君の恋心よ、実ってしまえ。   作:竹モチ

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1話 心のモヤモヤ

 

 

 

 

 

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 春風が心地よく流れる公園。花見にはぴったりな季節だ。

 そこまで大きくない公園の中央にはドーム型の遊具が置かれており、子供たちがよくその中で息を潜み、ゲームやら談笑やらしている。

「ほら陽菜(ひな)。新しいお母さんだぞ。挨拶して」

 パっと見、20代後半ぐらいの男性と、まだ幼稚園に通ってそうな可愛らしい女の子が居る。女の子は男性の足の後ろに隠れて、少しおびえた表情をしている。

「初めまして陽菜ちゃん。これからよろしくね!…こら、圭一(けいいち)も挨拶!」

 同じく20代後半近い女性と、これまた幼稚園に通ってそうな可愛らしい男の子が居る。男の子は女性と手をつなぎ、じっと陽菜と呼ばれていた女の子を眺めている。しかし陽菜は目を合わせようとしなかった。

 男性と女性はこの子供たちの親であることが容易にわかるだろう。対面で立ち挨拶を交わしている。

 すると、圭一と呼ばれていた男の子は母親らしき女性から手を放して、一歩前に出る。そして右手を前に差し出す。

「僕、圭一。これからお兄ちゃんとしてよろしくな!」

 屈託のない笑顔を浮かべる。その笑顔を見た女の子は、父親らしい男性の足から顔の覗かせて男の子の顔を見る。

「…お兄ちゃん?」

 陽菜と呼ばれていた女の子は、父親と思わしき男性の足を掴んだまま、手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

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 桜。

 私は制服の肩に乗った桜を払う。どうして学校の周りには桜の木が多いのだろう。なんて思いながら通学路を歩く。今日から高校三年。最後の一年が今日から始まると感じると、少し切ない気もする。

 平野陽菜(ひらのひな)。私の名前。

 茶髪のボブカットヘアーに茶色いたれ目。周りからは「おっとりしてそう」とか「ゆるふわ系」とか言われる。正直しっくり来ていないけど。身長は152cmで平均より低め。体型は…まぁ普通かな?しかし胸がでかい。普通に邪魔でコンプレックス。

 物語を考えることが好きで、将来はライトノベル作家になりたいと考えている。ネット上で小説を投稿できるサイトでひそかに活動しているが、知名度は全く…コメントがないことが当たり前で、まず評価すらもらったことがない。でもまぁ、好きでやってることだから特に苦に感じたことはないかな。いずれ誰かの目に留まればいいや。って感じ。

 それもあってなのか、文系科目はとても得意。五段階評価は常に5。語学の先生と仲がいいってのもあるけどね。

 かえって理系や体育系は苦手。理屈を順序立てて、とかできる気がしない。完全に感覚脳なんだろうなって感じる。そして運動も苦手。体を動かすことが苦痛に感じる。大体このおっぱいのせい…切り落としてやろうか。

 部活動は茶道部に所属。と言ってもなかなか集まることはなく。たまに部室へ足を運ぶ。正式な部活として認められているので毎月決まった額が部費として学校から支給される。そのお金を使ってお茶や和菓子を食べるだけの部活と化している。しかし、生徒会から怪訝な目で見られるので、一応文化祭にはお茶の出し物をしたり、ステージで和楽器の演奏をする。それだけで許されるので楽なお仕事。

 と、まぁ。誰に向かた自己紹介なのかわからないが、これで私のことは以上かな?

「陽菜…僕、眠すぎて眠いんだけど」

 隣であくびをかまし、涙目になりながらトボトボと歩いている男が私の兄。平野圭一(ひらのけいいち)だ。

 真っ黒な黒髪で目にかかりそうなぐらい長い前髪。普段から眼鏡をしており、その奥には優しそうな灰色の瞳が見える。ザ・陰キャといった感じ。

 身長は無駄に高く、175cmもあり体型はかなり痩せ気味。ぱっと見、不気味に感じるかもしれない。

 卓球部に所属し、全国大会の出場経験があるほど実力は高い。運動が得意で五段階評価は4をキープしている。本人曰く「先生と仲悪いから5になることはないだろう」と言っている。

 かえって運動以外は全くダメ。試験は常に赤点ギリギリ。こいつの通知表を見るときは毎回ひやひやする。そしてこの通り朝が超絶弱い。私が毎回起こすのが日課になっている。

 私と同じ平野姓を持っているが、血のつながりはない。私が物心つく頃に父親が離婚し、圭一の母親と再婚したのだ。たまたま私たちは同い年。でも圭一の方が誕生月が早いので「お兄ちゃん」と呼んでもらいたいらしい。昔はそう呼んでいたが、今はやだ。

「圭一、前見ないと危ないよ」

「ん…」

「けいくんは、ほんと朝弱いわね。低血圧かしら?」

 そして、隣にいるモデルみたいに美しい女子高生が九条雫(くじょうしずく)

 太陽に透かせば青い光を放ちそうなほどきれいな黒髪のロングヘアー。宝石のような青い瞳に少しつり目がち。本当にモデルさんのような顔立ちをしている。慎重は162cmとクラスの中では高く。モデル体型のようにすらっとしている。美しいのだがとてつもなく胸はない。断崖絶壁、つるぺったんだ。これ言うとものすごく怒るので気を付けよう。

 超絶理系の天才。将来は医療の道に進みたいと言っている。住む世界が違いすぎて私には想像がつかない。しかし文系は苦手だそうだ。とくに作者の気持ちを考えろ系の問題がとにかく嫌いで「公式をよこしなさい」とおっしゃる。無茶言わないで?

