あなたの好きなニケはレッド──   作:オス゛ワルト

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前哨基地にて

 オバケに遭遇してからデータ収集を一旦放棄して全速力で該当地域から離れ、暫くはビビる夜を過ごしていたレッドキャップはとりあえずエデンの方角へ移動していた。

 が、そこでイングリッドから連絡が入ったので進路を転換。カウンターズと指揮官の管理する前哨基地にやってきていた。

 以前来た時は殺風景で施設も殆どないような感じだったが、現在では結構色々な施設が建っている。

 発展の速度がおかしいような気もするがエレベーターを降りてきてすぐのところで作業している黄色いニケはその原因の一端だろう。

 

「すいませーんそこの人〜!」

「おや、どちら様かの?」

「トルバドール分隊のレッドキャップなんだけど、指揮官は?」

「青二才ならコマンドセンターにおるはずじゃよ」

「ありがとうおばあちゃん」

「構わんよ〜……いや待たんか私だからよかったが初対面の相手におばあちゃん呼びはいかんぞ!」

「ごめんなさい!」

 

 前哨基地がここまで様変わりした建築力の立役者、今もまた何か作っている様子のマイティツールズのリターに声をかけたところ、指揮官はコマンドセンターに居るらしいので意気揚々と向かった。

 人に会うとオバケの恐ろしさもやわらぐというものだった。

 

こっちにも寄って行きませんか?

「んー、リターなんか言……」

 

 声の聞こえた方を見たらアブソルートが使う武器庫があった。が、アブソルートの誰の声でも無く、振り向くと遠くですごい勢いで建築しているリターも声が届くような距離に居なかったのでレッドキャップはダッシュでコマンドセンターに向かった。

 

「お邪魔しまーす!」

「邪魔するなら帰ってちょうだい〜」

「帰りまーす!」

「帰らないで、レッドキャップ」

 

 ノックもせず指揮官室の扉を開いたレッドキャップ、そこへ炭酸水を飲みながらのんびりしていたアニスのボケが炸裂し、入ってきたのを逆回しするように出ていくボケを返し、ラピのツッコミで戻ってきた。

 

「お呼ばれしたから来たぜ!」

「フフ……レッドキャップはより火力を極めているようですね……! 私にはわかります」

 

 扉の一番近くに居たネオンがメガネをキラリと輝かせながらレッドキャップの全身を舐め回すように見て、その体から立ち昇る火力の気配が増大していることを察した。

 

「ネオン、アンタは何目線なのよ」

 

 普通そんな気配は見えない感じられないのでアニスは胡乱げな顔である。

 

「二人とも一旦そこまでにして。レッドキャップ、今回も地形データが欲しいのだけれど」

 

 ラピの言葉にアニスとネオンが両手で口をふさぐポーズをとって、身振りで招き入れるような動作をし始めた。

 

「ああいいぜ。どこのデータが欲しいんだ? というか指揮官は?」

「指揮官はシャワー中です」

「シャワーか〜、来るタイミングミスったかな。というか事前に連絡入れておけばよかったか」

「そろそろ終えると思うから問題ないわ」

「レッドキャップも待ってる時間を利用して私達の宿舎のシャワーを浴びてくればいいんじゃないでしょうか!」

「壊れてて水しか出ないけどね!」

 

 アニスとネオンがレッドキャップと肩を組んで自分達の宿舎の方を親指で指す。

 

「マジ? 川で水浴びばっかだから助かるな」

「私が間違っていました」

「ここのシャワーはしっかりお湯も出るからゆっくり浴びましょう?」

「今は指揮官が入っているからダメよ」

 

 肩を組んだままシャワー室へ続く扉に向かおうとする三人にラピが立ちはだかる。そこで扉が開いてきっちりと制服を着た指揮官が入ってきた。

 

「レッドキャップ、待たせたようだすまなかった」

「指揮官、先に……シャワー浴びてこいよ」

 

 現れた指揮官に対しておもむろにソファに座って足を組み背もたれに肩を預けてポンチョの前留めを外し艶っぽい声を出してみる。

 

「今浴びてきたところだが」

「………」

「レッドキャップ、貴女までそちら側に回らないで」

 

 頑張ってみた悪ノリがスルーされたのでレッドキャップはダメージを受けた。指揮官とレッドキャップの間を遮るようにラピが立って注意をする。

 

「あ、ラピひど〜い! そっち側って!」

「断固抗議! 断固抗議です!」

「…………」

 

 仕切り直しに指揮官室のソファーに全員が座った。

 

