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カラオケを後にして、あたりはもう完全に日が沈みかけている時間帯。周りのお客さんも次第に減ってきているのがわかる。
ちょうど私たちもお腹が空いてきて、晩御飯をどうしようか。と悩みながら敷地内をうろうろしているところだ。
「夕ご飯、どうするよ?」
「そうね~。陽菜は何か食べたいものある?」
「私は…そうだなぁ…」
「…。」
「…。」
「…。」
沈黙。お腹は空いているのだが、何を食べたいか?と聞かれたら何も出てこないこの感じ。あるよね。
「焼肉とか、お寿司とかでもいいのよ?」
「いや、それは高い!さすがに遠慮させてくれ」
平野家兄妹があまりにもお金がないということで、小金持ちである九条家の娘様に晩御飯をごちそうしていただくという話になっており、さすがに焼肉やら寿司やらの高級なお店は気が引けるのだ。
「高級品かしら…?ワンオーダー制の焼肉店ならかなりのお値段するけど、食べ放題よ?一人当たり大体4,000円ぐらいよ?」
「一回の食事に4,000円…私たちの世界では到底…」
「だな…さすが貴族だぜ」
「そんなお金持ちの家に生まれた自覚ないのだけれど…」
一回の食事で1,000円を超えることすら高いと感じてしまうのに、その4倍なんて…。合格祝いとか進級祝いとか、大きなイベントごとでない限り行けない。
「まぁ、せっかく三人で遊びに来たのだし、こんな機会でないと滅多に食べられないのよ?どう?焼肉、行きたくないかしら?」
「くっ…おにくたべたい」
「やめろ陽菜!悪魔のささやきに踊らされるな!」
「悪魔て…。無理にとは言わないわよ。一つの案として出しておくわ」
「ん~」「ぬ~」
正直、ここまで焼肉の話題を出されると、もう口の中が焼肉の気分になってしまったのだ。きっと圭一も同じ気分だろう。
「ん~…陽菜君。ちょっとこっちに来たまえ」
「はい先生」
圭一は精一杯の渋い声を出して私を呼び出す。雫をほったらかしにして、私たち二人で会話を始める。
「…どうする?正直、焼肉食いたくて仕方がないんだけど」
「実は私も」
「これは、お言葉に甘えてもいいかな?」
「圭一が食べたいって言うなら」
「陽菜も食べたいって言ってるじゃん」
「私の責任にしないでよ。自分が食べたいんでしょ?」
「おいおい、僕だけに責任を押し付けるな?」
どうやら、自分が食べたいと言ったから焼肉に行くという状況が許せないらしい。変な見栄を二人で張る。
「…二人で何話してるのかしら?」
「あ!陽菜がもう焼肉食べたくて仕方ないらしくて」
「は?圭一じゃんそれは!私は別にどっちでも」
「素直になりなさいよ。怒ったりしないのだから」
「はい」「はい」
ということで、焼肉店へ行くことになった。
「わぁ…すごい」
「やべぇ…来ちまった」
「ただの焼肉食べ放題なのに…」
店に入って、店員さんからテーブルへ案内された後。メニュー表を眺めながら私と圭一は感動をこぼす。3つのコースがあり、それぞれ金額と食べれるお肉の種類が異なる。一番安いもので2,500円、高いものだと4,000円もする…。
「ねぇ圭一、コースどうする?」
「一番安いやつを…」
「遠慮しないでってば…全く」
雫がベルを鳴らし、店員さんが来る。
「お伺いいたします」
「この最上位コースを三人で」
「ちょ!」「ま!」
「はい、最上位コースが三名様ですね。ソフトドリンクはいかがされますか?」
「それも三人分お願いします」
「雫様⁉」「雫⁉」
「かしこまりました。ただいまソフトクリーム食べ放題のやっているのですが、いかがでしょうか?」
「あ、それもお願いします」
「…。」「…。」
「かしこまりました。火をつけますのでお気をつけください。ソフトドリンク、ソフトクリームはセルフサービスとなりますので。ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルにて再度お呼びください」
「はい。ありがとうございます」
一通り説明が終わった店員さんは、バックヤードの方へ消えていく。
「雫様⁉ちょっと、最上位版ってなんですの⁉4,000円もしますわよ⁉」
「ちょっと陽菜。文字じゃ誰が喋ってるかわからなくなるから、普通にしゃべって頂戴」
「メタいな…」
「まぁ、先にソフトドリンク入れてきなさいな。私は荷物番してるわ」
