君の恋心よ、実ってしまえ。   作:竹モチ

2 / 21
2話 2人の距離感

 

 

    ----------> ☆ <----------

 ジジジジ。と目覚ましの音。寝ぼけながら音を頼りに手を伸ばす。カチッと目覚ましのスイッチを押して耳障りな音を止める。

「んんん…」

 朝。起きないと。

 

 しかし体はなかなか言うことを聞かない。

(1…2の…3!)

 バサッ!とかぶっていた布団を思いっきりめくり、まだ寒い風が体を包み込む。

「さむぅ」

 そこでようやく目が覚める。ベッドから体を起こして洗面台の方へ

「おはよう。陽菜」

「父さんおはよ~」

「陽菜ちゃん。おはよ」

「母さんおはよ~」

 お父さんは新聞を読みながらコーヒーとバタートーストを食べている。お母さんは、4人分の弁当を作っている。両親とも共働きで昼間は誰もいない。仕事に行きながらも家事を怠ることはなく私たちみんなの弁当を朝早くから準備している。母親ってすごいなぁと常々思う。

 リビングを抜けると洗面台があり、そこで寝間着を脱いで下着姿になる。その状態で顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。

 私の髪はかなりのくせっ毛で、アフロ並みに髪が広がる。今日は晴れているのですぐに治るのだが、雨の日は地獄。全然直らない。

「よし」

 すべて終わり、自室へ戻るためリビングを抜ける。

「…おい陽菜。お前ももう高三なんだから、恥じらいとかないのか」

「家族だし」

「にしてもお前、おっぱいデカくなったな」

「え、きも」

「(´・ω・`)」

 しょぼくれたお父さんは無視して、自室へ戻る。クローゼットから制服を取り出して着替える。替えるというより着るだけなんだが。

 シャツを着て、スカートを履いて、ブレザーを着る。そして胸元にリボン。

「ほんと、このリボンめんどくさい」

 入学時に普通にくくるタイプとワンタッチ式という首元にパチッと挟むタイプの二種類が選べるのだが、私は調子に乗って「くくるタイプ!」と言ってしまったので毎回苦労している。

