オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳 作:ユリガスキー
「────ハッ! こ、ここはいったい……」
「おっ、戻ったか。ナイスタイミングだぜ」
あと数秒戻るのが遅かったら、俺のチョップが凛ちゃんの頭に炸裂するところだったぜ。
辺りを見回して混乱している凛ちゃんに気づかれぬように、振り上げた手をそれとなく下ろした俺は、ここまでの経緯や変則ルールになった際の変更点を凛ちゃんに軽く説明した。
「そ、そうだったのかにゃ。まさかルール決めの途中で意識を手放すにゃんて……」
急に豹変する同期2人のせいやからね
あれは意識も手放したくなるわ
「ルールを決めようって彗月ちゃんが提案してくれたとこまでは覚えているんだけど……そこからは記憶が曖昧にゃんだよにゃー。
にゃんだか彗月ちゃんが腹黒くなってたり、渚ちゃんが頭良さそうな言動してたけど……多分気のせいだにゃ!」
「おい」
「えぇ、そうよ、気のせいよ。私が腹黒いわけがないし、渚ちゃんが頭良さげな行動をとるわけないじゃない」
「おい!」
「とと、こんな話をしてる場合じゃないにゃ。確か今は凛のターンらしいから、とりあえず場でも確認するかにゃ」
ぐぬぬ、なんだか納得いかないが、凛ちゃんの言うことももっともだからな。今は言いたいことを呑み込んどいてやろう。
「えーと? 彗月ちゃんの場にだけ1体の恐竜がいて、シールドはお互いに残り6枚。マナエリアには向こうが4枚でこっちは2枚、と。
……1ターン目でやって良い動きじゃないにゃ!」
「正確には彗月ちゃんは2ターン目だけどな」
「それでもにゃ! なんで暗黒恐竜はこんな死に急ぐようなことするのにゃ!」
「差し迫る終焉から逃れるためだ。仕方ない」
「滅びの運命を打ち砕くためよ。仕方ないわ」
「な、納得いかないにゃ」
他のトレカが十数年かけて築いたインフレの極地を2ヶ月で到達してるからな……
わりと頭おかしいよな
見てる分には派手でいいけど
「まぁいいにゃ。凛は凛のペースでやればいいだけにゃ。
とりあえず凛の手札はどんな感じ──」
「? どうした、凛ちゃ──」
「にゃ、にゃんじゃこりゃー!?」
そう言って凛ちゃんは、初期手札を机に叩きつけた。
「おいおい、カードを粗末に扱うな……って、うわぁ」
「酷い手札」
凛ちゃんが叩きつけた手札のカード5枚は、レベル7の「ティラノサウルス」1枚、レベル6の「ブラキオサウルス」が2枚、レベル5の「プテラノドン」が2枚と、すべてが最上級レベルの恐竜たちでこのターン動けないカードばかりだった。
すげー手札事故
凛ちゃんが事故るなんて珍しい
あー、渚が凛ちゃんの代わりに引いたからか
↑あっ……
「んにゃー! まさか、渚ちゃんの運の悪さがこっちにくるとは! 元の場所に帰るにゃ! しっしっ」
「ちょ、そんな変なもんこっち送りつけんな! 俺の運が悪くなったらどうするんだよ!」
「渚ちゃんはもうこれ以上悪くなりようがないから問題ないにゃ。何なら凛の不運をぜーんぶ受け取っとくにゃ!」
「あら、ならついでに私の不運も……」
「はいバーリア! 2人の不運は受け付けませーん。ついでに反射機能も搭載してるから2人に跳ね返りまーす」
「にゃんの! こっちはバリア返しバリアにゃ!」
小学生か
なんでこいつらカード以外で戦ってんだ(困惑)
盤外戦術で勝とうとするの好きすぎだろw
「というか、凛ちゃんもさっさとデュエルを進行しろよ。ほら、早くマリガンしな」
「……? あ、あぁ、そういえばマリガンなんてルールあったにゃ。すっかり忘れていたにゃ」
「? ならどうして手札を公開するようなことしたの?」
「…………その場のノリ、的にゃ?」
俺と彗月ちゃんの冷ややかな視線と、思わず出てきた「うわぁ……」という言葉を聞いて、凛ちゃんは気恥ずかしそうにそそくさとマリガンをして手札を整えた。
「さ、さぁここからは凛のターンにゃ! カードドロー!」
「あっ、今のうちに1つだけアドバイスしとこうかな。暗黒恐竜の咆哮のほぼすべてが「シールドが○枚以下の時」という発動条件があるんだぜ。
そんでもって、発動条件の枚数の最大値は3枚だから、そこまでは強気に攻めても大丈夫だぜ」
「にゃるほど……ならこのターンで彗月ちゃんのシールドを3枚まで削りとるにゃ!」
「まずは手札からマナを置いて、マナエリアに置かれた「白亜紀の原生林」の効果発動! 手札からもう1枚マナエリアに置けるにゃ。
そしてマナエリアに置かれた「原生林に棲まう小動物」の効果も発動! このカードがマナエリアに置かれた時にカードを1枚ドローするにゃ!」
「出た! 凛ちゃんの原生林コンボだ!」
「そして手札から「イグアノドン」を2体と「スピノサウルス」3体を出すにゃ!」
うおおおお!
って、めっちゃ被ってるやんけ!
