あなたの好きなニケはレッド── 作:オス゛ワルト
「た、助けていただきありがとうございます……! その姿もしかして"赤い巡礼者"さんですか……!?」
「いや違う違う。違うから帰っても内緒にしてもらえる?」
「命の恩人のお願いですから当然です!」
イングリッドとも別れ地上に出てきたレッドキャップは相変わらず自由に動くことにしていた。
北部に行くならスノーホワイトが居るし大丈夫だろうという思いと、過干渉は彼らの育むはずのコミュニケーションを阻害すると思い、なにかあれば相談してくれ、と少し距離を置く形にしてみた。なんか誤解されたのか誘われたグループチャットのメッセージでとても心配されたが。
心配されずとも、方針はそれはそれとしてこっそり前哨基地に入り浸ろうと決意している。まだボロボロだが発展に期待である。
そうして探索をしていると遭難しているニケが居たので不意打ちされないかは一応警戒して接触したがそういう事はなく普通に遭難したニケだった。遭難は普通ではないが。
[レッドキャップ]
[このメッセージは通信障害を想定しxx日00:00に送信している]
[十二時間以内にエデン付近座標xxx・yyyに到着しろ]
[協力してもらいたい事がある」
ヨハンからメッセージが来た。昨日の深夜0時に送信されたのが今頃来たようである。
何やっててもすぐ来いと言われていたのでそう返信する。しかし一旦北部に行ってアンリミテッドにニケを引き渡してからでは時間的に間に合わない可能性が高い。
「悪い、ちょっと寄り道するけど他言無用でお願いして良いか?」
「わかりました! 誰にも言いません! アークにスキャンされそうになっても脳燃やします」
「そこまでしなくて良いから。ちょっと急ぐから抱えさせてもらうぞ」
「ぜひお願いします!」
米俵を持つように肩に担がれた量産型ニケは少し残念そうな顔をした。
その後ラプチャーと戦闘を回避したり少数のラプチャーを蹴り壊したりしながら座標に向けて邁進していると座標近くでイサベルが空からやってきて並走する。
「その子は?」
「遭難してたから送り届けようと思ってたんだけどメッセージが来たから連れてきちゃった」
「エデンの方で保護しておきましょう」
「良いのか? 悪いな」
「あっ赤い巡礼者さん助けていただきまことにありがとうございまし………」
イサベルに引き渡したらすごい速度で飛んでいってすぐ見えなくなった。
それを見送ったレッドキャップが座標に到着する。
「どこにいるんだろこれ探した方がいいかぬぁぁぁぁぁぁ!?」
と見えない所から手が出てきて引っ張り込まれ悲鳴を上げながら引きずり込まれると。そこにはドロシー含めたインヘルトの面々とヨハンが簡易的な椅子などを置いて待機していた。中心には小型の装置や箱がありどうやらエデンを隠す光学迷彩の小型版のようで、レッドキャップが気付かなかったのはこれが原因のようだ。
「良く来た」
「呼ばれたけど何すればいいんだヨハン?」
「私が説明しま「いや説明は指揮官の仕事だ」
「……」「……」
笑顔で説明しようと割って入ってきたドロシーをヨハンが牽制する。二人共、睨み合ってるわけではないが笑顔と真顔で見つめ合った。
『……私が説明いたします。今回レッドキャップには銀の弾丸になってもらいます』
「銀の弾丸」
『使う相手、作戦目標はヘレティック・ニヒリスターの撃滅です』
「ヘレティックという事は……アタシが前空からやったみたいな事すればいいのか?」
セシルが少し呆れた声をしながら通信で入ってきた。
ドロシーとヨハンがレッドキャップの方をすごい見てきているがレッドキャップはそれを見なかった事にした。ハランは我関せずでカラスと戯れ、ノアはすごく居心地が悪そうである。
『いいえ、
「じゃ、ヨハンの指示に従って戦うのか? 連携とか絶対問題出るぞ」
ヨハンがその通りだと想定済みの表情をしている。なおヨハンの想定では部隊行動として密な連携ができずだがレッドキャップはそもそも部隊行動した経験がほぼないのである。指揮官から指示を受けた経験すらほぼない。
