君の恋心よ、実ってしまえ。   作:竹モチ

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12話 行動しなかった側が悪い

 

 

 

    ----------> ○ <----------

 ゴールデンウィークが終わり、いつもと変わらない日々が続いていた。気づけば6月も中旬あたり、少し熱いかな?と感じるぐらいの気温で。快適といえば快適。

 4月から私は、けいくんにアタックを仕掛けるふりをして、陽菜を焦らせることを続けている。。

 けいくんは、少し困惑している様子。私がいきなり距離を詰めるものだから、変に意識しているような気がする。

 陽菜は、現状ではあまりはっきりとはわからない。しかし着実に効果は表れていると思っている。陽菜の言動に少し陰りを感じるときがある。

 人間観察が趣味。なんて言うと気持ち悪いといわれるかもしれないが、二人の動向を探るのは単純に楽しい。

「…。」

 最近、けいくんの後輩である古賀美咲。あの子の存在が少し面倒だと感じる。けいくんとの距離はだんだんと縮まっていて、けいくんもまんざらではない様子。ゴールデンウィークだって、あの子のためにわざわざ学校まで行って、マンツーマンで練習をしてあげる。

 本当にただ、面倒見がいいだけなのか。もしかすると。

「…。」

 まさかね。けいくんの心は陽菜にあるはず。そうでないと困る。

 困る…。

「…。」

 そう。陽菜はけいくんのことが好き。そして、その感情をごまかし続けてきた。だから私が二人の恋を実らせたい。きっと、背中を押してあげるだけじゃ陽菜もけいくんも進展しない。だから、私がけいくんを好きだと嘘をついた。

 そうだよ。これは嘘。陽菜のためについた私の嘘。

 嘘なんだと思うたびに、やっぱり胸の奥が痛むんだ。おかしい。そんなのおかしいよ。

 もしかしたら、何かの病気かもしれない。胸の奥が痛むという表現は比喩ではなく物理的な痛みの可能性だってあるじゃない。

「…。」

 教室の窓から、ぼんやりと外を眺めながら、考え事を続ける。

 カツカツと先生が黒板にチョークを当てる音が聞こえる。予習済みで特に問題のない範囲だから、授業は流し聞きしている。ノートの板書も友達から借りればいいや。

「…。」

 今日はやたらと長く感じるな。

 

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、先生が「中途ハンパだなぁ」とつぶやく。周りの生徒たちは「終わらせましょう」と抗議。

「まぁいいか。続きは次回だな。この範囲は受験でかなり必須になるから、よく復習しておくように」

 各々「はーい」と先生に返事を返す。

「あれか、今日の授業は終わりだな。ほら、掃除がんばれ」

 私の学校では、最後の授業が終わると掃除の時間になり、各自が決められた場所へ掃除しに行く。その間に担任が教室に帰ってきて軽くチェック。確認が取れたら解散という流れだ。

 ということで、私も所定の掃除場へ向かうとしますか。

「あぁ、九条さん。ちょっといいかい?」

 席を立って、教室から出ようとすると授業をしていた先生から呼び止められる。

「はい」

「君、医大を目指すんだってな。担任から聞いたよ」

「えぇ、まぁ」

「実は僕、医大卒なんだ」

「え、うそ」

「嘘つかねぇよ。まぁいろいろあって今は科学教員してるがな」

「そうなんですね」

「それで、当時使ってた教材とか医術本。よかったら上げるんだけど」

「本当ですか!ぜひいただけるなら!」

「わかった、じゃあ明日持ってくるよ。少し古いものになるから、今とはちょっと違うかもしれないが。ないよりかはマシだろうってことでな」

「ありがとうございます」

「ん。じゃあ掃除がんばれ」

「はい」

 なんと、棚から牡丹餅の気分だ。

 まさかあのパッとしない科学の先生が医大卒だったなんて。いろいろあって教員してるって…。そのいろいろの部分を知りたいな…。

 まぁ、なんかの機会に聞いてみようかな。

 

