オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳   作:ユリガスキー

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悪いことって重ねてくるよね

 連れていってくれとせがんでくる凛ちゃんに根負けした俺は、2人を連れて地下の大空洞まで案内した。

 どうやら、凛ちゃんは昨日の配信を見ていたみたいだ。まぁ、凛ちゃんなら昨日の配信を見ていても別におかしくはないか。

 

 初見じゃないからか、豪華な建築物やエレベーター、そして大空洞を目にしても凛ちゃんはあまり大きなリアクションを取らなかった凛ちゃん。

 そんな凛ちゃんを見て「あぁ、これがマイクリの常識なんだなぁ」っていう顔をしている彗月ちゃん。

 今ここで彗月ちゃんの間違いを修正をしとかないと、後々クリスマスに何建てるかの話し合いで苦労するはめになるよなぁ……

 でももう、豆腐小屋の前に着いちゃったし……

 

 ま、いっか!

 

「さぁさぁ、どれでも好きなの選んでちょーだいな。手頃な価格で販売していまっせ!」

 

「あら? ここは貸し出しじゃなくて販売なのね。でも私たちって来たばっかでお金なんてもってないわよ?」

 

「ふふーん、それは今から凛が説明してあげるにゃ!」

 

 俺の仕事を奪った凛ちゃんは、意気揚々と豆腐小屋でのルールを説明していった。

 

 通貨はエメラルドという鉱石であること、エメラルドは借りることができること、豆腐小屋にはほぼ全てのアイテムが揃っていること、エトセトラエトセトラ……

 

「エメラルドと資源の交換レートは渚ちゃんのトゥイッターに固定されているから、それを見てみるといいにゃ」

 

なんで社長のアスライテじゃなくて1社員の渚のトゥイッターに固定されてんだ?

↑大量のアイテムを全て表にまとめるなんて渚以外にできないだろ

しかも渚は一晩でやってくれました

 

「へぇ〜……防具セットでエメラルド5個、ツールセットでエメラルド5個、あっ、全部まとめセットがエメラルド15個でお得なのね。道具だけじゃなくて資材もたくさんあるのね」

 

「にゃふふ、石材や石炭なんかの資材もエメラルド1個で64個と交換してくれるにゃんて……w」

 

「?」

 

「フッフッフッ、我が社は薄利多売でやっていくのがウリですからな」

 

 「エトワールのみんなのため」それがうちの会社のスローガンだからな。断じて、皆を罠に嵌めるためエサを安くばら撒いている、なーんてことはないぜ?

 

「今は資材はいらなさそうだから……全部まとめセットを購入するためにエメラルド15個だけ借りておけばいいのかしら?」

 

「これから冒険するってのに資材はいらないからな。それが1番無難だと思うぜ。ただ、食料や便利グッズも持っといた方がいいから……ここらへんも購入しておくことをオススメしとこうかな」

 

「じゃあそれも買っておこうかしら」

 

 交換リストを眺めてニヤニヤしている凛ちゃんを横目に、彗月ちゃんは早々に買い物を終わらせた。

 初心者である彗月ちゃんには、資材一覧にのっている名前やレートを見ても何もわからない。

 そのため、交換リストは軽く目を通したくらいで、すぐに最初のページに戻って「最初に買うならこれ!」とポップが書かれている「ダイヤモンド装備・ツール一式全部まとめセット」を選んだのだ。

 実際、これから冒険することを考えると余分な物は持たない方がいいだろう。それに、利子のことを考えたら、なおさら購入すべきではない。

 

「へへっ、毎度ありぃ! 諸々込みでエメラルド20個、利子もあるんで早めの返済をお願いしやすぜ!」

 

「えっ、利子もあるんだ」

 

「へい、複利で日利5%となっておりやす」

 

「しかも複利。ねぇ、凛ちゃん。エメラルドって簡単に入手できるものなの?」

 

「エメラルドなんて、ちょーーー簡単に手に入るからばんばん借りるにゃ。凛はとりあえずエメラルドを200個借りるにゃ!」

 

「り、凛ちゃん!?」

 

