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映画を見た後、私たちはレストランやフードコートが集まる施設へ歩いている。
「…。」
「いやぁ、映画面白かったな」
「そうね」
「…。」
「だって雫、大号泣してたもんな」
「だって、あれは誰でも泣くわよ!」
「…。」
雫と圭一が先頭2列で歩き、その一歩後ろを私が歩いている。実際、私に映画の話題を振られても答えられる気がしないので、この構図はある意味ありがたい。しかし疎外感を感じるよね…やっぱり。
「雫、本編中もたまに泣いてなかった?」
「あ~あそこね。ちょっとここでは内容言わない方がいいかしら?」
「…。」
「確かにまだ映画見てない人もいそうだしな」
「そうね」
「…。」
地図では映画館から食事場まで、そんなに遠くないはずなのに、やけに遠く感じた。
「ここか~」
食事場に到着。通路の両側にずらっとレストランが並んでいる。和食、洋食、中華、インド料理などなど、かなりの種類がそろっている印象だ。
そして、通路の先にはフードコートがあり、テナントがずらっと並んでいる。有名なチェーン店の名前がたくさんある。
「陽菜と雫は何が食べたい?」
「和食」
「甘いもの」
「バラバラやな…陽菜はいいとして雫はなんだ…甘いものって」
「言葉の通りよ?」
「昼食だぞ?」
「ええ」
「この甘党が…」
雫は甘いものが食べたいらしい。
私も和食といったものの、とくにこれと言って食べたいものがあるわけでもない。
「圭一は?食べたいもの」
「ん~これと言ってないんだよなぁ。おいしいければ何でもいいみたいな」
「甘くておいしいものがいいわ」
「私も和食って言ったけど、特にこれと言って決まってるわけじゃないんよね」
「フードコートで各々食べたいものを注文するのが最適解な希ガス」
「あぁ、そうだね」
ということで、通路を抜けてフードコートエリアへ向かう。ステーキや牛丼、たこ焼きにお好み焼きなど、様々なファンクフードが立ち並ぶ。
「よし、じゃあテーブルはここでいいな!ウォーターサーバーも近いし、各自で好きなものを注文して、ここへ集合するように」
「あい」「わかったわ」
と、ここでみんなと解散する。
「ん~」
まぁ、ポップコーン食べてるからそんなにいらないのもあって、ちょっとした軽食みたいなものを探すことにした。ハンバーガーとかちょうどよさそう。いや、クレープもあるのか。悩むね
「…。」
たこ焼きもいいなぁ、けど少し重いかな?
やっぱり、ハンバーガーがちょうどいいかもしれない。ということでバーガーショップへ向かった。
「いらっしゃいませ」
「えぇっと、チーズバーガーのセットお願いします」
「ドリンクはいかがしましょうか?」
「メロンソーダで」
「サイドはポテトでよろしいですか?」
「はい」
「かしこまりました。以上で730円になります」
財布から1030円を取り出して、店員に渡す。
「1030円頂戴いたします。お返し300円ですね。お隣の受け取りカウンターにてお待ちください。ありがとうございました」
ハンバーガーなんて久しぶりな気がするな。こういう機会じゃないと外出しないってのもあるけど、外食ってどれも高い感覚があって、家で食べた方がいいじゃん。って考えちゃう。
でもまぁ、ハンバーガーを家で作ろうとすると割と大変だし、この店ならではの味ってものがあるし、たまには外食もいいのかな?なんて思う。
しかし、アルバイトをせずに親からのお小遣いだけで生活していると、ちょっとの出費が痛手になる。今日使いすぎたなぁって一人反省会がこの後待ってるね…。
「お待たせしました。チーズバーガーセットのお客様」
「は~い」
注文の品が出来上がり、トレーに乗った状態で手渡しされる。
「ありがとうございました」
「ありがとうございます」
一言、お礼を言ってから席の方へ戻ろうとすると。
「…。」
もうすでに雫と圭一は席に戻っており、食べ始めている。私そんなに時間かかったかな?二人楽しく先に食べ始めている光景を見て、すこしモヤっと…不快な気持ちになった気がする。こんなことで怒っちゃうなんて、短気になったな…私。
