オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳   作:ユリガスキー

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悪いことって重ねてくるよね(血涙)

「うぅ〜、凛のぉ……凛のエメラルドぉ〜……」

 

「まぁまぁ、そんな落ち込むなって」 

 

「つらい気持ちもわかるけどね」

 

 配信を終わらせた俺たちは、相変わらず適当に駄弁っていた。

 話題に上がっているのは、当然と言うべきか凛ちゃんのマグマダイブの件だった。俺と彗月ちゃんで傷心している凛ちゃんを励ましていた。

 

「まぁいいにゃ。200個、じゃなくて210個なんてすぐ返せる量にゃ。凛は過去を振り返らないのにゃ!」

 

「……」「……」

 

「んにゃ? 2人ともどうかしたかにゃ?」

 

「いや別に」「なんでもないわよ」

 

 凛ちゃんの名誉のために言っておくと、凛ちゃんは別にそこまで頭が悪いわけではないぞ?

 凛ちゃんは色んなジャンルのゲームに手をつけていて、中には謎解き系やパズル系のような頭を使うものも配信で取り上げている。その配信を見れば、凛ちゃんの閃きの良さやセンスの良さなんかを感じ取ってもらえるはずだ。

 

 え? ゲームの上手さは、それイコール頭の良さではないって? 

 おいおい、それを言っちゃあ、おしめぇよ。

 

 

 

「さて、それじゃあ私はこの辺で抜けようかしら」

 

「え〜〜、もう抜けるのかにゃ〜〜」

 

「私も名残惜しいのだけどね。今夜の配信で使う材料を買いに行かなくちゃいけないの」

 

 そう言って彗月ちゃんは、上機嫌でDs-コードの通話から抜けていった。

 

 彗月ちゃんがタイソーの包丁を買った時の話しになるんだが、包丁購入後、他にどんな調理器具を取り扱っているのかと調べていた彗月ちゃんは「1人用レンジ鍋」というものに目をつけた。

 「レンジで簡単、お手軽に鍋ができるなんて……!」と衝撃を受けた彗月ちゃんは、次の晩酌配信は鍋にしようと予定を立てた。それがまさしく今夜のことで、マイクリ配信が始まる前から今夜は1人鍋だと上機嫌だったのだ。

 

 彗月ちゃんをあんなに笑顔にさせるなんて……やっぱりタイソーさんは最高だぜ!

 

 

 

「さて……これで2人っきりになったのにゃ」

 

「フフフ……決別の時来たれり、我らは幾度となく相まみえる ──」

 

 

 

 

 

 

「スラブラやるにゃーー!!」

 

「おぉーー!!」

 

 大乱闘・スラッシュブラザーズ、通称スラブラ。マイクリ同様、Vtuberを見ていて知らない筈はないと言っても過言にならないゲームの1つだ。

 けど、これもお決まりなんで改めて説明しておこう。

 

 メーカーやタイトルの垣根を超えた人気キャラクターが一堂に会する対戦アクションゲーム、それがスラブラだ。個性あふれるキャラクターを操作する楽しさにバトルの爽快感もあって高い人気を博している。

 そして何より、基本ルールがとてもシンプルなのだ。相手を攻撃してダメージを溜めて場外に吹っ飛ばす……たったこれだけ。しかし、たったこれだけのことが物凄く奥が深い。

 そのためスラブラは、初心者から上級者まで幅広い層が楽しく遊べるゲームなのだ!

