episode.1
僕が誰かだって?OK。それじゃあ、もう一度だけ説明するね。え?まだ一回も説明してないだろだって?………うん、ごめん。
気を取り直して、ボクはピーター・カゲノー。前世の時の名前は山城拓馬。
ボクは昔からアメコミヒーロー『スパイダーマン』のファンだ。キッカケは幼い頃に観たサム・ライミ監督作の映画『スパイダーマン』だった。
気弱な青年のピーター・パーカーが放射性の蜘蛛に噛まれた事でスーパーパワーに目覚め、叔父のベン叔父さんの教えに従い、人々を助けるヒーロー【スパイダーマン】として活躍する物語にボクは夢中になった。
それ以来、スパイダーマン関連のグッズを集めたり、他のスパイダーマンの映画や原作コミックも閲覧。コミケでスパイダーマンのコスプレするくらい、ボクはスパイダーマンに沼りまくった。
そんなある日、バイト帰りの途中でボクは交通事故にあった。トラックから同い年くらいの男の子を庇ってボクが代わりに轢かれた感じだ。
別に助けた事に後悔は無いけど、気になった事が一つある。助けた男の子が腰にタオルを巻いただけの半裸姿で「ヤッター魔力だぁ!!」と叫んでいたのだ。アレは一体なんだったのか。何か宗教的なアレだったのかな?
そんなこんなで、ボクの人生は18年と言う短いモノで幕を下ろした。………これが、
そして………これからが
◾️◾️◾️◾️
「ピーター、もっと真面目にやりなさい」
「真面目にやってるよ」
現在、ボクは義姉のクレア・カゲノーに剣の稽古を付けられていた。と言っても、彼女の剣をひたすらに防いでいただけ。ボクから攻める事は一度もしていない。そんなボクに、クレアは呆れた表情をする。
「義弟とは言え、貴方もカゲノー家の人間なのよ。いつか魔剣士として王都の為に剣を振るわないといけないのに、これまでの稽古で貴方は一度も自分から攻めないじゃない」
「攻撃だけが勝負じゃないでしょ?相手の攻撃を防ぐ事は必要だと思うけど」
「防ぐだけじゃ相手を倒せないわ。見てなさい」
クレアはそう言うと、魔力で自身の肉体と剣を強化して後ろの岩を横薙ぎする。岩は横に真っ二つに斬られ、瓦礫が辺りに転がった。
「こんな風に、魔力で体と剣を強化すれば硬い岩を砕く事だって出来るわ」
「凄いね」
「貴方も真面目に稽古すればいずれ出来るわ。日が暮れて来たし、今日は此処までね。その岩、片付けときなさい」
「いやいや、自分でやっといて片付けだけボクに押し付けないでよ………って、もう行った」
クレアはそのまま立ち去り、ボクは溜め息を吐いて散らばった岩の残骸を片付け始める。この世界では魔力と言うファンタジー的なエネルギーが存在している。ボクにも魔力が宿っているけど、この世界でのボクの家系は魔力を研究するインテリ貴族なのだ。
だけど、その家はもう存在しない。魔力研究での事故により両親を亡くし、身寄りの無いボクをカゲノー家が引き取ったのだ。
両親は研究一筋な人達だったけど、ボクに愛情を注いでくれた優しい家族だった。一緒に暮らした時間は10年にも満たなかったけど、尊敬する両親に変わりはない。
それと、家には魔力実験用に奇妙な蜘蛛が一匹いて、ボクはその蜘蛛に噛まれてしまった。その日は途轍もない高熱に魘されて最悪だったな。
「そのお陰でこんな事が出来る様になったんだけど」
ボクは片付けていた岩の残骸を軽々と持ち上げ、天高く放り投げる。そして、右手でスパイダーマンがウェブ・シューターを射出するポーズを取って、空中の岩の残骸に向ける。魔力操作で自分の魔力を粘着性の糸に変換し、それを射出する。
手首から飛び出した糸は岩の残骸に引っ付き、そのまま他の残骸にぶつけて全て粉砕する。
「うん、良い感じ」
成果を見たボクは満足げに頷く。魔力を蜘蛛糸に変換する能力の他にも、片手で数十トンの物を持ち上げたり、長距離を音速で移動するスピード。色んな物に指先が吸着出来る様になったり、危険を察知する超感覚にも目覚めた。
つまり、憧れていたスパイダーマンの能力を一通り再現出来る様になったのだ。いや、魔力云々ならドクター・ストレンジになるのかな?
それ以来、ボクは自分の能力を使い熟すトレーニングをしている。宿った能力を廃らせる訳にもいかないし。けど、カゲノー家の皆にはこの能力は秘密にしている為、基本的に夜にトレーニングをやっている。
「そう言えば、此処の近くの廃村に盗賊が住み着いてるって義父さんが言ってたっけ。行ってみようかな」
そうと決まれば夜に出発する準備をしておこう。丁度開発した
◾️◾️◾️◾️
夜になり、ボクは早速盗賊が潜伏している廃村に到着する。夜中だと言うのに灯りが付いており、複数の男達の笑い声が聞こえた。どうやら宴会をやっている様だ。
彼らの周囲を見てみると、大量の金貨が入った袋や美術品等を目視する。おそらく、商隊を襲って奪った物だろう。
「自分勝手な奴らだな、全く」
悪態を吐きながらボクはマスクとフードを被る。
ピーター・パーカーの叔父であるベン・パーカーがピーターに言ったセリフ。烏滸がましいが、ボクもその言葉に従おう。
ボクは覚悟を決め、魔力糸を飛ばして宴会へ突っ込む。
「こんばんは!ボクもパーティーに参加しても良いかな!!」
挨拶しながら一番手前に座る男の頭をキックする。蹴られた男はそのまま気絶して地面に倒れる。
「な、何だぁ、テメェは!?」
盗賊の1人が慌てながら訊く。
「ボク?ボクは───」
ボクは盗賊全員に向かって、力強く答える。
「ボクの名はスパイダーマン。君達みたいな悪党を懲らしめる、地獄からの使者だ!!」
あ、これだと東映版のスパイダーマンになっちゃうか。出だしミスった。
ヒロインはどうする?
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ヒーローには必要だろ!!
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ヒーローには不要