オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳   作:ユリガスキー

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弱火でじっくり(前編)

アスライテ:ヨウコソ! 「レンタル・バーナギ」ヘ!

 

 変な口調でチャットに書き込んでいるアスライテ先輩は、商人風のスキンを身に纏いながらカウンターの奥から登場した。

 

アスライテ:アナタタチ、ウンイイネ。イマ、イイモノソロッテイルヨ!

 

「いやー、先輩たちも中々に運がいい。初回限定で我らが社長が直々にお相手するみたいですよ!」

 

「行きましょうか、未来」

 

「えっ、で、でも」

 

「アスライテは『初回』だけ私たちの相手をするのよ? 1回外に出て『2回目』として訪問すればアスライテの相手をしなくてすむわ」

 

アスライテ:ソ、ソンナ〜!

 

 カウンターを飛び越えてノワール先輩の前まで来たアスライテ先輩は、頭を激しく上下に振りながら屈伸を繰り返してノワール先輩を説得し始めた。

 ノワール先輩には悪いが、あの状態のアスライテ先輩に絡まれると碌でもない目にあうからな。2人に気づかれないよう静かに後退りを…………ん?

 

 2人から5ブロックほど距離をとったところで偶然にも金剛先輩と目があった。

 初めは俺の行動の意味がわからずに首を傾げていたが、アスライテ先輩に巻き込まれて声を張り上げているノワール先輩と、スニークして後退りしている俺を交互に見て、その意図に気づいたのだろう。同じようにスニークしながら後退りし始めた。

 そうして俺たちは、倉庫の入り口のところまで逃げおおせた。

 

 

 

「ノワール先輩は犠牲になったのだ。俺たちの犠牲にな」

 

「あとで怒られちゃうよ?」

 

姫だけ置いてかれてて草

アレには巻き込まれたくないから……

未来ちゃん人ごとだけど君も一緒に逃げてるからね?

というか渚は向こう側だろうが! なんで逃げてんだよw

 

「ところで渚ちゃん。バーナギ・カンパニーの「バーナギ」ってどこから来てるの?」

 

「2人の名前を合わせただけですよ? アスライテ先輩のミドルネームであるバーナーと俺の名前の渚を組み合わせてバーナギです」

 

「あぁー……そういえばアスライテさんって名字あったんだっけ」

 

 

 

「説明しよう!

アスライテ先輩は元々ファーストネームだけの、ただの「アスライテ」だったんだぜ。そのことについて「王女って設定なのに名前だけっておかしくね?」と初配信での自己紹介後に言及し、残りの予定を全て破棄してミドルネームとラストネームを募集したんだぜ!

そしてなんやかんやあったすえに、その日のノワール先輩の朝食が焼きバナナだったからと「バーナー・ナー」に決まったんだぜ! ちなみにファンの愛称「モンキー」もここから来ておりまする」

 

なっっっつ

当時はめちゃくちゃやべー奴だと思っていたけど、今思えばあれでもセーブしてたんだなって

そもそもなんで王女設定でファーストネームしかなかったんだよ

↑エトワールやぞ?

 

「きゅ、急にどうしたの、渚ちゃん?」

 

「実は「メンバー全員紹介しちゃったから、渚の『説明しよう!』をもう聞けないと思うとちょっぴり寂しい」なーんてマシュマロが結構な数届いてましてね? それならばと、俺の気が向いた時にメンバーについての雑学や小噺なんかを『説明しよう!』かなと思いまして」

 

こいつ一応マシュマロ見ていたんだな

まったくマシュマロ配信しないから読んでいないものだと

しかし物好きなやつもいたもんだな

実はちょっと嬉しい(ボソッ

 

 

 

 

 

 

「…………本当に252枚全部、年内に書くのよね?」

 

アスライテ:インディアン、ウソツカナイ!