 

「今度こそ、今度こそ憎きポルノハグを倒してやるのにゃ!」

 

「ははは、前回のスラブラ配信でPornhugにいいようにやられていたもんな」

 

 Pornhugという某アダルトサイトの名前そのまんまのプレイヤーは、視聴者参加型のスラブラ配信界隈では名の知れた人物だ。

 ドキドキコングという煽り性能が突出しているキャラを愛用しているPornhugは、その圧倒的な実力で数多のVtuberを吹っ飛ばしながら、合間合間に煽りを繰り出すことにより心をも吹っ飛ばしている。そんな彼との試合では数々の名シーンが生まれているので、気になった人は切り抜きでも見に行くといいぜ。

 そしてそれは凛ちゃんも例外ではなく、散々に煽られた上に僅差で敗北したため、リベンジすべく俺に指導を求めたってわけだな。

 

 

 

 

 

 

「おっ、いい感じじゃねーか。「常に一手先を読んで技を置く」ができる相手に対しては、今みたいに考えることが倍以上に増えるから、ある程度のパターンは頭に叩き込んでおいた方がいいぞ」

 

「うぅー……頭がパンクしそうにゃー……」

 

「凛ちゃんは感覚派だもんな。けど感覚派だからこそ、ある程度の理論は頭に叩き込んでいた方がいいぞ。それを自分の価値観に落とし込むことができれば今よりもっと進化すると思うぜ。

そういう意味ではルフナ先輩よりも金剛先輩を見習った方がいいかもな」

 

「にゃ? 金剛先輩に?」

 

「あぁ、あの人って直感を理屈で埋めるタイプだからな。なにかと参考になることもあるんじゃないか?」

 

 スイカップを教えていた時もそうだったが、あの人は得た知見を自らの血肉にするのがとても優れている、典型的な理論派だ。自らのタイプとまったく違う相手を見るのは、きっと凛ちゃんの参考になるはずだろう。

 

 

 

「……金剛先輩といえば、渚ちゃんをお嬢様って勘違いしていた、よにゃ?」

 

 ん? 急にどうし……ははーん、なるほどな。

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、いったい私の何を見てお嬢様だと思ったんでしょうか」

 

「んにゃー! やっぱりかにゃ!」

 

 凛ちゃんは俺の姿を何度も見ている。俺の人並みはずれた美しすぎる美貌を。もしかしたら本当に……? なーんて思ってもおかしくないくらいの美貌をな。

 

 ここでそれを否定してもいいんだが……せっかくだ。凛ちゃんにも金剛先輩よろしく、勘違いしてもらおう。

 ここで蒔いた種がどうなるかは知らんが、きっと未来の俺がなんとかするだろ!

 

 

 

「そんなことより、そろそろ指導の見返りが欲しいかなーって」

 

「うっ……本当に喋らなきゃダメかにゃ?」

 

「当然です♪」

 

 今回、凛ちゃんに指導する条件として「リーク配信で使えるような黒歴史を教えること」を提示したのだ。

 いやー、いったいどんな黒歴史を話してくれるんだろうか。

 

 

 

「…………これは凛が小学生になった時の話にゃ。凛が通っていた幼稚園は人数が少なくて、小学生になって人が急に増えてびっくりしたことは今でも覚えているにゃ」

 

「だから、幼稚園の時にはいなかった凛と同じ名字の人もちらほら増えたのにゃ」

 

「話は少し逸れるんだけど……凛は当時、名字というのは一家庭に1つ、それぞれが別のものを持っているって思っていたのにゃ。被っている名字なんて存在してないって感じでにゃ。それもこれも幼稚園にいた人が少なかったのが原因にゃ」

 

「だから、小学生になった時に凛と同じ名字を名乗っている人を見て言ってしまったのにゃ。

『なんで私の名字名乗っているの! もしかして私と結婚したいの!?』って」

 

「結婚したら名字が一緒になることだけは知っていたんですね」

 

「うぅ……そうなのにゃ……」

 

「それにしても……ふふっw」

 

 あかん、凛ちゃんの幼少期があまりにもおバカ可愛くて素が出そうだわ……w

 

「あぁーー!! 今笑ったにゃ!」

 

「しょうがないじゃないですか。こんなの誰だって笑っちゃいますよ……ふふっ。

これで次回のリーク配信も楽しくなりそうです」

 

