君の恋心よ、実ってしまえ。   作:竹モチ

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6話 女子会(2人)

 

 

 

    ----------> ◇ <----------

「ということで、ゴールデンウイークは自由参加となりました」

 部活帰り。夕暮れを背景に帰路を辿る。陽菜も部活動に顔を出していたらしく、一緒に帰ることになった。最近ずっと部活に出ているな。珍しい。

「じゃあ、圭一ずっと家に居るのか…」

「嫌そうな顔するなよ…。ちなみにほとんど家に居ないと思うぞ」

「え?」「え?」

 雫もびっくりしたような表情でこちらを見てくる。

「雫は知ってると思うけど古賀さん。最近入ったばっかりの子がいてな。その子の練習に付き合うことになりそうだ。だから、みんなで遊ぶ日以外は部活動に出るつもりだぜ」

「なんだ、ほっとした」

「…。」

「ほっとしたとはなんだ…」

 そんなに、家に居てほしくないのか陽菜は。

「けいくん。遊びに行かない日はずっと部活動?」

「そのつもりだな」

「じゃあ、毎日遊びに行きましょ?」

「え?いや、毎日はきついだろう。せめて二日とか?古賀さんの練習も見てあげないとだし」

「あの子は一人でも練習できるわよ」

「…雫?」

 陽菜が心配そうに雫の顔を見つめる。やけに不機嫌な雫に僕も少し動揺している。

「かなり上達してきてるんだ。ここで休んでしまったらもったいないだろ?」

「…そうね」

「...。」

「...?」

「私、先帰るわ」

「え、ちょっと」

 雫を引き留めようとするが、その言葉を無視してそそくさと帰ってしまった。

「雫、どうしたの?圭一なんか悪いことした?」

「…いや、心当たりないが」

「圭一、無神経だから無自覚に傷つけてる可能性あるもんね」

「君もそろそろ自覚したほうがいいぞ」

「わ・ざ・と♡」

「尚たち悪い」

 そのまま雫の居ない帰路を二人で歩いて帰る。

 

 

    △▼△▼

 

 

 今日の夜。夕食を済ませ、風呂も入り、歯を磨いて、寝る準備が終わった後、眠るまでの暇な時間。

「ん~」

 天井を眺めながら唸りを上げる。雫。どうしたんだろうか。

「…。」

 雫のチャット欄を開く。

『今日、どうしたんだ?なにか気に障ること言ったなら教えてほしい』

 チャットを送る。

 既読がついて、数分後に帰ってくる。

『せっかくのゴールデンウイークやけんが、たくさん遊べるとおもっとったとに、古賀はんのこと、構いすぎちゃいます?』

 方言…なのか?

『まぁ、それは…部長でもあるし、あの子の指導役を買って出たから、責任と思って』

『お人が良すぎます~。せっかくの連休やさかい、うちと陽菜のこと最優先にしんしゃいな』

『ん~。僕にとって古賀さんよりも二人の方が大切なのは確かだよ。でも今回だけは、古賀さんを優先させてほしい。あの子はまだ周りになじめず心細い思いをしてるから、部長である僕が支えてあげないと』

『それほんまに、部長ってのが理由なんかいな?』

『どういうこと?』

『もしや、古賀さんのこと好いとらんがか?』

 え?いやいや、そんなことないよ。何をどう見れば僕が古賀さんを好きだと思うんだ?

 もしかして嫉妬されてる?これ。あの雫が?僕に?

 いやいやいや…。うぬぼれるでない平野圭一よ。あの雫様ですよ?僕にそんな…。

 …え、本当に?

 動揺というか、なんだろう気恥ずかしくなってきた。

『それは断じて違うな。古賀さんはどこまで行ってもかわいい後輩って感じで、好きになることはないな』

『だって、けいくんロリコン説が流れてるから、あの子、結構幼い見た目してるじゃん』

 …は?

『ちょっとまてロリコン説ってなに?』

『出所は知らないけど、女子部員の中では結構浸透してる』

『知らないんだけどそれ』

『ロリコンだから古賀さんのこと優先的に面倒見てる。みたいな噂が立ってるわよ。面白いので放置してる』

『放置すんな止めろ』

『まぁ、好いとらんなら許したるわ。すまんのぉ勝手に不機嫌になって先帰ってもうて』

『…わかってくれたならいいや。陽菜と相談して遊びに行く日、決めといてくれ』

『おけまるすいさん』

『じゃあ、おやすみ』

『おやすやぁ』

 スマホを閉じる。

「…。」

「…。」

 

 ロリコン説ってなに?

