「ん?何だろうこの店」
フリーレンがその店を見つけたのは魔王を倒すための旅の途中。
ヒンメル達と立ち寄ったこの街は商業が盛んらしく幅広いジャンルの店が立ち並ぶ豊かな街だった。
街に着いた時には日も傾いており、ひとまず宿を取ろうとヒンメル達と宿屋に向かっている途中、周りの建物と比べて一回り古びた様相の建物が目に止まった。
扉の上には『魔導雑貨商店』の看板が掛かっている。
「フリーレン?どうかしたのか?」
立ち止まっていたフリーレンに気づいたヒンメルが声を掛けたのを拍子に、ハイターとアイゼンも足を止めてその看板を見る。
「ふむ、どうやら雑貨屋の様ですが……また随分と怪しげな」
「その店がどうかしたのか」
「この扉の張り紙、というか店そのものに魔法がかけられてる」
ハイターとアイゼンの問いかけに店を見つめたまま答えたフリーレンの言葉にヒンメル達も驚いた顔をする。
「それは本当か?僕にはただの古びた雑貨屋にしか見えないぞ」
「うん、かなり高度な結界が張られてるみたい、外から破るのは無理そう。扉の張り紙が起点になってるのかな?」
フリーレンの言葉通り店の扉には一枚の張り紙が貼られていた。興味が湧いた他の3人もよってきて張り紙の内容を確認する。
『魔導雑貨商店ご案内』
『•1つ 当店へ入店する際には必ずこの張り紙をよく読んで内容を確認してからお入りください』
『•1つ 店内では魔法の使用•及び暴力行為の一切は固くお断りさせていただきます』
『•1つ 当店に対して、または店内で迷惑行為や当店の信用に関わる問題を起こした方は例外なく出入り禁止とさせていただきます』
『•1つ 出入り禁止の方から強要されて入店された場合その方も出入り禁止とさせていただきます』
『•1つ 店内に入られた時点で以上の内容に合意されたとみなします』
「……怪しすぎやしないか?」
ヒンメルが苦笑いしてそう呟く。ハイターとアイゼンも何とも言えない顔をしている。
「こういう怪しい店には貴重な魔導書なんかがあるんだ」
ただ1人目を輝かせたフリーレンが躊躇なくドアノブに手を伸ばしたところで3人から待てがかかったが、結局 根負けして全員で店内に入ることになったのだ。
店内は思いのほか明るく、外見からは考えられないほどしっかりとした内装だった。
棚には見慣れた日用品からよく分からない物までところ狭しと置かれているが、本来店主がいるであろう奥のカウンターには誰もいない。
「おぉ……ちゃんとしてる……」
「店主は何処にいるんですかね?」
「あぁ申し訳ない、ここにいるよ。」
その時、奥のカウンターの下からひょっこりと人が出てきた。
その姿を見た瞬間、全員が目を見開いた
「いらっしゃいませ。愛されて200年。日用品から呪いの品まで、魔導雑貨商店へ」
そこにいたのは頭から角を生やし、柔和な笑みを浮かべる男の魔族だった。
即座に全員が戦闘態勢に入る、フリーレンも杖を構え魔法を打ち込もうとするが。
「魔法が使えない?」
他の3人もそうらしくヒンメルは剣が鞘から抜けず、アイゼンは斧を取り落とし、ハイターも魔法を使えないようだった。
「お客様、落ち着いて下さい。入店される際に扉のご案内は確認していただけたと思いますが、当店では『魔法の使用・及び暴力行為の一切は固くお断りさせていただきます』ゆえ」
「扉から逃げろ!」
全員が嵌められたと思ったがヒンメルとアイゼンがフリーレンとハイターの前に立ち、ヒンメルが逃げるよう指示を出す。
そんな緊迫した空気の中でも魔族は相変わらず柔和な笑みを浮かべたまま此方に話しかけてくる。
「ご安心くださいお客様、店内では私も同じ契約が課されますので皆様に危害を加えることはありません」
そう言って両手を上げる魔族に全員が視線を交わし警戒は解かずに最低限いつでも逃げれるようにしつつ話を聞く事にした。
「他のお客様も初めてご来店された際には同じ反応をされますよ。遅ればせながら自己紹介させていただきます。私はこの『魔導雑貨商店』店主 ベクヴェームと申します、以後お見知り置きを」
「魔族が店を構えて商売するのか?人の言葉を喋るだけの猛獣のお前達が」
ひとまずフリーレンが会話で時間を稼ぎ、この店に張られた結界を解析しようと試みる。
「はい、当店は私が200年ほど前に開店した雑貨屋でございます。皆様が危惧されている様に人から奪った物ではございません。この街の方々に確認していただければ分かると思いますよ」
「それは随分とご丁寧に」
