前回のアンケート結果により、スピンオフストーリーで『スパイダーバース編』を描く事が決まりました。
ご協力ありがとうございました。
スピンオフはもう少しストーリーを進めてから描く予定ですので、暫くお待ち下さい。
「あああああぁあぁぁぁぁ!!」
オルバは気迫と共に剣を構えて私へ斬り掛かった。
「素直に話してくれないのね、残念」
私は呆れながらオルバの剣をいなし、即座に切り返す。スライムソードの剣先がオルバの頬を掠め、彼の血が舞う。
「チィッ!」
だけどオルバは止まらず攻撃を続けた。私は最小限の動きでそれら全て躱し、逆にオルバの体に次々と傷を負わせた。腕、足、肩。情報を聞き出す為に敢えて致命傷を避けた攻撃を続ける。
そして胸を斬られた時点で、オルバが後退した。
「悪いけど、貴方の攻撃は全て見切った。どうやっても貴方に勝機は無いどころか、私に傷を負わせる事なんて出来ないわ」
私が挑発する様にオルバに宣言すると、オルバは斬られた胸を押さえ跪いた。だけど、何故かオルバの口元に笑みを浮かべていた。
違和感を感じていると、オルバは懐から赤い薬の様なモノが入った小瓶を取り出した。
「アレはッ」
それを見た私はピーターから聞かされた言葉を思い出した。
『教団メンバーの中には、赤い薬の様なモノを持ってる人が居たさ。それを飲むと
「しまったッ」
そう思った時にはオルバは薬を飲み込んだ。すると突然、薬の効果でオルバの体が一回り膨張した。肌は浅黒く染まり、筋肉は張り、目は赤く光った。
そして何より、オルバの魔力が何倍にも増大された。
「ッ……!」
私はオルバの予備動作無く薙ぎ払われた一撃を防ぐも、剣の重さが前よりも増大された事に顔を顰めて後ろへ跳んで距離を取った。
「成程ね、少し驚いたわ」
私は僅かに痺れた手を振りながらピーターからの情報通りに強くなったオルバを見た。
「アルファ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、ベータ」
後ろに居たベータにそう答えると、オルバは剣を地面に振り下ろした。地面は衝撃によって崩れ去り、オルバはそのまま下へ落ちていった。
「逃げたわね」
「逃げましたね……追いましょうか?」
「今度はデルタが狩るです!」
「待って、デルタ」
逃亡したオルバを追跡しようとするデルタの首根っこを掴んで静止させた。
「何で止めるのですか、アルファ様!」
「私達がピーターから与えられた任務はクレア様の救出。此処で深追いするのはあまり得策では無いわ」
「でも〜〜〜」
私が言い聞かせるけど、デルタは納得しない様子だった。
『皆、大丈夫かな?』
「ピーター様!」
「ボス!」
すると、ピーターの声が聞こえた。声の発信源は私の首元にぶら下がっていたペンダントからで、これは予め彼から渡されたペンダントの形をした遠くの人と話が出来る通信機……と言うアイテムだ。
ピーターの声にベータとデルタの顔から嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「ごめんなさい、ピーター。幹部のオルバ子爵と遭遇したけど下の階層に逃げられたわ」
『了解。謝らないで良いよ。それより、アルファ達は怪我してない?』
良い成果を出せなかった私にピーターは気にせず私達の安否を確認した。
「ええ。私達は平気よ」
『そっか………良かった』
ピーターは安堵した様子だった。彼が私達の心配をしてくれている事に、私は内心嬉しく思った。
「私達はこのままクレア様の救出に向かおうと思うの。それで良いかしら?」
『うん、お願い。ガンマ達からも連絡があって、教団の機密資料を見つけたみたい。アルファ達は義姉さんを救出したらガンマ達と合流。そのままアジトを脱出して』
「分かったわ。ピーターはどうするの?」
私が訊くと、ピーターは力強く答えた。
『ボクはオルバ子爵を追う。実はボクも下の階層に向かっていてね。アルファ達のお陰で無駄にならなくて済んだよ。ありがとう』
そう言ってピーターは通信を切った。さり気なく私達のフォローをするなんて、彼には未来が視えているのかしら。
「本当、彼には敵わないわね………」
