我は現在、数多の部下を従えてエビルナイト・ドラゴンが巣食う山の麓に来ていた。ここからでも奴の邪悪な気配が分かる程、奴は強力なモンスター。ある程度の損害は覚悟しておかねばならぬだろう。
「ここからは奴の力で凶暴化した獣族モンスターが出る。一時も気を抜くな!」
号令と共に、次々と山に足を踏み入れる。連携が取れる程に波状に広がり、頂上目指して登って行った。途中で何度かモンスターの襲撃にあったが、我が連合軍の相手ではない。大抵が瞬殺が撤退の道を辿った。
「ここは中腹辺りか……!?」
突然前方の空からこちらへと飛翔してくる影が。皆が一斉に身を屈め、奇襲を回避した。何人かが弓を構え、迎撃の体制をとる。空中で方向転換し、再度こちらに向かって来た。
「……『カース・オブ・ドラゴン』!?奴はここには生息していない筈……」
「恐らくエビルナイト・ドラゴンが使役しているのだろう。ラチナ!私の援護に回れ!」
「いや、我が出る」
「覇王様!?」
「少し驚いたが……あの程度、我の敵でも無いわ!喰らえ『魔導波』!!」
カース・オブ・ドラゴンの吐いた火炎と、我の魔導波が激突する。すると間もなく、自身が吐いた火炎毎、魔導波に飲み込まれた。断末魔を上げ、巨体が力無く地面に落下する。
「これが覇王の力よ」
「一撃で沈めるとは……」
部下を中心に歓声が湧き上がる。やはりそうだ。我が劇団員に劣る事なんて無かったのだ。少なくとも今はそう思いたい。余韻に浸かるのも束の間、山頂から聞こえてきた咆哮に、我は再び気を引き締めた。
「このまま山頂へと向かう!」
カース・オブ・ドラゴンを撃退してからは目立った襲撃は無く、呆気なく山頂付近まで来る事が出来た。何か違和感を持ちつつも、警戒を緩める事無く進み続ける。
「覇王様、後ろを!」
「ぬぅ!?」
ラチナが叫ぶ。振り返ると、そこには大量の獣族モンスターとカース・オブ・ドラゴンが迫って来ていた。ドラゴンは恐らく別個体だろうが、問題は獣族モンスターの数だ。エビルナイト・ドラゴンめ、中々厄介な事をしてくれる!
「ラチナを中心に防御を固めろ!我とケルトで獣を片付ける!ダークソード!カース・オブ・ドラゴンの相手は任せるぞ!」
「はっ!」
ダークソードは騎竜に跨り、カース・オブ・ドラゴンとの空中戦を開始した。我は視線を地上へと向ける。ラチナの防御壁を破ろうと攻撃を加える獣共に、魔導波を撃ち込んだ。しかし、やられた仲間の死体を踏み越えて新たな獣が殺到する。
「キリが無いな……ラチナ!少しずつ下がりながらでもいい、決して陣形を崩されるな!!」
「はっ!」
「ケルト、最悪の場合、我一人でエビルナイト・ドラゴンに挑む事になる。その時はラチナの援護に回れ!」
「ですが、覇王様!」
「我は闇魔界の覇王!借り物の力を振るう邪竜ごときに負けはせんわ!」
「……御武運を!」
ラチナ、ケルトに指示を出し、再び攻撃を開始する。終わりが見えない戦いが始まった。