会話を続けている間にも解析を試みるが中々うまくいかない。そんな時、店の扉が不意に開いた。
「ベクヴェームさん!悪いんだけどまた換金頼めるかな!賭けに負けて全部スっちまってよぉ!」
「いらっしゃいませビュルガーさん。賭け事は控えろと奥様にも言われていたでしょうに、換金は構いませんが身体を壊さないようにしてくださいね?」
「へへっ、いつもすいやせん」
入ってきたのは中肉中背のごく普通の男性だった。ヒンメル達は慌てて逃げるよう伝えるが男は特に気にした様子もなく
「あんたらここに来るのは初めてか?だったら仕方ねぇよな。ベクヴェームさんは俺の爺さんがガキの頃からこの街で雑貨屋やってるからよ、別に悪さしたりしねぇって」
な!と肩を叩かれたヒンメルはポカンとした顔のまま魔族と親しげに話し出した男を呆然と眺めている。
「それじゃ早速頼むぜ」
「かしこまりました」
そういうとベクヴェームは男の腕を取ると慣れた様子で筒のような物を取り出すと男の腕に刺した。
慌てて止めようとするが男は特に気にした様子もなく受け入れていた。むしろ今は危ないからやめろと叱られた。
あれよあれやという間に作業は終わったようで刺していた筒を抜いて終わった。
ベクヴェームは筒を取り外すと蓋をして同じような筒が入った箱に保管して男に銅貨を数枚渡した。
「いつも助かります」
「いえいえ、こちらこそ。健康な男性の血液はいくらあっても困りませんので。傷口はしばらくそのままにしておいて下さいね」
意気揚々と帰っていった男を見つめたまま動かないヒンメル達に変わって1人だけ早く復活したフリーレンがベクヴェームに問いかける。
「今のは何?」
「常連のビュルガーさんです」
「「「「違う、そうじゃない」」」」
「冗談です。当店では雑貨屋の他に血液の換金も行っているんですよ。もちろん同意していただいた方だけですが。なにぶん魔族なので、食人衝動を抑えるのに使わせていただいております」
「……直接襲って食おうとは思わないのか」
「私は結界と逃げ足には自信がありますが戦うなんて恐ろしくてとてもとても。それに今の状態で十分生きていけますので人を襲う意味がありません」
「けれど、この先も人間に危害を加えない保証もない」
「そうですね、けれど私はこの店にかけた結界の力で店内にいる限り誰かに危害は加える事は出来ません。私の結界は『双方の合意に基づくもの』契約を破ることは私自身にも出来ません。その上、私は全知のシュラハトに目をつけられていましてね、実質的に結界から出ることもできないのですよ」
その名前が出たことに一瞬驚く。全知のシュラハトは未来を見ることが出来たとされる魔王の側近。
南の勇者と相打ちになったが自身が死んだ後の未来も見ることが出来るなら確かに、結界から出たベクヴェームを他の魔族に命令して襲わせる事も可能だろう。
フリーレン達がヒンメルに目を向けて彼の判断を待つ。
「…どこまで信じればいいかは分からないが、さっきの常連の話からするにかなり長い間この街で店を構えているのは間違い無いようだ。少なくとも今は戦う必要は無いだろう」
そう言って低く構えていた姿勢を解くと他の3人も一応は戦闘態勢を解いた。
「分かっていただけて何よりです。改めて『魔導雑貨商店』へようこそ」
意図せず始まった戦い(?)はひとまずの収まりを見せたが4人は大事な事を忘れていた。
「ところで皆様、もう日も落ちてしまいましたが、宿の方はもう取ってありますか?」
「「「「あっ」」」」
・ベクヴェーム
一応転生者だけど今回はその要素はどこにも無い()まぁ魔族が商売するなんてこれくらいのイレギュラーじゃないと無理でしょ。
人間らしい感情はあるにはあるけど魔族の本能もあるので店でも開いて隠居しよくらいのノリで雑貨屋を始めた。
スキルツリーが引きこもりと逃げる事特化あとついでにアイテム作成。
多分店に他作品の便利アイテムとか作って売ってる(ワンピースのビブルカードとか)
名前の由来は原作にあやかってドイツ語で『便利』ただしドイツ語ニワカだから実際に合ってるかは知らん。
魔導雑貨商店は遊戯王の魔導雑貨商人から取った。
口に出して読みたくなるよね、魔導雑貨商人。
・ビュルガー
書いてる途中に唐突に生えてきたオリキャラ魔導雑貨商店の常連。
しょっちゅう賭けに負けて血を換金しにくる。
ちなみに店内では暴力行為と魔法がNGなだけで血を抜かれても医療行為かつ生命維持に問題ない範囲ならOK
名前の由来はドイツ語で『市民』
続くかは分からん