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かなり早めの昼食タイム。近所にはなかなか無いお店で、店名にもなっているペッパーチャーハンが有名お店だ。実店舗があるわけではなくショッピングモールなどのテナントとして入っている。
ここら辺では大き目のショッピングモールに来ている。何もない平日だというのに人が多い。現在時刻は午前11時手前、10時開店なのでなおさら不思議だ。
両親は先頭を歩き、私と圭一がその後ろを歩く。
「今日、なんか人多くない?」
「そうだな。今日って普通の平日だよな」
普通ならみんな学校やら仕事やらがあるはずなのに。みんな私たちと同じさぼり組なのだろうか。
そして、お目当てのペッパーディナーに到着。
「いらっしゃいませ」
元気のいい店員さんの声が響く。活気あっていいなぁなんて思う。
そして、圭一はステーキ、私はハンバーグ、両親はチャーハンを注文する。注文と会計を済ませて呼びブザーをもらい、席に座る。
「俺、水取ってくるわ」
「私も手伝うわ」
と、両親二人で水を汲みに行った。
「…陽菜。これはどういうことなんだ?」
圭一が尋ねてくる。理由も聞かされず学校を休まされたのだ。しかし、あまり理由を話したくない気持ちもあるし、私のために付き合わせているのも申し訳ない気持ちがある。
濁して話すか。
「ちょっと、メンタル不調で…学校行きたくなかった」
「そうか。理由は聞かない方がいいか?」
「その方がありがたいかな」
「おっけ、じゃあ聞かない」
圭一も優しかった。
水を四人分用意して帰ってきた両親。
「水、ありがとう」
「ありがとぅ」
「にしても、久々に来たよな。ここ」
「ええ、二人が小学校以来かしらね」
私と圭一もここに来たことがあるみたいだが、正直あんまり覚えていない。初めて来た。という新鮮な気持ちだった。
「え、そうなの?初めて来た感覚だった」
「僕も、全然覚えてないもんだな」
「まぁ、内装が結構変わったからな」
「そうね。入り口のカフェなんて、昔はファーストフード店だったのよ」
「へぇ」「ほぉん」
あんまり興味の無い返事をしてしまった。
「圭一は最近学校どうだ?なかなか、こうやって話す機会もないからなぁ」
「まぁ、ぼちぼちっすね」
「なんだその雑な返答は…」
「特に困ったこともないし、普通にやってるよ。あ、でも受験の恐怖がすごいかもね」
圭一は少し離れたスポーツ学校を受験する。学校側からスポーツ推薦を受けており、大事がない限りは受かるのだが…本人からしたら不安なのだろう。
「まぁ、圭一なら何とかなるだろ」
「そうだといいな~」
「陽菜はどうだ?学校の方は」
急に話を振られてびっくりする。
「え?まぁ、良くも悪くも変わらない日常って感じかな?」
きっと、うっすらと今朝の話を聞きたかったのだろうけど、私はごまかしてしまう。
「そうか。まぁ変わらんのが一番だな」
「そうだね」
変わらずにこのままっていうのもしんどいけど…。変わってしまうのは、確かに怖い。
圭一との関係が変わってしまうことが怖い。
ビー!っとお店から渡されている呼びブザーが鳴り響く。全員が席を立ってカウンターへ向かう。
「お待たせいたしました。鉄板が非常に熱くなっております」
「はい。ありがとう」
お父さんが店員さんにお礼を言って、各々注文した品物を受け取り席へ戻る。まだ生焼けのステーキやハンバーグがアツアツの鉄板で焼かれ、じゅわーと食欲をそそる音が聞こえる。
「おいしそう…!」
「やべぇ…もう美味い…!」
「量少なくね?」
「あなた、そんなこと言わないの」
席に戻り、早速食べ始める。
私と圭一は、まだ生焼けなので焼けてない部分を鉄板にあてて火を通す。チャーハンの方は、よく混ぜて食べるものらしく、鉄板の上で混ぜている。
「いただきます!」
そして一口…。
「おいしすぎる!」
