オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳 作:ユリガスキー
「タコパっ、タコパ〜。きょーうは、タコパー」
今しがた適当に作ったタコパの歌を口ずさみながら、俺は上機嫌に事務所内を闊歩していた。
恐竜王の案件の成功を祝ってみんなで何かしたいねと彗月ちゃんが提案し、それならオフで会うにゃと凛ちゃんが言い出し、ならばタコパしかあるまいッ! と俺が勝手に決めたことにより、オフでタコパをすることになった。
しかし、デビューからまだ3ヶ月のひよっことはいえ流石はVtuberと言うべきか。ロシアンタコ焼きしようにゃ! とか、実家から巨大たこ焼き器を持ってくるわね! と、2人は撮れ高になりそうなことを次々とやり出そうとしていた。
これは後で話のネタにするよりもリアルタイムでリスナーに見せるべきだと使命感に駆られた俺は「せっかくなら配信しようぜ!」と提案し、事務所でタコパをすることに決まったのだ。
というわけで、俺は配信予定時刻の2時間早く事務所に来ていた。
そう、いつもは1時間前行動をする俺が、今回は2時間も前に集合しているのだ。
これはあれだぞ? 2人とオフでタコパするのが待ちきれなくて早く来てしまったとか、昨日のルフナ先輩の誕生日配信があまりにも良すぎて興奮していても立ってもいられなかったとか、今朝でウタウマーのサイン100,000枚書き終わったからとか、そういうわけじゃないぜ?
俺が早めに来た理由を説明する前に、まずはこの荷物の山のことを──
「あれ? 渚ちゃんも今来たのかにゃ? いつも1時間前に来るのに珍しいにゃ」
「おっ、凛ちゃんに彗月ちゃん。おっすおっすー」
「ふふっ、おっすおす。渚ちゃんも準備万端のようね」
彗月ちゃんはそう言いながら俺の荷物を眺めたあと、満足げに笑みを浮かべた。
その視線につられて俺の荷物をジロジロ見ていた凛ちゃんは、何やら不思議そうな顔をしていた。おそらく、タコパをするにしては多すぎる荷物の山を見て怪訝に思っているのだろう。
「それじゃあ私は先に準備してるから、2人はゆっくりしていってね」
「にゃ? もうそろそろ配信が始まるのに?」
「あー、いいからいいから。とりあえず凛ちゃんはこっちな」
「にゃ、にゃあ?」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「きゃーー!! かわいい! 最高にかわいいわ凛ちゃん♡♡♡」
「…………う、うにゃあ……」
「凛ちゃーん、笑顔、笑顔ちょーだーーい!」
え、えーと?
何起きですかこれは
おかしいな、タコパ配信を見に来たはずなのに……
こんなにテンション高い彗月ちゃん初めて見た
「おーい、2人ともー。もう配信始まってるぞー」
「う、うぅ……」
「凛ちゃーん、ポーズとってポーズ! ほらほらダブルピース、ダブルピース♡」
「ダメだこりゃ。まったく聞いてねぇわ」
り、凛ちゃんのダブルピース!?
なんかシャッター音が聞こえる気がする
本当に何が起きてるんだ
「置いてけぼりのお前らを見るのも少しだけ可哀想だからな。今の状況を軽く説明するぜ」
時は遡ること約1週間。
罰ゲームを賭けた恐竜王の戦いに敗れた俺と凛ちゃんは、このまま引き下がることはできぬとチップを上乗せして再挑戦した。俺たちが勝てば罰ゲームはなし、負けたらさらに罰ゲーム追加という誓約で。
結果はもちろんボロ負け。その後、泣きの1回が通って個人個人で戦うも完膚なきまでに叩きのめされ、結局俺と凛ちゃんは彗月ちゃんの言うことを何でも3回聞くことになってしまった。
「それで先週、案件が終わったすぐ後にな、彗月ちゃんから1つ「お願い」をされたんだ。そのお願いってのが「猫道凛のコスプレ衣装を作る」だったんだぜ」
あー、それでか
もう大体わかったわ
「今ので大体わかったかもしれないが説明を続けるぜ? 俺が作ったコスプレ衣装を凛ちゃんが着るように「お願い」して今に至るってわけだ。つまり、今の凛ちゃんは凛ちゃんin凛ちゃんってことだな。いつもより凛ちゃんみが増してる凛ちゃんをお前らにも共有したいんだが、Vtuberとして顔出しするわけにはいかないからな……残念だぜ。というか、凛ちゃんが凛ちゃんのコスプレをしてるって何か違和感あるよな」
凛ちゃんがゲシュタルト崩壊しそう
凛ちゃんin凛ちゃんというパワーワード
というか渚って衣装制作もできたのか
衣装の出来栄えだけでも見たいです
「ふっふっふっ、この俺が作った衣装を見てみたいという反応が来るのはわかっていた!
というわけで、実物の写真を複数枚と衣装制作に使った生地や型紙、小物やウィッグの作り方なんかも合わせて書いたnooteをトゥイッターで公開中だぜ! 興味があるやつは今すぐ見てきな!」
うおおおお!!
これは夏コミで凛ちゃんのコスプレが増えますねぇ
え、クオリティえぐくね?
これもはや本物やん
「これで全世界白猫化計画がまた一歩進んだぜ! この計画を完遂した暁には思う存分猫吸いを楽しむんだ!」
う、うわあああ!!!