地面の穴を覗き込みながら、私達は彼を尊敬した。だけど、私は……私達は諦めない。いつか本当の意味で、彼の隣で支えられる様になる為に。今よりももっと強くなる事を誓った。
◾️◾️◾️◾️
アルファと通信を終えたボクは地下施設へ辿り着いた。敵が地下へ逃げ込んで来るかもしれないからルートを潰しておこうと思っていたのだ。義姉さんの救出と教団が隠していた機密資料はアルファ達に任せて、ボクは敵の撃退に集中した。
すると、ボクの視界がオルバ子爵を捉えた。けど見た目は資料よりも筋肉が張って目が赤く光っていた。これは例のドーピング薬を飲んだみたいだな。そうじゃないとアルファ達から逃げられる訳が無いし。
「……待ち伏せか」
「やあ、オルバ子爵。見た感じイタズラがバレて逃げて来たところかな?ダメだよ。悪い事したら"ごめんなさい"って謝らないと。ほら、ボクも一緒に着いて行くから謝りに行こう」
ボクのジョーク混じりの煽りを聞いたオルバ子爵は額に青筋を浮かべながら剣を抜刀した。
「舐めるなよ、小僧。仲間を連れて来なかった事を後悔しろ」
そう言った瞬間、オルバ子爵の姿が消えた。常人では目視出来ない速度で移動したからだ。
しかし、ボクはスパイダーセンスに従って体をずらした事でオルバ子爵の剣は空を斬った。
「何ッ」
ボクは驚くオルバ子爵の腕を掴んで引っ張り、それと同時に足払いした。オルバ子爵の体が僅かに宙に浮き、そのまま背中から地面に叩きつけられた。
「ガハッ」
痛みと衝撃によってオルバ子爵は肺に溜まった空気を吐き出した。その顔は何が起こったのか分からない様だった。
「大丈夫?1人で立てるかな?」
ボクは倒れたオルバ子爵に訊いた。
「ッ!クソォ!!」
オルバ子爵は吠えると体を起き上がらせて再び剣を振った。だけど又もやボクは難なく躱した。
縦、横、斜め。四方八方から繰り出させる剣戟をボクは避けて続ける。
「クソ!何故だ、何故当たらん!」
「教えてあげようか?」
攻撃が当たらない事にだんだん苛立ち始めたオルバ子爵にボクは声を掛けた。
「確かに、
「何を馬鹿なッ」
信じられないオルバ子爵の隙を突いて、ボクはボディーブローと右フックを放った。
「ゴホッ………!?」
鋭い拳が腹部と
「だから隙が生まれる。それに怒りで冷静な判断が出来ていない。怒って癇癪を起こすのは、せいぜい子供までだよ。まあ、今回の事を反省出来れば少しは大人になれるんじゃない?」
ボクは倒れて気絶したオルバ子爵を見ながら言った。
オルバ子爵を捕縛した事で、ディアボロス教団メンバーを全員を捕まえる事だ出来たボクは先にアジトから出たアルファ達に連絡を取った。向こうも義姉さんを見つけ出して一緒に脱出したみたいだ。
そしてボクは後から駆けつけてくれたユリと仲間の騎士達に彼らの身柄を預けてから家に帰った。こうして、ボク達『アベンジャーズ』の初陣は勝利で幕を閉じたのだった。
◾️◾️◾️◾️
ディアボロス教団の一件から暫く経ち、療養や事件の調査等を終えた義姉さんは1週間くらいで王都へ向かった。屋敷を出る前、ボクにあーだこーだ長々と言い出したけど最後はハグして暫しの別れを告げた。ハグした時、義姉さんが少し涙を浮かべていたのは黙っておこう。
「皆。忘れ物は無いかな?」
「ええ。大丈夫よ」
そして、義姉さんが王都へ行ってから数日後。ボクは身支度を終えたアルファ達に確認した。遂に彼女達も隠れ家から巣立ちする時が来た。
彼女達はこれからディアボロス教団の情報集めと、世界中に居るであろう『悪魔憑き』を助ける旅へ向かう事になった。
「本当は、ボクも行きたいところなんだけどね」
「ダメよ。ピーターはまだカゲノー家の屋敷を出れないし。それに、スパイダーマン活動もしなくちゃいけないんでしょ?」
アルファの正論にボクはぐうの音も出なかった。ホント、しっかりしてるよ。流石は『アベンジャーズ』のお姉さんだ。
「ボス!デルタがお土産を沢山持って来てあげるのです!!」
「お土産が目的じゃないだろ。本当にバカ犬だな」
「デルタはバカじゃないもん!メス猫!!」
あー、またデルタとゼータが喧嘩を始めた。君達、こう言う時くらい仲良く出来ないの?あと、お土産楽しみにしてるよ。
「主様〜!やっぱり寂しいです!離れたくありません!!」
「よしよし。泣かないで、イプシロン。体には気を付けてね」