黒コショウが効いたハンバーグがとてつもなくおいしかった。こんな高級料理を食べていいものなのか⁉なんて考える。
「陽菜のうまそうだな…」
圭一がいやしそうに見つめてくるので「仕方ないなぁ」と言いつつ、一口サイズにハンバーグを切る。
そして
「はい、あ~ん」
「え、はずい…」
「じゃあ、あげない」
「あ」
恥など一瞬で捨てて、大きく口を開けて待機している。まるで魚じゃん。なんて心の中で思った。
そして、口の中へハンバーグを投下する。
「ん~!うま!」
「ステーキ、一口よこしな」
「いいぞ」
そう言って、圭一はステーキを一口サイズに切り分ける。そして
「はい、口あけろ?」
「やり返してきた」
食べさせてやるよ。と言わんばかりにお肉を差し出してくる。
「あん」
パクリと一口、ステーキをもらう。
「美味すぎ…黒コショウが最強」
「まぁ、ペッパーディナーだしな」
そのあとは、軽い世間話をしながら各自食べ進めていく。なんとも幸せな時間だった。おいしい食べ物は世界を救うんだね。
「ごちそうさまでした」
完食。できるなら近所に同じ店舗が出店してほしい。また来たいけど、距離が遠すぎる。
各自、自分の食べたプレートを返却口へ返しに行き、店を後にした。
車に乗り込み、目的地の遊園地へ向かう。現在時刻は12時過ぎぐらい。
すると、雫からチャットが飛んでくる。
『体調、大丈夫?』
そっか、体調不良ってことで学校さぼってるんだった。普通に休みの日って気分になっていたが、そういえば私のためにみんなが休みを取ってくれたんだった。
『大丈夫だよ。心配かけてごめんね。明日には治る』
『よかったわ。あんまり無理しちゃダメよ』
『ありがとう』
『いま、お昼ご飯食べてるわ。とてつもなく暇だわ』
『今、一人なの?』
『ええ、私って友達少ないから』
『そんな、急に…w』
『冗談よ。みんな食堂だったり別の友達と食べてたりするから、行きづらいだけよ』
『あぁ、なるほど』
『ごめんね。暇すぎて連絡しちゃったわ。ゆっくり休んで』
『ありがとう。おやすみ』
と、寝ていることにしておこう。
ふと、隣を見ると圭一も誰かとチャットしている。タイミング的に雫かな?
「圭一、雫から?」
「ん?うん。なしてわかったと?」
「ちょうどさっき、私のところにも雫から連絡来たから」
「あ~ね」
「あ~ね、とか久しぶりに聞いた気がするわなんか」
車の窓から見える景色をうっすら眺める。なんだか見たことあるような気がする景色。確かこの道も小学生の時に車で通った気がする。
私は、車から流れてくる音楽を聴きながら、外の景色をぼーっと眺めるのが好きだった。理由はわからないけど、なぜか外を眺めていたくなる。
だから、当時の景色も何となくで覚えてる。
「あ、あの建物…」
「ん?どうした?」
私はその建物を指さす。白と青を基調とした教会のような建物。そのてっぺんには十字架がそびえ立っている。
「あぁ、なんか懐かしいなぁ。前もあったことないか?」
「うん。お兄ちゃん、教会だ!ってすごいはしゃいでたよね」
「男心くすぐられるんだよな。RPGゲームやってたから」
「なんか懐かしいね」
「…お兄ちゃんって言わなかった?」
「…気のせいだよ」
無意識だった。
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「…。」
お昼。いつもならけいくんと陽菜の三人で屋上に行くのだが、一人で行く気にはならなかった。なんならお昼ごはんを食べる気にすらならない。美波は別の友達と食べに行ってるし、あと会話できそうな友達はいないし。
「…二人がいないとこんなに暇なのね」
私たち三人、常にお昼は三人そろっていた。失って気づく大切さってやつね。
さすがに二人に連絡するのはだめだよね。さっき数回チャットしたけど体調不良の人にチャット送りつけるのはよろしくない。
今日の放課後にでもお見舞いに行こうかな?