 掃除場所に到着。私の担当は音楽室。クラスメイトの琴葉 美波(ことのは みなみ)さんと掃除をする。そして大体遊び始める。

 掃除自体は一瞬で終わり、残りはピアノを弾いて遊ぶ。美波がピアノ経験者で、いろんな曲を弾いてもらっている。その子のワンマンライブだ。

「雫ちゃんはピアノ弾いてみないの?」

「私はいいわ。全く弾けないもの」

「慣れれば簡単だよ」

「慣れるまでが難しいのよ」

「まぁ、それもそうだね」

 それに、音痴の人は楽器向いてない。そう勝手に思い込んでいる。

 美波はピアノを弾く。聞いたことはあるが名前の知らないクラシック曲。

「…。」

「…。」

「ねぇ、美波」

「ん?なに?」

 美波は、ピタッと演奏を止める。

「たとえ話、私の話じゃないわよ」

「その前振りは、私の話ですって言ってるようなものだよ」

「違うわよ」

「はいはい。で、どうしたの?」

「友達が恋をしていて、その恋を応援したいって思ってたの」

「思ってた…?」

「でも、その友達と同じ人を好きなってしまったとき、美波ならどうする?」

「ん?どういう」

「あぁ、順番に話すわね。まず、登場人物が…この際、美波を登場させましょう。私と美波とクラスメイトの男の子がいるとするわ」

「うん」

「そして、美波はその男のことが好き」

「うんうん」

「私は、美波がその子のことを好きって知ってる」

「なんで知ってるの?」

「まぁ、そこは置いといて、私は美波の恋を応援したい。だからあの手この手で手助けをしてる」

「その手助けは、私知ってるの?」

「きっと知らないわ」

「ふーん」

「それでね、手助けをしてるはずだったのに、いつの間にか私がその男の子を好きになってしまったとします」

「ほうほう」

「私が、その男の子に告白して付き合い始めたとする。その時、美波はなんて思う?」

「ん~先越された!悔しい!って思うだけじゃないかな?」

「私のこと、嫌いになったり、憎いって思わない?」

「だって、私は、雫が私の片思いを知ってるって知らないわけでしょ?もし、私が片思いの話を雫にして、そのうえで付き合い始めたなら、そりゃ憎いし嫌いにもなる。けど、私は雫に話してなかったんでしょ?じゃあ私は雫を責める資格はない」

「なるほど。じゃあ、逆の立場になってみたら?」

「私が男に?」

「違うそうじゃない。私と美波が入れ替わったとしたら」

「あぁ、雫の片思いを知ったうえで告白するかどうかってこと?」

「そう」

「ん~…」

 美波は腕を組んで悩み始めた。

「告白するんじゃないかな?」

「それは、どうして」

「まぁ、友達の幸せも大事だとは思う。けど、自分の幸せも大事じゃん。それに、相手は何も知らないわけでしょ?じゃあ表面上は、雫より先に私がお付き合いを始めただけ。行動を起こさなかった雫が悪い。という意見かな?」