やめろよ、猫吸いのこと忘れかけてたのに
知りたくなかった……猫吸いがダニの匂いを嗅いでいただけだってことを……
渚のクソ知識カス嘘asmr聞いたことを本当にちょっとだけ後悔してる……
「というか……まだ撮影やってるんだけど流石に止めた方がいいよな」
配信を始めて10分以上経つというのに、彗月ちゃんは写真を撮るのに夢中で、凛ちゃんは恥ずかしがって下を向いていて、まったくこちらを見向きもしない。
というか、この配信ってタコパをやるって名目だったよな?
タコパのタの字もないのはだいぶやばい。急いで2人を呼んでくるか。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「はぁー、やれやれ。やっとタコパの準備が始められるよ」
「あはは……ごめんなさいね、少しだけ取り乱しちゃって」
「んにゃー……あれは少しってレベルじゃないにゃ……」
俺たちは各々で役割を分担しながら、せっせと作業に勤しんでいる。
この光景を手元配信として映してしまうと、食器や包丁なんかの反射で顔バレしてしまう恐れがある。そんなわけで今回は手元配信はなしだぜ。
彗月ちゃんみたいに仮面を持っていれば手元配信出来たかもしれないんだけどな。やはり時代は革命なのか?
「それにしても良かったわね。さっきまでのグダグダが運営にバレてなくて」
「ん? あぁー、そうだな。もしバレてたら2人とも反省文を追加で書くはめになってたな」
「それは危なかったにゃ!」
いやー、バレなくてよかった
良かった良かった
これ以上追加されたら大変だからね
運営:そうですね^^
「あっ」「あっ」
運営:伊織さん、猫道さん、反省文1枚追加です
「そ、そんにゃ〜〜!!」
「ワロタンゴwww」
恐竜王の案件の後半で彗月ちゃんが暴走し、それを止めずに俺と凛ちゃんは意気揚々と乗っかかった。
その結果、台本にはない変則デュエルをするわ、革命恐竜なんてものを生み出すわ……とにかく案件としては酷い有り様になっていた。
酷い有り様……とは言ったが、案件先のタイソーやリスナーたちにはかなりの高評価を得ていて、革命恐竜がSNSでバズったこともあって案件としては大成功だったんだけどな。
とは言え案件配信がぐちゃぐちゃになった事実は変わらないので、俺たち3人は物凄い量の反省文を書くはめになってしまったのだ。
「これで彗月ちゃんが31枚と凛ちゃんが21枚、そして俺が──」
「43枚ね」
「渚は反省文を溜めすぎにゃ。今まで書くように言われた反省文、1枚も進んでないみたいだし」
「ひ、人のこと笑ってる場合じゃなかったぜ。よし、この話題は変えよう。もっと楽しい話をしようぜ」
せっかくの楽しい楽しいタコパなんだ。今は嫌なこと全部忘れて、楽しいことだけ考えよう。
反省文が43枚あることは忘れて……うん。
「あっ! そういえば、今の今まで忘れてたにゃ! 2人とも凛に嘘の集合時刻を知らせたにゃ! とうてい許せることじゃないにゃ!」
「あー、着替えの時間を用意するために凛ちゃんだけ2時間早めの時間を教えていたのよね」
「それに! 凛は今罰ゲームとして辱めを受けてるけど、渚ちゃんは得してないかにゃ? 不公平だにゃ!」
「まぁまぁ、一応それ作るのに20万くらいかかってるから、多少はね」
「…………に、にじゅうまん」
コスプレ衣装1つにかけていい値段じゃねぇよ
渚の本気度が伺えるぜ
何がこいつを駆り立てるんだ
nooteでは廉価版があって助かった
「しかしな……そのnooteは不完全な記事なんだ」
え?
こんなに完成度が高いのに?
どこが不完全なんだよ
「この記事の不完全な要素。それは──
── パンティだッ!」
「は???」
「俺は公式資料から凛ちゃんの髪や服装を完璧に再現して見せたが、どんなパンティを履いているのかは何処にも載っていなかった……
だが今さっき、凛ちゃんの着替えを手伝う時に俺は見てしまった! だから俺は! より完成度の高いコスプレ衣装のため、高らかに宣言する!」
「凛ちゃんのパンティは……猫の顔が印刷された「猫さんパンティ」だッ!!!」
「な、なんだってー!!」
下着も猫なのか
どんだけ猫が好きなんだ
うーん、かわいいからセーフ
クマさんパンツは聞いたことあるけど猫さんパンツは初めて聞いたな
「ちょちょちょ、ちょっと待つにゃ! そんな嘘をつくんじゃないにゃ!
凛はそんな子どもっぽいのなんて履いてないにゃ! ほら、しっかり見るにゃ!」
「お、おう」
「なるほど、大人っぽい黒、ね」
「…………………み、み、み、見るにゃバカーーー!!!」
エッッッッ
黒、か
自分から見せてくる凛ちゃん
やばい鼻血ががが
エトワール公式:神崎さん反省文10枚追加、猫道さん反省文5枚追加
↑草ァ!
絶望した!
「猫吸いはダニの匂いを嗅いでるだけだということもasmrで伝えてそう(意訳)」という感想を読んで絶望した!
こんな絶望1人では抱えきれないから、感想欄まで見に来ない人たちにも伝えてやる!