「ありがとう雫。じゃあ行こ」
「おん。すまんな雫」
圭一と席を立って、ドリンクサーバへ向かった。
「…なぁ陽菜」
「なに?」
「いくらぐらいすると思う?」
「…ソフトドリンクとソフトクリームの金額見てないけど…。大体4,500円ぐらいじゃない?」
「約一か月のお小遣いだぜ…」
「ちょっと待って、あんたそれだけしかもらってないの?」
「え?」
「え?」
「…いくらもらってるんだ?」
「あぁ~…サーバーどこかなぁ」
言えない。月一万もお小遣いもらってるなんて言えない。
「おい、ごまかすんじゃないよ」
「抹茶あるかなぁ」
「あるわけねぇだろ」
「てへ」
「なんだこいつ…」
三人ともソフトドリンクを入れてきて、お肉を注文し終え届いたところ。すると雫がおもむろに手を挙げて「質問です」と声を上げる。
「ん?どした?」
「この中で料理経験がある人は挙手」
私は手を挙げた。
「…え」
私以外の二人は手を上げない。まじかよ。
「じゃあ、陽菜が焼く係ね!よろしく頼むわ」
「陽菜…任せた(肩ポン)」
「いや…肉乗せて焼くだけじゃん。料理スキルなんもいらない!」
「いつひっくり返すとか、どのぐらい焼けばいいのかとか、私たち分からない」
「わからへんなぁ」
「なんやこいつら…」
結局、私が焼くことに。まぁ別に嫌ではないけどさ。
「じゃあ、焼いていくよ」
「お願いしま~す」
「おなしゃす!」
ジュワーとお肉が焼ける音と一緒に煙が舞い上がる。このにおいがとてつもなくたまらない。焼肉なんていつぶりだろう。まさか雫と圭一と来るとは思わなかったな。
焼けるまでの間、暇なのでメニュー表を眺める。
「あ、チョレギサラダ頼めばよかった」
「焼肉屋に来てまで、草なんか食うなって」
「言い方よ…。肉ばっかりだと胃もたれしてたくさん食べれないもの。私もサラダ注文するわ」
「チョレギサラダ二つね。圭一は?」
「僕は肉だけで十分だぜ」
「油で真っ先にダウンしそうね」
なんて会話をしながら、お肉をひっくり返す。
「サラダのほかに…卵スープほしいわ」
「あぁ~私は…どうしようかな」
「肉オンリー」
「お前は黙れ」
「はい…」
「あ、私チーズビビンバ食べたい!」
「いいわね!」
「え、うまそうだな」
「お前は肉オンリーな?」
「え、そんなぁ」
そろそろ上手に焼けたので、圭一の小皿へ乗せる。
「はい。圭一」
「さんきゅー」
「はい。雫の分」
「ありがとう陽菜」
「さて、私の小皿にも…」
「もっとちょうだい」
「…はいどうぞ」
圭一は、もう食べたくて仕方がないんだろうな。私の小皿によそう予定だったお肉を圭一へ渡す。
「はい。雫も」
「ありがとう。陽菜は食べなくていいの」
「後からゆっくり食べるよ」
そして、追加のお肉を焼き台へ入れる。私が焼いている間に、雫は先ほどのメニューを注文している。
ある程度たったら、ひっくり返す。
「料理できる人っていいよな。あこがれる」
「そうね~。うちの母親が料理をあまりしない人だから、なんだか見てて新鮮だわ」
「焼肉だよ?焼いてるだけだよ?これで新鮮ってやばいよ?」
「感性は人それぞれ」
「それ、なんか違くない?」
「雫は、料理に興味ない?」
「ん~。とくにないわね。手間暇かけて失敗作を作るより、手っ取り早くおいしいものが食べれるなら。そっちの方が絶対いいもの」
「それはそうだな」
「出来たら楽しいよ?料理」
「ん~…」
「ほら、なんか作って圭一に食べさせればいいじゃん!こいつ馬鹿だから、何でも美味いっていうよ」
「おい、馬鹿とはなんだ…」
「確かに、何でも食べそうね。けいくん」
「二人の俺に対するイメージどうなってるの?」
そろそろ、お肉が出来上がったので、圭一の小皿へ乗せる
「わぁい」
「陽菜。次は私たちが焼くから、陽菜は食べなさい」
「え、いいの?」
「私たちばっかり食べてるからね。いいわよ」
「ありがとう」
と言ってトングを雫に渡す。圭一もなぜかやる気が出てきたみたいでお肉を焼き始める。
そして私は自分で焼いたお肉を一口。
「おいしい…!」
「陽菜って、ほんとおいしそうに食べるよな」
「見ていて癒されるわ」
「…あんまり見ないでよ!」
ちょうど、注文していたチョレギサラダとチーズビビンバが届く。
「うわ!ビビンバ美味そう!僕も後で頼むか」
「サラダも食え?」
「草はいらん」
ビビンバを混ぜて一口。おいしすぎる!