「ワンタッチにすればよかったよ全く」

 着替え終わって荷物をまとめて、圭一の部屋へ

「起きて~!朝だよ~!」

 ベッドの上で死んだように眠っている圭一を起こそうとする。しかし簡単には目が覚めない。いつものこと。

 体をゆすってみたり、布団を引っぺがしてみたり。まぁ起きない。

「あなたのかわいい妹が起こしに来ましたよ~。おにい…きついやめよう」

 今日は妹キャラ。まぁ実際妹だけど…キャラ作ってみたが普通にきつかった。ここはいったん諦めてリビング朝食を食べよう。

 圭一の部屋から出て、リビングへ戻る。

「はい陽菜ちゃん。牛乳でいい?」

「うん。ありがとう」

 私の目の前に焼き立てのトーストと小倉ジャム。そして牛乳が置かれている。私の朝食は小倉トーストに牛乳。これがないと一日が始まらない。

「おいしい」

「ありがとね」

 普通に市販のパンなのだが、焼き加減というか、すごくベストなのだ。

 テーブルには私とお母さんとお父さんの朝食が置かれている。圭一は起きてこないことを知っているので、用意すらされない。

「あ、お父さん。なんか三者面談が近々あるみたいだよ。日程がわかったらまた言うね」

「ん?おう。毎回話すこと変わらないから別に行く意味あると思えんのだが」

「今回は進路も兼ねてるから大事だよ」

「将来はどうしたいんだ?」

「ライトノベル作家になりたい」

「まぁ、やりたいことがはっきりしてるなら、心配ないさ。がんばれよ」

「ありがと。お父さんってすごい寛大?だよね。普通は安定した職に就けって周りの親は言ってる」

「子供が心配なのはわかるがな…子供は親の所有物ではないんだ。それでやりたいことを押さえつけてなんになる?って話だ」

「それはそう。私、お父さんの娘でよかった」

「えへへ…うれしいのぉ」

「笑い方きも」

「(´・ω・`)」

 朝食を食べ終えて、食器を片付ける。時刻は午後7時過ぎ。もうそろそろ家を出る時間だ。ということで圭一を起こすために再挑戦。

「起きろ~!遅刻するよ~」

「ん…ん~」

 うなりながらも意識はあるみたいだ。

「ほら早く着替えて!」

「陽菜~着替えさせて…」

 圭一の制服のズボンからベルトを抜き取り。鞭のように圭一の腹部へ振り下ろす

「あああああ!」

「起きた?♡」

「お前、鬼やな…」

「早く起きないのが悪い。早く着替えて、そろそろ家出る時間だよ」

「あい」

 私は圭一の部屋から出る。そして最後に忘れ物がないかもう一度チェックするために自室へ戻る。

「おっと、危ない。アイデア帳忘れるところだった」

 小説のアイデアやちょっとしたイラストを描いておくためのスケッチブックみたいなもの。これをもってリビングにおいてあるバッグへ入れる。

「圭一くん、起きた?」

「起きたよ。お母さんと違って朝弱いよね」

「いつもありがとね。陽菜ちゃん」

「まぁ私がやり始めたことだから」

 兄を起こす仕事は、だいぶ前からやっている。もう完全に日課だ。

 数分後、圭一がトボトボとリビングへ歩いてきた。

「おはよぉ…はぁ~」

「圭一、おはよう」

「父さんおはよう」

「おはよう。そこ、牛乳置いてるわよ」

「母さんおはよ、ありがと」

 圭一は牛乳を一気に飲み干して「ごちそうさま」とお礼をする。それだけなのによくお昼までもつな…なんて思う。10分休憩の時に何か食べてるのかな?

「圭一、そろそろ行こ」

「おん」

「はい、これ二人のお弁当」

「さんきゅー」

「いつもありがとう」

「じゃあ行ってくる」「行ってきます」

「行ってらっしゃい」「いってら」

 そして、玄関を抜ける。

 

    ----------> ○ <----------

 平野家の近くで二人が出てくるのを待っている。

「雫。おはよ」

「おはよう。陽菜。けいくんもおはよ」

「おはよおおおああああ」

 挨拶の途中であくびが出始める。

「相変わらず眠そうね」

「いつもの」

 少し呆れた感じに陽菜が答える。

 よし、陽菜の目の前でアプローチしてる感を。そう思い私はけいくんの背中に手をまわして隣に立つ。とても距離が近く見えるはずだ。

「ほら、けいくん。早くいくわよ」

「…ん?ん~」

 ほんと眠そうね。陽菜の反応としては…。とくに表情も変わらない。

「ほら、ゆっくり歩いてちゃ遅刻するよ。私先行っちゃうからね~」

 と私たちより一歩前を歩く。物理的に近くなっただけじゃ効果ないのかしら?もっとほかの作を考えないとだわ。

 と、そのままの体制で歩いていると、さすがに歩くのが難しくなったので話すことに。

「え、寒い」

 人の温かさって偉大なんだなって思った。けいくんを離した瞬間に一気に寒さが押し寄せてきた。

「やっぱり、ひっついとこ」

 再び、先ほどと同じ構図になる。なんならさっきより強く抱き寄せる。

「雫?」

「なに?けいくん」

「え、いや…急にどうしたのかな?って」

「寒いだけよ」

「今まで、そんなこと一度もなかったじゃん」

「まぁ、そうね。気分よ気分」

 アプローチをするふりってことは、こういうことなんだ…すごく気恥ずかしく感じてくる。けいくんにとっては私がいきなり抱き着いてきただけだもの。そりゃ困惑する。

 

    ----------> ☆ <----------

 なに朝っぱらからいちゃついてんの!?

 急に雫が圭一の腰に手をまわしてくっつくものだから、びっくりした。

 なんだか、心の奥がズキズキ痛む気がして、とっさに二人より一歩前を歩くようにしている。無言で。

「雫?」

「なに?けいくん」

「え、いや…急にどうしたのかな?って」

「寒いだけよ」

「今まで、そんなこと一度もなかったじゃん」

「まぁ、そうね。気分よ気分」

 雫、本気出してきたね。昨日言ってたこと本当だったんだ。まぁこんな嘘つく理由もないしね。

 私はこの後どうすればいいの!?