「…なるほど」

 行動を起こさなかった側が悪い。そうなるのか。

「ただ、さっきも言ったけど、雫の片思いを私が知っている。ということを雫が知ってちゃいけない。知っていたらただの泥棒猫になる。そりゃ関係もこじれるね」

「んー」

「雫。誰か好きな人がいるの?」

「え?いや、そんなんじゃないわよ」

「もしかして、本当に私の片思いを奪う気!?」

「美波の片思い相手なんて知らないわよ」

「ちなみに、同じクラスの片岡くんね」

「おぉ…そんなすんなりと教えてくれるもんなの?」

「雫なら別に」

「信頼なのか、奪われないという自身なのか」

「前者よ。恋愛において雫と真っ向勝負を仕掛けたら、負けるのは私の方だよ」

「なんでよ」

「容姿。学力。運動能力。話力。どれをとっても私よりも優れてる」

「…そんな、買いかぶりすぎ」

「そんなんじゃないよ。本気で思ってる」

「なんか…恥ずかしいわ…」

「照れた顔もかわいい」

「やめなさいよ!もう…」

「でも一つだけ、勝っているところがあるわ」

「え、なに急に」

「私、Cカップあるから」

「な…」

「雫は、胸がないのが唯一の欠点だよね」

「くっそ…美波も威張れるほどでかくないじゃない。並盛が何言ってるのかしら」

「やっぱり、大きさより形だから」

「いや、知らないわよ」

 なんて話していると、扉の方からノックされる音。

「おーい、いつまで掃除してるんだ。みんなもうとっくに教室帰ってきてるぞ」

 あまりに帰りが遅いので担任の先生が様子を見に来たみたいだ。

「あ、すいません。すぐ戻ります」

「すいません」

 二人はそそくさと教室の方へ向かった。

 

 

    ----------> ◇ <----------

 カンカンとピン球の小気味いい音が響く体育館。本日一日の授業が終わり、部活動の時間だ。

 暖かい気温のせいか、ボーっとしながら古賀さんとラリーをしていた。

「…先輩」

「…。」

「平野先輩!」

「え!ごめん。なに?」

「今日、どうしたんですか?部活始まってからずっとぼーっとしてる」

「いや、なんでだろうな」

「なにか、お疲れですか?」

「ん~特にこれと言って」

「少し休みましょう。先輩」

「ん。まぁそうだな」

 卓球台から離れて、壁にもたれながら座る。自分のバックからタオルを取り出して顔や頭を拭く。水筒を取り出して水を飲もうとしたら、空だったことに今気づいた。

「うわぁ。空じゃん」

「あ、私のでよければどうぞ」

 古賀さんは自身の水筒を僕に渡してくる。

「え、いいのか?」

「まだ全然あるので、大丈夫ですよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 僕は水筒を受け取り、そのまま飲んだ。

「はぁ~。ありがとう生き返る」

 キンキンに冷えたスポーツドリンクだった。脱水が進んでいたせいか普段よりも味が濃く感じた。

「味濃いね」

「あ、そうですか?私、粉末状のものを買ってて、それを溶かして飲んでるんです」

「あぁ、普段から濃い目に作ってる感じ?」

「ん~そのつもりはなかったのですが。そうかもしれないです」

 なるほど、確かにスポーツドリンクの粉末が売られているのは知っているが、買ったことないんよね。濃さを自由に決めれるのは、ある意味便利かもしれない。

「あまり、塩分過多にならないようにな」

「はい。すいません」

「謝んなくてもいいよ!ありがとな」

 ふぅっと息を吐きながらなんとなく天井を見上げる。あそこにバレーボールが挟まってるなぁなんて考えながらぼーっと眺める。

「先輩。体調すぐれないなら…今日はお休みしたほうが」

「ん、そうだな…なんだか熱っぽいし。息が詰まる感覚がある」

 頭がぼーっとする上に息が荒い気がする。熱っぽさも感じるようになってきた。これは本格的に体調崩し始めてるのかな?

 先生に報告しよう。体調不良で早退させてもらう。そう思って立ち上がろうとする。

「おっとっと」

 バランスを崩して、倒れそうになる。足に力が入りずらい。

 なんだこれは…。

「先輩⁉大丈夫ですか⁉」

「あぁ、結構やばいっぽい?」

「保健室行きましょう」

「そうだな」

「今、九条先輩呼んできます!」

「なんで雫?」

 僕が問いかける前に、古賀さんは走り出していた。

 走っている古賀さんの背中を眺めている。声は聞こえないが向こうで雫と話しているのが見える。

 そして、二人がこちらへ走ってくる。

「けいくん!」

「ごめんな。雫」

「九条先輩、平野先輩を保健室へお願いします」

「ええ!ほら、けいくん。肩につかまって」

「あ、ありがとな。ごめんよ。古賀さんもありがとう」

「いえいえ。私はただ…。それよりも早く保健室へ」

「けいくん、行きましょ」

「あぁ」

 僕は雫に肩を組まれて、保健室へ向かう。

 

