オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳   作:ユリガスキー

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そうだ、事務所へ行こう

 エトワールでは2ヶ月に1度、事務所に直接出向いてマネージャーと面談する決まりがある。

 面談、と言っても形式ばった堅苦しいものではなく、近況報告を交わしながらお菓子を食べてお喋りするだけのマジでかる〜い面談だ。

 

 一見するとなんの意味もなさそうな面談(おしゃべり)だが、心理的・身体的な問題はないかの確認や、円滑なコミュニケーションを送るため、etc……と意外に大事な事らしい。これ全部マネージャーさんの受け売りなんだけどな。

 

 とはいえめんどくさいことに変わりなく、前回の面談では期日ギリギリになってしまった。

 そんなわけで面談から1週間も経っていないというのに、既に2回目の催促をされているのだ。

 これは俺の気質がめんどくさがりで腰が重いとみて、先んじて催促しているに違いない。

 

 

 

 そんなことされれば、すぐにでも行きたくなっちまうよなぁ?

 ちょうどウタウマーのサインの件で詫びの菓子を贈ろうと考えていたことだしなと理由付け、マネージャーさんに連絡した。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 というわけで1週間ぶりの事務所だ。

 前回、彗月ちゃんとのasmrコラボで事務所を使わせてもらい、その後マネージャーさんに連行されて面談したからな。

 なんだか3ヶ月以上経ってる気もするが、それは気のせいってやつだぜ。

 

 

 

 せっかく事務所まで来たんだし、ちょっと寄り道していこう。

 いつもの癖で1時間早く来ちゃったことでマネージャーさんとの約束の時間まで余裕はある。

 

 そんなわけでビルの中をうろちょろしながら休憩スペースに向かう。

 そこは元々、文字通り休憩するための、お茶を飲むためだけの部屋だったのだが、エトワールのみんながゲームや漫画、お菓子やらなんやらを持ち込んだ結果、娯楽室みたいになってしまったのだ。

 エトワールのみんなは事務所に来たら1回はそこに立ち寄るので、誰かと会いたい俺もそこへ向かっているってなわけだな。

 

 

 

 そうして休憩スペースに向かっていたのだが、道中金剛先輩に出会した。なんと幸先の良い。

 

「あ、あわあわわ……」

 

 なんか泡食ってて草。

 

 ふむ、やはり人間第一印象が全てと言っても過言ではない。ここは元気よく挨拶して「おっ、この後輩元気ええやん、今度飯連れ立ったるかー!」ってな感じに思わせるか!

 

「やっh」

 

「あ、あの時はすみませんでした!」

 

「人様の顔を見て気絶してしまったのに、それなのにその後介抱もさせちゃっ、させてしまって、なのにお礼も言えないままで、えとえーと、あの、す、すみませんでしたぁ!」

 

 

 

 お、おう。この俺としたことがマシンガンのようなトークに押されてしまったぜ。

 

 しかしあれだな。多分金剛先輩、俺がお偉いさんかなにかと勘違いしているな。確かに俺は見た目だけならご令嬢っぽく見えるしそう思われても仕方ない。

 ここは誤解を解いて──

 

 

 

 しかし、渚に電流走る……!

 

 

 

 これ、このまま放置した方が面白いのではないか、と。

 

 

 

「……いえいえ、そんな。私は別に気にしていないですよ?」

 

「い、いや、でも」

 

「それよりも、私の顔を見て気絶したことの方が気になっちゃって……私の顔はそんなに醜いのですか……?」

 

「い、いえいえいえいえ! そんなことありません! とても、とても美人さんで、私驚いちゃって!」

 

「まぁ、嬉しい///」

 

「ホヘー」

 

 やべーーwww

 なにこれおもろーーwww

 

「もしかして、エトワールの金剛さん……ですか?」

 

「ウェ‼︎」

 

「まぁ、やっぱり! こんなにかわいらしいから、もしかしたらそうじゃないかなーって」

 

「か、かわ、えへへ。あっ、そうじゃなくて、このことはどうか」

 

「えぇ、もちろん。このことは内緒にしておくわね」

 

 そう言って微笑むと、金剛先輩はまたもや呆けてしまった。

 さて、時間もいい感じだし、ここらで退散するとしよう。俺は金剛先輩が呆けたことに気がつかないフリをしながら、そそくさとその場を立ち去った。

 

 今度会った時にここでご令嬢っぽく振る舞ったことに意味が出てくる──かもしれない。

 それは今の俺にもわからないが、まぁじっと待つだけだ。

 

 果実が美味しく実るまで❤︎

 

 

 

「……なに変な顔してるんですか神崎さん」

 

「おろ? ジャーマネさん。どうしたでごさるか、こんなところで」

 

「マネージャーです。それはこちらのセリフです。いつも1時間前行動するのに全然来る気配がなかったので探しに来たんです」

 

 そう言うマネージャーさんの目は「またエトワールの子たちを探しにうろちょろしてたのでしょ」と雄弁に語っていた。

 

 彼女こそ、俺こと神崎渚を支えてくれている、ちょー優秀なマネージャーさんなんだぜ。

 

「そんなことより。神崎さん、これを付けてください」

 

「ん? 帽子にサングラス、それにマスク……マネちゃん、銀行強盗でもするつもり?」

 

「マネージャーです。それをするのは神崎さんとアスライテさんくらいです。

神崎さんの顔を見て上の空になる人を減らすために、これで顔を隠してもらうんです。特に今は警備会社と契約して外部の人間が増えているんですから」

 

「マネくん……君、よく天才って言われないかい?」

 

 この一件だけでも彼女が超絶優秀だと理解できるだろう。

 

「でもあまり意味がないと思うけどな」

 

「それはどういう……?」

 

「俺の美貌はこんなもので隠したところで防げるものではないってことサ☆」

 

「フッ……さっさと面談しに行きますよ」

 

 あるぇ? 今俺笑われた?

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

「やば……めっちゃかわいい」

 

「流石アタシのレオね!」

 

「ですから、私のレオくんです」

 

 面談と近々行うつもりの新設コーナーや案件についての確認も終わり、すぐ娯楽室へと駆け込み30分近く居座った。

 しかし、誰も来る様子がなかったので泣く泣く帰路についていたのだが、先輩方とマネージャーさんがロビーでお喋りに花を咲かせているのを目撃した。

 

「なんの話してるんですかー?」

 

「ん、なぎs…………アンタ、何よその格好は」

 

「私が付けさせたんです。これで上の空になる人が減れば、と」

 

「でもこれって完全に不審者だよね」

 

 そう言って苦笑いするルフナ先輩とマリー先輩(愛称で呼ぶことを許してもらえたぜ!)

 

「というかマネっち〜、先輩たちと会うなら教えてくれよ〜。おいら30分も娯楽室で待機してたんだぞ〜」

 

「マネージャーでs、ちょっ、くっつかないでください、暑苦しいです。私も偶然お会いしただけですよ」

 

「……アンタも大変ね」

 

 そのままマネージャーさんの手元を覗き込みスマホを見てみれば、そこにはマネージャーさんの愛犬、レオが写っていた。

 

「ぐぬぬ、この犬っころめ……先輩方に色目を使いおって……」

 

「犬相手に嫉妬してんじゃないわよ」

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