 

 結局、あの後一言もしゃべらずに学校へ到着。なんかもう疲れた気がする。今日体育の授業がないことが唯一の救い。

「じゃあみんな、お昼ね」

「ええ」

「おん」

 そう言って昇降口で解散。

 いつにも増してモヤモヤしながら教室へ向かう。少しづつ春休み気分が抜けつつあるクラスメイトの談笑の間をかいくぐって、自分の席へ座る。

「はぁ…」

 無意識にため息が出る。

 

 

 

    ----------> ◇ <----------

「今朝の雫がわからんすぎ」

 僕は、授業と授業の間にある10分休憩で購買のパンを買いに来ている。買ったパンを頬張りながら教室へ帰る道中のこと。

 今朝、寝ぼけていて途中からしか覚えていないが。雫があんな近くにいた。しかも抱き寄せるような構図で、そして先頭を無言で歩く陽菜。まったくもってわからん。

 喧嘩した?いやそんな雰囲気ではなかったが。う~ん…とにかくわからん過ぎて怖い。

 自分の胸板を数回撫でる。

「あいつ、着やせするタイプかと思ってたけど、本当に無いんだな」

「何が無いの?けいくん」

「ああああああ!び、びっくりする。いきなり背後に立つなって」

「一応声かけてたのよ。一回だけ」

「何回もかけて?考え事してると聞こえないから」

「それより、さっきの続きなんだけど」

「あ!そろそろ授業が始まるーいそがないとーじゃ!」

「あ、ちょっと!」

 雫の声を無視して全速力で走る。まぁ雫の足の速さには勝てないんですが…。

「なんだ。追ってこないんじゃん」

 後ろを振り向いても、雫の姿はなかった。そして、ちょうど授業が始まるチャイムが響き渡る。

「あ、やべ…」

 急いで教室に入り自分の席へ着く。パンはまだ半分ほど残っている。

 ばれないようにこっそり食べよ。

 

 

 

 

    ----------> ○ <----------

 キーンコーンカーンコーンと午前の授業が終了したことを知らせるチャイムが鳴り響く。さてお昼ご飯だ。ということで私は学校近くにあるコンビニへ向かうために財布と携帯をもって教室を出る。学校のそばにコンビニがあるのは普通に助かる。

「今日は、なににしようかしらね~」

 昨日はカツサンドだったので、今日は卵サラダのサンドイッチにしようかな?いや、レタスとトマトのフレッシュサンドもいいな。いや、ここはあえてイチゴと生クリームのデザート系サンドでもいいかもしれない。

 ものの数分でコンビニに到着。サンドウィッチコーナーに行くと、カツサンドしか残っていなかった。

「…じゃあ今日もカツサンドだわ」

 それを一つ手に取って、紙パックのイチゴミルクと一緒にレジへ。いつも通り会計を済ませて、学校へ戻る。

 そして、自分の教室には帰らずそのまま屋上へ。

 ギシギシとさび付いたスライドドアを開けて屋上に出るとけいくんと陽菜が待っていた。

「お待たせ」

「おつかれ~」

「おつかれさま」

 私たちは基本的にこの屋上に集まってお昼ご飯を食べる。

「平野家の今日のお弁当は?」

「おぉ!オムライス!」

 陽菜がとてもうれしそうに声を出す。陽菜は茶道部にいる割には結構子供舌で、子供が好きそうなものをあげると幼女のように喜ぶ。見てて癒されるわ。

「雫は?」

「またカツサンドよ。コンビニ行ったら別のものがなかったわ」

「まぁでもおいしいからいいじゃん」

「それはそうね」

「…僕さ、毎回思うんだけど、イチゴミルク合うか?」

「…?合う合わないじゃなくて、必要な栄養素なのよ」

「へぇ…」

 まぁ私が周りをドン引きさせるぐらいの甘党なのは自覚してるわ。あんなに素晴らしい調味料はほかにないもの。

「雫って、砂糖を直で食べてそう」

「食べるわよ?さすがに口の中がパサつくので、お湯割りにして」

「砂糖のお湯割りとか聞いたことねぇよ…。割りというより溶かしてんじゃん」

「あの白い粉、やべぇわよ。飛ぶわよ」

「危ない発言をするな」

 