『分かっていますとも。なのであなたにやってもらう仕事はトドメ、又は千日手の盤面の打破です。そこにある銃座は高性能な冷却機構を備えたものです。銃をセットし待機していてください。タイミングの指示はヨハンが出します。あなたは狙いを定め、以前おこなったあの一撃をニヒリスターに叩き込む。それだけです』
光学迷彩の発生装置近くに置かれた箱をヨハンが展開する。
「銃座はこれだ。いくら光学迷彩があるとはいえ発射すればおおよその位置は特定される、その上ニヒリスターは自分を殺し切る可能性のある相手にどう対応するかは分かりきっている。倒しきれなかったならすぐに移動しろ」
「了解」
「イサベルがエデンから戻り次第作戦を開始する。各自準備をしておけ」
インヘルトの面々に今頃準備しようなどというのはおらず既に武装の点検を終えているのでレッドキャップが武器をセットした銃座の高さを弄りはじめる。ウルフスベインは肩で担ぐ方式なので銃座を高くセットしないと上手く動かしにくいのだ。
「緊張していますか?」
微調整しているとドロシーが声をかけてきた。
「緊張してないって言ったらもう大嘘になる。この作戦アタシが要なわけだろ? 失敗したらどうするんだ?」
「別の策も準備していますよレッドキャップ。ここで失敗してもまだ次があります。ニヒリスターとは既に三度交戦していますが、いずれも互いに決定打が無い事が原因でした。多少損傷を与えても高い回復力と……粗暴に見えて無駄に慎重な様なので相手が逃げに転じるのも早いのです」
「じゃ、頑張らないとな。あっそうだ。せっかくだし……」
高さ調整を終えたレッドキャップが端末を操作するとドロシーにメッセージの通知が来た。グループへの招待の様だ。[レッドキャップのお部屋]と書かれている。
「これは?」
「いつか参加したいと思ったら、してくれるように今作っといた。スノーと先生と聖女様も誘ってある」
軽いノリで口にしたらいつもの名前ではなく、レッドフードが使っていた呼称が自然に出てきた事にレッドキャップは気付いていない。
「………………そうですね、いずれ参加するかもしれません。それはさておき」
ドロシーががっつりレッドキャップの肩を掴んだ。
「へ? ドロシー」
「あなた無茶をする気ですね? 今この瞬間にわざわざグループを作っておくなど」
「いやそんなつもりないけどな」
「尚のこと悪いですね? 私達エデンと戦うヘレティックを己が無茶をするだけで倒せるなら高いリターンになるから良いだろうとか無意識に思ってますね? 以前ヘレティックに突貫した時もそうでしたねレッドキャップあの攻撃が運よく左手と左足が吹き飛ぶ程度で済んだから良かったものを普通であればそのまま死んでいたはずの攻撃です。レッドキャップ、あなたは期待に応える為己を顧みない所がありますがそういう所までレッドフードに似る必要は無いのですそもそも強者を弱者が搾取するアークと違いエデンの我々は全員が強己の危険を度外視した行動は私に対する侮辱になると思ってくださいレッドキャップ*1」
肩を掴まれたまますごい眼力で主張しているドロシーにレッドキャップはすごい勢いで縦に首を振りまくった。ノアはその様子を見て顔を青くしていたがハランとヨハンは慣れたもので我関せずである。
「悪かった悪かったってごめんって! 自分のこと大事にする! 無理もしないから!」
「それならいいのです。誰しも無意識下の悪い癖はなかなか抜けないものですから、これからしっかり意識していきましょう」
ドロシーが手を離して立ち上がるとヨハンも空を見て立ち上がった。
「イサベルが来た。作戦を開始する。行くぞ」
インヘルトの面々が意識を切り替えてヨハンに続いて光学迷彩の外に出ていくのをレッドキャップは銃座の所で手を振って見送る。
『これよりニヒリスター撃墜作戦を開始します』
そしてセシルの通信がドラゴン退治の始まりを告げた。