いや、お見舞いってそもそも行っていいのか?風邪とか移るタイプの病気だったら気を使わせそうだし。何よりしんどい時は寝てたいよね。
「…。」
お見舞いの品だけ買って、きっとけいくんのお父さんかお母さんは家に居るはずだから、代わりに渡してもらおう。それが最適解な希ガス。
部活動、休んでお見舞い品を買いに行こうかな?
だめか。部長がいない今、私がいなくなると大変だ。私が今日けいくんの代わりしないといけない。
「そっか…」
ということは、古賀さんの練習見てあげないといけないのか。もう一人で練習できるほど上達しているのに、いまだにけいくんに付きまとって…。
「なんか、嫉妬してるみたい」
まぁ、してないといえば嘘になるかもしれない。嫌いとまではいかないが、すこし苦手意識を持ってしまっているのは確かなんだ。
古賀美咲…。あの子はけいくんのこと、どう思ってるんだろう。
「今日、聞いてみようかしら」
でもそれって、私がけいくんのこと気になってます。って言ってるようなものじゃない?
「…。」
頭の中がぐるぐるする。
ふと時計を見ると、そろそろ昼休憩が終わる時間になっていた。
「さすがに、何も食べずに部活に行くのはまずいかな?」
放課後になったら、なにか軽食でも食べよう。
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「ついたぞ」
気持ち狭い駐車場に車を止めて、お父さんが一言。近海公園。小学生の時に家族四人で遊びに来た公園。ちょっとした遊具があるだけの、いたってシンプルな遊園地だ。
「懐かしい」
「僕はあんまり覚えてないけどな」
公園を通り抜けると海が見える。海が近くにあるから近海公園。
「海。きれいだね」
「名所に比べたら全然だけど、これはこれでいいよな」
「海開きしたらさ、雫も誘って…」
言葉が途切れる。
「ん?誘って行く?」
「…うん」
すこし煮え切らない返事を返してしまう。今までだったら三人で楽しく遊びに行こうって言えてた。けど今は違う。純粋に楽しむことができない。
雫は圭一のことが好きだもん。私がいたら邪魔だよ。
でも、今は二人きり。
両親は遠くのベンチで座って何か話してる。実質二人きりなんだ。
そして、公園の中にあるブランコを見つける。
今日だけは…いいのかな。
「…。」
「…陽菜?どした?」
「ううん!何でもないよ!それよりお兄ちゃん!ブランコしよ!」
小さいころを思い出すかのように。無邪気に、お兄ちゃんを呼ぶ。
「え?」
「ほ~ら、行くよ!」
そう言って私はお兄ちゃんの手を握って走り出す。昔もこうやって手をつないで、私が先頭を走って。
「ちょ…陽菜⁉」
そして、ブランコの前に来る。
「はい!お兄ちゃん座って」
「お、おう」
困惑といった表情を浮かべるお兄ちゃんだが、お構いなしだ。
先にブランコに座らせて、その上から私も座る。
「え⁉ちょっと陽菜⁉」
「昔は二人で座れたけど、いまじゃちょっと厳しそうだね」
「そりゃ…二人とも小さかったから…」
「あ、これ二人が同じ方向に座ってるからダメなんだ!私が横向きで座って、お兄ちゃんの首元に抱き着けばいいんだ」
「…漫画でしか見たことない」
「私も始めてやったよ」
お姫様抱っこみたいな体制になる。これで落ちることは無いだろう。
「さぁお兄ちゃん!はやく!」
「お、おーけー…」
ゆっくりとブランコは揺れ始める。落ちないように慎重にって感じが伝わってくる。
そうだ。私はずっと、大好きなお兄ちゃんに甘えたかった。けど歳を重ねるごとに難しくなっていって、それがとてもさみしかった。
けど今、昔のようにお兄ちゃんと一緒にいる。そばにいる。
「お兄ちゃん…幸せだよ」
「…そうか」
今がずっと続けばいい。なんて思った。
このままずっと、お兄ちゃんに甘え続けたい。
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陽菜⁉マジどうしたんだマジでほんとマジで⁉
いつもと違う。というか完全に別人だ。何かにとり憑かれたのか?なんて思ってしまうほどの変貌っぷり。
こんなべったりとくっついてくる。お兄ちゃんと呼んでくる。まるで昔の陽菜…?ここに来たいといったのも、何か理由があるのか…?