 

 

 

    ----------> ☆ <----------

 今日からゴールデンウイークが始まった。圭一は部活動に行って家に居ない。両親は当たり前のように仕事。この広いリビングで一人テレビを見ていた。

「案外さみしい」

 学校の友達に連絡しようか迷ったが、やっぱりみんな部活だったりバイトだったり、茶道部員もみんなアルバイトしてるし、きっと忙しいだろうな。

「私もアルバイトすればよかったかな」

 刺激になって小説のネタになるんじゃないかな?なんて思う。

「でも、働きたくないな」

 なんて思いながらぼーっとテレビを眺めていると、ピンポーンとドアベルが鳴る。宅配かな?そう思いインターホン越しに外の様子を見てみる。そこには見知った顔が立っていた。

「雫?どうしたの?」

「あ、陽菜。今暇かしら。家上がってもいい?」

「あ、あ、ちょっと待っててね!」

 ドタバタと自分の部屋へ急ぐ

 バタン!と勢いよく扉を開けると、部屋のいたるところにBL本が散らばっている。片付けないとなぁとは思いつつ...結局ダラダラとそのままにしていたツケが回ってきたみたいだ。

「来るなら、事前に連絡ちょうだいよぉ」

 本をクローゼットの中へ押し込み、とりあえず隠す。

「急げ…!よし!」

 ドタバタと玄関の方へ走り、そして玄関扉を開ける。

「はぁはぁ…お待たせ」

「なんでそんな息切れしてるの?」

「え?…ちょっと、まぁ、部屋の片づけしてたから」

「別に気にしないわよ。いきなり来たの私だし」

「いやいや!そうもいかないよ」

 BL本をそこらへんに読み散らかしてるのは、さすがにやばすぎる。

「ま、まぁ、とりあえずどうぞ」

「お邪魔しま~す」

 玄関を通して、自室へ案内する。案内と言ってもお互い家の間取りは把握しているので、案内する必要はないのだが。

 かちゃりと自室の部屋を開けて中に入る。全部片づけたよね?確認はしたが不安になる。

「やっぱり陽菜の部屋って綺麗ね。けいくんと違って」

「まぁね」

 たしかに圭一の部屋は物が溢れて汚い。本はそこらへんに放置し、机に上には学校でもらったプリントが山積みにされている。お菓子を食べたあとの袋なんかも、そこらへんに散らばってたりする。