おかしいな、ちゃんと念入りにシャッフルしてたはずなのに……
↑ヒント:シャッフルした人
…………な、なんだか横からすごい視線を感じるぜ。
顔を直接見たわけではないけど「渚ちゃんのせいでこんな意味わかんない手札になってるんだからにゃ?」ってのを視線だけでヒシヒシと感じるぜ(震え)
「じーー…………まぁいいにゃ。このまま「イグアノドン」2体で攻撃にゃ!」
「1体目の攻撃は「パキケファロサウルス」で迎撃するわ。これで「イグアノドン」は破壊ね」
「けど2体目の攻撃は通るにゃ。そして……3体の「スピノサウルス」で一斉攻撃にゃ!」
「──へぇ。デッドラインを越えるのね」
「どのみちそれは踏み越えていかなきゃいけにゃいなら、さっさと踏み越えていくのが凛のやり方にゃ!
それに、渚ちゃんに踏み超えさせると爆弾を引きそうで嫌だから、今取れる分は取っとくにゃ」
「ふふっ、なら1枚ずつめくっていくわね。
……1枚……2枚……3枚……4枚。残念ながら咆哮は引けなかったわね」
おぉ……デッドライン、咆哮が出てくる圏内のシールドを普通に取りおった。
これで彗月ちゃんのシールドはあと2枚。いける、いけるぞ!
けど、俺にやらせると爆弾を引きそうとは一体全体どういう了見だ──ひぇ、文句を言おうと横を向いたら凛ちゃんが「じとーー」っと半目で見つめてた。
い、いつからこっちを見てたんだ? まさかずっと……?
ここは俺のターンが回ってくるまで大人しくしてよ……
「私のターン、ドロー。手札から「原生林に棲まう小動物」をマナエリアに。追加効果でカードを1枚ドローするわ」
「手札から「巻き上がる火山灰」を発動。シールドを1枚墓地へ送って2ドロー、そして咆哮が発動して「飛来する隕石」の効果で「スピノサウルス」2体を破壊するわ」
「にゃにゃ! 咆哮は戦闘でシールドが破壊された時以外にも発動するのかにゃ!?」
「えぇそうよ。それが暗黒恐竜の強み。
1戦目の渚ちゃんは心を通わせることが出来なかったから、その強さを全力まで引き出せなかったけど、ね」
ま、まさか本当に革命の力……?
やっぱり渚と公式が間違ってたんや!
↑ばか! 案件先のタイソーに聞こえたらどうすんだよ!
もうそういった次元で戦ってないんだよ彼女たちは
「そして手札から「錯乱するブラキオサウルス」を2体出して、バトル! 「錯乱するブラキオサウルス」で攻撃するわ!」
「確か「錯乱するブラキオサウルス」は連撃持ちだったはず。いいにゃ、シールドで受けるにゃ」
「次の渚ちゃんのターンのためにあえてシールドを減らすつもりね。なら2体目でも攻撃!」
「もちろんシールドで受けて……! 咆哮を2枚発動だにゃ! 「パラサウロロフス」を2体場に出すにゃ!」
「くっ……! 私はこれでターンエンドよ」
彗月ちゃんの場には「パキケファロサウルス」と「錯乱するブラキオサウルス」が2体の計3体の恐竜。
そしてこちらの場には「イグアノドン」と「スピノサウルス」そして「パラサウロロフス」が2体の計4体の恐竜。
今この盤面で総攻撃をすれば、彗月ちゃんが場にいるすべての恐竜でブロックしても残ったシールドを1枚破壊できる。
だから次の俺のターンで恐竜を1体以上出せれば直接攻撃で勝利が確定する。
不確定要素はあの最後に残ったシールドだけだが……
「俺のターン、ドロー! 俺は手札を1枚マナエリアに置いて……「錯乱するブラキオサウルス」を3体出すぜ!
これで俺たちの勝ちだ! 「錯乱するブラキオサウルス」で攻撃!」
「ふふっ、ふふふふふ、本当に渚ちゃんたちの勝ちかしら?」
「見苦しいぜ? 暗黒恐竜の咆哮で攻撃を止められる恐竜の最大値は2枚。さっき彗月ちゃんが引いた「飛来する隕石」の2枚破壊とかがそうだな。例えそれを引き当てて、場の恐竜すべてでブロックしても……こちらの方が1枚上手だ!」
「それは
渚ちゃんは恐竜王のカードリスト、全部頭に入っているわよね?」
……! ま、まさか!
「見せてあげる! 私たちの革命への想い! 革命の力をっ!
私の最後のシールドは…………「チクシュルーブ隕石」!!!」
チクシュルーブ隕石って確か……
恐竜絶滅のきっかけとなった隕石だっけ?
ここからじゃ効果は見えないけど、レベル10!?
レベル10とか恐竜王で使えるわけないやん!
「にゃにゃにゃ! にゃんかやばそうなカードが出てきたにゃ! あれはどういうカードにゃ!?」
「あれはレベル10の咆哮持ち。咆哮の条件は──」
「シールドが0枚の時」
「……にゃ? ってことは、普通に発動するのはまず無理で、シールドに紛れ込んだ上で、そこから最後のシールドまで残ってないといけないカードってことかにゃ!?」
「えぇ、ただのロマンカードよ。しかしてその効果は「お互いの恐竜をすべて墓地へ送り、その後相手のシールドを送った枚数分デッキに戻す」よ!」
「………………にゃあ!!??」
お互いの場の恐竜10体が一瞬にして墓地へ送られて、さらにシールドがデッキに戻されるから咆哮が発動できない!
除去性能だけみたら圧倒的な性能を誇っているが、発動条件の重さから完全に見過ごしていた……!
「何もないならこのまま私のターンに移行するわよ?
カードをドローして、手札から「錯乱するブラキオサウルス」を出してそのまま直接攻撃!」
「ま、また負けたあああぁぁぁあ!!!」
─────
───
─
この配信は終了しました