チョレギサラダも一口。どうしてこんなにおいしいのか…チョレギサラダなんてめったに食べない気がする。
「幸せ…」
思わず口から出てきた言葉だった。
「ねぇ、陽菜」
「なに?雫」
「焦げたわ」
そういって雫は、片面が炭のように真っ黒になった肉を見せてくる。
「なんでこの一瞬で焦げるねん」
「私も意味わかんないわ」
心配になり圭一のお肉も見てみると、あんまり火が通っていない。それもそのはず
「お前は、2秒ごとにひっくり返すな!かえって火が通らんだろ!しゃぶしゃぶみたいにするな!」
「だって焦げそうで怖い」
「チキンか!」
「鶏肉だけに⁉」
「どつきまわすぞ」
「すまみせん…」
「やっぱり私が焼く…」
二人からトングを取り上げて、残りのお肉は私が焼くことになった。
「ふぅ、お腹いっぱいだわ」
「胃もたれが…」
「幸せ…」
雫は食べ過ぎて少し苦しそう、圭一は油にやられてる。私はちょうどいい感じに食べれて、今とても幸せな気分になっている。
「私、デザート食べようかな?」
「僕はもういいや」
「私もデザート食べたいわ」
「雫、大丈夫なの…?」
「甘いものは別腹よ」
「まぁ、それもそう」
そしてメニュー表のデザートを眺める。
「私、イチゴパフェ食べたいわ」
「あんなに食ったのによく入るな…」
「あ!抹茶パフェだって!これにする!」
「ほんと抹茶好きだよな」
「本場のお抹茶、飲んでみたい」
「いつか、京都旅行とか行けたらいいわね」
「あ!それいいなぁ」
「いいねぇ~」
「けいくんは、本当にもういの?」
「ん~。一応メニューみせて」
「あい」
圭一にメニュー表を渡す。お肉はすべて食べ終わり、焼き台の火を消す。なんか気が向いたので、台ふきでテーブルをきれいにする。
「やっぱりいいかな。これ以上食べたら吐きそう」
「わかったわ。じゃあ注文するわね」
と言って、雫はベルを鳴らす。一分もせずに店員さんがやってきて、イチゴパフェと抹茶パフェを注文する。「かしこまりました」と笑顔で応対してその場を去っていく。
「帰りの電車調べとかないとな」
「あ、そうだね」
大体5~10分おきに電車が出ているので、困ることはそうそうないとは思うが、一応終電も調べておこう。
といっても、まだ時刻は午後7時ごろ。全然余裕だろう。
「ちなみに、食べた後はどうするんだ?」
「ん~。陽菜どうする?」
「特に行きたい場所もないし…あとお金ないし…そのまま電車乗って解散じゃないかな?」
「まぁ、時間も時間だしなぁ」
数分後に注文の品が届き、写真を一枚とる。そして実食。
「おいしい!」
「おいしいわ!」
「…見てるとほしくなるよな」
「頼めばよかったのに」
「全部はいらないんよなぁ」
私はスプーンに一口サイズのアイスを乗せて、圭一の方へ持っていく。
「はい、あーん」
ぱくっと圭一はアイスを食べる。
「おお!抹茶ってあまり食べないけどうまいな!ありがとう」
「けいくん!こっちも!」
すると雫もスプーンに一口サイズのアイスをのっけて圭一の方へ
「お、おぉ。ありがとう」
一口ぱくり
「ん!イチゴもいいなぁ」
「そうよね!」
雫はなんだか満足げな表情を浮かべる。
「雫も一口食べる?」
「あ、もらうわ!私のも上げるわね」
お互いに一口ずつ交換。
「イチゴおいしい!」
「抹茶もありね!」
なんだこの空間。てぇてぇすぎるな。
そのあとは、談笑しながらパフェを食べ進めていく。すべて食べ終わると雫が伝票をもって立ち上がる。
「誠にありがとうございます」
「このご恩は一生忘れません」
「ふむ。よきにはからえ」
荷物をまとめてレジへ。雫が「お会計お願いします」というとバックヤードから店員さんが出てきて、会計が始まる。
「合計で12,900円ですね」
「Wow…」「おぉ…」
雫は自分の財布から現金を取り出して支払いを済ませる。ただの高校生がどうしてこんな大金を持ち歩いているのか、意味が分からなすぎる…。
「二人とも、100円玉ある?」
「ん?ちょっと待ってろ」
「私持ってるよ」
「あ、借りてもいいかしら?」
「あげるよ…おごってもらってるのに100円取り立てるってやばいじゃん」
財布にあった100円を渡してぴったり会計を済ませる。