「突然来てごめんなさいね」

「それは良いけど、どうしたの?部活行かなかったんだ」

「行ったらイライラするもの」

「え?」

「陽菜から見て、けいくんの私に対する好感度ってどうかしら?」

「どう…て聞かれても」

 そんなの本人しかわからないよ。

「陽菜から見てでいいわよ」

「…嫌いではないよ?もちろん。昨日先帰っちゃったときも心配してた。だから、かなり高い方じゃないかな?」

 恋愛的な好きではないにしろ、雫に対する好感度はかなり高い。そりゃ幼馴染でずっと一緒に過ごしてきた。嫌いになれという方が難しい話だ。

「そう。でも最近気がかりなことがあるのよね」

「気がかり?」

「昨日、帰っているときにも少し話に上がった古賀美咲って子。今年から入部してきて、けいくんとマンツーマンで指導を受けてる」

「ほうほう」

「最近、ずっとその子につきっきりで指導して、この前なんか部活中なのに二人スマホ持ち寄ってニコニコと…」

「怒ってる?雫」

「…怒ってないわよ」

 声のトーンが下がり続ける。きっとかなりご立腹なのではないか?それに、私もその古賀って子のことが気になり始めた。

「古賀さんって、かなり見た目幼くて、けいくん好みかもしれない」

「あいつ、幼い子好きなの?」

「いや、実際は知らないけれど女子部員の中でロリコン説が流れてて」

「…。」

 あ~…。それ私が口走っちゃったやつだ。適当なこと言っただけなんだけどな。

「古賀さんばっかり優先するのは、部長がロリコンだからって噂になってるの。だから…なんだか嫉妬しちゃって」

「そうだネー…」

 なんか、あらぬ方向に噂が広まってて、ちょっとどうしようかなって感じ。明日、言っちゃった友達に弁明しとこう。もう意味ないかもだけど。

「じゃあ、今その古賀さんと二人なの?」

「ええ、そんな中に私が行ったら、きっと邪魔だろうし、嫉妬で狂いそう」

 雫って嫉妬するタイプなんだ。

 目の前にいる雫は、私の目には乙女のように映っていた。圭一のことが好きで、周りの女の子に嫉妬しちゃう。

 圭一も、こんなモデルのような子に言い寄られたら、断ることなんてできないんだろうな。

 やっぱり、私の出る幕はないのかな…?

 

「陽菜はさ、けいくんのこと、どう思ってるの?」

「…え⁉」

 いきなり質問を投げかけられてびっくりする。

「陽菜の家に来たのは、けいくんの愚痴を喋りたかったのと、単純に女子会として恋バナしたかったからよ」

「女子会、2人…」

「いいじゃない」

 圭一のこと、どう思っているか。

「…私の兄。それ以上でも以下でもない…かな」

「…ほんとに?」

「うん」

「じゃあ、どうしてそんなに苦しそうに答えるの?」

 …苦しそうに見えたのか。実際に胸の奥がズキズキと痛んで苦しい。

「気のせいだよ」

「そう?」

「雫はさ、圭一のどこに惚れたの?そういえば聞いたことなかった」

「…そうね~。いろいろあるけれど、一番は誠実で優しいところ。かしら」

 すこしおっとりした雫の表情は、本当に恋する乙女の顔だった。

『…ええ、とっても』

 部活帰りの自販機のこと、あの時の表情がフラッシュバックする。今と全く同じ、恋をする目。

「…ほかには?」

「ん~あとは、波長が合うっていうか、卓球のダブルスしてても、けいくんほど動きやすい人は今までいなかったわ」

 幸せそうに雫は語る。その顔を見ることがとてもつらい。苦しい。でも雫の話は聞きたい。

 この話を聞いていれば、あきらめがつきそうな気がしたから。

「他に」

「…どうしたの?陽菜」

「他にはないの?もっと聞かせて」

「…。」

「…。」

 そのあとも、雫の話を聞き続けた。

 

 

    △▼△▼

 

 

「女子会なのに、飲み物がないね。お茶用意するよ」

 雫が来てから、体感で1時間が経過したころ。飲み物が用意されていないなと気が付き、立ち上がろうとする。

「あ、いいわよ?」

「お客さんだから、それに私が喉乾いたのもあるし」

 そう言って、部屋から出る。

 2, 3歩、歩いて廊下の壁に寄りかかる。なんだか疲れちゃった。

「…はぁ」

 無意識にため息が出る。きっと今の私はものすごく暗い顔をしているんだろうな。雫のキラキラした笑顔がとてもまぶしくて。

「…お茶、用意しないと」

 力なくもたれかかった壁から体を引き離して、キッチンの方へ向かう。二人分のお茶とちょっとしたお菓子を用意して。

「…友達がいる部屋へ向かう足取りが重いなんて、なんかすごい失礼じゃない?いままでこんな経験したことないや」

 のそのそと部屋へ向かう。

 

「お待たせ、スイーツはなかったのでおかきで」

「わざわざ、ありがとう」

 テーブルにお茶とお菓子を乗せたトレーを置いて、再び向かい合う。雫は一口お茶を飲み「おいしい」とつぶやく。

「陽菜はさ、好きな人とかいないの?」

「ん~。今のところ居ないかな?」

「同じクラスとかに、気になることか」

「全く」

「あらそう…」

 正直、圭一以外の男性を魅力的に感じたことがなく。俳優やアイドルも特に興味がない。アニメのイケメンには興味があるけれど。

「陽菜って小説を書く以外の趣味とかないの?同じ趣味を持った人で恋人作る」

「本を読むこと、とか?」

「まぁ、ライトノベル作家志望だから、それもそうね。どんな本読んでるの?」

「恋愛ものだよ」

 男性同士の。

 同じ話題で盛り上がれる男子ってなかなかに希少なのではないか?

