オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳 作:ユリガスキー
「…………ふふふふふっ」
「ん? どうしたんですかノワール先輩?」
「何勘違いしているんだ……って思ったら可笑しくてね」
「ひょ?」
「渚ちゃんの相手は日菜がするってことだよ☆」
「ヒョ!?」
日菜ちゃん!?
えっ、まさか日菜ちゃんが渚の相手に?
いや、でも姫と渚の勝負だって……書いてない!?
告知も配信タイトルもサムネも、どこにもノワールの文字がなくて草
告知、配信タイトル、サムネ、そしてコラボの打ち合わせに使っていたDs-コードで交わした打ち合わせの文面を確認してみると、どこにも「俺とノワール先輩が戦う」旨は書かれていなかった。
「……なるほど。だから打ち合わせではチャットだけでやり取りしていたんですね」
「そこに気がつくとは流石ね、渚ちゃん」
俺には人の心理状況を完璧に把握する力がある。そんな俺を前にして嘘をつくことはできない……のだが、判断材料がない状態では把握もクソもない。
打ち合わせが通話で行われていたのなら「声色」という重大な判断材料があるので間違いなく気づけたはずだ。だが、判断材料が文字しかない上にノワール先輩が本気で欺こうとしていたために気づくことができなかったのだ。
「アソビ大百科で収録されているゲームの8割はあなたに勝てる人はいないし、残りの2割も完全な運ゲーでもない限り実力でひっくり返すこともできるでしょうね。
でも、「運」のスペシャリストなら、日菜ちゃんなら、あなたの不運も相まって残りの2割を勝ち取ることができる!」
う、うおおお!!!
か、勝てる、勝てるぞ!
運ゲーに持ち込めたなら渚に勝てる可能性もありる!
凛:ノワール先輩、かっこいいですにゃ!
でも人任せでいいんだろうか……?
↑凛ちゃんが喜んでいるからいいんじゃない?
流石はノワール先輩だ。俺にコラボを持ちかけた時から今に至るまでの一挙手一投足、そのすべてが綿密に練り上げられている。そして、まず間違いなく俺に勝つまでのプランも練っていることだろう。
だが、1つだけ。
「くっ……! だが、日菜先輩がそっち側に着いたと決まったわけじゃない!」
「え? 日菜?」
「日菜先輩、ノワール先輩が負けた時の罰ゲームを知っていますか! って、改めて聞く必要もないですよね」
「うん、日菜はついさっきまでこの配信を見ていたからね☆」
「──にゃんにゃん言ってるノワール先輩、見たくないっすか」
「!?」
「む、むむむ!」
凛:だ、ダメですよ! 裏切らないでください日菜先輩!
凛:あぁでも、猫になったノワール先輩も見てみたいし!
凛:り、凛は、凛はどっちの味方につけばいいんだにゃ!
↑1人で盛り上がってて草
↑↑一瞬猫語忘れてるの見るとガチ感あるな
「でもノワールちゃんを裏切るわけにはいかないよ。それに、渚ちゃんの清楚な姿も見たいし☆」
「ひ、日菜ちゃん……!」
「ぐ、ぐぬぬ……懐柔もダメだったか……」
あ、あの渚が終始押されてるだと
これはガチで勝てるかもしれんぞ!
うおおお! 姫様最強! 日菜ちゃん最強!
「仕方ねぇ、こうなったら実力行使だぜ!」
「ふっふーん☆ 渚ちゃんは今まで一度も運ゲーで勝てたことがないのを忘れちゃったのかな?」
「う、うるさいやい! アソビ大百科は運ゲーだけじゃないってこと、わからせてやるぜ!」
状況は不利と見た俺は、この流れを断ち切るべく半ば無理やりアソビ大百科へと話題を逸らした。
運ゲーだけじゃない証明というわけではないが、俺が最初に選んだゲームは「オセロ」だ。
黒と白の石を交互に盤に置いて、相手の石を挟んでひっくり返し、最終的に石の数が多い方が勝ちとなるゲーム……なーんてことは日本人ならみんな知ってるだろう。
だが、このゲームが二人零和有限確定完全情報ゲームの一種であるということは広く浸透していない。
二人零和有限確定完全情報ゲーム、それは運が一切絡まず、互いが理論値を指し続けられるなら勝敗、引き分けが明確に決まっているゲームのことである。とは言ったものの、実際には無量大数をゆうに超える選択肢のすべてを把握することは不可能であるため、あくまでも理論上の話しにすぎない。
が、しかし、この俺は選択肢のすべてを把握して、常に理論値をたたき出すことができる。
そんな俺にとって、この手のゲームは必勝が約束されているのだ!
