君の恋心よ、実ってしまえ。   作:竹モチ

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10話 2人と1人(後編)

 

 

 

    ----------> ◇ <----------

「ふぅ~。ワンゲームなのに疲れたな」

 全員の投球が終わり、ゲームが終了する。僕と雫はほぼストライクかスペア。陽菜は、全部倒し切ることがなかなかできず、最後の最後でスペア。

「そうね~久しぶりだったから疲れたわ」

「スペア取れた!スペア取れたよ!」

 陽菜はスペアがとてもうれしいようで、ずっと言っている。陽菜にはあれからレクチャーを何度かしたが、教えるたびにちゃんと上達する。運動が苦手と本人は言っているが、実は呑み込みが早いのではないか?と思った。

 担当する先生が悪かったんだな。きっと。

「さて、ちょっと休憩するか?」

「そうだね。疲れちゃった」

「ええ」

 時刻は午後3時前。時間はまだあるため少し休憩してから遊びに行くことにした。

「どこで休憩する?」

「クレープ食べたいわ」

「さっき食ったやん…」

「フードコート行く?それかカフェみたいなところでも」

「そうだな~。カフェ行くか?甘いものもきっとあるだろう」

「賛成」

 ということで、レストラン街の近くにあるカフェテリアに向かうことになった。

 

 到着。

「僕、こういうところ慣れないから、陽菜、注文よろしく」

「は?」

 僕は、こういうおしゃれなお店に慣れていない。男一人で入るのもかなり勇気がいるし、周りの友達は、あまりこういうところに興味がないようだし。雫と何度か行くが、その時も雫にまかせっきり。

「けいくんの分は私が注文しとくわ。だから席とっといて」

「うぃっす」

 そう告げて、僕の財布を雫に預けて席を取っておく。雫は僕が何を頼みたいか把握している。そりゃ行くたびに同じものしか注文しないからね。

 女子二人が、カフェのレジで店員さんとやり取りしている。なんだか楽しそうに会話してる。そう、こういうのも苦手なんだよな。店員がフレンドリーに話してくるの。コミュ障というわけではないんだが、初対面の人とはなかなか打ち解けない。だから店員さんからフレンドリーに来られると、どもってしまって変な空気が流れるから嫌なのだ。

「雫がいてよかったな」

 陽菜だったら「自分で頼め」の一言で終わりそうだもんな。

「…。」

『あ!そっちじゃなくて、むしろとても好意を寄せていると思います』

 古賀さんとの会話を思い出す。あの雫が僕に好意を寄せている…?信じがたい気もするが可能性として無くはない。なんてうぬぼれてみる。

 先日の古賀さんに対して嫉妬しているようなチャット、朝の登校でくっついてきたり。確かに距離感が変わったように感じる。しかし三年に上がってからすぐ。今まで一緒に居ていきなり?なんて思ってしまう。

『私は、先輩と九条先輩、とてもお似合いだと思います』

「…お似合い、かぁ」

 他人の意見に左右されるのもどうかと思うが、きっかけとしてはとても有効な一言だった。

 あの言葉を聞いてから、実際に雫のことが気になり始めた。恋愛的に好きなのか?と聞かれたらわからない。そりゃ小さいころからずっと一緒の幼馴染。居て当たり前というか、家族のように思ってる節がある。

 だからこそ、外部からのきっかけが、かなり大きな影響を及ぼす。

「…。」

 この待ち時間。気づけば雫のことしか考えられなくなった。

 

「おまたせ。ブラックでいいわよね?」

「さすが雫。ありがとう」

「自分で頼めよそのぐらい」

「店員さん怖い」

「お前の見た目のほうがよっぽど怖い」

「え、なんでそんなこと言う…」

 相変わらず陽菜は僕に対して当たりが強い。昔はお兄ちゃんなんて呼ばれて、すごく懐いていたのになぁ。いつの間にこんなお口が悪くなったのか。

 僕はいつも通りブラックコーヒー。付属でついてくるガムシロップとミルクは雫が回収していった。雫はストロベリーフラペチーノに僕から奪ったガムシロップとミルクを追加。なんかもう見てるだけで胸やけしそう…。

