闇魔界の覇王が部下を連れてエビルナイト・ドラゴン討伐に乗り出したのと同時刻……ジェノサイドキングデーモンは、暗黒界の門を訪れていた。
「ようこそおいでくださいました、ジェノサイドキングデーモン様」
「ここが暗黒界……」
「中にいる者に案内をさせますので、どうぞお入り下さい」
「あぁ」
門を警備していた「暗黒界の門番 ゼンタ」と挨拶を交わし、中へと入る。すると、中で待機してたであろう兵士に案内され、グラファがいる居城まで向かった。
「お初にお目にかかります、グラファ様。ジェノサイドキングデーモン、只今参上いたしました」
「よく来てくれたな。早速だが、明日から仕事を頼みたい。今日は宿で休むが良い。明日、案内の者を向かわせる」
「ご厚意、感謝いたします」
彼は用意された宿に宿泊し、その疲れを存分に……癒す事が出来なかった。何故なら……
「わー!かっこいいー!」
「ねぇねぇこの羽で飛べるの!?」
「ハハハ、勿論だよ」
彼は数人の子供達に囲まれ、質問攻めにあっていた。数分前、ここに間違えて入って来た子供が見慣れない姿の彼を見て仲間を連れて来ていいかと聞くと、断る事が出来なかった彼はそれを(表面上)快く承諾。そして今に至る。
「失礼します、キングデーモン殿……えっ!?」
「あ!『鉄壁レンジ』だぁ!」
「スゲー!」
明日の仕事の詳細を伝えに来た「暗黒界の番兵 レンジ」が驚愕する。(因みに彼は今日非番だった)
キングデーモンの目での訴えに、大体の事情を察した彼は、子供達を見る。
「みんな、この人は疲れているんだ。だから、今日は休ませてあげよう。ほら、自分の部屋に帰りなさい」
「「「はーい!」」」
子供達はレンジの言葉に素直に従い、部屋を出ていった。それを見てキングデーモンは、床に倒れ込む。
「キングデーモン殿!?」
「いや、良いのだ……子供はあれ位が丁度良いのだ。それで……仕事とは?」
「あぁ、その事なんですが……『ジェノサイドキングサーモン』はご存知ですな?」
「そちらの『暗黒海』の特産品だったか?」
「はい。毎年この時期になると『屈強の釣り師』を中心に漁が始まりますが……今年は本人が怪我をされて、その代役を探していたのです」
「なる程……しかし、まさかだが私を指名したのは単に名前が似てい
「何も言わないで下さい」
「えっ」
「何も言わないで下さい」
「わ……分かった」
(言えない……まさか酔っていたグラファ様が『あぁ、釣り師の代わりか?安心しろ。闇魔界に赴いた時に名前が似てたからジェノサイドキングデーモンを指名したわ』なんて事は絶対に言えない……)
「で、では私はこれで」
「うむ」
レンジが去り、一人になった部屋でキングデーモンは何かモヤモヤした物を抱えながら、ゆっくりと眠りに着いた。
翌日。宿を出発したキングデーモンは、暗黒海の湾まで来ていた。そこに勤務する「暗黒の海竜兵」から釣り竿と船を借り、漁師と共に暗黒海へと乗り出す。船に揺られる事数十分後……
「しかし初めての釣りが暗黒海とは……」
「ま、そういう事もあるさ。頑張んな、兄ちゃん」
「うむ……!?」
「おっ、かかったな!」
「ぬおぉ!?なんだこの力は!?」
「こいつは大物だぞ!頑張れ兄ちゃん!」
「ええい言われなくとも……あっ」
「あっ」
船の床が滑り、キングデーモンは豪快に宙に投げ出される。急いで漁師が手を伸ばすが、間に合わずに海に放り出されてしまった。
「兄ちゃーん!!」
岸でその様子を見ていた海竜兵は、すぐにキングデーモンの元に向かおうと海に向かって飛び込もうとした。だが、視界の隅に妙な物を見つける。
「あれは……?」
猛烈な勢いでこちらに向かって泳いで来る巨大な影。やがてそれはどんどん近付いて来て、勢いよく岸に打ち上げられた。
「キングデーモン殿!?」
「ハァ…………ハァ…………」
その下半身は彼を咥えているジェノサイドキングサーモンである。そして、彼は上半身を上げた。
「私はもう二度と釣りはやらんッッッッッッ!!!!!!」
「……キングデーモン殿!?キングデーモン殿!!」
その絶叫を最後に、キングデーモンは意識を失った。
「……という事があったんです」
「……?」
これを聞いた覇王は理解に苦しんだという。
次回から本編に戻ります。