 校舎内の廊下。なぜかとても体がほてっている感覚がする。息も詰まる。脈拍が早い。突然の不調にとても恐怖を感じている。

「もう少しだからね」

「おお」

 雫の顔がとても近い。

 こんな時に何を考えているんだ。隣にいる雫がとてつもなく愛おしく感じている。もっと近くに。

 雫を抱きしめたい。

 雫にキスをしたい。

 雫と…。

 やめろ。こんな時に何を考えているいるんだ僕は。最低だ。助けてくれているのにもかかわらず。こんな妄想。

「ついたわ」

 必死に煩悩を振り払っている間に目的地へ着いたようだ。ガラガラと扉を開けて中に入る。

「先生!」

 しかし返事はない。誰もいないようだ。

「そんなことあるのかしら…。保健室の先生が居ないなんて」

「すこし、寝かせてもらおう」

「ええ、そうね。事情は後から説明するわ」

 一番近くのベッドへ雫が運んでくれる。雫の補助を受けながらベッドに横たわる。

「ありがとな。雫」

「いいのよ。安静にしてなさい。私は先生を呼んでくるわ。ちょっと待ってて」

「…え」

 クルッと背中を向けて保健室から出ていこうとする雫。その背中を見ているとなんだかとてつもなく寂しく感じて。心細い。

 いやだ。雫と離れたくない。そばにいてほしい。

 いやだ…。

 

 気づけば僕は、雫を後ろから抱きしめていた。

「行かないでくれ」

「…え?」

「そばに、いてくれよ。雫」

 僕は、雫を求めた。

 

    ----------> ○ <----------

 バサッと後ろから抱きしめられる。あまりの出来事に何も声が出ない。

「行かないでくれ」

「…え?」

「そばに、いてくれよ。雫」

 けいくん…?

 私は、抱きしめられたまま固まってしまった。頭の理解が追い付いていない。

 実時間にして2秒。体感にして30秒が経過した。だんだんと頭の理解が追い付いてきた。

 私、今、けいくんに抱きしめられているんだ。

 理解してしまったから、ドキドキが止まらない。

「けいくん…どうしたの?」

「ごめん。なんか雫がどっか行っちゃうのが、すげぇ寂しくてさ。心細く感じて。どこにも行ってほしくないんだ」

「でも、先生、呼ばないと」

「いや。離さない。離れたくない」

「…。」

 抵抗なんてできるはずない。こんなに弱っているけいくんを見るのは初めてかもしれない。

 私を求めてくれていることが、とても嬉しいと感じてしまった。ドキドキする。

『行動を起こさなかった雫が悪い』

 今日の部活前、美波と交わした会話がフラッシュバックする。行動を起こさなかった私が悪い。行動を起こすべきだ。

 けいくんのこと、好きになってしまえば。

 …だめだよ。私は陽菜の恋を応援するって決めたんだ。陽菜の好きな人を奪うことはしたくない。

 けいくんは抱きしめた手を放して私の肩を持つ。そのままくるっと回せれ向かい合う形に。

「雫…」

「けい、くん…?」

 けいくんは私の顎に軽く持ち、上にあげる。俗に言う「あごくい」というやつなのだろう。なんて冷静に考えていると、けいくんは顔を近づけてくる。

「…。」

「…。」

 私にとって、抵抗する理由などなかった。

 しかし。

 カツカツと廊下から足音が聞こえ、とっさに私はけいくんを突き放してしまった。

「うわっ」

 よろけたけいくんはベッドに座り込み、びっくりした表情を浮かべている。

「ご、ごめんなさい。誰か来るかも…しれなかったから」

 すると、ガラガラと保健室の扉が開き、白衣を着た先生が入ってくる。

「あら、ごめんなさいね。ちょっと生徒さんから呼び出しくらってて、なんか来なかったけど。どうしたの?体調不良かしら?」

「ええ、この子が部活中にバランスを崩して倒れそうになったって聞いて、もしかすると脱水症状かもしれません」

「あら、それは大変ね。6月といえど熱中症対策はしっかりしないとだわ」

 と言いながら、先生は保健室内にあった小さな冷蔵庫から、経口補水液を取り出す。

「普通のとリンゴ味、どっちがいい?」

「…普通ので」

「はい。どうぞ」

 けいくんは先生から経口補水液をもらい。一口飲む。「ふぅ」と息を吐いて一息つく。

「で、では、私はいったん部活に戻って先生に報告してきます」

「ええ、わかったわ」

「けいくん、また戻ってくるわ」

「おん」

 けいくんの返事は、とても弱弱しく、今にも消え入りそうな声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

