンクリートの粉塵が舞う戦場へと即座に変わり果て、目まぐるしく状況が変わる戦場では、一人。また一人と不良集団の打ち鳴らす銃声が消えていく。
「クソッ……!! 塵に紛れてチョロマかと逃げ回りやがって!!」
怒りに従って吠える不良の破損したヘルメット、そのアイシールドから覗かせる眼光は、飢えを凌ぐ為に獲物を求める獣のような鋭さを見せる。
周囲を取り囲むようにあれだけいた筈の不良生徒は、雲隠れするかの如く未だ舞う塵の中。
荒れた路面にその多くが倒れ伏していた。
ただでさえ薄暗い屋内。
一人の少女が通り抜け、その跡を残す様に立ち込める粉塵が巻き上がって仄かに渦を巻く。
迂闊に近寄った連中の末路はどっから出てるのか分からない馬鹿力でどついて来るか、鉄塊を叩き付けて来るか。打撃……というか力任せの暴力で寝かしつけとか前時代的過ぎてゲヘナにもそう居ないだろう。
「そこかッ!!」
空間の中で生まれる風の流れから迫って来るのを読み、確実に仕留めるべく影を視界に収めてから発砲する。
「惜しい。それ愛銃」
視界を遮る塵の雲を弾幕で晴らせば、そこには重々しい鉄塊。『双翼』の愛銃【ロックスクラッパー】が地面に突き刺さっているのみ。
「ぶっっっとべぇ!!!!!」
不良生徒が慌てて振り返るもそこには自分に真っ直ぐ伸びてくる掌。
フルフェイスのチンガードを左手の掌底で砕き。
「もう一発ッ!!!!」
一瞬の間を置いて右の掌底で真っ直ぐ不良を穿った。
「ハァ……ハァ……、勝ったぁ……」
気持ち掲げた感じのガッツポーズをして此方を伺うような姿勢で、僅かにドヤ顔なのが彼女の性格を表していたように思う。
「そういえば、アンタの名前知らなかったわね……」
「………確かに自己紹介してないかも」
拘束を解いて貰っている合間の時間が少しむず痒くてポツリと疑問を漏らして、すぐ自分の失敗を呪う。
「あー、多分学校はもう分かってるだろうけど、トリニティ総合学園1年、たぶん帰宅部……?の那賀波ルカと言います」
そう答える那賀波の手には、力いっぱいに握られたナイフ。
そして、それはプルプルと震わせながら、ロープへとギコギコ削り切る様に使っている様子であった。
……答えてくれるのは嬉しいけど、正直黙ってロープを切ってて欲しい。
集中が分散してるからか、手が震えているのが怖くて仕方ない。
「えっと……血液型はAで好きなこと……は、工作とゲーム、あと読書。好き嫌いは……」
「……ねぇ、ほんとに怖いから黙って切って?」
「え、好き嫌いはそんな無いよ」
「会話になって無いから!!!?」
ロープが切れた後、というか腕まで切りに来そうな恐ろしさすら感じる。
「アンタが話してると手が震えてて怖いの!! 手首に、サクッと!! 力任せに扱ってるから怖いの!!」
「えぇ……でも……」
「『でも』じゃない!!黙って切って!?」
──ビルすら壊して沈めると噂のトリニティの問題児『双翼』、那賀波ルカと交流を本当にするようになったのはこの日以降である。
「まぁ、わざわざパンの違いを理解させる為だけに買いに行かせるのもなんだし、今度こっち来れる日教えてくれれば用意しとくわよ?」
拉致された際の車は破損、不良集団共は全員気絶という事もあって、結果としてゲヘナ自治区の稼働してるエリアまで歩いて帰ることになったその日の帰り。
「え、幾ら?」
「タダで良いわよ、そこまで手間でも無いし」
「流石に材料費位は渡すって……個別給食をお願いするみたいな感じになっちゃうだろうし」
「普通に休みの日に来れば良いでしょうに……」
友達顔して普通に正面から来れば良いものを、なんでそんな不法侵入に拘るのか謎だったが、ルカにとって休みは無理であった。