「二人とも、お待たせ」
「あ、ごめんよ先に食べてた」
「ううん、大丈夫」
圭一はチーズが乗った牛丼にサラダとみそ汁。雫はイチゴと生クリームがあふれそうなほど詰められたクレープ。
「雫は、ごはんというよりデザートだね」
「これがいっちゃんうまい」
「やめて、喋り方変わると誰がしゃべってるかわからなくなるから」
「そんなわけないでしょ」
私も席について、チーズバーガーを食べ始める。この…カロリー摂取してるなぁって感覚が高揚感を生む。そして数時間後に後悔するんだ…。
しかし、こういう店舗のポテトってなんでこんなにおいしいのだろうか。家で同じようにフライドポテトを作っても、ここまでの味にはならない。全く不思議だ。
「陽菜にしては珍しく、ハンバーガーなんだな」
「確かに珍しいわ」
「そう?」
「なんか…こういうアメリカンな料理を好まないイメージが」
「偏見過ぎる」
「私もそんなイメージよ」
「なんでよ」
「茶道部だし」「茶道部だから」
「茶道部をなんだと思ってんの…?」
「お抹茶とか和菓子とか好きだからさ、和食以外好まない的な雰囲気しない?」
「かれこれ、十数年一緒に居て食の好みわからないってどういうこと?」
「じゃあわたくし、雫の好きなものを答えなさい?」
「砂糖」「糖分」
「原材料と成分なのね…間違ってはないわ」
「じゃあ、僕の好みは?」
「子供が好きなものは何でも好きじゃない?子供だし」
「けいくんは、子供舌だからね」
「子供で満場一致なんだ…僕」
「間違ってはないでしょ?」
「逆にハンバーグとかオムライス嫌いな人類いる?」
「なかなか居ないわよね」
「まぁ、居ない気がするね」
「当たり障りないこと言って、当たってるって錯覚するやつだ!」
「プラシーボ?」
「そう!それ!」
そんなこんなでワイワイしながらお昼ごはんを食べる。
ご飯も食べ終わり、テーブルでのんびりしているところ。次にみんなが行きたいところを同時に言って、被ればそこに行こうという話になった。揃うはずないだろう。なんて考えていたのだが…。
「せーの」
「ボーリング」「テニス」「ボーリング」
なんと雫と圭一が一致した。
「おぉ!まさかそろうと思わなかったぜ」
「そうね!私たち気が合う?」
「…。」
「気が合わなかったら、卓球ダブルスなんて組めないだろ?僕たちは二人で一つなんだぜ」
「え、きも…」「それはきもいわ」
「えなんで…」
ということでボーリング会場へ向かうことになった。
△▼△▼
受付でエントリーを済ませて、レーンへ向かう。まずはボール選びなのだが、ボーリングなんて初めて来たので何がいいのかわからない。
「圭一はボーリング経験者?」
「おん。なんどか来たことあるぞ」
「初めて来たから分かんない」
「とりあえず初心者は軽いボールの方がいいだろう。あと女性用みたいなボールもあるし…ほら、あっちの方にあるピンク色とか空色のボールが女性用になるぞ」
「へぇ~」
「あの中から持ってみて、フィーリングで決めな」
「初心者にフィーリングって…」
「考えるな、感じろ、だ」
「あ、はい」
感じろ。といわれてもだな…。
とにかく言われた女性用のボールが置かれているエリアに来た。何個か持ってみるが…やっぱりわからない。とりあえずかわいいからピンク色でいいかな。
「そういえば、雫は?」
そう、あたりを見渡すと、男性用のボールが置かれているコーナーに居た。雫も経験者なのか。私だけ?初心者なの。
雫はいかにも重そうな、大き目のボールを持っている。しかもバッグから手袋のようなものを取り出してきた。
「え、プロなの?」
なんか、様になっている雫。
「さて、一投目は陽菜だな!がんばれ~」
「がんばって~」
「よ…よしゃ~!」
気合十分。いざ投げる!テレビで見た光景を頼りに
「ほっ!」
ボールがうまく指から離れずに、高い位置からボールが落ちてガタン!とものすごい音が鳴り響く、そのままよろよろと進みガーターへ吸い寄せられる。
「…。」
「ま、まぁ!最初だしな!」
「そ、そうよ!初めてなんでしょ?最初はこんなもんよ!」
「励ましがつらいよ」
そして、ボールが返ってきて二投目。
