【カオ転三次】覚醒したは良いけれど、終末より前に自分の状況が終わってない? 作:エリム
盗聴器の電波を倉庫で受信したあの後。
ノイズが酷かったからもっと聞き取りやすいところがないか探してみたけれど大して差はなく、時間になったので一旦戻ってもう一度来ようと思っていたら鬼決めをしている途中でいなくなっていた大人たちが帰ってきてしまった。
試しにもう一度倉庫に行ってみたけれど、もう何も受信しなくて結果として最初のあのノイズまみれの言葉から推察するしかなくなった。
とりあえずかくれんぼも終わって、今はもうボクと母様が寝泊まりする離れの部屋で布団に包まっていた。ちなみに二つ隣の部屋は紅音姉ちゃんたちの部屋だ。
かくれんぼで六花お姉ちゃんに散々煽られたらしく、「お風呂上がったら六花ねぇの部屋にリベンジバトルに行くから!」という紅音姉ちゃんにお風呂後に連行されそうになったけど;「悠希はもう寝る時間じゃ」というおばあ様の鶴の一声でそれは防がれた。
ちょっと情報を整理したかったし、ありがとうおばあ様。
(あの時聞こえた【ガイア連合】と【恐山】という言葉。これは最近のスレにあった霊視ニキという人が逆レされかけたという、恐山【イタコの里】との関係強化の話が関係していると思う)
それに他にもノイズではっきりとは聞き取れていないけど、【霊地】や【封印】、【結界】と聞こえなくもないこともない単語があった。
その他の状況証拠も加味すると、我が一族は霊能力者か、少なくともオカルト方面に関係のある家であることは間違いなさそう。
(だけど、だとしたら真治叔父さんみたいな外から一族に加わった人ならともかく、ボクみたいな傍系ではあっても一族の血が流れている者に教えないのは何故?)
すると浮かぶのはやはりこの疑問。
スレからの情報だと、今現在のこの国のオカルト関係は戦後にメシア教が一族を潰したり霊地を(メシア教的に)封印したりと色々やらかしててしっちゃかめっちゃか。
何とか生き残ってる各地の霊能力者の家系もだいぶ弱ってて、そういう才能がある人間は文字通りで遊ばせておく余裕はないらしい。
それこそ幼子だろうが関係なく。
そんな状況なのにボクは”俺”を思い出さなければ、今でも(変わった習慣がある家ではあるけど)普通の子供として生活していたと思う。
ボクに才能がない?
あり得るけれど、スレで見る限りそれぐらいで一切何もさせないというのはちょっと不自然。
女系で一族の知識は女性しか受け継がないとか、本家の人間しか受け継がないというのも、男性女性本家分家関係なくいなくなる人はいるから不正解だ。
「やっぱりボクが小さいからなのかな・・・?」
「あら?小さいのが嫌?」
っと。うっかり声に出てしまったのを、隣で寝ていた母様に聞かれてしまったらしい。
「悠希も男の子だし大きくなりたいか~。けど、小さいのにも利点はあるんだよ?」
ゴロンと寝返りを打ってボクの方を向き、「狭いところにも入りやすかったりとか、スペースが相対的に広くなったりとか」と身体が小さい利点を語っていく母様。
まぁ母様はどちらかと言えば小さい方だから、これはちょっとしたコンプレックスの裏返しなんだと思う。
もっとも最後は「まぁどんな風になっても、私は悠希のことが大好きよ」と頭を撫でてくれた。
「ボクも母様のことが大好きだよ」
撫でられながらそう返して、「一緒に寝て良い?」と自分の布団から母様の布団に潜り込んだ。
”俺”を思い出して精神年齢は増えたけど、”俺”も父子家庭で母親の愛情を知らなかったから恥ずかしいけどこうして甘えてしまうことがある。
「いいわよ~」と母様の温かさに包まれると、意識がウトウトし始める。
(とりあえず、疑問は残るけど成果はあったし、後は覚醒修行に参加してから直接聞くか・・・)
優しい眠気に誘われる意識の中、ボクはとりあえずそう結論付けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ードォン!!!ー
「な、なに!?」
「わ!なに!?」
大きな爆発音と揺れの目覚ましに、ボクと母様は叩き起こされた。
時計を見ると午前4時頃。まだ日が昇るには早い時間だけど、何故か外が明るい。これは・・・火事?
