「暗黒界」……我が闇魔界とは同盟関係にある、悪魔族の世界である。かつて行われたライトロード共との戦争をきっかけに同盟を結び、共に奴らを返り討ちにしてやったのは良い思い出だ。この同盟のお陰で闇魔界は守られてきたと言える程、彼らの力は凄まじい。我でさえ、「暗黒界の龍神 グラファ」殿には叶わぬだろう。
「本日はどうされた、覇王殿」
「良く来て頂いた、グラファ殿。こちらのダークソードが説明した通り、そなたの戦力を貸して頂きたい」
「それは構わぬ。しかし……何故だ?」
ダークソードが用意した飲み物を飲みながら、グラファ殿はそう言った。そこで、我は今までに思案した事を話す事にした。
「グラファ殿もご存知の通り、今は様々な勢力が覇権を賭けて争っている。今の時代、この闇魔界は未だに新たな発展をしていない……既に、周りに大幅な遅れを取っているのだ。いつまでも暗黒界との同盟に頼っていてはいつかは滅びる。そう思い、まずは我の力を強化する事にしたのだ」
「なる程……しかし、それが我が戦力を貸す事となんの関係が?」
「グラファ殿も、『エビルナイト・ドラゴン』はご存知だろう」
「あの邪竜か」
「うむ……あの竜はとある騎士の邪悪なる心に宿る竜が実体化した物。そしてそれを実体化させているエネルギーこそ、我の力なのだ」
「何!?」
我は、グラファ殿に我がまだこの闇魔界の覇者となる前の事を話した。かつて、一人で放浪の旅をしていた我は、人間の兵士達に襲われている村を見つけた。すぐさま人間共を蹴散らした我だったが、一人だけ我とまともにやり合う程の実力を持った騎士がいた。なんとかそいつを退けたものの、我の力の一部を奪えたと知った途端、奴は本性を表した。
「だが、傷ついた体と精神では力に飲まれるのがオチだ。奴もそうなって今は闘争本能を頼りにあの山の山頂を住処にしている。既に肉体は滅びておろうが、思念が竜を型取り生きているだけ恐ろしいものよ」
「そういう事だったのか。それで、我の戦力を貸してくれと……」
「そういう事だ、グラファ殿」
グラファ殿は少し考える素振りをして、我に向き直った。そして、結論を口に出した。
「うむ、こちらからはケルトとラチナを出そう。ただし、そちらの……ジェノサイドキングデーモンを貸して貰いたい」
「……分かった。こちらからは奴を出そう。ご協力、感謝する」
「良いのだ。では準備が整い次第、二人をこちらに送る」
そう言って、グラファ殿は闇魔殿を後にした。なんとかエビルナイト・ドラゴンを討伐する手立ては建った……だが、我も闇魔界を少しの間空けないといけない。問題が解決すると同時に、また新たな問題に見舞われたのだった。だが、少しずつ前に進むしかないだろう。
「闇魔界の為にも、我の為にも……」
一人呟き、私室を出た。