 

「私はあなたに聞いてるんだけど?」

 

 おや? どうやら向こうの会話も一段落ついたらしい。

 金剛先輩とのたわいもない話を切り上げて2人の元へ戻ると、スキン越しにも嬉しそうな様子が伝わってくるアスライテ先輩と、逆に疲れている様子がヒシヒシと伝わってくるノワール先輩の姿があった。

 

「どうしたんですかノワール先輩。お疲れなら肩でもお揉みしましょうか? なんなら別の場所も一緒に……グヘヘへへ」

 

「あなたたちが逃げていなければ、こんなにも疲れていなかったでしょうけどね」

 

「あ、あはは…………そ、それにしてもよくアスライテさんの提案を受ける気になりましたね」

 

 俺の小粋なジョークを軽く受け流して、わりと本気で睨みつけてきたノワール先輩の圧に耐えきれなかった金剛先輩は、それとなーく話題を逸らしてきた。

 その言葉に反応して矛先を向けたノワール先輩は、話題を逸らそうと目論んだ者へじとーっとした目つきを向けた。

 ノワール先輩の目つきに耐えきれなかった金剛先輩は、あたふたし始めて支離滅裂な言動を繰り返した。そんな金剛先輩を見て思わず噴き出したノワール先輩は「もう」と一言呟くと、機嫌を直して何故アスライテ先輩の提案を受け入れたのかについて説明し始めた。

 

 

 

 アスライテ先輩にはこの1年で溜めに溜めまくった反省文がある。その数なんと252枚。アスライテ先輩が行った今年の配信回数よりも多いというバグみたいな現象が起きている。

 しかし、ここまで溜め込んだ当の本人は「ツケ」と称して反省文をまったく書こうとしなかった。そんなアスライテ先輩に対して、運営とノワール先輩は事あるごとに反省文を書かせようと画策していたのだが……当然のごとく全て空振りに終わっていた。

 

 今回ダメ元で「反省文全部書くのなら相手してあげる」とノワール先輩が言ってみると、なんと「オッケーオッケー! ナンナラ、コトシデスベテ、オワラセルヨ!」と快く受け入れたのだ。

 おそらくアスライテ先輩は、ノワール先輩に何か無茶振りをする時のための対価として「反省文を書く」というカードを温めてきたのだろう。そして今日がその時だと、カードを切って「初回の取引だけアスライテ先輩が相手する」ことを承諾させた、と。

 

「しかし今回の()()はその手札を切ってまでやるべきことではない……よな? 対価に見合ってない気が──」

 

アスライテ:マダマダアオイナ、ブカクン

 

「うおっ、ビックリした。急に背後に立たないでくださいよ社長」

 

アスライテ:ジダイハ「ボチカツヨウ」ダゾ!

 

「え? それってどういう──」

 

 しかしアスライテ先輩は、俺の疑問を無視してカウンターの奥へと去ってしまった。

 ボチカツヨウ……墓地活用? いったい何のことだ?

 

 

 

「なるほど、それで反省文を書かせるために引き受けたんだね」

 

「えぇそうよ。正直こんな小さなお願いで反省文を書かせられるなんて不気味でしかないけど……本当に252枚全部書いてくれるのなら何があっても受け入れるわ」

 

「それにしても、よく252枚も反省文を溜め込めたね」

 

アスライテ:ヌヌッ! ボクタチヲバカニシタナ!

 

 カウンターの奥からボタンを手にして戻ってきたアスライテ先輩は、金剛先輩の言葉に憤った……って、

 

「いや、ボクタチって俺を巻き込まないでくださいよ」

 

「あなたも大概だからね? 53枚さん?」

 

アスライテ:ハンセイブンヲカクノハ、フツウノコトダヨナ???

 

「エトワールの中で反省文を溜め込んでいるのはあなたと三期生の4人だけよ?」

 

マジかよ

そう考えると三期生って全員やべーやつだったんだな

凛ちゃんだけは常識人だと思っていたのに……

↑あの語尾で常識人はないだろ

↑草

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