アンケートの結果、主人公ピーター・カゲノーにヒロインを用意します。
ご協力ありがとうございました。
「スパイダーマンだぁ?ふざけた格好しやがって、舐めてんじゃ───」
「悪口を言う人にはコレをプレゼント!」
怒鳴る盗賊の口を魔力糸で塞いでキックをお見舞いする。スパイダーマンの悪口はファンであるボクが赦さないぞ!
「君達にはパンチのフルコースだ!!」
ボクは他の盗賊達をフック、ストレート、アッパーのコンボで次々と
そして、残った盗賊はたったの1人だけになった。おそらく盗賊団のリーダーだろう。
「て、テメェは一体何者だ……?」
「言ったでしょ?ボクはスパイダーマン。君達、悪党の敵さ」
「舐めてんじゃねぇぞガキが!俺はこれでも王都では……!」
「口では何とでも言えるよ。それに王都から出たって事は、おじさん仕事上手くいかなかったでしょ?けど、盗賊は転職失敗したね。もっと人の為になる仕事に就かないと。そうだ、料理人なんてどう?剣じゃなくて包丁持った方がずっと似合うと思うよ」
「ふざけるなあぁぁぁぁ!」
ボクのジョークに男は怒りの形相で突っ込むで来る。激情してるせいで大振りに剣を振り翳した。隙だらけで難なく避けられる攻撃だけど………。
「
ボクは敢えて攻撃を避けずに立ち尽くした。男の剣がボクの胸を横薙ぎしようとした瞬間、ボクの背中から巨大な蜘蛛の脚が現れる。まあ、正確に言うと蜘蛛の脚を模したアームだけどね。
蜘蛛脚アームは剣をいとも簡単に防ぎ、ボクの体には傷一つ付かなかった。
「な、何だよソイツは……!?」
「このスーツ、実はスライムを加工して作ったんだ。スライムは魔力伝達率が物凄く高くて、魔力を流すとこんな風に形状を自在に変えられるわけ」
ボクは驚愕する男にスーツの説明をする。分かりやすく例えるならアイアンマンのマーク50『ブリーディングエッジアーマー』に近いかもしれない。アレはナノマシンだけど。言わばスライム版アイアン・スパイダーと言ったところかな。
「クソがあぁぁぁぁ!!」
男は一心不乱に剣を振り回す。ボクは背中のアームを1本から4本に増やして応戦する。ボクの意思でアームを動かしているが、将来的にはスーツにAIを搭載させて自動操作出来る様にしたいと思ってる。まだまだ実現には程遠いけど。
「さあ、フィナーレと行こうか!!」
ボクはアームで男の剣を弾き飛ばし、魔力糸で男を拘束する。
「ダアァァァンク、スマッシュ!!」
ボクは男を魔力糸で拘束したままジャンプして糸を振り下ろす。男は地面に叩き付けられ、衝撃と痛みで気絶した。
盗賊全員を戦闘不能にした事で、ボクのスパイダーマンとしての初陣は勝利で終わった。ボクは地面に倒れた盗賊達を魔力糸でガチガチに拘束する。あと、彼らの武器を全部壊しておこう。
盗賊達を完全に無力化したボクは商隊の馬車の中を確認する。そこには商人死体が複数転がっており、中には子供の死体もあった。
「…………助けられなくて、ごめんなさい。仇は取りました」
ボクは助けられなかった商人の人達に向かって深く頭を下げて謝罪した。もう少し早く動いていれば、彼らを助けられたかもしれない。ボクは後悔を胸に彼らの埋葬を始める。せめて綺麗な石で墓石を作り、それと花を人数分集めて墓石に添える。
「どうか安らかにお眠り下さい」
商人達の弔いを済ませ、ボクは盗賊達が盗んだ物を改めて確認する。全部を現金換算すると、約500万ゼニーくらい。日本円だと500万になるだろう。
「猫ババするつもりはないし、他の盗賊に盗まれる訳にはいかないから魔力糸で包んでおこう」
ボクの魔力糸は1日放置しても形状を維持する程の持続性が高い。応用すれば敵の長時間の拘束や盗難防止に活かせる優れものである。我ながら便利だな。
「それじゃあ早速…………ん?」
魔力糸を出そうとした瞬間、布に覆われた何かが揺れる。もしかしたら、檻か何かに動物が格納されてるかもしれない。世にも珍しい生物は宝石と同等の価値があったりする。そのせいで乱獲されて絶滅する生物がいるくらいだ。その点は前世の世界と同じである。
「このままにしておけないし、逃した方が良いよね」
ボクはそう決めて布を剥ぎ取った。
「これは………」
檻の中には動物………と言って良いのか変わらない腐敗した肉塊が入っていた。辛うじて人の形は留めているが、性別や年齢が全く分からなかった。
肉塊は死んではいない様で、微かに呼吸音が聞こえる。ボクが覗き込むとピクリと震えた。
「まさか、『悪魔憑き』?」
ボクは死んだ両親の残した研究資料の中にあった記録を思い出した。『悪魔憑き』とは、最初は普通の人間として生まれるが、ある日を境に肉体が腐り出す症状。その不気味な見た目のせいで人々から忌み嫌われ、教会が買い取って『浄化』を扮して処刑しているらしい。
「あれ、これって……」
ボクは手を差し伸ばしてみると、肉塊から大量の魔力を感じた。今のボクを上回る程の魔力量と両親の研究資料を照らし合わせ、ボクは一つの結論を出す。
「まさか、魔力が暴走しているのか?」
肉体が膨大な魔力について来れなくなった事で発現した現象が『悪魔憑き』なら、彼らは悪魔なんて取り憑かれていない。一種の病気の様なものである。
それはつまり、暴走した魔力が正常に循環すれば元に戻る。それには精密な魔力操作が必要不可欠である。今のボクに出来るかどうか……。
すると、肉塊の目から一筋の涙が流れた。そして、辛うじて残った口を何とか動かした。
"タ……ケテ……"
聞き取りづらい声で助けを求める肉塊に、ボクは覚悟を決める。
「考えるまでもないよね」
目の前で助けを求めているのに、それを無視するのはスパイダーマンのする事ではない。ボクが憧れ、目標とするヒーローはどんな事があっても諦めずに人々を助けた。
なら、ボクも
ボクはフードとマスクを取って、肉塊に素顔を見せる。
「大丈夫。もう泣かないで」
ボクは肉塊の流した涙を指で拭い取り、笑顔で言う。
「必ず助けるから。ボクが君の『親愛なる隣人』になるよ」
そう、ボクは『親愛なる隣人』。
ボクが
助けを求め涙を流す『悪魔憑き』に寄り添う男、スパイダーマッ!!
スパイダーマン特有の敵を挑発するジョークが難しいんじゃ〜〜〜。
ピーター・カゲノー(10歳)
【挿絵表示】
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