魔法は使えない上条恭介   作:ドクトル・カリガリ

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初恋:ブレイク

 僕には最高に可愛い幼馴染みの女の子がいる。

 それも三人。

 

 一人は美樹さやか。

 ショートヘアが似合う活発な美少女。けど最近になって髪を伸ばし始めたので、ひょっとすると好きな男でも出来たのかも知れない。

 ぐぬぬ。去年あたりから急激に成長している、あの胸と尻に迫られたら、僕だったら一瞬でコロッとイク自信あるけどな。どこのラッキーボゥイだ〜、こんにゃろう。

 

 

 二人目は志筑仁美。

 絵に描いたようなおっとりしたお嬢様。落ち着いた雰囲気で大人っぽく、お姉さんみたいな存在だけど、実態はものっそい天然だ。

 空想力がたくましくて、一度悪ふざけでアニキとサブの世界を教えたらドハマリして腐女子になってしまった。責任は感じてるけど、僕は悪くない。彼女の感性の問題だ。

 

 

 そして、鹿目まどか。

 明るくて、大人しいけど芯が強い。守ってあげたくなるタイプに見せ掛けて、その実人の心を掴むのが上手く、むしろ周りを無意識に支えているお母さんみたいな人だ。

 そして、僕の初恋の相手……だった、んだけど、な〜……。

 

『ごめんね。恭介くんのこと、何とか友達レベルに思うのが精一杯だから』

 

 ストレートに嫌いって伝えられる方がよっぽどマシな断られ方された。一生懸命に言葉を選んでいるのがダメージを倍加させてくる。

 

『いや、嫌いじゃないんだよ? 付き合いは長いし、恭介くんがアホでスケベなのはもう別にどうでもいいけど、性格とかそういうの差し引いても付き合うのはないな〜って思うだけでね』

『ごめん、もうそれぐらいで勘弁して、心が死ぬ』

 

 取り付く島はあるけど入島拒否されたカンジ?

 もう完璧な玉砕だ。清々しいまでの脈なし。まあ、中途半端に期待持たせられるよりマシかな?

 

 そしてショックで放心状態なまま自転車で剣道場に向かう途中、僕は交通事故に巻き込まれたのだ。

 

 

 あれから二週間。検査入院とか警察で調書取られたりとかであっという間に過ぎ去って、今日から久し振りに登校する。

 

「超気が重い……」

 

 が、とても「わーい、みんなに会えるぞ、うれしいなー」なんて気分にはなれない。

 学校にはまどかがいる。登校途中で高確率で遭遇するし、そもそも同じクラスだし。顔を見るのがツライ。

 

 まどかのことだから、僕をフったこと以前に告白したことだって言いふらしたりはしないと思う。単純に、僕の精神的ダメージが回復してないだけだ。

 かといって、休みたいとか言い出したら父ちゃんと母ちゃんからメッチャ心配されるだろうし。特に母ちゃん、事故の日からちょっと過保護気味だから、カウンセリングとか面倒なところに連れて行かれる可能性大だ。

 いや、いっそ失恋の痛手をカウンセラーに癒やしてもらうか?

 

 なーんて益体のないことを考えてたら、ケータイにメールが着信した。さやかからだ。

 

『今日から登校だっけ? 遅刻すんなよ』

 

 ……ちょっと癒やされた。さやかちゃん、マジ女神。

 

 

 さて。

 勢い任せで家を出た訳ですが。現在、通学路の十数メートル先で、まどかとさやかが楽しそうに並んで歩いています。

 

 まどか……くそ、やっぱ可愛い。体系は寸胴だけど、あの太陽みたいな笑顔は他人には真似できない特大の魅力だ。小振りなお尻も可愛らしい。

 ちなみに、隣のさやかヒップは対象的に結構大きく育ってきている。顔に座ってもらうなら、断然さやかだろう。

 

 ……けど、まどかの魅力は身体じゃない。幼児体型だろうと、あの全てを包み込むような母性愛が最大の魅力……いや、カリスマだ。

 本人に自覚はなさそうだけど、過去にも落ち込んだ時、辛い時、まどかのママ味に何度救われたことか。

 

 まあ、今はそのまどかが原因でハートブレイクしている訳だけどね。たはは、太陽を目指したイカロスの気分。

 

「何を難しい顔して、まどかさんとさやかさんのお尻を眺めているのですか? 恭介さん」

「おろ、仁美?」

 

 いつの間にか、三人目の幼馴染みが僕の隣を冷たい眼をして歩いていた。口調もちょっと刺々しい。いつものことだけど。

 

「またさやかさんに顔を踏むよう頼むつもりですか? 本気で嫌われますよ?」

「うっわー、久し振りなのにきっついなー。ならさ、仁美――」

「そういうのは大人になってから特殊なお店で頼んでください。まどかさん! さやかさん!」

 

 仁美が声を掛けたので、まどか達が振り返った。当然、仁美と一緒に僕にも気付く。

 

「お、仁美……と、恭介? 一緒に登校してたの?」

「いえ。恭介さんがお二人の背中を悩ましげに見つめていたので、注意したところです」

「うわ……車にぶつかっても相変わらずだなー、恭介は」

 

 さやかが自分のスカートを両手で押えて僕を睨む。ちょっと上目遣いになってて、可愛い。

 

「さやか。その態勢で『べ、別にあんたのことなんて全然心配じゃなかったんだからね』って言ってみて」

「キモ。まどか、仁美、こんなの置いて早く行こ」

「あはは……全然変わらないね、恭介くんは」

 

 さやかと仁美の淡白な反応、ちょっと引き気味のまどか。

 でも、本当に置いて行ったりはしない。これが僕ら、幼馴染み4人の距離感だ。

 

 特別なイベントが起こるでもなく、いつも通りのやり取りに終止する僕ら。

 笑い方、不自然じゃないかな。まどかの顔がぜんぜん見られない。ははは、我ながら女々しいぞ、上条恭介。

 

「何が辛かったって、看護師さんも調書採った刑事さんも、筋肉ムキムキのおっさんだったことだよ」

「それで恭介さんは、どちらで大人の階段を登ったのですか?」

「え? ついに男にも目覚めた? 節操なしにも程があるよ、恭介」

「ウェヒヒ」

 

 表面上は上手く取り繕えたかもしれないけど、まどかへの思いはしばらく引きずりそうだった。

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