アウラ「じにだぐないよおおおおおおお!!」 作:まっしろたまご
「“アウラ、自害しろ”」
頭では全力の拒否をするものの、身体は全く言うことを聞かない。
ジリジリと刃が首に近づき、鋭い痛みが走った。
「……ありえない……」
「この私が……」
温い液体が一筋頬を伝う。
その刹那、一つの考えが浮かんだ。
(今からでも、プライドを捨てて命乞いをすれば殺すのは待ってくれるんじゃ……)
そう考えてから、実行に移すまでは恐ろしく早かった。
「じにだぐないわよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!あんなごどいっでわるがっだじゃなあ゛あ゛あ゛あ゛い!!!!」
ゆっくりと首を切断しかけていた体の動きがピタリと止まる。
バッと振り返ったフリーレンの顔は困惑に染まっていた。
「アウラ。魔族が言葉を使って人間を欺くのは知ってるから」
「ぞれでもじにだぐないのよお゛お゛お゛お゛お゛!!」
「うるさ」
500年生きた魔族がこのザマか。
先程までの恐ろしさや威厳はどこへやら。そこにいたのはおもちゃを買ってもらえなかった子供のごとくジタバタと暴れるやけに感情豊かな魔族だった。
「フ、フリーレン様。これは一体……」
現着したフェルンも困惑を隠さず、目の前に広がる惨状を見て眉間にしわを寄せる。
「一体って言われても。断頭台のアウラだよ。七崩賢の」
「この泣き叫びながら転がり回ってるのがですか?」
「その泣き叫びながら転がり回ってるのがだよ」
先程魔族に白星をあげてきたフェルンだが、彼女が見たいずれの者たちも一切の感情はなく、言葉も人間を欺くためだけに使っていた。
その上、七崩賢となると、ハイターやフリーレンから口を酸っぱくして言われ続けた強大な相手。目の前の無様な相手がそれだとは俄かに信じがたかった。
「……これ、どうするんですか?流石に面倒は見れませんよ?」
「いやぁ……かなり高位の魔族だし、サンプルとしては申し分ないかなって……」
「ネズミ感覚なんですか?」
目の前で繰り返される恐ろしい会話。無論アウラもちゃんと聞いている。
「この断頭台のアウラを実験サンプルだなんていい度胸じゃない。すぐに殺してや———」
“アウラ。やっぱり自害しろ”
「い゛い゛い゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
みっともない命乞い2回目。やはり今回も自害の命令はなかったことにされた。
「アウラ。お前の天秤不良品じゃない?」
「失礼ね!!このアウラの魔道具が不良品な訳———」
“自害しろ”
「不良品!不良品だから!!すぐ自害させようとするの辞めなさい!!」
雑に自害させられそうになること数回。
結局、自害命令は合流したシュタルクの良心が痛むまで続いたのだった。