「福島だか日輪刀だか知らにゃいが、200個の5%なんてたかが知れてるにゃ! なんだったら、10%でも50%でも返したっていいくらいだにゃ」

 

「ま、待って、凛ちゃん。利子っていうのは時間が経つごとに「へいっ! 毎度ありィ!!」

 

あーあ

俺たちゃ知らんぞ

まぁでも何とかなるだろ

あのレートならな

 

「それじゃあ早速、冒険の旅に出発にゃ!」

 

「…………ま、いっか。凛ちゃんが泣き叫ぶ様も眺めたいし

 

 は、彗月ちゃん、怖ひ……

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 そんなこんなで地上へと戻った俺たちは、三期生の土地──初期リスの8時から12時の方向──の果てを目指して冒険することにした。

 

 しばらくは草原が続くだけの、俺や凛ちゃんからすれば何の面白みもない退屈な風景が続くだけだったんだが、彗月ちゃんの目にはどれも新鮮に映ったらしい。

 豚や牛を見かけたら一直線に向かって、花を見かけたら1種類ずつ確保して、木の種類が変わったことに一喜一憂していた。

 木の葉っぱを壊すとリンゴが一定確率でドロップすると教えると、あっという間に3本の木が犠牲になった。4本目が犠牲になる前に「マイクリには犬や猫がいる」と教えると、狂喜乱舞して「早く先に進みましょう!」と急かして、1人で先に走っていった。

 頭がすっかり寂しくなってしまった3本の木に黙祷を捧げた俺と凛ちゃんは、1人遠くへ進んだ彗月ちゃんの後を慌てて追った。

 

 しかし、こんなにハイテンションな彗月ちゃんはマジで珍しいな。

 

「革命状態ならともかく、素の状態であのはしゃぎようは珍しいよな」

 

「んにゃ。まるで子どもだにゃ」

 

「凛ちゃーん、渚ちゃーん! あっちに建物みたいのが建ってるわよー!」

 

「んにゃ!? きっと村に違いないにゃ! 突撃にゃーー!!」

 

「オマエモナー」

 

 そろそろ日が沈みそうだったから丁度よかったぜ。

 確かこの村にはベットが3つ置いてあったはず。リスポーン地点をここに変更しながら朝を迎えよう。

 

 

 

「…………あれ? なんで村人がいないのにゃ?」

 

「へぇ、マイクリって人間のNPCも存在しているのね」

 

「そうにゃ。村には村人が住んでいる、はずにゃんだけど……バグかにゃ?」

 

「そんなことはどーでもいいだろ? もう夜が来るから一旦寝ようぜ」

 

「それなら私はこの家のベットで!」

 

「じゃあ、俺この家ー!」

 

「んにゃーー!! 2人ともずるいにゃ!」

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

「にしても、だいぶ遠くまできたよな?」

 

「砂漠やジャングルも冒険できたし、お宝も見つけた。そして何より、この子たちを家族に出来たから大満足だわ」

 

 そう言った彗月ちゃんの足元には犬が3匹。道中で手懐けた、心強い味方たちだ。

 

「時間的にもそろそろ配信を終わらせてもいいんだけど、最後になーんか面白いことをしたいよな」

 

「おぉー! あっちに森の洋館があったにゃ!」

 

「ナーイス、凛ちゃん!」

 

 配信の締めを飾るにはもってこいだぜ!

 

 

 

 森の洋館は比較的最近実装された、多くの部屋を持つ大規模な構造物だ。森の洋館でしか出てこない強い敵モブが出る分、得られるお宝もそれ相応のものとなっている。

 生成される頻度はかなり低く、初期リスから20,000マス以上離れてるなんてこともザラにあるらしいので、ここで見つけたのはかなり運がいい。

 

 最近実装されたーなんて言ったが、少し先の未来を知ってる俺からすると、森の洋館なんて古臭く感じるんだけどな。

 

「へぇ〜……内装はとてもシンプルなのね」

 

「あくまでも自然生成される建物だからな」

 

「あぁ、それで」

 

微妙な反応してるけど、結構オシャレだからね?