「よろしかったら、ガムはいかがですか?」
「あ、いただきます」
ミントの板ガムを三枚もらう。圭一は即ガムを噛み始める。
「こちらレシートでございます。ありがとうございます。またお越しくださいませ」
「ごちそうさまです」
「ごちそうさまでした」
「またきます」
店員さんとあいさつを交わしてから店を後にする。
「さて、帰るか」
「そうね」
「そうだね」
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ガタンゴトンと電車が走る音が響き渡る。車内はガラッとしていて三人とも余裕をもって座ることができている。
私はぼんやりと窓の外を見ていた。外は真っ暗で、私の顔が反射してはっきりと見える。その隣、陽菜とけいくんは疲れがピークに達したのか、すーすーと気持ちよさそうに寝息を立てている。
「はたから見ると、カップルよね」
陽菜はけいくんの肩に頭をのせて、けいくんは陽菜の寄りかかった頭にほっぺを当てて、お互いが寄り添う形で寝ている。
「…。」
二人が仲良さそうにしていると、私までうれしくなる。二人の幸せを願っている。
でも最近、胸の奥に何やらチクチクとした痛みを感じるときがある。
「…。」
この感情。もしかして。私もけいくんのこと…。
「…まさかね」
その考えは、すぐに捨てた。
「…。」
私は、けいくんの肩に寄りかかって、頭をのせた。
【今日のひなたん】
そろそろゴールデンウィークが終わりそうで憂鬱なひなたんですどうも。とくに学校が嫌いというわけでもない。学校に行けば確かに楽しいこともある。しかし行きたくない。なぜだろうか。
宿題はそうそうに終わらせているので、特にやることもない。小説を書こうにも何もアイデアが降ってこない。
「ああ~」
残り少ない休日をだらだらと過ごしている。非常にもったいない。
とりあえず部屋から出る。
「あ、おはよう陽菜」
「あれ、部活行ってないの?」
ちょうど扉の前で圭一と鉢合わせ。てっきり部活に行っているもんだと思っていたが、今日は珍しく家に居るみたいだ。
「あぁ、行こうと思ったんだが、面倒見てる後輩ちゃんが今日はお休みらしくて、あの子がいないと、行っても僕一人だから」
「あぁ、そうなんだ」
「今日は、のんびりゴロゴロしようかな~って感じ」
「なんかさ、もったいなくない?」
「そうか?」
休日はゴロゴロしてのんびり過ごすのも確かにありなのだが、一日が経過すると「もったいないことしたなぁ」という気分になる。だからと言って、休日にどこか出かけるのも億劫。
「圭一、なんかあそぼ」
「なんかって…何で」
「…なんかはなんかだよ」
「あ~久々にレースゲームでもするか?リビングにおいてあるゲーム機で」
リビングには家庭用ゲーム機が置いてあるが、中学に上がると同時にやらなくなってしまって放置してしまっている。
「いいね!それ!久しぶりにやりたいかも」
「おっけ」
二人はリビングに向かいゲーム機の電源を入れる。昔、二人でよくやっていたレースゲームのディスクを入れて、ゲームを起動する。
「わぁ懐かしい」
「やべぇ…」
各自キャラクターとカートを選び、ステージ選択。
「うわ!このコース難しかったんだよなぁ」
「そうそう!毎回あそこのコーナーで落ちちゃう!」
「せっかくだからここにしない?」
「お!いいねぇ!負けないよ!」
用意されているステージの中で最も難しいコースを二人は選んだ。
ロード画面を過ぎて、画面に各自のカートが移る。真ん中にランプが移りカウントダウンが始まる
3…2…1…
「よし!スタートダッシュ成功!」
「エンストした!」
圭一は成功して勢いよく走り始める。私はエンスト起こして大幅にロス。
「よっしゃ~いけいけいけ…うわ落ちた!」
「へ!ばーか!…ああ!私も落ちた!」
「アイテムくらえ!」
「は⁉まじふざけんなよお前」
「キレ散らかさないで…」
「そう…ここのコーナー…あぁ!むりだった!」
「あえてブレーキ」
「なにそれうま!」
白熱の試合が繰り広げられており、ついに
「ゴール!よっしゃ僕の勝ち!」
「あぁ~まけた…もう一戦しよ!」
「お!いいぞ~」
この日はずっとゲームして遊びました。