 陽菜は抹茶フラペチーノ。なんとなく予想はしてた。

「フードは頼まなかったのか?」

「晩御飯食べられなくなっちゃうしね」

「そうね。ちなみに夜はどうするつもりなの?」

 確かに、特に考えていなかった。外食して帰ってもいいが…。

「二人はどうしたい?外食して帰ってもいい。その場合、早めに連絡しないとな」

「そうね。私は外食でも問題ないわ」

「私も外食で大丈夫…けど、高いなぁ」

「まぁ、僕たちお小遣い制だしな。アルバイトもしてないし」

「…私が払うわよ?二人の分」

「え!いやいやそれは悪いよ!」

「もともと、遊びに行くって言いだしたのは私なのよ?言い出しっぺが責任もって払うべきよ。安心しなさい!お前ら庶民に比べてお金はあるわ」

「急に口悪いな…じゃあ、今回は言葉に甘えさせてもらうか。いつか返す」

「ありがとう雫!私も必ず返すね」

「気にしなくていいのよ?」

「友情を壊す原因の第二位がお金のやり取りなんだぜ。そのあたりはしっかりしないと!」

「まぁ、そこまで言うなら…いつでもいいからね?」

「ちなみに第一位はなに?」

「恋愛関係だぜ」

「…。」「…。」

 え、なんで二人とも黙るの?

「抹茶フラペチーノおいしいなぁ」

「ストロベリーフラペチーノおいしいわぁ」

「…え、なんでそんなよそよそしい?」

「気のせいよ」「気のせい」

「そ、そっか…」

 

 

 休憩TIME

 

 

 みんな飲み終わって、次に行きたい場所を決める。

「次どうする?陽菜が言っていたテニス?」

「あ、なんとなくで言っただけだから、気にしなくてもいいよ」

「でもさっき私たち二人の要望だったし、次は陽菜が決めていいわよ」

「そうだな。どこ行きたい?」

「んん~」

 腕を組んで空を見上げる陽菜。悩んでいるようだ。確かにここはいろいろあるが、スポーツ系の方が圧倒的に多い。運動苦手な陽菜はよく了承したな…ここに来ること。

 確か、僕が部活に出ている間に、雫と陽菜の二人で話し合ったらしいが。

「カラオケ…どう?」

「おぉ!僕は全然いいぞ」

「…おけ」

 やっぱり気持ち嫌そうな表情をする雫。歌苦手だもんな。

「やっぱり別のところに…」

「いいのよ!私のことは気にしないで!」

「いやだって、嫌そうな顔するじゃん」

「それはごめん。でも楽しめるから」

 陽菜は少し唸りながら「じゃあ…」とカラオケに行くことが決定した。

 

 カラオケの受付へ到着。

 僕は安定の背後ポジ。店員と話したくないからだ。今回は陽菜が対応してくれている。

「ドリンクバーでいい?」

「おん」

「ソフトクリームつけれるって」

「じゃあお願い」

「希望の機種は?」

「なんでもいいぞ」

「なんで私、店員の言葉を代弁する係りになってるの?」

「さぁな」

 受付が終わり、部屋番号の書かれた紙とコップが渡される。17番のお部屋だそうだ。

 言われた番号に部屋に入ると、なかなかに広めだった。パーティ会場というわけではないが、3人にしては少し広いといったちょうどいい感じの部屋だ。

「僕は、荷物とか見てるから、先にドリンク行ってきな」

「ありがと、てか圭一のついでくるよ。何がいい?」

「お任せで」

「いちばんめんどくさいの来たよ」

「サーバにあるドリンク、全部混ぜてやりましょ」

「それもどうだね」

「え、ちょ…」

「冗談よ。メロンソーダとかでいい?」

「よろしく頼む」

「はいはい」

 そう言って、二人は扉を抜けてサーバの置いてあるところへ向かっていった。

「採点だけ入れておこうか」

 備え付けのパッドを操作して、採点機能をオンにする。歌い順番はみんなが帰ってきてからじゃんけんだな。

『私は、先輩と九条先輩、とてもお似合いだと思います』

 一人の時間が訪れるたびに、あの言葉がフラッシュバックする。単純すぎるな…僕。

 

