オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳   作:ユリガスキー

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弱火でじっくり(後編)

「それで? アイテムはあなたが直接渡すのよね? だいぶ時間も経ってるし、早いとこ受け取りたいんだけど」

 

アスライテ:オッケーオッケー! ソレジャアサッソク……

 

アスライテ:ポチットナ!

 

 手に持ったボタンを床に設置して勢いよく押すと、床下からガシャガシャと音をたててチェストがせり上がってきた。

 

「わっ! すごーい! マイクリってこんなこともできるんだ!」

 

アスライテ:ワッハッハ、スゴイダロ! キミモ、オドロイテクレタカネ?

 

「いや、私は監視していて一部始終を見ていたから……」

 

アスライテ:ガーーーン!

 

アスライテ可哀想……とはならない、不思議

日頃の行いのせいやろなぁ

というか設計と製作は全部渚がやってただろ

そういやそうじゃん

なんでこいつ自分の手柄のように立ち振る舞ってるんだよw

 

アスライテ:ブカノテガラハジョウシノモノ、コレジョウシキダゾ!

 

「その通りであります、小和田常務!」

 

「わ、わぁ……なんだか後で失脚しそうなセリフ……」

 

アスライテ:サテサテ、ソンナコトハイッタンオイトイテ

 

 

 

アスライテ:オジョウサンハ、ナニヲオモトメデ?

 

 せり上がったチェストの上に乗ったアスライテ先輩は、「すしざんまい」のポーズをとってノワール先輩を見下ろした。

 知っての通り、マイクリにはこんなふざけたポーズは存在しない。というよりマイクリには元々ポーズは1種類、「しゃがむ(スニーク)」しか存在していない。

 以前説明したように、アスライテ先輩はリソースパックやMODを大量に追加した。そのうちの1つとして、こんな意☆味☆不☆明なポーズをとれるMODも追加したってわけだな。

 まぁ、これも意味があってのことというか……本命であるリソースパックの存在をカムフラージュするためのものというか……

 

 

 

 ……いや待てよ? カムフラージュという名目で、ふざけたポーズやら何やらを大量に導入していたからこそ、設計・製作その他諸々すべて俺が担うことになったのではないか?

 

 

 

「何をお求めって、急に言われても困るわよ」

 

 アスライテ先輩への懐疑心がムクムクと頭をもたげてきたが、ノワール先輩の何気ない一言が俺の思考を遮った。

 あ、危なかった……もう少しで社長のことを疑うところだったぜ。俺としたことが部下失格だヨ!

 

 

 

 

 

 

「まぁ、とりあえず()()()()()()()()()()()

 

 ──!

 

アスライテ:ピクッ…………グレード、ハ?

 

「え? グレード? それじゃあ、貰えるものの中で1()()()()()()()()()()()

 

アスライテ:アイヨーー

 

「お客さん、奥の部屋どうぞ」

 

 急な展開に面食らったノワール先輩、ついでにボケーっと突っ立っていただけの金剛先輩もカウンター奥の部屋の1つへと案内する。

 

 2人を案内したのは、中央に焼肉テーブルがあって人数分のご飯がすでによそわれている部屋……ではなく、テーブルどころか装飾の1つもない殺風景な部屋だ。というか部屋のスペースは2×2マスしかないためテーブルを置くスペースなんて存在していないんだけどな。

 

「こ、これは流石に部屋とは言えないんじゃ」

 

「というか狭すぎない? いったい何のためにこんな場所を作ったのよ」

 

「部屋というのはあくまでもスラングというか構文というか定型文というか」

 

「?」

 

アスライテ:ツマリ、コウイウコトサ!

 

 先ほど同様、手に持っていたボタンを壁に設置して勢いよく押すと、出入り口が塞がって完全な密室となった。その直後、ガシャガシャガシャガシャ!! と、先ほどチェストがせり上がった時とは比べ物にならないほどの駆動音が鳴り響いた。

 

「えっ、えっ、えっ!? な、何の音!?」

 

「! y軸(高度)が物凄い勢いで下がってる。これ、エレベーターだわ!?」

 

エレベーターって水流以外で再現できたのか!?