 まだ少し肌寒い風がほほを撫でる。でも、屋上で食べるお昼はとても気分がいい。とても清々しい気分にしてくれる。

「直近で何のイベントがあるっけ?」

「中間試験と期末試験」

「違う。そうじゃない」

「けいくんは、もっと勉強しなさい?私と陽菜に頼りっぱなしはだめよ?」

「だって、お前らちょうど文系と理系で得意科目別れてるんだもん。二人に聞けばたいていの答えは返ってくる」

「雫、今回、圭一に勉強教えないでおく?」「え?」

「それもそうね。けいくんの実亮見てみたいし」「は?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。二人がいないと学校生活終わるなり」

「やっぱり、自分でテストは頑張るべきね」

「ね~」「ね~」

「お願いします。何でも言うこと聞きますから」

「今、なんでもって」

「陽菜…ウキウキしすぎよ…」

 いつも通りのお昼休憩。なんだかんだでそろそろ戻る時間になってきた。

「ごちそうさま」「ごち」「ごちそうさまです」

「雫、今日の部活は通常通りあるんだよな」

「ええ、特に顧問から何も言われてないから、あるんじゃないかしら?」

「茶道部も顔出してこようかな」

「部費泥棒部」

 陽菜のこぶしが、けいくんのみぞうちにクリティカルヒット。

「…あの…食べた…ばっかりなんですけど」

「しらね」

「雫、この人たまに怖い」

「そういえば今朝も叫んでたわね。何があったの?」

「寝てたら鞭でたたき起こされた」

「鞭なんか持ってるの?陽菜」

「今そこにあるベルトでペチンと…なかなか起きないのが悪い」

「もっと普通にだなぁ…」

「普通に起こして起きなかったからでしょ?」

「まぁ、はい…」

「あはは」

 二人は本当に仲がいい。物心ついたときからずっと一つ屋根の下にいたからこそだろうけど、かえってその信頼関係が恋愛に発展しない唯一の原因ってところかしらね。

 けいくん的には陽菜のこと、どう思ってるのかしら。タイミングがあれば聞いてみたいものね。

 

 ギシギシとさび付いたスライドドアを開けて、屋上を後にする。

「じゃあけいくん。また部活でね。陽菜も」

「うん、部活でな」

「ばいば~い」

 こうして、各々の教室へと足を運んだ。

 

 





【今日のひなたん】

 休日。
 自分の部屋で小説投稿サイトを眺めている。まぁ今日も評価も感想も届いてないけど。
「ふ~。何か一つでも評価が付けばな~」
 なんて思いながら、サイトを眺めていると、メール通知が来る。
「お!?感想が1件寄せられています!!?」
 早速覗いてみよう。

 感想が付いたのは、最近書いたBL小説で流行のアニメの二次創作もの。原作自体は王道RPGを舞台にした冒険物語、道中でいろんな町に訪れ問題を解決しながら魔王討伐を目標に旅をするというもの。
 その主人公一行のなかに、メビナスというひ弱でおどおどしているショタがいるのだが、そのショタが主人公ルクスを誘惑する。いわゆる誘い受けシチュを書いている。
「なになに~?このアニメが好きで読ませてもらいました。原作愛が感じられず…とても不愉快な気持ちになりました…は?」
 そこには、メビナスは受けじゃなく攻めだろ。それにこの二人のカップリングはありえない。など、批判のコメントがなんと1200文字。
 しかも、そこには感想を付けた人の推しカプや思想を大いに語っており「メビナスは推しなので、あなたも推しなら同担拒否させていただきます」なんて書いてある。

「ふぅ~」
 そっと、ブロック。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。