 さらに、運動も得意。あらゆる記録が学年トップ。ハイスペックすぎて私からすると化け物だ。そして圭一と同じく卓球部に所属。部活内でもかなりの成績を収めているらしく、圭一とのダブルスで右に出るものは居ないといわれるほど息がぴったり。熟年夫婦なんて煽られている光景を何度か見たことがある。

 私たち三人で、よく幼稚園の頃から遊んでいた。家も近所…というか隣だ。朝登校するときは必ず三人そろってから向かう。両親同士も仲が良く、たまにお互いの家にお邪魔して晩御飯を食べる。なんてことがたまにある。

「なぁ、雫?おぶって連れてって」

「いやよ。重いもん」

「えぇ…陽菜~?」

「黙って歩け」

「あたりつよ~い…お兄ちゃん悲しい」

 いつも通りの通学路を登校する。もうじき学校が見え始めてくる。

「今日から、三年生だね」

「そうね~。この一年が終われば、簡単には会えなくなるわね」

「まだ、決まったわけじゃねぇけどな~」

 三年生。みんな就職したり進学したりといろいろ考える時期だろう。私たちも、もちろん考えている。圭一は遠く離れたスポーツ専門の大学へ進学。雫も遠くに離れた医療大学へ進学。私は実家の近くにある普通の大学に進学し、実家暮らしのありがたみを存分にかみしめながら、小説家活動をしたいと考えている。

 受験がうまくいけば簡単に会うことは出来なくなる。ちょっぴり切ない。

「はぁ~いくら推薦もらったって言っても、受かるかわかんねぇなぁ…」

「けいくんは大丈夫じゃないかしら?大会経験もあることだし。私は一般入試よ…不安で死にそう」

「私は、別に受からなくてもいいから気が楽だわ」

「実家暮らしが」

「いいわね~。受かれば一人暮らしよ?私たち」

「一人で生活していける気がしねぇ…」

 そんなこんな話していると、学校に到着。昇降口で靴を履き替える。

「じゃ!」

「うん、またお昼ね」

「じゃ~ね~」

 私たちは全員バラバラのクラス。教室も地味に離れているから昇降口で別れるのだ。

 いつも通り教室へ入り。春休みが抜けきっていないクラスメイトがワイワイと談笑している。その間をくぐって自分の席へ座り、外を眺める。

「…。」

 最後の一年…か。

 

 

 

 

 

 

  △▼△▼君の恋心よ、実ってしまえ。△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 放課後。今日は始業式だけで授業がなく、午前で終わり解散している。

 私は、なんとなく帰る気にならなくて窓の外を頬杖をついて眺めている。雲の流れが何となくわかる。風が強いのかな?なんて思う。

「お腹すいた気がする」

 うっすらと空腹を感じ、そろそろ帰宅しようか迷っていると。

「あれ?陽菜。まだ帰らないの?」

 ひょいっと扉から顔をのぞかせている雫がいた。

 雫は、教室に入ってきて私の前の席に後ろ向きで座り、対面する。

「雫、部活は?」

「今日は休みよ。茶道部もでしょ?」

「うちの部活は、あってないようなものだから」

「部費でお茶菓子食べよう部だもんね…」

「圭一は?」

「確か、部員に誘われてカラオケに行ってるわよ」

「ふーん。女の子はいるの?」

「え、何?嫉妬?」

「そんなんじゃないけど」

「けいくん含めて男2、女5ね。しかも後輩ばっかり。モテモテね」

「あっそ」

「聞いといて不機嫌にならないでよ」

「なってない」

「陽菜はさっきまで何してたの?」

「空眺めてた」

「…病んでる?」

「病んではないけどさ、最後の一年だな~って思って」

「あ~そうね。私たち、もう三年生なのよね。長いようで短かった…いや長かったわ」

「だって、私たちってもう…幼稚園の年中さんから一緒だから…13年ぐらい一緒にいることになる」

「おぉ~数字に起こすとすごいわね」

「あと一年で離れちゃうのか~って思うとさみしくない?」

「確かにさみしいわね。でも連絡は取るでしょ?お盆とか年末年始は帰ってくるわよ」

「いつか忙しくなって、課題と一緒に年越し~なんてことになるんだ」

「嫌だわ…そんな未来」

「あははは」

 なんて談笑する。

「…。」

「ねぇ、陽菜?」

「ん?」

 声のトーンが落ちて少し真剣な雰囲気を感じる。キリッと私の瞳を見つめる雫は睨んでいるわけでは無いのだろうけど、少し怖いと感じる。

「大事な話があるの。誰もいないしちょうどいいわ」

「そんな改まって、どうしたの?」

「…。」

「…。」

 静寂。私は雫の言葉を待っている。

 

「けいくんのこと、好きなの」

「…。」

「…。」

「…ふぇ?」

「すごい間抜けな声が返ってきたわ」

 え、嘘!?