「今度は、滑り込むように…」
さっきの反省を生かして優しく投げてみることに
「…はい!」
静かに放たれたボールは良い感じに直進する。
「お⁉」
しかし
左方向へと軌道を変えて、ガーターへ吸い込まれていく。
「ナニソレ、イミワカンナイ」
「多分、勢いが足らないんだな。もっと強く投げた方がいいぞ」
「がんばる」
そして、ピンが一旦片づけられて新たなピンが出現する。
「次は僕だな~」
圭一は、ボールを手に取って、投げる。
テレビでよく見る動きだ。圭一の手から放たれたボールはきれいにまっすぐ飛びピンをすべて倒し切る。これがストライクってやつなのか。
「え、すごい圭一」
「さすがね!けいくん」
「雫には負けるけどな」
私も同じような動きしてるのに、こうも結果が違うのは謎。
「次、私ね」
そう言い、雫は立ち上がる。いかにも重そうなボールをもって、構える。圭一とは、また違った構え方。
そして、雫が投げたボールはガーターギリギリを並行して進み、ある一点を過ぎたあたりから反対方向へとボールが流れていく。そして、ピンをすべて倒し切る。またもやストライクだ。
「ふぅ、案外覚えているもんね」
「いや、回転かけるのうますぎじゃね?」
「なんかよくわかんないけど、すごい…」
私の目からは、二人はプロに映っていた。
「さて、次は陽菜の番だぞ」
「う、うん」
みんな、なんであんなにきれいに投げれるんだ?何もわからない。運動音痴なのも関係しているのだろう。多分きっとそうに違いない。
「たしか、こう…」
さっきの圭一の投げ方を思い出しながら、投げてみる。
「ほ!」
すぐにガーターへ落ちていたさっきよりも、いいボールが投げられてのではないだろうか。真中を狙って投げたボールは少しずつ右へ軌道を変えていき、右端におかれているピン3つだけを倒して、奥へと消えていった。
「やっと当たった…」
少し安堵。
「わが妹、陽菜よ」
名前を呼ばれて後ろを振り向く。すると圭一が近くに来ていた。
「なに?」
「もう少し強く投げてもいいぞ。多分弱い力で投げているから軌道が安定しないんだろう」
「もっと強く?」
「そうそう」
そういい、帰ってきた私のボールを圭一は取って渡してくる。そして、私の手と肩をつかんでレクチャーが始まる。
「ここら辺から助走をつけて…ここらへんで振り上げて投げる。指を離す位置はここらへんかな?」
「う、うん」
近い。近すぎるんだけど。
どうしてこんな、ドキドキしているのか意味が分からない。私の手を掴んでいるのは私の兄。それなのにドキドキして頭に入ってこない。
「てな感じだ。わかった?」
「わかた…」
「ほんとに?」
「ほんと」
「よし、じゃあ投げてみよう」
圭一が隣で見てる。おかしい。ドキドキが止まらない。
「え…えい!」
目一杯、力を込めてボールを投げる。力み過ぎたせいでボールを離すタイミングを失ってしまい。少し高めのところから投げてためガタン!と大きな音が響く。
放たれたボールは、意外にもまっすぐ飛び、そのままピンの真中へと流れていく。いくつかピンを倒し、左の方に3つほどピンを残して奥へとボールが流れていった。
「陽菜、いいじゃん」
「すごい…ありがとう」
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「もう少し強く投げてもいいぞ。多分弱い力で投げているから軌道が安定しないんだろう」
「もっと強く?」
「そうそう」
けいくんは、席を立ち上がって陽菜のところへ向かう。
陽菜はボーリングが初めてのようで、うまく投げられていない。それを見かねてかけいくんからのレクチャーが入る。
私は席に座ったまま、二人の姿を遠目で見ていた。
「ほほえましいわね」
兄妹の関係、それさえなければ二人は付き合ってたんだろうな。なんて思う。だって容易に想像ができる。二人が付き合っている姿。
しかしなんでだろう。最近、胸騒ぎがするというか。切なく感じるときがある。こうして三人で楽しく遊んでいるのに、なぜかさみしく感じる。
陽菜の恋を応援すると決めて一か月とちょっとが過ぎた。私の狙い通り、陽菜は自分の感情に気づいてくれたのかしら?