そんなことを考えながら、ブランコで揺れている二人。
というか胸が当たって気が気じゃないんですけど…。でかくなったな色々と。
「ねぇ、ジャングルジム行こ!」
今度は、ジャングルジムに行きたいそうだ。二人の身長的に、そんな楽しくないだろう…。と思うが、行きたいなら付き合うべきか。
「おっけ」
ブランコから降りてジャングルジムへ向かう。
今朝見た陽菜の顔は、なんだか苦しそうだったし、涙を流した後のようなものがあった。日頃、何かのストレスを感じていて、今それを発散している。ということなのだろうか。
にしても、お兄ちゃんか。
いつからだっけな、陽菜が圭一と呼ぶようになったのは。やっぱり年ごろだし、お兄ちゃん呼びするのは恥ずかしい的な感じだろうな。なんて思っていた。
こっちの方がかわいいから、ずっとこんな感じに接してほしいな。なんて思う。
「お兄ちゃ~ん!」
陽菜に呼ばれて、そっちの方向を見る。ジャングルジムの高い位置に上っている陽菜の姿がそこにあった。
自分の目線より少し高い位置に足がある。
「いくよ~」
「え?」
陽菜は大きく手を広げて、僕の方向へ飛んでくる
「まじか…!」
急いで僕も手を広げて、受け止める態勢をとる。そして、勢いよく飛びついてきた陽菜を抱きしめる。
そのまま、足を両手で抱える…というより太ももを下から押さえるように持ち、陽菜は僕の肩に手をかけている。
真正面には、陽菜の大きな…。だめだ!陽菜の目を見ようと斜め上を見上げる。
「身長、高くなったね」
「陽菜もな」
僕が陽菜を抱っこしている。小学生のときもしていたような記憶があるな…こんなジャングルジムから飛び込んできたりはしなかったが。
「あ、次はあっち行きたい!」
「はいはい」
僕から飛び降りて、手を引かれながら別の遊具へ向かう。
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学校のベルが鳴り響く。次の授業は移動教室なので教科書や筆箱を抱えて教室を出る。
今日は珍しく陽菜が休んでいる。あの無遅刻無欠席の陽菜が休むなんて、大丈夫なのか心配になる。
時折、部活中に思いつめた表情をするときがあったから、きっとそれが原因なのだろう。そう考えている。
最近、陽菜の投稿している小説シリーズも交信が途絶えているし…。
実はこっそり読んでいた。最初は煽り散らかすためのネタとして読もうとしたら、思った以上に面白くてネタにできなくなった。
隠れた名作家を見つけた気分と同じ。
でも、更新がピタッと途絶えて、半ば失踪状態だ。早く続きが読みたい。
「遠野さん!」
なんて考えながら次の教室へ向かっていると、後ろから声をかけられる。振り向くと、面識のない女子生徒だった。
「どちら様ですか?」
「あ、いきなりすいません。私、古賀美咲って言います」
私はお兄ちゃんを連れまわして、ひとしきり遊んだ。途中で疲れてしまって、ものすごい眠気に襲われた。
そして両親に「今日はありがとう。ストレス発散というか、すこし心の荷が降りた気がする」と報告する。明日からはいつも通りの平野陽菜に戻るの。
両親は優しい笑顔でうなずく。お兄ちゃんも初めは困惑の表情だったが、途中から昔のお兄ちゃんを感じるような表情になっていた。
そろそろ日が傾いてくる時間帯。私たちは帰ることにした。
車に乗り込んだあたりまでの記憶はある。しかし、その後の記憶がない。
ものすごい深く眠っていたらしい。気づけば自宅についていた。
ひとつ覚えていることは、お兄ちゃんの膝を枕にして寝ていた。その時お兄ちゃんは、頭を撫でてくれていたこと。
とてもうれしかったし、安心して眠ることができた。
やっぱり、雫に取られたくない…。