イプシロンが泣きながらボクに抱きついて来たので頭を撫でて上げた。いつまで経っても甘えん坊な所は治ってないな。
「イプシロン!ピーター様から離れなさい!私だって頭よしよしされたいのに!!」
ベータが本音を混ぜながらボクからイプシロンを引き剥がした。この2人もデルタとゼータ程じゃないけど張り合う事が多かったな。
「ガンマはイータと一緒に行動するんだっけ?」
「はい。『アベンジャーズ』の今後の為にも、まずは資金集めしようと考えておりまして。イータと共に商売を始めたいと思っております」
「面倒、だけど……研究にはお金が、必要だから……」
眠そうなイータの頭を撫でながらガンマが答えた。ビジネス関連はガンマに
………さて、最後にボクから皆に餞別を送らないとね。
「それじゃあ、お別れの前にコレを皆に渡しておくよ」
ボクはアルファ達に8種類の鉱石とダイヤルが備わった腕時計型のアイテムを手渡した。
「ピーター、コレは?」
「前に使った通信機の
ボクは皆に通信機の使い方を教えた。前に使っていたモノよりも性能が上がったし、話したい相手を決められる様にした方が便利だろう。
「それと、ボクから皆に言っておきたい事がある」
ボクは皆の顔を一人一人見ながら話し始める。
「皆には『アベンジャーズ』の為に動いて貰うけど、それとは別に旅を楽しんで欲しい」
ボクの発言に皆が首を傾げた。
「で、ですがピーター様。我々は『アベンジャーズ』としての使命が」
動揺するベータにボクは答える。
「『アベンジャーズ』として動くのも大事だけど、皆には色んな事を体験して欲しいんだ。綺麗な景色、美味しい食べ物、色んな人達………。この世界は途轍もなく広く、ボクでも知らない事が沢山ある。それを皆に感じて欲しい」
この世界について、僕達はまだまだ知らない事だらけだ。それらを彼女達に視て、聴いて、味わって欲しい。これまで、彼女達は『悪魔憑き』だったせいで沢山のモノを失って来た。だから今度は、沢山のモノを自分達の『宝物』にして欲しいとボクは考えている。
『使命』だけが人生じゃない。楽しい事も、嬉しい事も、大変な事も含めて『人生』なんだ。
「それと。偶にで良いから、皆が経験した事をボクにも教えて。皆の話をボクは聴いてみたいな」
「はいなのです!ボスに色んな美味しいモノを教えてあげるのです!」
「そうね。現地の情報も大事だろうし」
「私は見つけた本の事を教えます!」
「私も主様にご報告します!」
「私も」
「絶対お話しします!」
「研究の事、マスターに相談するから………」
デルタを皮切りに皆が手を挙げて答えてくれた。そんな彼女達を見て、ボクは満足げに頷いた。
「うん。お願いね。寂しい時はいつでも呼んでね。話し相手になるから………それと」
ボクは最後に肝心な事を言う。
「もし、ボクの助けが必要な時は遠慮無く言ってくれ。皆がどんな所に居ようと、例え世界の裏側に居たとしても、必ず駆けつける」
『親愛なる隣人』スパイダーマンとしてだけじゃない。友達として、仲間として、そして………『家族』として。ボクは皆の力になりたい。
「1人ぼっちだったとしても繋がっている限り、僕達は決して………
僕達は皆で『アベンジャーズ』なのだから。
義姉を救出し、オルバ子爵+教団メンバーを捕らえ、そしてアルファ達と暫しの別れを経験した男、スパイダーマッ!!
なんか回を重ねる毎にピーターの言動が
ピーター・カゲノーのイメージCVは『ボクのヒーローアカデミア』の飯田天哉や『ダンベル何キロ持てる?』の街雄鳴造役などで有名な石川界人さんで脳内再生してます(どうでも良い情報)。
そして、お待たせしました。
次回から漸く【学園編】へ突入します。
【ピーター・カゲノー(13歳時)】
【挿絵表示】
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アルファ達7人の『呼び名』はどれが良い?
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『七陰』(原作通り)
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『セブンスターズ』(オリジナル)