「母様、もしかしたら火事かもしれない。とりあえず庭からおばあ様たちの方に行かない?」
「火事にしては熱くないけど・・・確かに家の中より庭の方が何かあっても安全か。そうね。母さんたちも心配だし、行きましょ」
そうして、母様とボクは部屋の襖を開けた。
そこに広がっていたのは見慣れた庭ではなかった。
空は何故か白く輝き、赤黒い煙のようなものがそこかしこに雲のように流れて稲光が起こっている。
また、草花や木といった植物は腐ったかのように黒くなっていたり枯れていて、土も何処か生気を感じない。そして、黒い靄のようなものが庭のいたるところでうごめいていた。
「なにこれ・・・」
「空が・・・白い?」
その光景に、ボクと母様は啞然となる。
こんな光景、絶対に普通じゃない。
そんなボクたちに気づいたのかどうなのか、黒い靄の一つ?がボクたちの方に凄いスピードで近づいてくる。
「(よくわからないけど、明らかにこの靄は触れたらダメなヤツでしょ!)母さ「【
と、ボクの声に被るように後ろから声が聞こえた直後、もうそこまで迫っていた靄はサラサラと崩れていって、最後は風に流されて消えた。
「危なかったわ。玲奈、悠希くん。間に合ってよかった。外は危険だから襖を閉めて中に入って」
そう言って廊下側の引き戸からこちらを助けてくれた?声の主ー翡翠叔母さんは手招きをしていた。
「パジャマじゃ色々アレだから、できるだけ手早く着替えて廊下に来なさい。私も着替えてくるわ」
ボクと母様が襖を閉めたのを確認した後、「できるだけ外から離れてね」と言い残して一旦自分の部屋に戻っていく翡翠叔母さん。
「まだ着替え終わってないの!?あなた!」と怒っているのは真治叔父さんに対してか紅音姉ちゃんに対してか。
ボクと母様は顔を見合わせて、お互いに頷くと爆速で着替えて廊下に出た。
廊下にも赤黒い煙のようなものは漂っていたけど外よりは薄く、黒い靄は見当たらなかった。
「この煙?やさっきの黒いの、一体何なのかな?多分危ないものなんだろうけど」
「?悠希、何を言ってるの?煙なんてないし黒いのって一体何のこと?」
「え?」
「え?」
どういうこと?ボクと母様で認識が食い違っている。
母様にはこの煙や黒い靄は見えていない?
だとしたら母様は何に驚いてたんだ?
「母様。空が白かったのは見たよね?」
「流石にね。どう考えてもおかしいわよねアレ」
「じゃあ庭の草や花、木とかが黒くなってたり枯れてたのは?」
「黒くなっていたようには見えなかったわ。けど、池の周りの木は何本か枯れてたのは覚えてる」
となると、共通している認識は最初の音に空が白いこと、それに植物が枯れていること。
逆に母様が認識していないのは煙や靄、変色した植物といったところ?
母様には元々あったものの変化しか認識できていない?けど、植物が黒くなっているのはわかっていないみたいだし・・・
「あら?悠希くんはこれが見えているの?」
「うん」
「そう・・・封印されている筈なのに」
そんな風に考えていると、着替えた翡翠叔母さんが部屋から出てきて煙を指さす。
最後に何かボソッといった気がするけどよく聞こえなかった。
それはともかく、どうやら翡翠叔母さんにはこの煙が見えているらしい。
つまり今の所は母様以外には認識できているということか。
この違いは何なんだろう?多分これはオカルト的な何かなのは察せられるけど、母様の姉妹の翡翠叔母さんが認識できるのに母様が認識できないのはよくわからない。
そんなに母様にはオカルト方面の才能がない?
けど、何かが引っかかるような・・・
「すまんすまん!待たせたな!」
「ハッハッハッ」と豪快に笑いながら翡翠叔母さんの後から出てきたのは真治叔父さん。
が、その姿はいつもとは少し違い、額には鉢巻、手首には包帯のようなものを巻いて指ぬき手袋をしていた。
「まったく。女の私より身支度が遅いのはいかがなものかと思いますけど・・・さて、揃いましたね。長老方は母屋にいるはずですし、とりあえずあちらに行きましょうか」
「ハァ・・・」と呆れたように溜息をついて、翡翠叔母さんが歩き出す。
って待って!?
「翡翠叔母さん!紅音姉ちゃんは!?」
「あの子は六花ちゃんの所から帰ってきてないから母屋にいると思うわ。ここもいつまで安全かわからないし、玲奈も悠希くんも色々聞きたいことはあるでしょうけど歩きながら話しましょうか」
そっか。紅音姉ちゃんは六花お姉ちゃんの所か。
どうやら母様も似たようなことを思っていたらしく、ホッとした顔をしていた。
そして、「行きましょう」と歩き出した翡翠叔母さんに続いてボクと母様、後ろに真治叔父さんの順で廊下を進み始めた。
何とか話が進み、プロローグ前半の山場に近づいてきました。
平坂一族の祀っている神や謎のお守りは何なんでしょうね
あと、簡単にですが本家屋敷の見取り図を描いて見ました。(ペイントで書いたので線の消した残りとかあります。ごめんなさい。)
良ければイメージの参考にしてください。
それではまた次回!
感想、誤字報告、質問などお気軽にどうぞ!
【挿絵表示】
次は早めに上げたいなぁ・・・