    ----------> _ <----------

「…。」

 体育館に隣接されている水道に、媚薬入りスポーツドリンクをドバドバと捨てる。

「間違えて飲んだら、大変だもんね。にしてもあんな感じになるんだ…思ってたのと違うかったけど」

 あと、高坂先生には悪いことしたな。呼び出しておいてバックレるってさ。まぁ、保健室で二人きりにさせたかったし、致し方なし。

「…。」

 さっさとくっつけばいいのに。あの先輩たち。

 

 

 





【今日のひなたん】

 部活に行こうか、帰ろうか悩んでいる放課後の教室。なんとなく動き始めるのが億劫で外を眺めている。クラスメイトのほとんどは、教室からいなくなって、私一人だけが教室に取り残されている。
 すると、ガラガラと扉が開き、見知らぬ女子生徒が入ってくる。その人は私の方めがけて一直線に歩いてくる。
「こんにちは」
「え、こんにちは」
 ほんと、誰だろう。まったくもって見覚えがない。
「私は、琴葉美波。平野陽菜であってる?」
「はい」
 どうして私の名前?そんなに有名人じゃないよ?私。
「あ、そんなに警戒しなくてもいいよ。私は雫の友人で、普段一緒にいる陽菜と話してみたかっただけ」
「あ、そうなんだ。いきなり呼び捨てにするのすごいね」
「だから、陽菜も私のこと美波って呼んで」
「まぁ、わかった」
 距離感の詰め方がすごい人だな。まぁでも雫の友人なら悪い人ではなさそう。無意味に警戒する必要もないかな?
「とりあえず、雑談でもしようよ」
「そうだね」
「今回、一切出てこなかったね」
「ん?どこに?」
「その代わりに私の初登場回だったわけだけども」
「…え?」
「そこらへんのモブと違って、私には名前が与えられているからね~。きっと重要人物なんだろう」
「…そうだね(理解するの諦めた)」
「そういえば、雫とはどう知り合ったの?」
「雫?あんまりはっきり覚えてないかも。幼稚園の年中さんから一緒なのは覚えているけど、ファーストコンタクトは…」
「かわいそうに」
「え…」
「きっと悲しむよぉ雫」
「まって、思い出す」
 初めて雫と会ったとき…。会ったとき…。
「あ、そうだ。圭一が最初に話しかけて、二人が仲良くしてるの見て、私も話すようになったんだ」
「圭一?卓球部の?」
「そうだよ」
「三人は幼馴染なんだ」
「いや、圭一は私のお兄ちゃんだよ」
「…ほう。なるほど。そのお兄さんについて詳しく」
「詳しく…?」
「なんていうか…こう…彼女はいるのかどうか。女性関係はどんな感じなのか」
「知ってどうするの?」
「ん?特に何も」
「…モテる方だとは聞くよ。けど彼女はいない」
「気になる人がいる。みたいなは?」
「聞いたことないから、多分居ないんじゃないかな?」
「雫は、お兄さんのこと、どう思ってると思う?」
「…。」
 この人は一体。何が目的なの?
「ほら、雫とお兄さんって割と一緒にいることが多いじゃん。たまに二人っきりの時見かけるもん」
「へぇ」
「二人が仲いいと嫉妬しない?」
「…するわけない」
「本当に?」
「…。」
 二人が幸せなら、私はそれでいいんだ。この気持ちに嘘偽りはない。
「陽菜は、お兄さんのこと、どう思ってるの?」
「家族。それ以上でも以下でもないよ」
「好きじゃないの?」
「好きだよ」
「それは、恋愛として?」
「…。」


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