    ----------> ○ <----------

 陽菜がニコニコとけいくんのコップにメロンソーダを入れている。

「なんで、そんなにニコニコなのかしら…」

「まぁ見てなって」

 そう言うと、陽菜はおもむろにソフトクリームのサーバへと向かい、メロンソーダの上にソフトクリームを出す。ぐるぐるときれいな形のソフトクリームが上に乗ったクリームソーダが出来上がった。

「陽菜、器用ね」

「これやってみたかったんだよねぇ」

「自分はやらないの?」

「甘すぎるから飲みきれない」

「…和菓子の甘さは大丈夫なのに、ソフトクリームの甘さは耐えれないのね」

「自分でも不思議だなって思ってる」

 私はイチゴミルクがあったのでそれで。陽菜は緑茶。なんとなく想像はしてた。

「雫は?トッピングしないの?」

「んん~。お願いするわ」

「まかせろり」

 そういって、私のグラスを手に取ってソフトクリームを載せていく。どうしてそんなに器用なんだろうか。くるくるときれいな形のソフトクリームが出来上がっていく。

「うわぁ…甘そう」

 陽菜がものすごい顔をしているが、無視することにした。

 

「ただいま」

「おかえり…え、なんかすごいことになってる」

 クリームソーダとイチゴミルクフロートを見て、びっくりした顔をするけいくん。「私がやったんだよ」と自慢そうに語る陽菜を横目で見る。

「形、きれいすぎだろ…プロかよ」

「陽菜ってこんなに器用だったのね。驚いたわ」

「いやいや、だれでもできるって」

 いや、無理なのよ。

「採点だけ入れたぞ~。誰から歌う?」

「私以外からがいいわ」

「そう言わずに歌おうぜ?」

「そうだよ」

 私自身、歌うことはとても好きだ。しかし幼少期の頃、クラスで合唱の発表会があり、頑張って練習していたのに「九条さんは音痴だから歌わないで」とクラスメイトから言われたことがきっかけで、人前で歌うことに抵抗を覚えるようになった。

 その発表会では、口パクで乗り切り最優秀賞をもらった。素直に喜べなかったな。クラスメイトからも「九条が歌わなかったから」と言われる始末。

「私は、最悪歌わなくても」

「いや、せっかく来たんだ。歌わないともったいないぞ」

「そうだよ!日頃のうっぷんを晴らすとき時だよ」

「ありがとう」

 二人から背中を押されて、最初に歌わせてもらうことになった。

「じゃ…じゃあ」

 そう言って、パッドを操作して曲を選択すると、きれいなピアノとともに曲が始まる。静かめの曲で、亡くなった片思いを謡った曲。とても切なくて、心にぐっとくる曲。

 

 

「…ふぅ」

 曲が終わり、一息つく。

「めっちゃいい曲じゃん」

「初めて聞いたけど、すごい良かった」

「ほんとに?」

「おん」「うん」

「わ、私の歌よりも原曲の方がもっといいから!そっちも聞いてほしいわ…」

「おっけ、絶対聞くよ」

 どことなく。うれしかった。

 そして、カラオケの画面では、さきほどの採点結果が映し出されている。

 点数は76.429点。この点数が高いのか低いのか、正直分からないが。まぁ、私の好きな曲を二人に布教できたので良しとしよう。

「雫はさ、自分では下手って言ってるけど、雫が思ってるほど下手じゃないぜ?な?陽菜」

「そうだよ!」

「そんなお世辞、いいのに」

「お世辞なんかじゃないぞ~」

 慰めだ。そう素直に言葉を受け取ることができないのが、どうしても私の嫌いなところ。

「さて、次はどうする?陽菜、先歌うか?」

「えぇ、圭一から歌いなよ」

「なんだ急に遠慮の精神。じゃあ、先に歌わせてもらおう」

 と、けいくんはパッドを操作して曲を入れる。数分後に曲が再生されて歌い始める。かなりロックな曲で、とてもかっこいい。

 そして、歌が上手い。聞いてて心地が良いというか、ずっと聴いてたいような歌声だった。

 

 歌い終わり、採点結果がディスプレイに映る。点数は87.111点。

「ま、点数の高さと歌の上手さはあんまり関係ないからな!」

「全然、高いと思うわよ?」

「最後、私だね」

 そして、陽菜もパッドを操作して曲を入れる。しっとりしたバラード曲で普段の陽菜からは想像もつかない落ち着いた大人の歌声だった。

 二人とも歌が異様に上手い、なんで私だけ…?