 そう言って笑うと、通話越しでもわかるくらいに凛ちゃんの雰囲気が暗くなった。

 揶揄いすぎたかと焦った俺は慌てて謝ったのだが、どうも原因はそこではないらしい。

 

 どうやら凛ちゃんは配信のネタが尽きてしまい、とても困っているみたいだ。やりたいゲームも一通りクリアしてしまい、次にやりたいゲームは発売まで全然先、雑談で話すことも思い浮かばない等々……今回アスライテ先輩がエトワール全員を巻き込んだコラボ企画は、そんな凛ちゃんにとっては大助かりだったとのこと。

 同期である2人、俺と彗月ちゃんは各々ネタをうまく探し出して、配信頻度が一向に下がっていない……それに引き換え、ゲーム以外のネタを見つけられない自分は、どんどん配信頻度が下がっている。

 それをここにきて思い出してしまい落ち込んでしまったと言うのだ。

 

 

 

「なら、私のように先輩方とコラボするというのはどうでしょう。皆さん個性的な方たちですし、きっといい刺激になりますよ」

 

「で、でも、先輩たちを利用するようなこと……」

 

「皆さんそんなこと気にしませんよ。むしろ、もっと自分達を頼りにしてほしい……そう思うはずです」

 

 思えば凛ちゃんは、自分から声を掛けて先輩たちとコラボをしたことがない。凛ちゃんが先輩たちとコラボしていた配信は、すべて俺や先輩たちの方から誘っていた。

 それもこれも、今凛ちゃんが話してくれたように、自分なんかのために先輩を誘うことに対して気後れしたからに違いない。

 

「それはきっと、凛ちゃんが推しているノワール先輩も同じだと思いますよ?」

 

「うぇっ! な、なんでそのことを!?」

 

「ふふっ、私は凛ちゃんのファンでもあるんですよ? ずーっと凛ちゃんを見ているんですから気づきます。

と、いうわけで……早速コラボの約束を取り付けちゃいましょう! もちろん、お相手は凛ちゃんの推しであるノワール先輩です。いいですね?」

 

「わ、わかったよ。渚ちゃんの言うとおりにするよ」

 

 

 

 

「……渚」

 

「え?」

 

「もし、今回の件でありがたいなーって思ったのなら、親しみを込めてそう呼んでいただけませんか?」

 

 

 

 

 

「え、えっと、その………………あ、ありがとね、渚」

 

「! はいっ!」

 

「じゃ、じゃあ私、ノワールさんに連絡するから!」

 

 それだけ言うと、凛ちゃんはすぐ通話から抜けた。ノワール"さん"になっているのを鑑みるに、よほど慌てていたに違いない。

 けひひ、猫じゃない凛ちゃんもだいぶ可愛いじゃないか。

 背もたれに深くもたれかかってリラックスしながら、先ほどの凛ちゃんの可愛さを思い出して1人ニヤニヤしていた。

 

 

 

 そうやって良い気分になっていた俺の耳に、Ds-コードの入室音が聞こえてきた。

 いったい誰が入ったんだ……って、うん?

 

「どうしたんですか? 凛ちゃん」

 

「そ、そのぉー……にゃんと言いますか、とても言いにくいことにゃんだけど……」

 

 ん? どうしたんだ? 急に猫語になって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は配信を切り忘れていたのにゃ! ほんっっっとうに申し訳ないにゃ!」

 

「………………はい?」

 

 背もたれから飛び上がった俺は、すぐさま凛ちゃんの配信をつけた。

 

渚にもバレちゃったか

いぇーい、渚ちゃん見てるーw?

とりあえずプライバシーがバレなくて良かったよ

↑それと同じくらいにヤバいことがバレた気もするけどな

お嬢様設定の伏線がここにきて回収されると言うのか……

切り抜きに期待

これってアーカイブ残るんかね

 

「このお詫びは後日、何かで埋め合わせするのにゃ! そ、そういうわけで……さよならにゃー!」

 

「………………りぃぃぃんっっっ!!!」

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