これは建築界隈がひっくり返りますね……

というか毎秒3ブロックくらい下がってるやん

↑性能エグすぎて草。後で設計図公開してほしいわ

これ絶対回路やべーくらい複雑になってるだろ

 

 そういえば、この頃は水流エレベーターが主流だったっけ? 前世では人のプレイ動画こそ見ていたけど、自分自身ではやってたことないからよくわかんないけど。

 

「設計図は配信が終わったらトゥイッターで公開するからな〜」

 

「っていうか、いつの間にこんな物作っていたのよ! 私、把握してないんですけど!?」

 

「それはまぁ、配信終わってから作ってますし」

 

「えっ、私が配信を見ていても構わないって、準備の様子は全て見せるって、アスライテが言ってたよね!?」

 

アスライテ:プププッ! ソンナ「ウソ」ニ、ダマサレルナンテ、キミカワウィーネ!

 

「ネタが古いわよ! 2人には伝わらないでしょ!」

 

 そんな言い合いを繰り広げている間にもエレベーターは降下し続けた。

 毎秒3ブロック分移動する高性能なエレベーターであるが、目的地の高度が−62のため移動に結構時間がかかる。だから無駄に高性能なエレベーターを作る必要があったんですね〜。

 ちなみに、マイクリの最下層が−64だから、目的地はほぼほぼ最下層と言っても過言ではないぜ!

 

 

 

「ほ、ほへー……ひろーい……」

 

「まさか、これだけの広さを1人で全部掘ったの? 配信が終わって事務所に来るまでの間に……?」

 

 エレベーターを出てすぐ目に映るのは、高さ約40ブロック、面積約256×256ブロックもある広大な洞穴だ。流石に時間が足りなかったため整地はまったく出来ていない。せいぜい湧き潰しのための松明*1が置かれている程度だ。エレベーターを出てすぐ横の方に豆腐建築*2の仮小屋が置かれている以外は何もない、淋しい洞穴となっている。

 

「掘ったというよりも爆破したってのが正しいですね。流石に短時間でこれだけの広さを掘るのは厳しいっす」

 

「えっ? 爆破って……TNTを使っててこと?」

 

「こ、これだけの広さを爆発させる量のTNTを集める方が大変なんじゃ……」

 

「材料である火薬と砂はクリーパートラップや砂無限装置を作って無限に集められるんで、そこまで大変じゃないですよ」

 

「クリー……へ?」

 

ガチすぎるだろこいつ

カジュアル勢2人に考慮しろよ

おそらく2人ともトラップや装置っていうワードを聞いたこともないだろうしな

というか装置を1から作る方が大変なのでは……?

 

「というか、この洞穴のことはどうだっていいんですよ。今はまだ使わないんですから。そんなことより……」

 

アスライテ:ソウビガ、ホシインダロ? ツイテキナ!

 

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら豆腐小屋に向かうアスライテ先輩に続いて、俺たち3人も後を追う。

 

 豆腐小屋の中には大量のチェストが設置されていた。その数なんと50個と、地上の倉庫のチェストの倍以上もある。

 アスライテ先輩はその中から、武器やツール,装備が入っているチェストを漁ると、ノワール先輩と金剛先輩へ向けて装備一式を放り投げた。

 

「えっ、な、なんでダイヤ装備なの!?」

 

「最初から最強装備はつまらないと言ったな。あれは嘘だ」

 

えぇ……

いきなり最強装備で草

初めから全部あったら見どころ減るやろがい!