「で、どこのデータが欲しいんだ指揮……いや、指揮官、ほれ前みたいにケーブル繋いでくれ」

「? ああ、わかった」

 

 以前外で繋いだ時と違いしばらく時間が掛かった。受け取ったデータを見たカウンターズと指揮官の四人は顔を見合わせる。

 

「すごいわね。ただ、このよくわからないマークは何?」

「あー、コレはアタシが地上で使ってるベースキャンプ的なヤツの位置。近く通りかかったら使ってもいいけど使ったら片付けしてくれよ」

「確かにすごいです。どうすごいかは全く分かりませんけど!」

「奇遇ねネオン私もよ。とりあえずこの"怨霊注意"って何かしら?」

「仄暗い……いや深淵のような暗闇から人の頭が現れてこっちを見てきた……目が光っていた。あとさっき前哨基地に来たら誰もいなさそうな建物からアタシを招き入れようとする声も……」

「この話やめましょ」

「そうですねやめましょう」

「ええやめましょう」

「やめよう」

 

 おどろおどしく低い声を出しながら話し始めたら指揮官とカウンターズにも身に覚えがあるのか顔を引き攣らせた。

 

「さておきアタシが今日まで調べてきたやつ全部だ。必要な場所のデータはしっかり入ってたか?」

「ああ、入っているが……これだけの情報をいいのかレッドキャップ?」

「イングリッドから許可は出てるから問題ないぜ。データを集めるのがアタシの仕事、それを活かすのは指揮官の役目だから頑張れよ〜! 指揮官には期待してるんだからな」

 

 エデンの所在地や紅蓮が作ったミニ農場やスノーホワイトが使う工房のようなヤバそうな情報は書き込んでいない。

 

「で、今回はどんな作戦なんだ?」

「アブソルート分隊と共にヘレティックの墜落地点の調査だ」

「ああ、あそこ? すげえ燃えてなかった?」

 

 レッドキャップの持ってきたデータ上には"火災発生中進入不可"と書かれている。

 

「墜落地点の天然ガスが尽きたからか炎が鎮火した」

「なるほど」

 

 "鎮火済み"に書き換えるとレッドキャップはソファに体を預けて思いっきり背伸びをしてリラックスをする。あくびをしてからふと前を見ると指揮官がこちらをじっと見ている事に気付いて背筋を正しフェイスアーマー越しに指揮官と真正面から見つめあった。

 

「どうした指揮官」

「レッドキャップ、今回の作戦一緒に来ないか?」

「ちょっと指揮官様? 前にも言ったけど……」

 

 アニスがボケの路線からまじめ路線に帰ってきて指揮官の肩に手を置いた。発電所調査の時も指揮官は似たことを言っていて、レッドキャップも今回も同じようなら断る気だったが、こちらを見る指揮官の顔から前回と違い無知からくる誘いではないことがわかった。

 

「今回はアブソルートとの合同作戦だ。CEOであるイングリッドから許可そのものは出ている。カウンターズの連携と私の指揮は以前より高度化しているからレッドキャップを危険に晒す可能性も高くはない。それに君が危険と感じれば離脱してもらって構わないし、これだけのデータを渡されるほど期待されているなら……その期待に応えられているか見て欲しい」

「男前だな指揮官。アタシの期待は勝手なものなんだから気にしなくてもいいってのにさ」

 

 ポンチョごしに頭を掻いてレッドキャップが頭を下げた。

 

「トルバドール分隊のレッドキャップ、一時カウンターズの指揮下に入る。よろしく頼むぜ」

「こちらこそ」

 

 指揮官とレッドキャップが握手をした。

 

「指揮官様ったら、タラシの才能あるわよ。兎に角頑張りましょうねレッドキャップ」

「ウチではビシバシ行かせていただきますので!」

「迷惑かけないよう頑張らせていただきます!」

「よろしく、レッドキャップ」

「作戦時間まで余裕がある。レッドキャップ、浴びたいなら先にシャワーを浴びてきたらどうだ?」

 

 指揮官とラピ以外が吹き出した。

 

「ワハハ大丈夫だ男前! 別にシャワー浴びにきたわけじゃないしな! そうだな、時間までデータでわからないことがあったら聞いてくれよ」

「指揮官、私も地図が読めますので」

 

 アブソルートと合流に向かうまでの間、レッドキャップの持ってきた情報の整理をして過ごすことになった。

 作戦開始時刻になって地上で合流後、アブソルートのウンファはラピを見てまず不機嫌になり、何故かレッドキャップまでいてさらに舌打ちする事となった。

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