自分の感情に気づいて、二人が付き合い始めちゃったら、私って一人になるんじゃない?
…そんなはずない。きっと。
ガタン!とボールを強く叩きつけるような轟音に驚き、意識をそっちに持っていかれる。陽菜の投げたボールの音か…。
「相変わらずね」
…二人が付き合っちゃったら、なんて考えてしまう。私は陽菜の恋を応援するって決めたんだ。私がさみしいとかそんなのは知らない。
「陽菜、いいじゃん」
「すごい…ありがとう」
喜んでいる二人を眺める。
胸の奥がズキリと痛んだ気がするが、きっと気のせいだ。
【本日のひなたん】
書店に来ている。今日は推しの作家さんの新作が発売される日。いち早く手に入れたいがために学校終わりに直接本屋に来てしまった。
「え~っと、あった!」
この先生の描く男性はとてもエ…魅力的なのだ。全年齢対象として売り出しているが、内容はかなりギリギリを攻めている。最高です。
「さて、レジへ…」
向かう最中に垂れ幕で仕切られたコーナーを通りかかった。そう言えば推しの作家さん、あっち系の漫画も出してたよな…。イラスト投稿サイトで一部だけ見たことはあるが、内容は全く知らない。
とても気になる。
「…ちょっとだけ、あと数か月もすれば18歳なんだし…」
そーっと垂れ幕に手をかけて、いざ侵入。
「陽菜?」
「あああああああ!」
いきなり呼ばれて驚き叫んでしまった。振り返ると雫が立っていた。
「し、雫か…書店に何の用?」
「いや、本見るためなんだけど…ちょっと数学の参考書が欲しくて来たわ」
「へ、へぇ~そうなんだ!じゃ!私はこれで」
そそくさと雫から離れる。つもりだったのに、雫にガシッと腕をつかまれる。
「ねぇ陽菜~何見ようとしてたのよ?」
「オーマイガー」
「んん~?私たちまだ17歳よねぇ?何してたのかしらぁ?」
「いや、その…間違えたというかなんというか」
「間違えて入っちゃう~なんてことないわよねぇ」
「あはは…うわっ!」
雫は、つかんだ手を離さないまま引っ張る。垂れ幕の向こうへ。
「ちょちょちょ、雫!」
「陽菜が見ようとしていたものが気になるから、一緒に行くわよ」
「ちょま~!」
「これです…」
「ふ~ん、えっちっちじゃん」
結局、推し作家さんの出している大人向け漫画を見に来た。私は恥ずか死しそうでやばいというのに、雫はワクワクした表情を浮かべている。
「陽菜ってこういうのが好きなのね~」
「まぁ…はい…」
「女性が1人に対して、男が3人⁉陽菜…」
「やめて言わないで!」
何この地獄。私、何か悪いことしました?
「あの、お客様」
なんて会話をしていると、横から書店の店員さんのような人が話しかけてきた。
「あ、はい」
「年齢確認、よろしいでしょうか?」
あ、終わった。しかも私たち制服じゃん。そりゃ年確されても仕方ない。
「あ、いま持ってなくて…すぐ出ます」
バタバタと急ぎ足で垂れ幕のエリアから出ていく。
結局、最初のお目当てだった漫画は元の場所に戻して、違う書店で買うことにした。