最初に渚の建造物を見たせいやな

あの後なら何見ても霞むわ

 

 

 

 

 先ほど説明したとおり、森の洋館にて出現する敵モブは強めに設定されているのだが、俺たち3人と3匹の手によって、あっという間に葬られた。

 2時間にわたる冒険で多くの戦闘経験を積んだ彗月ちゃんは、死なないように上手く立ち回れていたし、犬3匹を連れているアドバンテージはやはり大きかった。

 凛ちゃんもマイクリ上級者を自称するだけあって、危うげなく敵モブを倒していた。

 というか、2人ともダイヤ装備を身につけてるから、よほどのことがない限り負けることはないんだけどな。

 

「ふふふふふ、やっぱり犬はいいわね。主人の命令に従順であろうとする姿……とってもかわいいわ」

 

「怖いこと言ってないで、彗月ちゃんも隠し部屋を探すにゃ」

 

「隠し部屋?」

 

「読んで字の如く、森の洋館には隠された部屋ってのが存在しているんだぜ。入り口がなくて廊下や他の部屋とも繋がってないから、壁を破壊して探さないといけないから面倒なんだよな」

 

「運が良ければダイヤモンドブロックを手に入れられるのにゃ! 森の洋館のイベントはここからが本番だと言っても過言じゃないにゃ!」

 

 

 そんなわけで、凛ちゃん主導のもと隠し部屋探索が始まった、のだが……

 

 

「なんで見つからないのにゃ! こうなったら全部燃やして……」

 

それを もやすなんて とんでもない!

一応1つの手ではあるんだけどな

隠し部屋がないって珍しい

 

「おいおい、隠し部屋ならあるだろ? この部屋の真下がそうだぜ」

 

「にゃにゃ! それならそうと早く言うにゃ!」

 

 言うや否や、足場のブロックを掘った凛ちゃんは──

 

 

 

「んにゃああああああ!!! ま、マグマ!?」

 

 

 リンは溶岩遊泳を試みた

 

 

 思わず彗月ちゃんと顔を見合わせた俺は、凛ちゃんが掘ったブロックを広げて下の部屋を見てみた。

 

「あのオレンジの液体っぽいのがマグマなのね」

 

「あぁ。マグマに触れたら燃焼してダメージを受けるから、急いで離れないといけないんだが……」

 

「透明なブロックに囲まれて逃げる場所がなかった、と」

 

 隠し部屋の中には「溶岩の部屋」と呼ばれている部屋が存在している。ガラスブロックでマグマを覆い、その上下を黒曜石という固いブロックで蓋されているオブジェクトが鎮座している部屋だ。

 しかし、上の方の黒曜石ブロックが何故か一部分欠けていた。そのせいで凛ちゃんはマグマダイブしてしまったってわけだな。

 自然生成される構築物が欠けているってのはまぁまぁ珍しい。

 黒曜石ブロックの一部が偶然欠けていて、落ちたところが偶然欠けているところだった……凛ちゃんもだいぶ運がないな。

 

「あっ、もしかしてあの中央の水色のブロックって」

 

「そう、あれが凛ちゃんの求めていたダイヤモンドブロックだ……凛ちゃんへのはなむけのためにも回収しておこう」

 

「んにゃーーー!!! 凛だけ無人の村にいるんだが!?」

 

凛ちゃん……

まぁでも凛ちゃんはこの冒険でそこまで希少な物は拾ってなかったから

↑エメラルド200個持ったまま冒険してたけどな

↑あっ……

 

「あ、あああぁぁぁ!!! り、凛のエメラルドが!?」

 

「はい、じゃあ時間的にもいい感じですし、無事森の洋館の探索も終わってダイヤモンドブロックも手に入れました」

 

「全然無事じゃないにゃ!」

 

「それでは皆さん、また次の配信で〜」

 

「まだの奴らは凛ちゃんと彗月ちゃんのチャンネル登録しとくんだぞ? んじゃ、おつかれー」

 

 

 

「んにゃーーー!!!」

 

 

 

─────

 

───

 

 

 

 

   この配信は終了しました

 

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