 

 そして歌い終わり、採点結果がディスプレイに映し出される。点数は97.417点。たか…。

「陽菜って、マジで歌うまいよな」

「そうよね」

「やめて、褒められるのは慣れてない」

「やっぱり楽器経験者は強いのか?」

「適当にお琴弾いてるだけだから、そんな関係ないでしょ」

「いや、潜在的な何かがあるんだわ。きっと」

「もう…つぎ!雫だよ」

 そう言ってパッドを渡される。前々から思っていたが二人のあとに私の番ってかなりハードル高い。

 と、ここで私は天才的なひらめきをした。

「けいくん」

「ん?なに?」

「デュエットしましょ」

「おぉ、いいぞ」

 これなら、あんまり恥ずかしくない。ということで最近流行りの男女のデュエット曲を選択する。

 曲が始まり、二人とも歌い始める。歌詞を完全に覚えているため、ディスプレイを見ずに顔を見合わせて歌う。テンションが上がった二人は身振り手振りで感情を表していた。

 まるでミュージカルのよう。

 

    ----------> ☆ <----------

 曲が始まり、雫と圭一が歌い始める。最近流行っている恋愛ソング。学生二人の甘酸っぱい青春を歌った曲だ。

「…。」

 テンションの上がった二人は、向かい合いながら、まるでミュージカルのように軽く踊りながら歌っていた。

「…たのしそう」

 なんだか、その光景がうらやましく見えた。

 そして、二人の間に入ることは許されない。無意識にそう感じてしまった。

 

 





【今日のひなたん】

 最近、学校では星座を使った恋占いが流行っている。流行の雑誌に掲載されている星座占いが、めちゃくちゃ信ぴょう性が高いということで、大変にぎわっている。
 こんなのただのプラシーボ効果だ。なんて思う。
 いつもの通り、頬杖をつき窓の外を眺めていると前の席の友達から「ねぇねぇ」と声をかけられる。
「なに?」
「陽菜も占いやろう」
「別に…興味ない」
「自分の星座と好きな人の星座で相性がわかるんだって!」
「たった12個の星座でその人との相性とかわかるわけない。そんなの当たり障りないこと言って、それっぽく感じるように書いてるんだから」
「冷めてるなぁ…とりあえずやってみようよ」
「ご勝手に」
 その子は、嬉々として雑誌をペラだペラめくる。
「陽菜は確か、乙女座だったね」
「うん」
「気になる人の星座は?」
「気になる人がいない」
「なに?恥ずかしいの⁉素直に教えなさいって!」
「居ないもんはいないの」
「ん~じゃあ、お兄さんでいいや」
「どうしてそうなる…」
「お兄さんは何月生まれ?」
「7月。たしか蟹座」
「おっけ」
 その子は雑誌をペラペラめくり、何かを読んでいる。時折「え~」とか「おぉ」とか、何やら楽しそうな声が聞こえてくる。まぁ実際、人の恋愛って見てると楽しいよね。相手、実の兄なんですが。
「出たよ!相性は~、ばっちり!とても相性がいいでしょう」
「ふ~ん」
「しかし、最近ライバルが出現してピンチかも」
「…。」
「だんだんと距離が離れて行っている可能性がある…普段からもっと優しくしてあげよう」
「…。」
「ラッキーカラーはオレンジ。ラッキーアイテムはひまわりの髪飾り。だって!」
「へぇ~」
「ほんと、興味なさそー」
「はいはい、そろそろ授業始まるよ」
「はーい」

 帰宅後。
「あれ?陽菜。そんな髪飾り持ってたっけ?」
 私は学校の帰り道でアクセサリーショップによって、ひまわりの髪飾りを買った。
「今日買った。よく気付いたね」
「僕は、陽菜のこと24時間365日監視しているからなぁ!」
「ありがと。圭一」
「…え、いつもみたいに「は?きもっ」て言われると思った」
「そうだ圭一、オレンジジュース飲む?」
「お、おう。ありがとう」
 私は、学校の帰りに買ったオレンジジュースを圭一に手渡す。
「明日も、部活。がんばってね」
「なぁ!どうした陽菜!体調悪いのか⁉いつもの毒舌な陽菜はどこ行った⁉」

 優しくしたら、心配された。
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