「いや、休日のゲヘナ自治区方面への外出を最近見張られてるっぽくて……平日とか良くて土曜の午前授業とかじゃないと侵入しづらくって面倒なんですよ……」
休日や祝日は自治区境界の警備に人員が多く回されているとのことで、自治区外外出を頻繁に行う癖に外出届を出し忘れるから拘留されてしまうのだと言う。
「な る ほ ど 。 アンタの事情だった訳ね……それなら大体……、300円位かしら。いつ頃来れそう?」
「明日」
「は?」
「明 日 行 く」
「……いや、外出届出し忘れるから来れないって言ってたわよね?」
「明日は平日だし、見回り強化期間って訳でもないから警備網はザル……というか素通り出来るから平気だよ」
「……アンタ滅多に来れないからサバ味噌定食の日に来てたんじゃ無いの?」
「えっ、いや普通にゲヘナ給食のサバ味噌定食が一番サバ味噌の中で好きだから食べ漏れ無いようにしてただけなんだけど……」
「……いっぺん死んどいた方が良いわよアンタ」
「……なんか思ってた3倍はバイオレンスと言うか、ゲヘナそのものというか──」
「バカよ、バカ」
──今思い返すとやはり入学する学校間違えてるとしみじみ思う。
そう口に出しながら、机を拭いて回るアホを見る。
那賀波ルカ。
自治区外に始めて出来た友人だ。
「机拭き終わりました!!」
「じゃあゴミ出し行ってきて」
「マムイエスマム!!」
「えぇ……?」
パタパタと走ってゴミ出しに行ってしまったアンポンタンを見て、ジュリが戸惑いの声を上げる。
「せ、先輩、本当にルカさんって今の話の人ですか……?」
「1年生の時にしたことは黒歴史とかで恥ずかしいらしいわよ」
恥ずかしがるなら最初からするなと思うが、咄嗟に動いてしまうのだろう。
実際、この前だって万魔殿からの要求で巨大デザートの作製をしてたら起きたパンちゃん騒動に巻き込まれてたし。
「今じゃ勤勉なトリニティ生を自称してるらしいけどね」
「今は不良さんじゃ無くなったんですか?」
給食室の締め作業を終わらせ、廊下に出れば胡乱な面持ち(눈_눈)で、ジュリに今見える光景を指し示す。
「派遣だかで来たとか言うトリニティってオマエか!! 良くもまぁわざわざお小遣い渡しに来てくれたもんだね、ほらさっさと財布出せよぉー!」
「誰 が 出すかぁ!!!」
思いっ切り露骨に絡んできた二人組に対し、アッパーカットの要領で掌底を一発。その反動で隣にフックを一発。そのまま、二人をヤクザキックで押し倒してこっちに駆けて来る。
「フウカごめん、先上がりします!!」
「作業終わってるから普通に上がりよー」
手を軽く振ってそのまま逃げていく那賀波を見送る。
「ね? 外面良くなっても中身はバカのアンポンタンよ」
「少なくとも私が知る勤勉では無いです……」
OneTopic:プリン事件は土台に使おうと焼いていたパンケーキが管理しきれず焦げそうになった所をジュリが触れてしまってパンちゃんに変異して起きました。
新年明けましておめでとうございます……え、もう2月!?
……1月には出せれば良いなとか思っていたのですが、リアル都合が色々あって投稿遅れました……!!
激動の日々だったのでちまちま書いてければ……
うぉぉ!!ケイちゃんカワイイ!!マルクトお姉様カッケェ!!
……滅茶苦茶色々ブルアカ進んでるので、再履修タイムとか挟んだりするかもですが、今年にはゲヘナ出向編終えてエデン編に行きたく思うので!!
そして毎度のことながら、いつも誤字脱字報告や感想を下さる読者方、高ぇ評価をして下さる読者方、更新を楽しみに待ってくださる読者方の皆様、毎度ありがとうございます!!
作者は承認欲求モンスターな乞食なのでいつも執筆前のガソリンになってます!!
今後もゆっくり書いていくので長い目でお付き合い頂ければと思います。