魔法は使えない上条恭介   作:ドクトル・カリガリ

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合流:部外者

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Side 美樹さやか

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 立入禁止の札の前で立ち尽くし、どれくらいだろう。ケータイ電話の画面を見る。

 ……5分と経っていなかった。

 

「やっぱり、あたしも付いていけば良かったかな……?」

 

 数分前の自分の選択を後悔しつつ、あたしは誰もいない通路をウロウロするばかりだ。

 

 こうなった経緯を簡単にまとめると、予定があるという仁美とほむらと別れてから、暇つぶしがてらデパートのCDショップへやって来た。特に買いたい物があったわけではないけど、まどかが「ジュノさんの新曲が出たんだ」というので付き合いで来ただけだ。

 

 なのに、そのまどかが突然挙動不審になり、フラフラとどこかへ走っていくではないか!

 

「ちょっと! どこ行くのよ、まどか!? ……駄目だ、聞こえてない!」

 

 何か、もしくは誰かを探すように、まどかは『関係者以外立ち入り禁止』の札を乗り越えて改装エリアへ侵入してしまった。

 奇行に走るのは恭介だけで充分なのに……。

 

 すぐに追いかけよう……と思ったけど、見た感じ非常灯もまばらな上に足元が不安定そうだ。慌てて突入したら二重遭難の危険性がある。最低限、灯りが欲しい。

 幸い、ここはデパートだ。探せば懐中電灯ぐらいいくらでも見つかる。出費はちょっと痛いけど。

 

「あら、あなたは……」

 

 通路を引き返そうとした時だ。ちょうど向こうから来る女の人と鉢合わせた。

 相手の服装はあたしと同じ、見滝原中学の制服だ。リボンタイの色から3年生だ。

 金髪縦ロールという突飛な髪型、高い背丈と、もう同じ女からしても思わず目を張ってしまう爆乳……ひょっとして、この人?

 

「巴マミ、先輩?」

「えっ!?」

「学園一の巨乳って噂の」

「それ止めて! ていうか胸で判別しないで!!」

 

 しまった。巴先輩は胸を両腕で覆い隠して(隠せてないけど)真っ赤になってしまった。

 あたしとしたことが、恭介みたいなことをしてしまうとは。素直に頭を下げた。

 

「すみません。聞いていた通りの方でしたもので」

「うぅぅっ!」

「すみません、では」

 

 その場で足踏みしてぐるぐる回って身悶える巴先輩は可愛らしいけど、それ以上に痛々しかった。なので、あたしは気まずさからスタコラそのばを後にしようとする。

 けれど、不思議なことに巴先輩はあたしを呼び止めたのだ。

 

「ちょっと待って! 少し前に、誰かこの奥に入っていかなかった?」

「え……?」

 

 どうしてこの人がそのことを? そう訝しんだあたしが答えあぐねていると、巴先輩は勝手に一人で話を進めた。

 

「詳しくは話せないけど、ちょっと今この先が危険なのよ。私は荒事に慣れてるから平気だけど、普通の人にはオススメできないわ」

「はぁ……」

 

 急に何を言い出すのだろうか? そりゃ工事中のエリアに素人が踏み込んだら危険だろうけど。そういう話ではなさそうだし。そもそも普通の人ってあんた。

 

「それじゃあね」

 

 優雅に改装エリアへと立ち去っていく背中。あの人、普段からモンローウォークで歩いているのだろうか?

 ……などと考えているうちに、気付けば5分も立ち尽くしていた。

 

 今からじゃ、まどかを追っても最悪ニアミスして、あたし一人で彷徨った挙げ句に警備員さんに保護される未来が濃厚だ。というか昔、恭介相手に同じ様な目に遭わされた。

 あの頃はケータイ電話なんて持ってなかったけど。

 

「……あ。もしもし、まどか? 今どこ?」

『さやかちゃん!? ……あ、ごめん忘れてた』

 

 3コールあっさり電話に出てくれた。やっぱり慌てて追いかけないで正解だったわ。

 

 

 

 で。デパートの出入り口で待ち合わせた訳だけど。

 

「さやかー、やっほーぃ」

 

 どうして帰ったはずのほむらと、恭介まで合流してるのかな? 巴先輩と、ついでに変な生き物も一緒だし。

 

『おや? 君もボクが視えるようだね。ボクはキュゥべえ、ボクと契約して魔法少女になってよ』

「待って、待って。情報量が多すぎる」

 

 謎の生き物は、流暢な日本語で話し……いや、頭の中で直接声がしてる気がする。まさかテレパシーってやつ?

 まどかに目を向けると、苦笑いで返された。この子もいまいち分かっていない様子。恭介は……珍しい、俯いて大人しくしている。

 

「これから巴先輩の家でお話しするのだけど。あなたはどうする、美樹さん?」

 

 訳知り顔のほむらは、露骨に来てほしくなさそうな雰囲気だ。

 

「そうね。貴女にもキュゥべえが視えているのだし、一緒に聞いておいた方がいいと思うわ」

 

 巴先輩はほむらの嫌そうな雰囲気に気づかず、あたしを誘う。睨まれてるのにも気づいていない。豪胆というより空気が読めないタイプと見た。

 

「聞いておくって、何をですか?」

「魔法少女と契約についてよ」

「まほー……しょーじょ、ですか?」

 

 それって、恭介が好きなあれ? 女の子がヒラヒラ衣装を着て、イアイアハスタアとか、ふんぐるい・むぐるうなふ……ってカンジの?

 

「なんでクトゥルフ……まあ、日曜の朝に放送しているような綺麗なものじゃないのは確かね。知らないままの方が間違いなく幸せに暮せるわよ」

「もう。そんな意地悪を言う者じゃないわよ、暁美さん。それじゃ、行きましょうか。うふふ、こんなにたくさんのお客さんなんて初めてだわぁ」

 

 ルンルンと歩き始めてしまった巴先輩に、ほむらは大きな溜め息を吐いて付いていく。

 

「私達も行こう、さやかちゃん」

「ん、うん。……あれ、恭介は?」

「巴先輩の横」

「早いな、おい」

 

 なんだかよく分からないけど、巴先輩みたいな美人の家で恭介を野放しにするわけにはいかない。さすがに私室に侵入したり、タンスを漁ったりはしないと思うけど、ドン引きするような変態行動に出るのは確実だ。放っておくわけには……。

 ……別に放っておいてもいいんだけど、あいつが馬鹿やらかすたびに周囲へ申し訳なく思ってしまうのはなぜだろうか。ほむらじゃないけど、あたしも溜め息を吐いてみんなを追った。




【キャラクター解説】
美樹さやか
 本編よりクールで気怠そうな雰囲気になり、気苦労の多さから冷静さを獲得した青髪美少女。実はメインキャラで一番背が低いらしい。
 上条恭介のアホを関節技で嗜めるのが彼女の役割。初対面の時は剣道の試合で活躍する姿に見惚れたが、現在は言わずもがな。幼馴染みどころか母親みたいな心持ちで上条恭介にツッコミを入れる。
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