「渚ちゃんほどじゃないかもだけど、日菜だってオセロは得意なんだから。カレンも未来ちゃんも日菜には1回も勝てたことがないもんね☆」
「それはその2人がゲームよわよわなだけだと思いますけど。あっ、ちなみにもう詰みですよ?」
「え? 詰み? 日菜、まだ3回しか打ってないよ?」
「その3手で詰みなんですよ。さて……目指すはパーフェクトゲームだ」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「えぇー? 渚ちゃんのコマめちゃくちゃ少なくなーい? このままだと日菜が勝っちゃうね☆」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ふ、ふーん。ま、まぁ角の1つや2つくらい、どーってことないよ! まだまだこれから……!」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「え、えぇ!? またパスぅ!?」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「わァ……あぁ……」
泣いちゃった
いやそりゃ泣くわ
えっっっぐ
俺パーフェクト勝ち始めて見たわ
白一色で染まってて綺麗だな()
「ぷークスクス。最初の威勢はどっこいったんすかねーw」
「む、むむーーっ! こうなったら日菜の得意でやってやるー!」
そう言って日菜先輩が選んだゲームは…………ヨットだった。
ッスーー……ハイ、えー、たった今俺の敗北が決定してしまったわけなんだが、一応ヨットを知らない人もいるかもしれないので説明はしておこう。
ヨットとは5個のサイコロを使ったポーカー遊びのことだ。「フルハウス」や「フォーダイス」、「ヨット」などといった決められた役をつくって得点を競い合うゲームだな。1度振ったサイコロは2回まで任意のサイコロを振り直すこともできるし、どのサイコロをキープして何の役を狙うかが勝敗の決め手となるため、
…………そう、
「じゃあ早速、日菜から行こうかな。そいっ!」
「ファーーーwww」
渚が壊れちゃった……
そら(初手ヨット出されたら)そう(壊れる)よ
このゲームで日菜ちゃんに勝てるわけないだろ!
こんな酷いワンサイドゲームは……ついさっき見たばっかだったわ
↑いや草
「ヨット」という役は、このゲームの名前にもなっている特別な役で、5つのサイコロの出目を全て揃えるという超低確率な役だ。その分点数も50点と全ての役の中で1番高く、このヨットを出すかどうかで勝敗が決まると言っても過言ではない重要な役なのだ。
日菜先輩も当然ヨットを作り……って、
「な、なんでヨットじゃなくて、エースなんかに入れちゃったんですか!?」
日菜先輩が選んだ役は「エース」。これは1の目の合計がそのまま点数になる、という役だ。日菜先輩は1の目を5個すべて出しているため、一応エースの理論値である5点を取ったのだが……ヨットに入れていたら50点取っていたはずなので、45点をドブに捨てたことになるのだ。
「ふっふっふっ☆ ハンデってやつだよ、渚ちゃん☆」
カッチーーーン。はいキレた、もう俺はキレましたよ!
たとえ勝つのは無理だろうとも、せめて一矢報いてやるッ!
「うおおおぉぉぉ!!! 唸れッ! 俺の右腕ぇぇぇ!!!」
「う、うーん、微妙な並びだな……とりあえず2を2つキープしておくか」
とりあえず同じ出目のサイコロをキープしておけば、複数の役を同時に狙うこともできる。
あとは2回の引き直しで高い役を狙うことができれば──
ぐっ、なんでさっきと同じ出目なんだ。えぇい、もう1回──
「いや、おかしいだろ!」
草
こんなことってあるんやなw
役なんも出来てねぇな……
これはエースかデュースに入れるしかないな
「ここはエースを捨てよう。デュース*1も……流石にもう少し上を狙えるはずだしな」
「なるほどなるほど。それなら日菜も、よいしょー☆」
って、またヨットかい! こんなの絶対勝てっこねぇじゃないか!
唸れ、右腕ー! なんて言ってたが、こんなの何回唸ったって追いつけるかぁー!
そう俺が嘆いている横で、日菜先輩はまたもやヨットを無視してデュースの役を選んだ。
「ぐぬぬぬぬ! 1発でデュースの高得点を狙えない俺への当てつけっすか!」
「いやいや、そんなんじゃないよ渚ちゃん。ほら、次は渚ちゃんの番だよ?」
「…………スゥーーー……フゥーー……よし! 今の俺なら、イケる…………!」
「と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛! ! !」
なんの役もできてねぇ(白目)
あの時デュースを選んでいたら……
↑そうすると今度は2が固まるだけだぞ
草w……って書き込もうとしたけど、なんか可哀想になってきたわ……
本当によくこの歳まで生きてこられたな渚
「思わず同情しちゃうくらいに可哀想だけど、勝負の世界には情けは無用っ! そいっ☆」
「いや、絶対同情してないですよね!? 絶対オセロの件を根に持ってますよね!?
って、さ、3のヨットだしてる……」
まさかの3連続ヨットに、俺だけでなく日菜先輩を応援していたノワール先輩やコメント欄もドン引きである。
そして日菜先輩は、またもやヨットを無視してトレイ*2の役を選び──
「ま、まさか、日菜先輩が狙っているのは──」
「あはっ☆ ハンデを背負うって言ったでしょ? 日菜はね、
ヒエッ
運が良いってレベルじゃねーぞ
勝てるわけがないにょ……
あまりに無法
「さぁ、ゲームを始めようか☆」