「ラブ?ライク?」

「ラブよ。ラブ」

 今までそんな素振り一度も見せたことない。全く気付かなかった。私が疎いだけなのかな?

「え、いつから?」

「恋心に気づいたのは、半年ぐらい前かしら?」

「ひゃ~。そうだったんだ!応援…」

「…。」

「…。」

「…ん?陽菜?」

 あれ、なんだろうこのモヤモヤした感じ。応援するね。って言葉が言いづらい。胸を締め付けられるような…少し息苦しさを感じた。

 この、訳のわからない感情に戸惑っていると、雫が心配そうにこちらを眺める。

「どしたの?」

「…あ、ううん。なんでもない!ちょっとびっくりしちゃって」

 私はその時、精一杯の作り笑顔をした。

 …作るという表現をしたことに違和感を感じない。むしろしっくりくる。どうして?一人じゃどうしようもない圭一に、しっかり者の雫が一緒にいてくれたら、安心じゃない。

 自分に言い聞かせるように、言葉を頭の中で発声する。

「そう?それでね。夏休みが終わるころに告白しようと思ってるわ。それまでに好感度稼いどかないといけない」

「もう十分稼いでると思うけど」

「いや、念には念をよ」

 胸のモヤモヤは大きくなる一方だった。

「一応、陽菜に伝えておこうと思ってね。妹さんだし」

「でも、そっか~。雫が圭一のこと。全く気付かなかった」

「隠してたもの。ポーカーフェイスうまいでしょ?」

「そだね…」

「というわけで、私の話は終わりよ。どうする?帰る?」

「…んあ?そうだね。帰ろうかな」

「なんか元気ない?」

「そんなことないよ。気のせい」

 元気は確かになくなった。でも私にも原因はわからないし、直しようがない。

「じゃあ、帰ろ?陽菜」

「うん」

 

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「というわけで、私の話は終わりよ。どうする?帰る?」

「…んあ?そうだね。帰ろうかな」

「なんか元気ない?」

「そんなことないよ。気のせい」

「じゃあ、帰ろ?陽菜」

「うん」

 そう言って陽菜は荷物をまとめる。私も席から立って椅子をもとの位置に戻す。誰君かわからないけど、お借りしたわ。

「戸締りは?」

「あぁ、そっか」

 陽菜と私で、窓がすべて閉まっているかチェックする。そして、陽菜が教室のカギを手に取って、最後にカギをかける

「鍵、返しに行ってくるね」

「うん。昇降口の所で待ってるわ」

 小走りで陽菜は職員室の方向へ向かった。

「…。」

「…。」

「明らかに元気なくなくなったわね。これは期待通りの反応」

 さてと、これで自分の気持ちに正直になるかな?兄弟という肩書が陽菜の感情に蓋をしている。今までずっと一緒だったからわかるのよ。

「陽菜。けいくんのこと好きなのよね」

 でも、陽菜はその感情を必死に押さえつけている。

 私がけいくんのことを狙っているアピールをすれば、あの子は自分の感情に正直になってくれるはず。私は二人の恋を応援したい。

 今年が終われば、離れ離れになる。会えないわけじゃないけど頻度は一気に落ちる。それまでに二人には思い出を作ってほしい。

 だからこそ。

 

 陽菜の恋心よ、実ってしまえ。

 

 なんてね。

 

 

 





【今日のひなたん】

 授業中にめっちゃいいシチュエーションを思いついた!どこかメモしたい…。そう思い授業に使っているノートの端の方に軽くメモを取る。

『俺…お前が別の男と一緒にいるの、耐えられないんだよ!?』
 俺は、弟を押し倒す。
『兄さん、そんな!?』

 など…アイデアを書き出していく
「ふへへ。兄と弟の禁断の花園…。最&高」
「今日の授業終わりにノート提出してもらうからな~」
「!!?」
「よし、後ろから集めてくれ~」
「先生!」
「なんだ?平野」
「ノート忘れました!」
「…言うの遅いな。机に広げてるそれはなんだ?」
「えっと…ラクガキ帳です!」
「授業中にラクガキするな。没収だ」
 先生に没収される。
「やめてぇ…持ってかないでぇ…」
 ほかにもBLネタがあるのに…。

 これからはメモを取るときは、授業のノートとは別に用意しようと思った。
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