 

「いやいや、これには深ーい理由があるんだぜ」

 

 そうして俺は聞くも涙、語るも涙の説明を始めた。

 

 「マイクリ内で皆で祝おう」というアスライテ先輩の思いつきから始まった今回のクリスマスイベント。祝おうと言っても、具体的に何をするかをアスライテ先輩と2人であーだこーだと話し合い、なんやかんやあって「一期生vs二期生vs三期生、マイクリ建築対決!」をすることになった。

 「クリスマス」というお題に従って各々のグループに建築してもらい、より素晴らしい建築をしたグループに運営からささやかなプレゼントが贈られるってな感じでな。

 そういうわけで、運営が成果を確認する25日までに建造物を完成させなければならないのだが……今日の日付は12月5日、期限まであと20日しか残っていないのだ。

 

 ん? 20日もあれば建築の1つや2つ、軽く作れるだろって?

 やはりアナタ達はワカってない。エトワールに所属してるメンバーたちを──

 

 とまぁ、冗談はこのくらいにしといて。

 実際問題、普段配信やら何やらで忙しい彼女たちに「巨大建造物を作ってねー」と頼むのも、まぁまぁ酷だ。加えて、そんな彼女たちが都合を合わせて話し合いや作業をするとなると、完成する時間はギリギリになるはずだ。

 あと、これはリスナーには話せない裏話なんだが、期日までの間に案件のための収録があるメンバーも何人かいるんだぜ。それらすべてを考慮すると、資材集めのための時間は出来るだけ短縮した方がいいはずだ。

 そんなことをアスライテ先輩と話し合い、メンバーへの支援は惜しみなく行おうということになったのだ。

 

「なるほど、色々考えた上でのことだったのね」

 

「それなら、ありがたく使わせてもらうねっ!」

 

「へへっ、まいどあり! ダイヤモンド装備・ツール一式でエメラルド15個となっております!」

 

「た、タダじゃないの!?」

 

惜しみない支援とはいったい

まぁまぁ高くて草生えるわ

感動した気持ちを返せ

↑いうほど感動要素ありましたか?

というか、なんでエメラルドなの?

↑マイクリ内で通貨の役割を果たしているからだよ

 

「これだけの資材をタダで配っていたら俺たちの会社は倒産しちゃいますよ!」

 

「で、でも、私たちエメラルドなんか持ってないよ? 今ここに来たばかりだし……」

 

「うーん、どうしましょうか社長」

 

アスライテ:ソレナラ、エメラルドヲ、カソウカ?

 

「エメラルドを貸す?」

 

「なるほど。俺たちは鉄やダイヤモンドを集めるついでに他の資材、エメラルドもたくさん集めていますからね。金貸しの真似事もできますね」

 

「金貸しってことは利子もつくのかしら? あまりにも高いのなら借りたくはないけど」

 

アスライテ:ウーム、ソウダナァ……

 

 

 

アスライテ:カエサナイヒトガイタラ、コマルカラ……ニチリ5%デドウダ?

 

「にちり?」

 

「1日経つごとに利息が増えるってことですよ。といっても高々5%ですが。

あぁそうだ。一応補足しておくんですが、複利*3で計算した上で小数点切り捨てはしませんよ。元金15個の5%で小数点を切り捨てると利益が出ないので」

 

「確認なんだけど「1日経つごとに」っていうのは現実の時間で換算したときの話よね?」

 

アスライテ:トウゼンダトモ!

 

「流石の俺たちでもマイクリ内での時間を基にして日利5%なんて言いませんよ。なんなら後で正式な文書を送りますよ」

 

「……複利だとしても5%なら問題ない、わね。ならさっそくエメラルド15個借りれるかしら」

 

 

 

 

 

 

アスライテ:…………ヘヘッ、マイドアリィ

 

 

 

─────

 

───

 

 

 

 

   この配信は終了しました

*1
暗い場所ではモンスターが湧くが、光源ブロック(松明)を置くことで阻止することができる。

*2
長方形や正方形のような四角い形をした建築物のこと。その形から豆腐に例えられる

*3
元金によって生じた利子を次期の元金に組み入れる方式……よくわからなければ、長期間借りたらやべーって覚えておけばいいと思うよ

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