「へぇ~!ちょっとどんなものか見せてよ」

「絶対むり」

 この趣味は家族にすら内緒にしているんだ。雫とてバラすわけにはいかない。

「えぇ…ちょっとぐらい、いいじゃないのよ」

「神聖な領域なのだ」

「な、なるほど…?」

「雫も卓球以外の趣味とか無いの?」

「ん~、映画鑑賞?映画館にはいかないけどね」

「自分の趣味を映画鑑賞と音楽鑑賞っていう人は、特に趣味がないけどあえて話題に出すとするならってひねり出した人の答えだと思ってる」

「偏見の塊ね。そんなことないわよ」

「長年の感がそう言ってる」

 私もお茶を一口。そしてトレーの上に乗ったおかきを一口食べる。パリパリと小気味のいい音が響く。私が食べたのを皮切りに雫も食べ始めて、いよいよちゃんと女子会してる感が出てくる。用意してるものはじじ臭いけど。

「そういえば私、陽菜が書いてる小説読んだことないかも。もともと活字が苦手な方だけど、陽菜の小説は読んでみたいわ」

「あぁ、…あー」

 普通の作品も登校してるけど、BLもちょこちょこ上げてるんだよね。正直知り合いに読まれるのは恥ずか死する。

「…。」

「…。」

「え?読ませてくれない感じかしら」

「どうしようね?」

「知らないわよ」

 BL作品だけ非公開にするか?そんな上げてないし、読んでる人も少ないだろうから

「わかった、ちょっと待ってて」

 パソコンの方へ向かい、小説投稿サイトへログイン。マイページから投稿したBL作品を非公開設定にする。

「雫、スマホ貸して」

「はい」

 雫のスマホを借りてブラウザを開く。

「雫…ロックかけてないんだ」

「かける必要なくない?」

「見られて困るものとか無いの?」

「とくには」

「すごいね…」

 ブラウザから小説投稿サイトへ飛び、ユーザー検索で「ヒ~ナ」と検索する。すると私のプロフィールと投稿小説一覧が見れる。

「はい。ここのサイトに全部まとめているから」

「ありがと。ちょこちょこ読んでいくわ」

 今思った。身内から評価してもらえばいいじゃん。こんな不特定多数が閲覧する場所に無作為にポンポン投げるより、身近な人に読んでもらう方が感想とか聞きやすい。

「ぜひ、読んだらさ感想ちょうだい。そのサイトにあるコメント機能でもいいし、直接言ってくれてもいいよ」

「わかったわ」

 

 そのあとは、お茶を飲みながら学校での愚痴や部活動での出来事など、普通の女子高生らしい会話をして、日が落ち始めた時間で解散することになった。

 

 





【本日のひなたん】

 ジジジジっと耳障りな目覚ましの音が鳴り響く。目覚まし時計を半ば乱暴に叩き、不快な音を止める。
 平日ならここで起きて、朝食を食べたり歯を磨いたり、朝の準備をするのだが、今日は休日!ゴロゴロしても許される日。
 目覚まし時計から解放された後は二度寝を謳歌する。お母さんも休日は起きてこないことを知っているので朝食は用意していないだろう。
 布団を深々とかぶり、二度寝しようとしたその瞬間。
「陽菜!おはよ!お兄ちゃんだぞ!」
 こいつはなぜか休日だと目覚めがいい。普段からこんな風に朝起きてほしいものだが、テンションが高いのは普通にうざい。私は無視を貫く。
「あれれ~?寝てるんですか~?優しいお兄ちゃんが起こしてあげますよ~」
「うるさい。消えろ」
「oh...辛辣ぅ」
 というか、女子の部屋にノックもなしに入ってくるなよ。私がもし着替えてたりしたらどうするつもりなんだ。
「さてと、僕は部活に行ってこようかな~っと」
 ガチャっと扉を開けて外に出ていく音が聞こえる。ようやくどっか行ってくれた。
 さてと、これで気持ちよく二度寝を…
 ガチャ!
「パン食べる⁉」
「ああああ!黙れ!構ってくんな!くそ兄貴が!二度寝させろ!」
 バサッと布団をめくって勢いよく上半身を起こす。そして怒鳴る。
 
 違う意味で目覚めの悪い朝となりました。
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